本名 マーク・R・チャンダー
科学の神童と呼ばれたSASメンバーで、電子機器を使用不可能にするジャマーの使い手
大沼くるみに懐かれており、公私混同する彼女に四苦八苦するが、ミュート本人は彼女の事を妹のように思っている。少々過保護気味
ヘリフォード基地内・食堂。非番のある日。バンディットはヒバナに相談を持ち掛けた。
「ヒバナ。どうすればいい?」
「どうすればって・・・その暗い思考を変えないことには仲良くなれないと思うんだけど?」
「卯月ちゃんが俺を怖がって逃げていくんだ。ファンの一人としてその問題は由々しきもの、直ると思う?」
「そうねぇ、任務中は必要な時以外に声を掛けなければどう?少なくとも逃げることはないよ、それと取り繕わないことね」
この二人の共通点、それは島村卯月のファンであり、彼女に対しての議論が炸裂すれば24時間喋りっぱなしになれる。故に非常に仲が良いのだ。
「そうか。俺でもできそうだ」
「っで、私の相談も乗ってくれる?野菜ってどうやったら美味しく食べられるかしら?」
「プランターとかで育てたことないの?」
「ない」
はっきり言われ、少々引き気味になる。
「流石にわかんないけど、フロストなら知ってそうだよ。彼女、バーベキュー好きだから」
「確か彼女、今日は東欧で要人警護してるよね。非番の時に聞けばいっか」
相変わらず肉料理ばかりを食べ、野菜を避けている。この光景をドクに見つかれば説教どころの問題ではなく、食事制限させるだろう。
「ヒバナも俺も、苦労してんだね・・・」
バンディットは皿に盛られたシーザーサラダを頬張り、黙々と食べ続けた。皿を空にすると、ヒバナの残した野菜も食べた。
同じ日。グラズは1人、自分の部屋兼アトリエで絵画を制作していた。バインダーで挟んである、夏の尾瀬を歩く文香の写真を見ながらキャンバスに再現していく。
(・・・水彩画にして正解だった。彼女の儚さを演出できるし、尾瀬の美しさも再現できる)
まだまだ完成にほど遠いが、着々と進んでいる。作業中、ノックする音が聞こえたため筆を止めマカロフを握る。彼にとって絵を描いているときに邪魔されることほど嫌いな時は無い。
(なんだ、何の用だ?)
ドアを開けると、フゥーズが立っていた。彼なら邪魔をしないため、マカロフをホルスターにしまう。
「作業中すまない。実はこれを」
持っていた手紙を彼に渡す。差出人に文香の名前があった。
「じゃあな」
すぐに立ち去り、グラズはペーパーナイフで封を切り、中身を見ると、瀬戸内海の島々が描かれたハガキが入っていた。裏にロシア語で故郷の風景の一つですと書いてある。
(良いものだな。今度はロシアのシベリア杉の林を描こうか)
大切にしまい、絵の制作に戻るのだった。
射撃場では源太とヨハン、カルロスが自分の得物を使って的を撃ち抜いていた。銃の種類こそ違うものの、全員真ん中に命中させていた。
「ヨハン銃替えたか?」
ヨハンのMSG90のバイポッドが少し変わっているのに気がついた。
「A2に替えたんだ、取り回しが良くなった」
「ふーん・・・女でもできたか?」
「どういう意味だ?」
ヨハンが機嫌を悪くし、手を止めた。
「噂じゃ、女の子をオトしたって話じゃねぇか。食欲しかないお前が色気を覚えやが」
後頭部すれすれに鉛玉が飛ぶ。流石のカルロスも冷や汗を流す。
「黙って撃て。それともなんだ、トリガーハッピーか?」
感情を乗せず淡々と話すヨハン。恐怖を覚えたカルロスは頭を下げた。
「すまない。度が過ぎたな」
「俺こそすまん。頭に血が昇っていた」
「まぁ・・・あまり喧嘩はするな、明日は俺達3人で任務だろ」
明日には源太をリーダーにベルギーに行くことになっている。派遣先のブリュッセルでは最近、中東系テロリスト達が各地で爆破テロを実行しており、源太達は旅番組に出演するアナスタシアと里奈、おっとり系アイドル、十時愛梨の護衛をすることになっている。
「同時にカウンターテロチームもブリュッセルに入るから、場合によっては合同で立ち向かうことになるな」
「っで、質問がある」
珍しくカルロスが手を上げた。
「十時愛梨ってどんな子だ?」
「俺も詳しくは知らんが、武内によれば恐ろしいまでに天然ボケで、お前並みに扱いが難しいらしい」
「ちょっと待った、それ人選ミスだろ。そんな子を俺が見るのか?」
彼の想像ではかなりの破壊神でそこら中に火をつけそうなイメージが浮かんでいるが、決してそうではない。
「何も一人だけじゃないだろ、俺達もいるし」
「専属Pも来訪するから、負担はあまり掛からないハズだ。護衛に集中できる」
