本名:ゾフィア・ボサック
GROM出身のオペレーターでエラの姉。妹と違って礼儀正しくあがり症。1児のママでもあり、妹と仲直りがしたいが進展していない。
イギリス・ヘリフォード。今日もゾフィア・エラ姉妹で喧嘩していた。なんでも、父親のことについてらしい。
「姉やんさぁ。オトンの命日に花送るとか考えたことある?何もしないって聞いて驚いたと」
「エラだって、オトンに迷惑ばかり掛けて、今さら親孝行のつもりか?態度のデカさが心配で、オカンは毎日ヒヤヒヤしとると」
もはや日常と化した姉妹喧嘩に誰も止めに入ることはしない。
「オカンに自分の娘預けて心配じゃないと思うぜよ。まだ乳飲み子だし見も知らない男が父親たい、オカンはハラハラしちょるとよ」
「あの人とあの子は大丈夫、むしろオカンはエラを気に掛けとる。直接電話があったぜよ」
不毛な喧嘩がまだ続くと思いきや、そこにドミンゴが入って来て休戦になる。
「お前達、さっさと任務へ行け。それぞれのメンバーが退屈そうに待ってるぞ」
日本・東京。ゾフィアの任務、それは顔を隠した状態でテレビに出ること。番組内容は特定の職業の知られざる一面を紹介するもので、ゾフィアの他に庭師やプログラマー、建築作業員が招集されている。
(あまり慣れてないんだけど、大丈夫かしら?)
舞台裏で心配そうに見ている伊達眼鏡を掛けたオペレーター、グレース・ナム。
「大丈夫かなゾフィアちゃん。ガッチガチだし落ち着きないし」
「お前がテレビに出て滅茶苦茶にされるよりはマシだトッケビ」
「サッチャーのおじちゃんよりはマシだと思うよ」
グレースのコードネームはトッケビと呼ばれている。彼女の非常識な行動からその名前が付けられており、問題児と呼ばれているエラにも勝るとも劣らない問題性を持っている。彼女のブレーキ役にサッチャーも派遣されているのだ。
「お前のことだ、どうせハッキングして実力を見せるんだろ?ここはテレビ局、ふざけたことをしたらどうなるか考えろ。シックスの胃腸が爆発するかもしれん」
「えーそんなに毒性強い?」
「お前のせいで何台スマホがダメになったと思う?被害総額50万ドル、訓練の度に壊されたら財布が寒くなるんだよ」
「いいじゃんテロリストのスマホダメにしても」
「俺は訓練って言ったんだ。壊されまくってる五郎の気持ちにもなってみろ、仲間の懐を凍えされる気か?」
「ぷーっだ、おじちゃんのスマホにも入ってやる」
タブレット端末を取り出し、彼女自作のウイルス、ロジックボムをサッチャーのスマホに転送する。しかし、完全にブロックされ逆に自分のタブレットが感染する。
「え?うそ・・・なんで?」
「エコーの対策プログラムをヒントに作ったんだ。まぁ頭が冷えたからいいんじゃないか?」
「・・・チェッ、やられた」
収録が始まると、ゾフィアの頭の中が真っ白になる。他の職業の共演者が答えるなか、何を聞かれるかわからないためだ。
「ゾフィアさん、ゾフィアさん大丈夫です?」
「あ、はい!?」
司会者が声を掛け、我に戻る。
「質問聞いてましたか?このお仕事されて怖いと思ったことはないかって質問ですが」
「え、えぇ。もちろんあります。自分達にも家族がありますし、前の職でも殉職した方もいます。ですが、怖がってばっかりじゃとても仕事にはなりません。人質の方も同じですから、1秒でも短い時間で救出します」
「やっぱり怖いですよね、武装したテロリストを相手に戦うの。他に聞いてみたい方いますか?」
ひとまず乗り越え、安堵する。別の席に座ってるスタジャンを着た赤毛の少女、村上巴が手を挙げた。
「どんな人でもなれるんか、特殊部隊って」
「え?・・・いや、その」
歯切れの悪さに司会者が一旦、CMに入ることを告げ、撮影が中断される。
「あのぅ、本当に大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」
「平気・・・大丈夫です」
「お連れの方に代わってもらうってのもアリですよ?ほら、すっごく心配そう」
「あの眼鏡だけには代わりたくない・・・だから続けます」
「倒れないようにしてくださいね。看板もありますから」
再会され、先ほどの巴の質問に答える。その答えに残念がった顔を見てゾフィアも暗い顔になる。
「エリートのエリートが試験を受けて・・・なんかハブられた気分じゃ」
「でも性格よりも能力が重視されるから頑張れば道が開けるの。まぁ不向きはあるけど」
その後、なんとか撮影が終わり解放される。ゾフィアは巴の楽屋に足を運んだ。
「なんじゃゾフィアさん、ウチが心配なんか?」
「ごめんなさい。期待してた答えを言えなくて」
「しかしアンタはどこの国の人間?連れを見た感じ異国だとしか言えんで」
「そうよ。みんな国籍が違うメンバー、私がどこに属してるかわかるわね」
「・・・まさか、あのレインボーか?」
ゾフィアは頷く。
「そっか。放送されたらテロリストにバレるもんな事情が」
「それよりも、巴ちゃんにも家族がいるの。心配してないかしら?」
「おるで。若いのもいるし、歳食ったのもいる」
「え?」
巴は耳打ちで彼女に教える。
「・・・ここだけの話にしておくわ。お父さん大事にね」
「ゾフィアさんの親父さんも見とるんじゃないか?」
「父はいないの。ポーランドに帰ってきたら自殺してた。その後娘が産まれたの、妹とギクシャクしてるけど子供のために仲直りする予定よ」
「姉妹仲良くっか。応援しとるで」
帰国後。巴に勇気づけられたのか、エラに積極的に話しかける彼女の姿があった。しかし、エラは姉の積極的な姿に恐怖を覚え、出来る限り距離を離そうとする。
「姉やんヤバいキノコ食ったか?なんか積極的すぎて怖いぜよ!」
「あの子に悪い見本見せるのは嫌だ、だから仲直りしてほしいと!」
「関係なか、とにかくヤバそうだし逃げるぜよ!」
部屋に逃げ込んだエラを追うため、自作したダブルバレルランチャー、KS79ライフラインを手に取りインパクトグレネードとコンカッショングレネードを装填する。
「逃げる必要なか、追いかけまわすぜよ」
撃とうしたそのとき、背後から肩を置かれる。振り向くとドミンゴがいた。
「任務ではない時に使うもんじゃないと思うが?」
「あ、はい・・・」
「仲直りしたいなら、穏便に済ませろ。当人同士じゃ喧嘩になるから誰か間に立ってもらえ、わかったな」
その後、姉妹仲が修復したか否かは本人達のみぞ知る。
トッケビ
本名:グレース・ナム
707SMB出身の女性オペレーター。物怖じしない性格で、悪目立ちをするのが大好きなレインボーきっての問題児。同じ韓国のヴィジルとは不仲である。