レインボーシックス346   作:MP5

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 第707特殊任務大隊とは、韓国の特殊部隊で、1982年ソウルオリンピック開催の際、設立された。
 デルタフォースをはじめとする多くの特殊部隊と交流があり、共同訓練を行っている


ヴィジル編  寡黙な笑み

 韓国・ソウル。地味な服装の男性、チョルギョン・ファは一人でチゲ鍋の店に入り、一人で2人前を食べようとしていた。

(・・・今日もソウルは寒い・・・。雪が降ってる)

 店の窓から見える白い雪が冬だということを語る。周りは家族や会社の同僚、恋人達が一緒に仲良く食べている。その中で一人で鍋をつつくのは非常に勇気がいることだったが、幼くして天涯孤独の彼にとっては日常でしかなかった。

(何故、大勢で食べるんだ?わからない)

 グツグツと煮えたぎる鍋の蓋を開け、小皿に具を取る。赤々と煮える鍋が存在感を出していた。

(・・・もしかして俺、食べに行ける仲間がいないのか?)

 そう脳裏によぎり、普段通り黙々と鍋料理を楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。昨日の孤独感を払拭するため、ある男の元へ向かう。彼の数少ない友人、源太に相談することにした。

「どうしたんですヴィジル?相変わらず寡黙で、またトッケビにスマホ壊されたんですか?」

 チョルギョンのコードネームはヴィジルと呼ばれており、その理由は彼の作戦服の背中にあるエレクトリニック・レンダリング・クロークと呼ばれる、カメラの映像から自分だけが消えるガジェットを持っていることからその名前が付けられた。

「・・・いや、その・・・鍋は一人で食えるか?」

「は?1人前ならともかく、大勢で食べる量ならそれ合った人数で食べますよ」

「そうなのか」

「ソウルの休暇で何かありました?」

「・・・何故か寂しさを覚えたんだ・・・みんな楽しそうなのに、俺だけ一人ぼっち」

 次第に彼の瞳に寂しさがにじみ出てきた。

「アーアーわかりましたよ、要するに一緒に鍋食べに行こって話ですね?」

「うん」

「でしたら、もう数名いりますね」

「え?だ、だが」

「いいですか、鍋料理ってのは一人よりも大勢で食べる方が美味いんです、それを通じて仲間同士の絆を深めることだってできる。デメリットなんてないんです」

「・・・他に誰誘う?」

「そうですね、日本でちゃんこ鍋の美味い店知ってんですが、そこで食べましょう。俺が勝手に決めてもいいですね?」

「構わない。だけど、トッケビとエコーとエラはやめてくれ。うるさいから」

「わかりましたよ。俺も最初から彼らを誘うつもりなんてなかったし」

「ありがと。・・・あ、そうだ、今から作戦だってシックスから伝言授かってんの忘れてた」

「仕事終わりの鍋もオツですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 日本・大阪。ブリケンさんとして慕われている謎の像がある電波塔兼展望台の通風閣にテロリスト達が現れ、占拠されてしまった。テロリスト達は数名の少女とブリケン像を人質に取り、要求を飲まなければブリケン像を破壊し、一人ずつ始末していくと声明を発表した。事態を重く見た大阪府警は別の事件でSATが動けないため、レインボーにテロリストハントを依頼したのだ。ジャッカルをリーダーに、源太、ヴィジル、フロスト、レイモンドが派遣された。

「表では多くの野次馬とメディアがいて邪魔だ。レイモンドとフロストは裏口から入り、他3人は上から入る。後は自由だ、存分に実力を発揮して始末しろ」

「「「了解!」」」

「おいヴィジル、お前がポイントマンだ。任せたぜ」

「・・・了解」

 マスクを被り、得物のK1A SMGを手に取り降下する。足音に注意しながら堂々とカメラの映るように歩く。彼の足元をドローンが通り、ドアの隙間を通って行くのが見える。

(・・・味方だな。ジャッカル達も後で来る)

