ODT事件の最中にスカウトされたSAT出身オペレーター。負傷した元オペレーター、ジャン・カンテが使っていた襲撃可能飛行ドローン、アサルトドローンがガジェット
個性派集団のレインボーには珍しい常識人な性格で、とても特殊部隊とは思えない穏やかな性格。立川の自宅が女子高生のたまり場と化しているのが悩み
この日、源太は立川にある五郎のアパートにいた。理由は後輩を慰めるためなのだが、いかんせん理由を聞いていない。任務に支障をきたさないためにちゃぶ台を挟んで五郎に聴いた。
「先日の訓練なんだが、ドローン操作ミスで奇襲失敗の挙句、バレるのわかってて行った無茶な突撃が原因で相手チーム居場所が割れてキル3回。これは任務では3回分死んでる結果だ。どうして無茶ばっかりした?」
「・・・隊長、聞いてください。頭から離れないんです、地味って言葉が」
その言葉を聞いた源太は目を丸くする。五郎は確かにスモークやエコーと比べると個性が乏しいが、それのおかげでODT事件では潜入捜査で一役買った実績がある。むしろ、潜入捜査や隠密作戦で、これほどまでありがたい性質はないとシックスに認められた才能である。しかし、そのことが彼の精神を摩耗させているかもしれなかった。
「タイナさんのように気配殺して尋問とかできないし、メカニックの才能ないし・・・」
「まさか、シックスがそれらを求めて採用したって思ってんじゃないのか?違う。お前の派手ではない気質と懐に潜り込める地味さが理由だ、誰も派手に暴れて来いとは言ってない」
「隊長のように装備が攻撃的でないし、ユーリ大佐のように頑強じゃないし、レイモンドと違って薬学ないし」
「この馬鹿、情報収集は勝つために必要なんだよ。そのためには派手な動きをせず地道な捜査が必要って警察学校で習わなかったか?それに、エコーやジャンと違って技術を見せびらかしたりしないって評判なんだぞ?仲間の信頼を得るのも任務の一つだって忘れたのか?」
「アサルトドローンは奇襲に使うじゃないですか?」
「あのな、装備的に射程短いし他のドローンより大きいから的になるのは確かだけど、何も奇襲だけじゃなくて囮として使うって方法があるだろ?ガジェットは使い方なんだってカピタオさんから習ったろ?」
出された麦茶を一気に飲み干す。
「っで、誰に地味って言われたんだ?」
「・・・丹羽仁美って言う、歌鈴の友達に」
源太は頭を抱えた。まさか一般人の女に地味って言われたのが原因で訓練に支障をきたしていたという事実に困ってしまう。
「とにかくだ、任務ではするんじゃない。死んでも誰も泣かんぞ」
そうは言いつつも弟分の悩みを解決してあげたい気持ちがあるのか、一応詳しい事情を聴くことにする。休暇の日に歌鈴が仁美とあやめを連れて遊びに来た時、歌鈴が五郎を紹介した。そこまでは良かったのだが、仁美の地味の一言でショックになり、今日まで引きずったのである。このままズルズルさせるわけにはいかないため、直接仁美に会うことにした。
後日。アナスタシアを通じて仁美とアポと取ることに成功し、喫茶店で待ち合わせることになった。ドアの鈴が鳴ったかと思えば、吊り上がった眉にまつ毛の多い大きな目、おかっぱ頭の女が慌ただしく入店し、源太の前に座った。
「いや~すいません、ちょっと遅くなっちゃって。丹羽仁美です!」
「真田源太だよろしく・・・なにその不自然な紙袋?」
「これ?もちろん、城巡りの資料でっす!」
全国のメジャーな平城からマイナーな山城までのパンフレットを拝見する。源太が手に取ったのは上田城の資料だった。
「あ、それ、今度行こうと思ってた上田城のヤツ。真田さんも気にな」
急に静かになったと思いきや、まじまじと源太の目を見つめた。
「なんだよ?」
「もしかして真田一族の!?」
「違う。同じ苗字だけど違う。俺は千葉生まれだし、関係図なんて見たことねーぞ」
「ちぇーっ、ちょっと期待してたのに」
「・・・期待外れに続いてだ、俺が君と会う理由は知ってるな?」
「えっと、カリリンの幼馴染の件でしたっけ?」
「あぁそうだ。アイツに何を言ったんだ?」
「・・・レインボーってさ、虹のようにカラフルな防具着てる?」
