健康診断の結果を見て、顔が青ざめるカプカン。肝臓が悪いらしく、このままではフロストと共に狩りに出掛けられないことを危惧していたのだった。
(これはまずい、ドクにシバかれる・・・怒ると怖いんだよなアイツ)
同じ時間、フロストもまた焦りを生じていた。
(す、ストレス値が・・・やたら高い、どーりで狩り失敗するわけだ)
渋い顔で医務室に入った二人。結果を見てため息をつく。
「ここ2年、君らがレッドリストの常連になりつつあるぞ。カピタオにスモーク、果てはアホのカルロスも正常値なんだぞ。まずはカプカン、一日の酒量は?」
「ウォッカ2本にウィスキー1本」
「ウォッカはせめて1杯で済ませること。これ以上は禁酒プログラムを組むからな」
「ちょっと待った、大酒飲みのタチャンカのオヤジはどう説明するんだ?」
「あぁ彼なら減酒に成功して、正常値になった。ギリギリだけどな」
「・・・わかった、努力する(それで最近、ゲッソリしてたのか)」
「次にフロスト、何か鬱憤が溜まってんじゃないか?」
「うん。最近肌が荒れちゃって」
「それだけか?他にあるんじゃないか?」
「イギリスのメイプルシロップがマズイ・・・あれじゃ歯磨き粉食ってる方がいいぐらい、クソマズくてイライラしてるんだ」
カナダのあるあるを聞かされたドクは、相槌を打つ。
「この前なんてワッフルにかけたらスル~って皿に落ちたんだよ、水みたいに。しかも香りが無くって困るんだ」
「な、なるほど・・・だったら、通販で買ったらどうだ?メイプルシロップはストレス発散の効果ある。アロマセラピーにもなるし美味しい、良いものなんだ」
「知らなかったわ。早速ケベック州産のを取り寄せてみる(ケベックって確か、バックの故郷だったよね。頼もうかな)」
診療を終え、一息つくために、ヒバナからもらった緑茶を入れる。
「キュウスって入れ物は趣があっていい。個人的に爽やかなのがいいものだ」
ゆっくり飲んでいると、キャッスルが医務室に入ってきた。
「どうした?緑茶でも飲むか?」
「いや、そうじゃない。ちょっとした取材なんだがな」
「?」
「サナエ カタギリって知ってるか?これが写真だ」
写真も見る。以前、ヒバナ達が担ぎ込んできた日本人患者だというのがわかった。
「あぁあのアル中か。まさか護衛か?」
「そのまさかだ、タケによれば未だに飲んで迷惑かけてるって話だしな」
「・・・医者として、素直に話を聞いてほしかったな」
「ドクの話を聞かないとなると、相当ヤバいヤマってことか。スレッジとイエーガーに報告してくる」
「そうしてくれ」
キャッスルが出て行き、再びお茶を飲む。
「はぁ・・・どこ行っても酒飲みバッカで困るんだが」
ぼやいていると、ドミンゴに司令室に呼ばれ、早速向かった。彼の口から片桐早苗と他数名の護衛任務につけと聞かされ、渋い顔をしたが承諾することにした。
イタリア・ベネチア。運河の街にドクを筆頭にキャッスル・スレッジ・イエーガー・源太が参加。アイドル達とは別のゴンドラで追跡し魔の手が来ないか警戒していた。
「そういや、誰が健康診断引っ掛かったんだ?」
「グラズ以外のロシア人、睡眠障害のジャッカル、ストレス値高めのフロスト、ヒバナが引っ掛かったな」
「ほうヒバナが?」
「完璧超人扱いされるけど、善玉菌と悪玉菌のバランスが悪い。野菜食べないからだろう」
「あぁ~確かに肉しか食ってないイメージあるわ」
「ちなみに、私を除いて一番優秀だったのはバックだった。次点でゲン」
「ドクはどうだったんだ?」
「これを見ればわかる」
自分の診断結果を見せる。全員が目を丸くするほど完璧な結果で、ストレスや疲労が溜まっていないことがわかる。
「最先端医学に基づいて行動してる結果だ。論文読むか?」
「勘弁してくれ」
健康談話をしてる最中、小柄で熱血な少女、日野茜が運河に飛び込もうとするのを乗っていたメンバー全員が物理的に引き留めようとする。
「ダメです、迷惑ですよ?」
アナスタシアが冷静に突っ込み
「濡れたら向こうのゴンドラに乗ってる性悪医者にかかるわよ!」
早苗が主観全開で説得し
「風邪引いてもいいが人様に迷惑かけんじゃねぇ!」
拓海がもっとなツッコミを入れ
「ちょっと、ここはプールじゃないんだからやめなさいよ!」
慌てふためきながら美嘉が注意する。どうにか茜を抑え込み、飛び込みは防ぐことができた。
「み、みなさん気にならないのですか!?底がどうなっているのか!」
「イタリアで風邪引いたら日本にいるプロデューサーが心配するでしょ!ただでさえ危なっかしいんだから自重しなさい!」