 散策途中でフロストから連絡が入る。

「フロストだ。たった今、監視室に入ってカメラをいじらせてもらった。お前のガジェットをオフにしてもかまわんぞ」

「了解した」

 5階の敵を始末後、エレクトリニック・レンダリング・クロークをオフにし、2人と合流する。

「この階にはいない。恐らく、下だろう」

「ありうるとしては3階、だな」

「エレベーターを使えば行けますね」

 3階の特別展示室に移動し、ドローンを再び動かす。ドアの下をくぐり中を観察する。武装した男達と展示物案内役の男性の人質がいるのがわかる。ジャッカルは源太にブリーフィングチャージをつけるよう指示し、ドアを発破。一気に攻め入りフロアを制圧してみせた。

「クリア」

「オールクリア。ゲン、人質の回収。ヴィジル、俺と一緒に護衛だ」

「・・・了解した」

 人質を回収し敵殲滅を成功させた。ヴィジルと源太は日本に残って人質を家族のもとに送り届け、その足でちょっとした打ち上げの準備に向かい、他メンバーはヘリフォードへと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本・京都。普段着に着替え、源太がおすすめするちゃんこ鍋の店に着いた。ヴィジルが嫌がらない、落ち着いた雰囲気の店内。通された部屋で待っていたのはアナスタシアとあやめ。そして、黒髪の似合う気品溢れる少女がいた。

「紹介する。俺の仲間のヴィジルだ」

「・・・よろしく」

「はじめまして、浜口あやめです」

「アナスタシアです、よろしくお願いしますね?」

「・・・ところで、彼女は?呼んだ覚えないけど」

 源太は見知らぬ少女に声をかける。

「私は速水奏。アーニャちゃんと同じ、346プロ所属よ」

「あ、あぁ」

 源太も知らないということは、アナスタシアが呼んだのだろう。そう結論づける。

「真田さん、アーニャちゃんの話でしか知らなかったけど、想像以上の美丈夫って感じね」

「ええっと、どう反応すれば?」

 ヴィジルに目配せするが、彼は知らんぷりしながら、煮えたぎる具だくさんの鍋を見つめている。

「・・・わかったからそれ以上の話題は無しだ。もう出来る頃だ」

 それぞれで取り、具材の旨味を味わう。相変わらず表情を変えないヴィジルだったが、ここへきてようやく口を開く。

「軍にいた頃、こうやって食べてた奴が多かったな。とても賑やかに、笑みを見せて。でも当時の俺にはわからなかった。そういった食事の意味がさっぱりな」

 一斉に動いていた箸が止まる。

「だが、レインボーに入隊した今ならわかる気がする、黙々と食うより美味い」

「あなたって、意外にナイーブなのね。鉄皮みたいな顔して、本当は誰かと一緒にいたいって思ってる」

「お嬢さん、勘違いしてもらったら困るな。俺は決してナイーブな部類じゃない、素直に気持ちを呟いただけだ。それに、レインボーにナイーブな奴はいない」

「それもそうね」

 二人から流れる大人な空気に取り残されたあやめ。

(私だけかな、こういった空気が苦手なの)

 隣に座ってるカップル二人は別の目線で見ていた。

「とても、似合ってますね?」

「歳が15離れてなけりゃ、くっついてもいいんじゃね?」

「そうなんですか!?」

「まさか、俺と同い年だと思ったの?」

 アナスタシアは頷くと、顔を真っ赤にする。

「そっか。じゃあヴィジルは実年齢より若そうだってことさ、そう恥ずかしがることじゃないよ。具材もまだあるし、食べよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 鍋を食べ終え、少女3人をホテルへ送った後、関西国際空港までバンを運転する源太。助手席のヴィジルが珍しいことを呟いた。

「今日は楽しかったぞ。久しぶりに大笑いした」

「え、いつ笑ったんです?」

「聞こえなかったのか?奏と会話してる時だ」

「あ、あれが大爆笑!?・・・わからなかった」

「仕方あるまい。しょっちゅう不気味な笑みを浮かべるトッケビとは違う」

「あ、アイツと比べるのはちょっと・・・」

「ふん。明日はモロッコで訓練だ、せいぜい飛行機内で休め」

「子供じゃないんですがね」

 後日、訓練に精を出し好成績をマークする二人の姿があったのは、言う間でもない。




 正直、707特殊任務大隊の装備が充実してて驚いた・・・
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