レインボーシックス346   作:MP5

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 彼女の心境をご覧あれ


専務編  別れの詩

 エコーはこの日、自室に籠りデータの解析をしていた。それは、美城専務が生前残していた捜査資料。正直言えば既に重要な部分は解析出来ていたが、ひとつだけ解読できていないものがあったのだった。

(うーん・・・解析するって言っても、ほとんど出来てるし、もう覗く必要ないんじゃないか?だが・・・どうしてこれだけはパスワードがわからないんだ?)

 シュタインと表記されているファイルだけは、ジャンの手によってしても開くことが出来なかった。

(この肝心な時にミュートはくるみちゃんにロケ慣れのためにパラシュートの練習に付き合ってるし、サッチャーの旦那は任務だし、フューズは部屋に籠りっぱなしだし・・・俺だけかよ)

 ため息交じりにコーヒーを飲む。

(今日はせっかく未央ちゃんのPVがイギリスで販売されるから買いに行こうと思ってたのに、シックスが仕事押し付けて・・・あぁなんでだろう、源太のやつ優遇されすぎだっての)

 怒りに任せ、uzukiとパスワードの入力した途端、ファイルが開いた。中はワードであることがわかる。

「え・・・なんだよこれ、読むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 これを読んでいる捜査班の方々へ。読んでいると言うことは私はもう殺されているだろう。私はここに捜査の心情を記す。

 私が千川ちひろの奇行に気づいたのは、プロジェクト・クローネとシンデレラプロジェクトの成功によって社内が浮かれていた時だ。パーティーの最中、彼女は頻繁に会場を離れ、トイレに行っていた。私は気になって尾行すると、普段とはかけ離れた低く冷たい感じの声で誰かと連絡していたのだ。346プロをどうするつもりなのか、私は心配になり独自に調べることにしたのだ。彼女の机の中に銃が入っていたことで乗っ取りを知ったのだが、そこは割愛させていただく。恐ろしかった、社員の一人が事件を起こそうとしているのではないかと。

 調査させようにも、部下は私を信頼していない。アメリカにいた頃、やり方が機械的かつ柔軟性が皆無だってことは、友人のクラークに指摘されていたが、本当に禍になってしまったらしい。クラークはかつて、特殊部隊にいたらしいが詳細は知らない・・・今思えば、この捜査でクラークに連絡が取らなかったのが、最大のミスと言える。そこで私は社外の友人に協力を仰いだ。そのうち一人は警察関係者で、その筋で有名な情報屋を紹介してくれた。彼は数日後、あっさり証拠を見つけ出し、私はそれを持って千川に突きつけ自首を薦めたが相手にもされなかった。今までのツケがまわってきたってことだろう。だが、私は父が育てた組織を守るため、捜査資料のオリジナルをプログラマーの友人に託し、いつでも死ねるようにしておいた。

 これを読んでるのがクラークの知り合い及び本人ならこれを伝えたい。理論だけでなく、実践も大事だと教えてくれたことを感謝していると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 短い文章だったが、エコーは彼女が真剣かつ必死になって守ろうとしたことが伝わり、文章を紙媒体に刷り、シックスに提出した。

「なるほど・・・これは私が責任を持って346プロに提出しよう。しかし、よくパスワードが分かったな」

「怒りに任せたら、勝手に開いたんです」

「そうか。しかし、特殊部隊出身でクラークと言ったら先代のミスターCしか知らないぞ」

「彼の可能性が非常に高いと思われます。コンタクトを取れますか?」

「残念だが、私からじゃ発信できんのだ。すべて違う信号でメッセージが送られてくるからな」

 そう言うと、視線を下に向けるのだった。

 

 

 

 

 同時刻。日本・東京。一人の外国人男性が美城家の墓に花を置き、祈りを捧げていた。

(・・・どうして、君はいつも突っ走ってしまうんだ。アメリカにいた頃から自分で抱え込んで、自爆なんてしょっちゅうだったのに・・・君の忌報を知った時、家族一緒に悲しんだよ。明朗な子だったのにってね)

 彼の背後から、日本人男性が現れる。

「娘の墓に花を置いてくださって、ありがとう」

「彼女は私の友人ですから、いつかはと」

「感謝の言葉が出てこないほど、うれしいです。娘も、喜んでいることでしょう」

「彼女が繋いだ未来、次の世代に託せるようにしていきましょう。失礼」

 男は墓を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 男、クラークは1人でバーに入りスコッチのロックを飲む。

(ODT事件は解決した。多くの犠牲者が出たが、それも運命なのだろうか。私が作ったレインボーが一旦解散し、再集結、そしてまた戦いの中を生きている)

 空になったことに気がつき、バーテンに追加をもらう。

(私の時代にはいなかった、ゲンタやヨハン、ミュート達の若い世代の誰かが組織のリーダーになり、平和への道を拓いて行くのだろうか・・・なんか湿っぽいな、もう少し飲もう)

 アメリカにいた頃、美城をよくバーに連れて行き、基本的な考え方や知識、酒の飲み方を教えていたのを思い出した。

(もう飲みに行けないと思うと寂しいものだ。この歳で友人を何人も失ってきたが、どんな奴でも会えないと思うと辛いものだな。私は今まで通り、未来を切り開く若者を育てる人間になろう、ディングや彼女のような人間を送り出そう)

 この日、一晩中飲み明かすことになった。




 あの人をどう扱うかで結構悩んだんですよ
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