特殊部隊では必須装備だ
源太は大佐の娘であるアナスタシアとデートもどきをしていた。何故そんなことしていたかと言うと、大佐が謹慎処分を利用し娘にお見合い写真を見せ、彼女が会ってみたい隊員と言ったのが源太だったからだ。この日の彼はサングラスにフィッシングウェアと場違いのカジュアルな服装をしていた。
「・・・」
「イズヴィニーチェ.ごめんなさい、パパが暴れてしまって・・・」
「君は悪くない、大佐が悪いんだ」
「でも、源太さんに迷惑かけました」
「気にしなくても・・・」
気まずいので話を変える。
「ところで大佐から聴いたが何故俺を選んだ?」
「素敵な声の方だと思いました」
「声?ヨハンやジャンには会ったことないだろうから君の言いたいことわかるが、レイモンドも悪くないぞ?」
「キツイ印象ありました。コウメが言う程イイ人じゃないと」
「そ、そっか(ご愁傷様レイモンド、ゴメンな小梅)」
この様子をスコープ越しに観察するヨハン。友人のデートもどきの様子を見て複雑な感情を抱く。
「大丈夫かゲン?大佐が無茶ぶりするからこうなるんだ」
「アーニャちゃん幸せそう、私にも見せたことないわ」
実は新田美波と一緒に来ているのだが、当時バラクバラをつけていたにも関わらずヨハンの特徴を覚えていたことに驚いたものの、彼女曰く街中で釣竿ケース持ち歩くドイツ人はいないらしい。
「ヨハンさん過保護なのね」
「君もね」
意外に相性が良い二人。源太とアナスタシアが動いたのを確認すると、彼らも同時に動く。
「そういえばクローネについて知ってることを教えてくれるか?」
「私の知ってることはあまりないけど、腹痛で倒れた子がいたわ。鷺沢文香って子なんだけど今は元気にアイドルやってるわ」
「なるほどな、現場をあまり見に来ない管理職か。大佐や先輩方とは大違いだ」
「でも決して冷酷じゃなかったわ、専務さんもあれから丸くなったし良い空気だったわ。一人除いてね」
「文香のことか?」
「いいえ、ちひろさんって事務員よ。専務のやり方に疑問を抱いていた一人だから」
この名前を聞いて少し険しくなる。以前、源太からの捜査情報で彼女の名前が出てきたからだ。
「複数いたのか?」
「ええ、ちひろさん以外にもいい顔した社員はいなかったわ。ほぼ強行だったものプロジェクト・クローネは」
「でも成功してたんだろ、文香が倒れるまでは」
「そう。アーニャちゃんも不安でいっぱいだったみたいよ、あの子もそれに参加してたの」
「なんだって!?よく大佐に気づかれなかったな」
「ほぼ極秘だったから」
(もし大佐が過酷な環境だって知ってたら、PKPとジャガーノート武装して会社に乗り込んで戦争起きてたかもしれん・・・)
深刻な顔で考えるヨハン。実際に前回のことが平時に起きていたら、自分達もひどい目にあうだろう。
「ヨハンさん?」
「殺されてもおかしくないな。いろんな意味で」
すごい幸せそうなアナスタシアとは裏腹にテロリストに警戒する源太。今回もHK416A5カスタムと45Tを釣竿ケースに隠して携行していた。
「源太さんイケメンです、もっと出してもいいです!」
「ありがと。でも仕事は顔出しNGだから」
「わたしやランコ達には見せてマス」
「仕事と違うからだって。わかるか?」
確かに彼は短大のミスターコンテストで優勝した経験もあるいい男だ、しかし彼はそんなことには一切興味を示さず文武に打ち込みレインボーになったのだ、今さら変更するつもりもない。
「・・・君は素敵だ、誰もが認めるほど。だが俺みたいな危険な男だけは選ばない方がいい」
「パパに殺される男性じゃ心元ありません、源太さんなら大丈夫です、それに・・・」
「??」
その美しい瞳が一段と輝きを増す。
「恋・・・しちゃいました」
