新人のプロデューサー。アーニャPに変態が多かったため、女性を置くことを決定され、事務員志望だった彼女に白羽の矢が立った。
この作品には珍しい、文字通りの常識人
日本・東京。346プロ内の事務所でファンレターの整理をする武内。レインボーが事件を解決した後、主にアナスタシアの人気が上がりファンレターに混じって怪文書も送られてくることも増えた。新任の女性プロデューサーとともに検閲するのである。
「武内先輩って、心配性なんですね?」
「それもありますけど、最近、英語をはじめとした外国語のファンレターが来ます。翻訳するのもあるんですよ」
「先輩・・・何者?」
「ただのプロデューサーです(嘘ですが)」
後輩Pが手紙を見ていると、本田未央宛のファンレターに武内にとって懐かしい名前が記載されていた。
「先輩、エコーさんって人は熱血なんですね。彼女のライブには仕事ほったらかしてほぼ必ず来てるみたいですし、サインや握手、ツーショットまでされてたようですよ?」
「本田さんからも聞いてます、かなりハイテンションで笑顔が良いと(何してんだエコー、任務はどうした!)」
「他にも、卯月ちゃんのファンの女性からは、笑顔で癒されるから絶やさないようにねって労いの言葉も送られてますよ」
こちらには今川ユミコと記載されていた。
(ヒバナも島村さんの魅力に気づいてらっしゃいますね。特に変わったことはないのでスルーしましょう)
後輩Pが一通の手紙を手に頭を傾げている。フランス語が書かれているようだ。
「先輩、読めますか?」
「えぇ。ノノ、日本で元気にやっているか?俺は日々身体を鍛え、いつでも元気だ。さて、今回は失敗を恐れない方法を教えてやろう。やり方は簡単、まずは好きなものを思い浮かべ、深呼吸し、その後美味しい飲み物を飲むんだ。それだけでも落ち着くし、フィジカルに良い影響がくる。嘘だと思って試してみろ・・・って書いてありますね(この力強い字はモンターニュですね、安心します)」
以前、中東で彼に命を救われたことを思い出した。
「次は・・・何語だこれ?」
「ポルトガル語ですね。彼は諸星さん宛に書いてます」
『ようパワフルなお嬢さん。相変わらず物壊して歩いてんのか?冗談はそこまでにして、ブラジルでもアンタが非常に話題になっている。リオのカーニバルに参加してもらう予定だと実行委員会の連中が騒いでるほどだ、すごいことだぞ?しっかり考えてオファーを受け取れよ カピタオより』
久しく会っていない同僚たちからの手紙に、嬉しさがこみ上げてくる。
「えぇっと・・・どうしてこの人きらりちゃんがパワーが強いって知ってんのかしら?」
「さぁ・・・(任務で会ったことがあるって言ってたような・・・)」
「さてさて次はくるみちゃん宛・・・あっ、日本語ですけど怪文書ですかね?仕事中に俺のことをお兄ちゃんって公の場で呼ぶのはやめてって書いてある。ミュートって人からです」
「初めての手紙ですね。送られたのは・・・イギリスのヘリフォードですか、なら大丈夫でしょう」
これも以前、サッチャーを通してミュートがくるみにお兄ちゃんと呼ばれているのを知っていた。彼女が非常に懐いているのは事実であるが、困っている彼にどうアドバイスすればいいのかわからないでいた。
「ふーん・・・次は・・・文香さんのですね。綺麗な絵ハガキですよ」
北海道の釧路湿原の風景画が描かれている。右隅にロシア語でティムールと書かれていた。
「恐らくこれは送り主が書いたものですね。プロの画家が描いたものでしょう」
「文香さん文学少女から文化少女に進化してますね・・・はい」
コーヒーを飲み、小休止をする。
「武内さん。私、プロデューサーやっていけますかね?」
「前に進む以外にないですよ」
「先代Pが変質者紛いなことしてクビですよ?アーニャちゃんの彼氏っぽい人と父親が殴り込んできて怖い思いもしました」
「あの二人は善人です。銃の扱いに慣れてるだけで・・・それに真田さんはユーリさんを停めに来ただけですよ?」
「お父さん挨拶するだけなのにマシンガン突きつけられるなんて初めてですよ!何なんですか彼ら!」
「レインボーですよ。真田さんはバラクバラ被ってテレビに出てます」
なんだそれは。そう思いながらファンレター検閲に戻る。
「武内さん、レインボーってどんな組織ですか?テレビで紹介されてたのは知ってるんですが、詳細までは」
「私の知る限りでは、彼らは様々な分野のエキスパート達で構成され、テロ事件があればすぐに駆けつけます。ホワイトマスク事件も、彼らが解決したのですよ」
「え、そうなのですか!?」
「まぁそれはそれとして、変わったものがありましたか?」
「うーん・・・あれ、かな子ちゃん宛のものですが、筋トレメニューでしょうか?」
