元々陸上部隊と水上部隊に別れていたが、現在はひとつにまとめられている
イギリス・ヘリフォード。香港の特殊部隊SDU出身のオペレーター、リージョンは源太を自分の部屋に呼び出した。
「参上しました」
「ゲン、すまなかったな、任務帰りなのに」
「俺は約束を守っただけです」
「そ、そうか・・・ところでだ、ひとつ聞きたいんだ。スター・フォーマルハウト号はデカいだろ、アレを見てどう思った?」
「想像以上に広くて、遮へい物が少なかったため待ち伏せに気をつかう場面が多かったです」
「うーんそうじゃなくって、何日かければ解体できるかって考えたことはないか?」
「は?」
この男、SDU入隊前まで船の解体を生業にしていたため、船を前にするとつい、解体期間を計算してしまうクセがある。彼自身が船好きだと言うのもあるが。
「逆に言えば外見だけ見て内部構造も想像できるってことだ。ゲンは若いし、他の職をしたことないんだっけか?」
「短大時代に深夜の警備ぐらいは・・・見ただけで構造わかるって嘘くさいんですが?」
「そうか?俺はわかるけどな、当時の同僚からは不思議がられてたけど」
アンタは特殊過ぎる。そう思う源太。気まずい空気になったため、話題を替える。
「恋人と豪華客船で遊覧ってのもアリだと思うぞ、北大西洋はどうだ?」
「氷山にぶつかって大惨事ってパターンになりそうなんでパス」
返す言葉のないリージョンだった。途端、源太のスマホが鳴り響く。
「こちら源太。現在、リージョンの部屋で雑談を・・・はい、すぐに参ります」
源太は一緒に来いとハンドサインを送る。
数日後。源太・リージョン・カプカン・ジャッカル。そして、リージョンと同じSDU出身の女性オペレーター、イングがフランス・カレーに派遣された。目的は港に停泊している豪華客船を占拠したテロリストをハントすること。解放された船長によれば爆弾を仕掛けられたらしく、解体も可能なら遂行するよう命令された。
「ジャッカル、今日で何日寝てないの?」
「3ヶ月だ。寝ても3分」
「・・・ラーメンかアンタは。まぁいいわ、私と二人で船員入り口に潜入、他メンバーは空からよ」
「俺達は陽動ってわけだな、行くぞ」
タラップで船内に入り、音を立てずにクリアリングしていくと、テロリスト達の会話がドア越しに聞こえてくる。
「見つけたか?」
「金髪の女がどっかに隠れてるってボスが言ってたが、ホントかよ?」
「さっきまでボスの近くにいたハズなんだけど別室で着替えてたらいなくなってたって話だぜ?」
イングはコッソリドアを開け、普通に使うこともクラスターチャージのように壁に貼り付けることも可能な球体スタングレネード、カンデラを転がした。すぐに起爆し、敵の視界を奪うと得意の格闘術で一掃する。
「フゥ・・・あっけないわね」
「ひとりはちゃんと起こしてるよな?」
「あ・・・忘れてた」
敵は完全に伸びており、話を聞くことすらできない。仕方なく手錠で拘束し、ホールを目指すことにした。
同時刻。ヘリで船上に降り立った源太・カプカン・リージョンは思い切って操舵室から攻撃し制圧していた。
「クリア、思ったより敵がいなかったな」
「この船は地下を含めて4階ある。船を動かさなかったことを考えると航海クルーごと解放して海に強い人間がいなかった。仕方なくここで籠城し、時間稼ぎをしてたんだ」
「しかし、籠城したにしてもここから脱出するにはどうするんだ?」
「そのための爆弾だ、それを囮にして武器を捨て裸になって泳いで逃げる。シンプルだが成功すれば高確率で逃げおおせる」
「なるほど。言ってしまえば袋のネズミで袋を齧って活路を開こうと。この袋が鋼製だって教えましょう」
途端、ドアが開かれ金髪の少女が笑顔で銃を撃つ真似事しながら現れた。
「動くなー。な~んて、うっそ~」
この緊迫した空気に相応しくない登場に白い目で少女を見る。
「こいつ、頭大丈夫か?スモークよりヤバいかもしれんぞ」
