レインボーでもCBRN対策部隊に専門家二人が所属しており、ニューメキシコのアウトブレイクでは大活躍してみせた
自室の鏡で顔を見るロシア・スペツナズの女性オペレーター、レラ・メリニコヴァは生きていることに感謝した。彼女は9歳のとき、手足の筋肉と感覚が徐々に失われていく難病にかかっており、その日から恐怖を押し隠す日々を過ごしている。そのことは誰にも明かしておらず、仲が良いカプカンとタチャンカにすら明かしていない。
「ねぇフィンカ、入っていい?」
フィンカはレラのコードネーム。かつてカプカンとCQBの訓練をした際、彼のナイフが額から頬にかけて大きな切り傷ができたことから付けられた。
「どうぞ。って、ヒバナどうしたの?」
「私のお母さん、知ってるよね?」
「あの肝っ玉を体現したような人だよね、なにかあった?」
「ソウル旅行に行ってて、ショッピングモールにさ、テロリストが入って来て占拠した事件知ってる?」
「ヒバナとリオンが派遣されたんだっけ。・・・まさか、ヒバナ母が人質として捕まって殺された?」
「人質だったのは合ってるけど死んでないわよ。むしろお母さん相手に敵が降伏したのよ、驚いちゃった。お父さんとの出会いから始まる2時間ドラマサイズの話とか、若い頃は美人だった話とか延々と聞かされてたみたいで突入した時にはノイローゼ気味だったわ・・・」
「・・・もっと凄かったのね」
「そっからが大変よ。リオン見るなり勝手に泣き出して手を握って娘をよろしくねとか、ユミコちゃん孫よろしくねっとかもう、勘違い伝えるのに半日かかったの。あー誰かに愚痴んないと辛いよ・・・」
「苦労したんだね、アンタ」
「お父さんは呑気だしお母さんは強烈だし・・・生きてんのが不思議」
「まぁその、なに、無事でよかったじゃん。過去に人質が殺されてて失敗になったこともあったし、それに比べたらさ」
「なんだろう、年下なのにオカンの貫禄がある・・・。オカンって呼んでいい?」
「良いわけないでしょ?って、アンタ酒臭いよ、何杯飲んだの!」
「ウイスキー一舐め」
「・・・下戸なんだから飲まないの、医務室運ぶから掴まって」
ヒバナは医務室に運ばれ、ベッドに寝転ぶと大いびきで爆睡した。その日、ドクの眉間から縦皺が消えることはなかったという。
スウェーデン・ストックホルム。大学にて化学テロが発生しレインボーが派遣される。ヘリの操縦を担当するイエーガーは作戦地域に入る前に突入メンバーに確認する。
「かのホワイトマスクの置き土産って話だ、防護服とガスマスクは付けたか?」
「おうよ、バッチリだぜイエーガー」
「ってカルロスお前、マスクに隙間があるじゃねーか!」
「あ、いっけね!」
源太に注意され大急ぎで付け直す。
「おいおい冗談抜きで頼むぞ。ニューメキシコのアレほどじゃないとはいえ危険だ、生きて帰ってこい、絶対にな」
「降下準備、ゴーゴーゴー!」
源太・カルロス・リオンの3人によるテロリストハント及び生存者の救出任務が始まった。
「カルロス、俺と来てくれ。ゲンは遊撃だ」
勇ましく指示するリオンことオリヴィエ・フラマンはGIGN出身のCBRN対策部隊のオペレーター。かつての任務で見せた雄々しい姿からコードネームの由来になっている。彼のガジェットはEE-ONE-Dという特殊なドローンを用い、動いている全ての敵の位置を短時間ではあるがハイライトしてくれる。
「よし、敵は総勢25人。片づけるぞ」
大容量マガジンを取り付けたクリスベクターを得物に建物内に入る。カルロスも彼に続き、共に敵を仕留めていく。数十分後、敵の駆逐に成功し、装置を止めることもできた。除染部隊が到着し、黄色の霧は晴れていった。
任務を終え、自身の防護服を除染してもらう。その最中、リオンは考え事をしていた。フランスで元気に過ごしている恋人と幼い息子の事だ。
(あぁ大丈夫だろうか。俺がもっとしっかり者だったらクレアもアレクシスも苦労しないでよかったのに・・・お土産買って帰ろうかな)
除染を終えると外ではイエーガーが待っていた。
「お疲れさん。シックスからの伝言で、明日はオフにするから家族と会って来いってさ」
「え?」
「ここ2週間休みなしだろ、だから家族と会ってアレクシス君を笑わせてやれ。親父ってのは笑われてなんぼって奴だよ」
「イエーガー・・・今すぐトゥルーズに帰って家族と会ってくる」
「その前に帰還報告をしてからだ。早まるなよ」
輸送ヘリ内ではいつもより賑やかになっている。他のメンバーのオフだからか、それとも一段落したからかはわからない。
(リオンとカルロスは性格が違うから喧嘩が絶えなかったが、今じゃ落ち着いてよかった。この調子でアッシュとミラ、ボサック姉妹も仲直りしてほしいものだ・・・無理か)
喧嘩の無い基地内を想像するイエーガーだったが、現実的に考えて難しいと判断し、小さく見えるストックホルムの街をあとにした。
翌日。イエーガーはオフでヘリフォードの街を歩いていると日本の撮影クルーがロケをしていた。進行役のカエルの着ぐるみを着た幼女と亜麻色のショートカットの少女が手を繋いで探索している。
(な、なんかシュールだな・・・街の人々が注目してるじゃないか)
目が離せないのか、勝手に足が彼女達と一緒の場所を目指してしまう。様々な場所を周り、順調かと思われたロケだったが、ヘリを前に突然困惑した状態になった。困っている幼女の目を見た彼は父性をくすぐられる。
「(プロペラが回っていないしパイロットもいない。なんだか理由がありそうだ)ちょっといいか?」
「え、な、なんでしょう?」
「困った様子だったから話掛けたんだが」
「実は、パイロットの方が急病で倒れたんです。最後に街を上から見ようってことになっていたのですが」
「・・・他のパイロットもいない様子だな。よし、俺が操縦しよう。ギャラは手配した会社に渡しとけ」
「え!?で、出来るんですか?!」
「GSG-9にいた頃はインド洋で海賊対策の任務で乗り回してたからな。だから操縦なんて手足を動かすようなもんさ」
撮影クルーがチャーターヘリ会社に話をつけると、イエーガーは手慣れた様子でヘリのエンジンを点ける。
「さぁ乗りな。おじさんが街を案内しよう」
イエーガーのおかげで撮影は無事に終え、撮れ高も非常に良いものになった。この出来事をきっかけに、着ぐるみ幼女こと市原仁奈に懐かれたのは言うまでもない。
イエーガーさん、仁奈ちゃんの新しいパパ候補?に