レインボーシックス346   作:MP5

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 フゥーズ

 本名:シュフラット・ケシバイエフ

 スペツナズの一員で、壁に穴を空けグレネードをばら撒くガジェット、クラスターチャージを装備する。ガジェットの残虐性は賛否両論があるものの、彼本人は至って冷静で常識人の部類
 

 同僚で後輩のカルロスが苦手だが、実は報告書が最大の天敵。本人曰く、整備の時間が取られるから


フゥーズ編  捉えどころがない人物像

 ベルギー・ブリュッセル。フロストと共に源太達に合流したフゥーズだったが、早速壁が立ちはだかる。護衛対象の十時愛梨が何処だろうが脱衣しようとするという、問題行動を起こしまくり、その度に身体を張って止めに入るの繰り返しだったのだ。さすがのフゥーズも戸惑い、頭の中を整理することが出来ないでいた。

(何故脱ぎたがる・・・撮影陣も困ってるし、プロデューサーとやらも頭抱えてるじゃないか。他のメンツの方が一見心配だが、そんな事なさそうだし・・・どうしようか)

 撮り高が非常に悪いまま夜を迎える。当の愛梨は自分のプロデューサーからロビーで昼間の問題行動に対しての説得を受けていたが、彼女は納得した顔をしながら頭の中ではわかっていなかった。見回りをしていたフゥーズがその光景を見ている。

「話は聞いた。この子はだいぶボケをかましてるそうだし、俺に任せてくれ」

「あ・・・はい」

 プロデューサーが座っていたソファにフゥーズが座る。

「えぇっと、お疲れ様です・・・なにさんでしたっけ?」

「フゥーズだ。初対面の際に挨拶したと思うが、記憶力大丈夫か?」

「これでも大学生なんですよ?勉強はできます!」

「いや、そうじゃなくてだな、アイリはどうして人の話を聞こうとしないんだ?」

 彼女の顔に笑顔が消える。そして、悲し気な顔をした。

「私、昔っからこうなんです。誰かが真剣に話をしても、どうすればいいのかわからないことがあるんです・・・全力でやってるのに」

「そうだったか。取り合えず、出来ることからやってみるに限る。まずは公の場で脱ごうとしてはダメだ、アイドルじゃなくて、ただの変態になる。いいのか、ブタ箱で送る人生で?」

「豚さんと一緒に暮らすんですか?」

 フゥーズはこの時点で気がついた。もう少し噛み砕いて教えないとまずいと。

「檻は檻でも刑務所だ。怖そうな人達と一緒に暮らすなんて、いやだろ?」

「・・・」

 ようやく話したいことが伝わった。

「君のプロデューサーや他の友達も君を心配してる。だから人に迷惑を掛けるかもしれないと思ったら、行動する前に考えてみるんだ、少なくとも脱ごうって選択肢はない」

「・・・フゥーズさんの言いたいことがわかりました。でも、忘れそうになったらどうしたらいいのでしょう?」

「メモを書くなり、小さいながらも目標を立てるなりして頭空っぽの時間を潰せ。難しいなら俺の顔を思い出せ」

 愛梨は納得した顔で頷いた。とりあえず話を切り上げ、話題を変える。

 

 

 

 

 

「そうだ、君から話はないか?例えば・・・俺達のメンツで気になることとか」

「えぇっと・・・あ、アーニャちゃんの彼氏さんが来てるんですよね、どんな人なんですか?」

「そうだな・・・戦いの天才でストイックな奴だ。射撃から格闘までなんでもこなすぞ」

「格闘家みたいな人なんですね!?」

「あ、あぁ。俺達は独身ばっかりだから、珍しいんだよ恋人がいるってパターン」

 ちょっとした身内ネタを聞かせ、彼女とコミュニケーションを図る。

「フゥーズさんって、思ったより良い人なんですね?なんかこう、面倒見のいいおじさんって感じです」

 それに関してはかなり見当違いだ。以前の任務ではクラスターチャージで人質ごと爆殺しかけたこともあり、カルロスも吹き飛ばしそうになったこともあった。しかもそのことに関して謝ったことがない。