英語で腹筋20回×2、腕立て伏せ20回×2、3キロ走など、彼女が苦手としている運動に関係するものが記載されている。
「これって嫌味ですかね?」
「・・・いえ、これは彼女が交わした約束ですよ。三村さん最近痩せてきてますからね」
封筒の裏にイライザと書かれている。彼女が実際に考案したダイエットメニューをファンレターとして送っているのだ。
「ちゃんと見てるんですね」
「仕事ですから」
続きを見ていると終電までタイムリミットが近いことがわかる。仕事を切り上げ、それぞれの家に帰って行った。
数日後。日本・札幌。地方の仕事先である撮影所にてODTの影響を受けた若者達がテロ事件を起こした。人質になったアナスタシアと女性プロデューサーは拘束され、楽屋に閉じ込められた。
「女の子になんて扱いしてんのよ!アーニャ、安心してね、私はあなたの味方よ」
「プロデューサー。前の人も同じこと言ってました、でも、嘘でした・・・」
「あ・・・ごめん、そんな事知らなくてつい・・・」
「大丈夫です。プロデューサーを信じてます」
この極限状態に慣れているのか、逆に励まされる。
「すごいわ、パパの影響かしら?」
「いいえ、パパじゃなくて源太さんです。私の恋人です」
「真田さんの事?本当に彼氏なの?」
縦に首を振る。彼のことになると目を輝かせてデートした日の事を話す。
「小樽でデートしたことがあって、一緒にガラス細工を作りました。寮に飾ってます」
「へぇー真田さんってどんな人なの?なんというか、苦労しかしてないようなイメージだけど」
「とても優しくて、カッコ良くて、一途です。誰よりも戦うことが得意なアーニャだけのナイトです!」
そのような会話をしてる頃、IQ・パルス・源太の3人は現場に到着し、リーダーのパルスが作戦を指示した。
「今回は人質救出だ、散開し、それぞれで任務を遂行するぞ」
「了解。敵の人数は不明だから慎重に行くわよ」
正面玄関から入り、源太は2階、IQは1階、パルスは3階に移動した。
(何だろう、この展開はアーニャちゃんがいるような気がする)
源太はそう考えながら見張りの敵を倒していく。部屋を一つ一つ調べているとアナスタシア様と書かれた紙が貼られてある楽屋を見つけた。二人の女性の話声がするため、ノックする。しかし、返事がないため、ドアノブを握り、深呼吸し心拍数が下がったことを確認すると勢いよくドアを開け、クリアリングする。
「クリア。アーニャちゃん、この衣装は?」
水色の薄いドレスにピンクのマント、星をイメージしたアクセサリーのついた三銃士の被っていそうな帽子を身につけていた。
「CMの衣装です、目立ちますか?」
「ちょっと邪魔かもだけど似合うよ。それよりさっさと脱出しよう、こっちだ」
二人を連れ、脱出口に向かう途中、シックスから連絡が入る。地下駐車場から大勢の敵が迫っているらしく、そのまま確保ポイントに移動すれば人質が負傷する可能性があるらしい。源太は比較的広い備品倉庫に移動し、二人を安全な場所に隠し、敵を迎撃する。大方排除したところで、部屋の床の一部が薄いことに気がついた。そこをブリーチングチャージで発破し突破口を開く。源太は飛び降り、誰もいないことを確認すると、合図を送り移動させる。高いところから飛び降りたことがないのか、アナスタシアは足がすくむ。源太は下で彼女を受け止められるような態勢を作り、安心感を与えた。
「さぁ、来い」
勇気を出し、飛び降りた彼女をしっかり受け止め、ゆっくり降ろす。
「こちら源太。1階の状況は?」
「片付いたわ。パルスが心配だけど、人質の救出が先決、裏のトイレから脱出できるから急いで。彼は私が助ける」
源太達はトイレの窓から脱出し、確保ポイントに到着する。
「作戦完了、これより味方の支援に向かう」
「ゲン、もう大丈夫だ。パルスとIQがテロリストハントを完了させ、ポイントに移動中。よくやった」
作戦はたった10分も満たないうちに終わり、完璧な勝利を収めることが出来たのだった。
帰りの道中。揺れるヘリの中で、プロデューサーは隣に座っていたIQに声をかける。
「あ、あのぅ?」
「トイレかしら?」
「そうじゃなくって、その、真田さんってどんな人ですか?」
「ゲン?・・・見ての通り不器用で硬派だよ、あの子と出会うまで恋人がいなかったって話だし」
「あんなにカッコイイのに?」
「何というか生真面目なの。公私混同は絶対にしないし、酒もあまり飲まないし休日はデートじゃなかったら自主訓練してるし。まさに侍ってイメージよ」
その彼は恋人と隣合わせに座り、自分の膝を枕にして眠る彼女の寝顔を見ながら優しい笑みを浮かべていた。
(神崎さんも惚れるわけだ。昔の映画の主人公みたい)
この後、源太にアナスタシアとの交際を公表するか聞いたが、完全に拒否された。
アーニャの衣装はグラブルコラボのアレです