翌日。ベルギー・ブリュッセル。集合場所の小便小僧前で待っていたのだが、撮影陣が来る気配がない。私服にサングラス姿の自分達に気づかないのか、それとも道に迷っているのかわからない。
「なぁホントに今日だったのか?なんだか心配だぜ」
「そういうなカルロス。事情があったんだろ」
すると、ヨハンのスマホが鳴る。里奈からだった。
「どうした?・・・なに、愛梨が着替えるのが遅くなる?何があった?」
「実を言うとその、あの、着替えたかと思ったら勝手に脱ぎだして」
「着ていた服を脱いだ?大丈夫か頭?」
「私は大丈夫だけど、愛梨ちゃん、暑いからって脱ぐクセがあるの!だから愛梨ちゃんのプロデューサーが必死に止めてんだけど」
思えばまだ4月、暑いという日にしてはまだ先。しかも小雨が降っており肌寒いぐらいだ。
「・・・わかった、終わったら連絡をくれ」
電話を切り、二人に状況を話した。
「なんてことだ・・・まさか露出狂と仕事だなんて、しかも護衛対象」
「でも見てみたい気が」
源太の拳骨がカルロスの頭に直撃する。
「バカ野郎、真面目に考えろ。もし裸の人間を公の場に晒してみろ、俺達クビどころか一生前向いて歩けないぞ」
「えぇ~そうは言われても俺達の責任じゃないぞ」
「ああいうタイプはな、台風のように周りを巻き込むんだ。だから俺達もとばっちりになる。対策は止めるしかない」
「・・・そうだよな」
数時間後、撮影クルーと合流し任務開始する。かに見えた。とてもスタイルの良い少女が3人の前に現れる。
「あ、護衛さんですね、十時愛梨です。暑いから脱いでいいですか?」
初対面早々脱ごうとする彼女を男3人、全力で阻止する。
「こんな危なっかしい子、よく警察沙汰にならなかったな」
「ダメだぜ愛梨、大勢のなか、しかも男の前で脱ごうとするなよ」
「芸人じゃあるまいし、その姿でそのセリフはまずい」
どうにか撮影が始まったが、3人ともヒヤヒヤしながら見守っていた。
撮影が無事終わり、引き続き得物を握ったまま周囲を警戒する。装備が本格的なため、銃を見慣れていない愛梨は戸惑った顔をする。
「この人達ってどうして銃持ってんの?」
「最近、ベルギーじゃあテロリストが潜んでいるんだって。だからその護衛で銃を持ってんだよ」
「源太さん達はすごく、頼もしいんですよアイリ。日本を救った人達ですから」
「日本を救った・・・まさかレインボーの人達?」
二人は同時に頷く。
「ちょーカッコイイんだよ、ヨハンさんって口数少なくて親切でイケメン」
「源太さんもナイトみたいに紳士で強い人です、アーニャの恋人でもあります」
さらっと真実を喋ってしまったアナスタシア。しかし、あまり驚いた顔はしておらず、むしろ尊敬の眼差しで見つめた。
「まるで物語のお姫様と王子様みたいだね!」
「でも、アーニャちゃんだけなんだよね、交際してんの。ヨハンさん、なかなか振り向いてくれなくて・・・」
「何が好きなのか知ってる?」
「食べ歩きが好きだって聞いてる。でもさ、カップ焼きそばぐらいしか作れないから」
「今度、一緒にケーキ焼こ?ヨハンさんの胃袋をキッチリ掴めば振り向いてくれるよ」
手を差し伸べる愛梨を里奈は女神を見たように瞳を輝かせる。帰国後に一緒にケーキ作りをする約束を取り付けたのだった。
「ところでヨハンさんってどの人?見た目がブラジリアンの人?」
「いや、白人のスマートな銃持ってる人だよ・・・そっちはカルロス」
せっかくの感動シーンが台無しになった瞬間だった。
少し離れた場所でカウンターテロを実行し終えたバンディット・ヒバナ・グラズ・フゥーズ・フロストは帰還準備を始めていた。
「思ったより早く済んだな。帰ったら報告書書いて絵の続きをしよう」
「ゲン達、大丈夫かな。あのカルロスがチームにいるんだぞ」
かなり心配そうな顔のバンディット。
「心配ないと思うぞ、バカだけど任務には忠実だし」
「問題は被害率を考えていないこと。おかげでシックスの胃痛が増していくばかりよ」
「ゲンとヨハンが上手くやるさ。っと、迎えの車だ」
白のワンボックスカーがやってきて、後ろのドアから入っていく。
「シックスから指令だ。フゥーズとフロストはゲン達と合流、他メンバーは帰還だって」
リーダーでもあるバンディットがメンバーに伝える。
「帰れると思ったのに」
「命令が下るまで待つしかないよ、フゥーズ」
うなだれる彼をなだめるフロスト。
「それじゃ、お先に」
車を降りた二人は車を見送ると、源太達と合流するためにチームの宿泊先に移動するのだった。
愛梨さん使いにくい・・・
合いそうなメンバーが彼女の数倍危なっかしいから