「初対面でそう思うのは勝手だ、だが、俺はそこまで良い人間じゃない。明日も撮影だろ、子供は寝る時間だ。おやすみアイリ」

 席を立ち、見回りに戻るフゥーズ。彼女がこのブリュッセルで教訓を得たらいいなと思いながらAK12を握り直した。彼の背中を見た愛梨は後悔の念を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。見違えるように常識的な愛梨を見た撮影陣はNGを言うことなく順調にいっていた。護衛メンバーも負担が大きく軽減され、昨日より疲れる量が大きく減っていた。

「ねぇフゥーズ、何をしたの?遠くから見てたけど」

「ちょっとしたマジックさ、気にするな」

「あ、そうそう、ゲストが来るんだって日本から」

「また厄介が増えそうなんだけど・・・」

 小便小僧前でゲスト紹介に入る。フゥーズを知っているアイドル、神谷奈緒だった。

「あ・・・」

「ゲ、爆弾おじさんだ」

 一旦撮影を中断し、一息つく。奈緒はアナスタシアの背後に隠れながら話をする。

「もしかして、怒ってる?」

「何が?」

「この前、助けてもらったのに蹴り食らわしたの」

「そんな事あったな。たかが少女の蹴りで怒るほど鬼じゃないし、爆弾おじさんって呼ばれても怒るわけないじゃないか」

「う・・・だからってそのクラスターチャージだけは見せないでくれ」

 よっぽどトラウマになってるようだ。

「そのクラスターチャージってやつ、何ができるんですか?」

「あああ愛梨、あ、あれだけは、聞かない方がいいし、知らなくて良いからな!」

 真っ青になりながら引き留める奈緒。

「え、どうして?」

「とにかく、見ても忘れた方がいい、絶対に忘れた方が良いからな!」

 撮影が始まり、特に問題なく終えることができた。

 

 

 

 移動中のロケバス内でもヘルメットに防塵ゴーグルを付け、表情の読めないフゥーズ。

(この人っていつもこうかな?)

 隣に座っている愛梨も難しい顔をする。普段、おっとりしている彼女だが、彼のように常に無表情な人物に出会った試しがないため、どのように接していいのかわからないでいた。

「奈緒ちゃんこの人、いっつもこうなの?」

「初めて会った時からわからないよ。マスク外した顔、見たことないし」

 当の本人は任務に集中しているだけであり、決して何も考えていないわけではない。

(こっちを見てるが、奈緒に何を聞いてるんだ?支障が無ければそれでよし)

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰国の日。ブリュッセル空港から成田に帰る便に乗った。この時すでに彼らとは別れており、あとは飛び立つだけだった。

「また行けたらいいね。街のお菓子屋さん、どこも美味しくてお土産たくさん買っちゃった!」

「マジウマだったよね~。ヨハンさんなんて、チョコレート隠れた食べてたもん」

「とても、いいところでした。ロケ以外でも行ってみたいです」

「遠いからしょっちゅう行けないけど、もう一度行ってみたいよな」

 機内は特に騒ぎがなく、順調に飛び立っていった。別の場所にいる源太達はハイジャックするであろう、テロリスト達の動きにいち早く気づき、連携を取り制圧戦に勝利し、帰国の準備をしていた。

「フゥーズ、ただ単に窓の景色を見てたんじゃなかったんだな」

「営業してない屋台が見えたんだ。昼間なのに仕事しないのは不自然だろ?」

「確かに」

 亡骸を死体袋に入れ、輸送機の荷物室に詰め込む。

「さぁ帰るか。この後マトリョーシカの整備したいし」

「アンタ・・・普段、報告書書かないおかげで私達にも負担があるのよ。いじる前に書きなさいよ」

「うーむ。めんどくさいが、そうするか」

「絶対書く気ないでしょ?そう言ってまた、俺っちに書かせるんでしょ?」

「黙れカルロス。お前だって、テキトーにしか書かないだろ」

 口論しながら輸送機に乗り、基地に着き、帰還報告をするまで口喧嘩が続いたのだった。




 ちょっと人間らしいフゥーズでした
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