「アレですよ、緊急事態に頭がおかしくなったパターン」
「かわいそうに若いのにPTSDになって・・・」
「ちょっとー乗ってもいいじゃ~ん」
「・・・仕方ない、俺が相手してやるか」
カプカンは渋い顔をしながら少女に近寄る。
「名前は、なんだ?」
「宮本フレデリカ。フレちゃんって呼んで?」
「いや、普通に呼ぶ。お前は何者で、ここで何をしていた?」
「ぷぅ~・・・まぁいっか。346プロのアイドルで、ママの友達から船上パーティーの招待券もらったからプロデューサーと一緒に来てたんだ。なんかわかんない状態になったけどね」
「能天気だな。根っからか?」
「そだよー」
頭を思わず掻いてしまう。
「まさかと思うが、映画の撮影だと思ってるんじゃないだろうな?」
「え?違うの?」
「・・・良いこと教えてやる、これは実戦だ。そうじゃなかったら俺達はここにはいない」
「そっかぁ、どーりで倒れた人が動かないんだ。じゃあ特殊部隊の仕事が近くで見られるってことだ!」
「(正真正銘のバカだった。相手にしたくない)リージョン、コイツを脱出地点まで頼む。先を急ぐぞゲン」
表情には出さないが、非常に頭にキていたのがわかる。リージョンは彼女の手を取り、脱出地点まで護衛することにした。
「フレちゃん。俺から離れないでね」
「はーい」
Q-929ハンドガンを手に身を低くしながらクリアリングする。想像以上に静かなのが不自然なぐらいだ。
「人が多く倒れてるね」
「俺達が倒したテロリスト達だよ。武装して、攻撃に備えてるだろ?」
「コスプレじゃないんだよね?これは?」
彼女が手にしようとしていたのは防弾ベストに括り付けてあったC4とスイッチだった。焦ったリージョンは無理矢理引き剥がす。
「何するの!?」
「もし俺がほっといたら、爆発して姿が消える」
「すごーい。忍術みたい!」
「いや、そういう意味じゃなくて、爆散して死んじゃうよってこと」
彼女が大声だったためか、別の部屋から敵が現れ二人に襲い掛かる。とっさの判断で彼女の手を引き、救命ボートのあるデッキまで走る。フレデリカは飛んでくる銃弾とグレネードで、ようやく自分の置かれた状態に気がついたのだった。
「おい、さっきの元気はどうした?ようやく気がついたのかい?」
縦に首を振り、ベソをかいている。
「心配するな、俺が守ってやる」
彼は走りながら筒状のGUと呼ばれる特殊地雷を置き、蓋が外れると透明になった。敵が気づかず勢いよく踏むと絶叫しながら崩れ落ち、立ち上がって再び追うが、毒が混じっているためじわじわと弱っていくのがわかる。
止まって足の裏を見ると鋭利なまきびしがあり、それを抜く。その時すでに二人はボートに乗り、脱出していた。
「な、言ったろ。助けるって」
「ごめんねおじさん。からかったりして・・・」
「いいんだ、民間人を救うのが俺達の仕事。さっさと帰って休むんだぞ」
無事プロデューサーと合流を果たし、彼に礼を言おうとしたが振り返ったらいなくなっていた。
(おじさんの名前・・・なんだったっけ、ジョニーだっけ・・・また会おうね、おじさん)
名前を勝手つけられたことを、彼は知らなかったのであった。
任務を終えたチームはリージョンと合流し、ヘリでヘリフォードに帰還する。
「ふぅ・・・完了ね・・・あれ、カプカンどしたの?」
「初めて、頭の悪い人間ってものに出会った。まるで何も考えていない、本能のまま生きている生き物だ」
「リージョンも疲れてるし相当ね」
「悪い子じゃなかったんだけど、なんだか疲れた・・・はぁ、それならまだ地雷撤去の方が気が楽だ」
ぐったりした様子の二人を見て、イングは水を差しだした。
「良かったじゃない、もう会わない可能性の方が大きいんだからさ。帰還報告して、じっくり休みましょ?」
リージョンは知らなかった、違う任務でまた彼女に再会することを。そして、今日以上に苦労することを。
次回、レインボーきっての問題児が登場
某兄弟動画を待ち切れませんでした