「気にならねぇよ。水が冷たいのに飛び込もうとするな!」
「・・・ぐぅ・・・飛び込むのはやめます、かわりにダイビングに」
「わかってねぇじゃねえか!?」
かなり荒れたロケではあったが、無事に終えることが出来た。しかし元気の余っている茜は夜に飛び込もうとするが、背後から物言わずとも迫力がある人物に肩を触れられる。
「え?ど、どなたですか!?」
「俺はスレッジ、イギリス人だ。飛び込もうとしても無駄だ、俺の仲間達が外で警戒してる。その代わり、イギリスのラグビーの話をしてやろう」
彼女の興味を引くことに成功し、高校時代にやっていたラグビーの話をする。
「・・・って、ことがあったんだ。俺が走れば誰も止められないほどのパワーで勝ってきたもんだ」
「すごいですよ!?11人全員のタックルをもろともしないパワー!」
「喜んでいただけて光栄だが、夜だから声は小さくするんだぞ?」
少し恥ずかしくなり、顔を真っ赤にする。
「アカネ、好奇心は確かに大事な要素だ。だが、無鉄砲で行動しても得られるものはない。今度からは仲間の迷惑にならないように行動するんだぞ?」
スレッジと仲良くなり、彼の言うことを素直に聞くようになった。
「もう遅いから部屋に戻って寝るように。長旅で疲れてると思うから、な?」
「元気は余ってます、でもスレッジさんの頼みなら聞きます!」
茜は自室に戻って行った。
(あのそそっかしくて元気な姿は、ヒバナに近いものがあるな)
後ろ姿を見て、そう思っていたと同時に、遠くのヘリフォードでヒバナがくしゃみをしたのは偶然である。
「・・・どうしてこうなったんだ?」
「サナエがいないと思ったら、飲み屋でODT残党が立て籠もり。しかも人質が彼女」
「俺のアーマーパネルが役に立たないかも」
「ハンマーの出番が増えそうだぜ」
「そんなこと言ってないで任務を開始しましょうよ。さっさと片づけてイギリスに帰りましょう」
3階建ての建物の裏口からスレッジとキャッスル、他メンバーが表で待機する。店内はカーテンで視界が遮られており互いに見ることができない。外ではサイレンが鳴り響いており、ハンマーでドアを破壊すると同時に源太が煙幕を撃ち込み突入した。ものの数分で殲滅したものの、今度は早苗の姿がないことに気がついた。
「よし全ての階を探そう」
上の階にいる敵も倒し、ドアというドアを開ける。しかし、どこにもいない。
「逃げたとは考えにくいな。あれだけの数だ、見つかる可能性が非常に高い。ってことは」
1階に戻り、カウンターの裏を見る。床を調べると一か所だけ違和感のある個所を発見し、それを上に持ち上げると、ワインセラーを発見。そこに彼女がいた。隙を見て隠れたのだろう。
「終わったぞ。敵もいないし帰るぞ」
「1本飲んでからでいい?」
「ダメだ、ホテルで1杯だけにするんだ」
スレッジが入り、彼女を真剣に見つめる。
「大人しく聞いた方がいい、ドクの禁酒プログラムはどんな任務よりも厳しくて辛い。トラウマになってる隊員もいるんだ。さぁ行くぞ」
「は・・・はい」
引きつった顔のまま脱出する。その後、早苗は具体的にどのようなことをするのかスレッジから聞いたところ、想像のあまりに気を失ってしまい、数日間寝込んでしまった。
翌日。ロケの合間、源太はアナスタシアの側に立つ。
「ベネチアはどう?好きになった?」
「とてもキレイです、源太さんと一緒なら特に」
二人から流れる甘ったるい空気に飲まれそうになる美嘉。キャッスルが気を利かせ、少し離すようにした。
「あー彼氏欲しいなー。おじさん誰かいない?」
「紹介してもいいが、曲者ばかりだぞ?機械オタクにドルオタに芸術オタクに・・・」
「ははは・・・ホント曲者ばっか・・・里奈も苦労しそうだな~ヨハンさん食い気しかないから」
「まともな部類だが、アイツは女にあまり興味ないからな」
「仲いいんですね?シンデレラプロジェクトみたいに」
「まぁ不仲で出会った瞬間殴り合いする奴らもいるぞ」
レインボーの裏事情を少し知り、苦笑いを隠せない。
「ミカ。お前を大事する男は必ず現れる。焦るんじゃない、若いんだから」
いかんと呟き、頭を掻く。
「このロケ終わったらフェスあるから頑張ろ。自分磨かなきゃ」
「まっ、無理すんなよ」
遠くからイエーガーの声がする。
「みんな、ヘリに乗って上空から街を見るぞ。俺の操縦だから楽しんでくれ」
無事ロケが終わり、視聴率が19%となかなかの数字を叩き出した。
薄味ですが、堪忍してください