(ま、まずい・・・いくら大佐公認とはいえ彼女はアイドル、スキャンダルだけは避けたい。仮にさらし者になったら俺の命もない)
崖っぷちに立たされた源太、もはや一瞬の誤りも許されない事態だ。ヨハンも顔に冷や汗が流れる。
「おいおい大丈夫じゃないぞこれは、行っても地獄戻っても地獄だ・・・」
「グイグイ行くわねアーニャちゃん」
「不味すぎる出るぞ!」
「ええ!?」
偶然を装い二人の前に現れるヨハンと美波。源太の表情に安堵の表情が出た。
「ゲンちょっといいか、話がある」
「ヨハン・・・ありがとう」
助け舟をだしたヨハンは美波から聞き出した情報を源太に話す。
「なるほどやはり怪しいか」
「ああ。だがODTとの関係はわからないままだ、武内の情報が頼りだな」
「そうだな、今は何故か訓練したい」
「あれもある種の訓練だぞ?」
「勘弁してくれ、まだバンディット先輩の電気トラップの方がマシだ」
「俺ならブリッツ先輩のライオットシールドの閃光級って言うな・・・変わらんか」
恋愛とは縁遠い二人に追い打ちが来る。前日助けた城ヶ崎姉妹に見つかったのだ。
((頼むから荒らすなよ・・・))
「やっほーイケメンさん。あれ、二人も一緒に!?まさかダブルデート?」
「んなわけないだろ、俺はしご・・・」
「デートです」
(冗談キツイって頼むよアーニャちゃん・・・)
「違うわよ、彼らは仕事で来てるの」
美波の助け舟によってふたたび救われた源太。
「そう仕事だ。1年前から今の事務所のことについて聴きだしてるんだ」
「あー莉嘉知ってるよ、ちひろさんがODTとかどうとかって」
一気に表情が仕事モードに切り替わり莉嘉を問い詰める。
「彼女がODTって言葉を言ってたのか!?」
「ええ!う、うん電話してるところ見たんだよ」
(まずいぞこれは、セーフハウスが足りなくなる・・・あぁモンターギュ先輩来てくれ・・・)
「美嘉も知っていたのか?」
「うん、莉嘉が相談してきたんだ、なんだか怪しいって」
「わかった。絶対にこのことを他人に言うなよ、死ぬ可能性がある」
まさかの死の宣告を受け呆然とする城ヶ崎姉妹。フォローしようにもできない。
「ヨハンさんそれは言いすぎじゃ」
「甘い。彼女達もテロリストに襲われてんだ、二度もあると考えるのが普通だ」
「源太さん、ミカもリカも助けてください」
「あー参ったな・・・大佐に連絡してみる」
ラブライカ及び城ヶ崎姉妹の保護を大佐に話すと了承こそしてくれたが、姉妹の保護者が源太ではなくジャンが担当することになった。チーム一個性的な彼があの二人と仲良くできるか心配になる。後日、そのことを知った彼は額の汗が乾かなかったという。
「どうだった娘との会食は?」
「ええ、いい子でしたよ。純粋で美人でした」
「そうか。私の息子になる日も近いな」
かなり満足そうな大佐とは対照的な源太。まさか自分に好意を抱いてしまったことに心配したからだ。
「大佐。あの子は俺のセーフハウスで保護されるのですよね、蘭子達と揉めないか心配です」
「なあに大丈夫だろう、なにしろ君だからな」
「なんでしょう・・・帰ったら修羅場になってそう」
その心配は杞憂に終わる。セーフハウスに帰ると心配していた二人が仲良くボルシチを作っていたのだ。小梅と輝子によるとラブライカのライブで蘭子が応援で参加したことがあり、それ以前にも仲良くしていたため心配ないとのこと。
(よかった。もしこんなこと考えていたことをサーマイトさんに知られたら、笑いごとじゃ済まされない)
しかし、その数日後、FBISWAT出身の精鋭達が来日し西日本にあるODTの通信拠点を潰しに周ることを未だ知る由もなかった。
実際の特殊部隊はそんなことしません
アーニャファンの皆様、すいませんでした