源太は混乱した。何が言いたいのかわからないからだ。
「なんだいきなり、そんなもん着てちゃ敵にバレて始末されちまう」
「それよ、名前詐欺だし隊員にどこにでもいるような人間がいるなんて思いもしなかったのよ!」
彼女の話に耳を傾けた。
「日本救った英雄が傾奇者みたいに派手でカッコイイ感じだと思ってたの。でも、なんであんな黒っぽくて地味なのよ!テロリスト達をバッタバッタ倒して一騎当千ってのが違うわけ!?」
確信した。彼女は自分達を映画やゲームの主人公だと思っていたことに。
「・・・なるほど、そう言うことか。君はもしかして346プロにODTが立て籠もった中継を見てたのかな?」
「もちろん、あの時渋谷にいたけど、モニターで全部見てたわ」
「そうか。確かに銃撃戦はあったし、爆発物も仕掛けられてた。しかしだ、仮にゲームみたいに突っ込んで行ったら一瞬でハチの巣になるって想像は出来るんじゃない?」
「・・・そ、そうだけど」
「時間があるならレインボーについて説明してあげるよ」
仁美は縦に首を振る。
「俺達はテロを撲滅するために、世界各国の特殊部隊の中から選りすぐりの隊員を招集して結成されているんだ。国はもちろん、多くの大企業の融資も受けてるし様々な最先端技術も提供されている。基礎戦闘力、自分達のスキルを噛み合わせて任務に当たることで凶悪なテロリストを倒していくんだ」
「じゃあ強力なバズーカとかマシンガン持って撃ちまくってりゃいいんじゃない?」
「確かにそれでもいいかもしれん。だが、多くの場合人質を取っている。どっちにしろ君のやり方は金掛かるし人道的にも社会的にも批判されかねないぞ」
「・・・え、そうなの?」
「そうだよ。人質を無傷でかつ安全に救出するには、陽動役に敵が注目してる隙に救出役がコッソリ脱出する必要もあるし、殲滅してからの脱出もある。どっちがいいかは敵の位置、建物の構造、メンバーにも左右される。突入に失敗して人質を殺されたケースも多々あるしね」
「えぇ~なんか面倒だ~」
「わかることは君は特殊部隊には向かないね。さて、少しはわかってくれたかな?」
注文したオレンジジュースを飲み干す。
「なんか面倒くさいわね。こう、清々しくいかないの?」
「敵もバカじゃないんだ、うまく行くケースの方が珍しいよ」
「じゃあ改めて聞いていい?ゴロリンはどうしてレインボーに入れたの?」
「彼は潜入捜査に最適な地味さがある。ODT事件の時、敵の懐に入って情報提供してくれたおかげで事件解決が早まったんだ。どんな最先端な武器よりも有益な情報の方が重要なんだ。史跡めぐりもそうだろ。君の食事代、ここに置くね」
食事代をテーブルに置くと、喫茶店を去って行った。
(・・・慶次もいいけど、真田さんも有りね!)
少女の眼光に源太が気づいていたか否か、それは本人のみぞ知る。
数日後。日本・東京湾の港で豪華客船がジャックされたというシチュエーションでCQBの公開訓練が開始される。レインボーとしては手口をさらしたくなかったが、練習相手のSAT・SITの上層部がうるさかったのか、渋々承諾するハメになり、よりにもよってメディアの中にはミリタニーオタクの大和亜季と歴女の丹羽仁美のタッグがロケに来ていた。遠くからその姿を確認したアッシュ・源太・五郎・カプカン・バンディットが渋い顔をする。
「アキ・ヤマトには会って話したことあるけど、なんだか心配」
「何が?」
「良い子なんだけど、特殊部隊に幻想抱きすぎなのよ。だいたい、私達が日常とは離れちゃダメなの?」
「あぁ・・・そゆことね」
「攻撃側の右コメカミにカメラ付けて、ヒトミが実況しアキが解説・・・なんだかニワカ感がして嫌なのよね」
「その映像がオンエアされるかは、編集部次第。ですが、手抜きはなしで」
4人は普段通りだが、五郎だけは落ち着いていなかった。
「あ、あのう、ドローンのカメラも使われるのでしょうか?」
「いや、全く。俺達の間だけだ。話を変えるが今回はSAT・SITの合同チームもドローン使うって話だ」
「つまり普段の訓練と変わりないってことかゲン?」
「まぁ相手が何人で来るかわからんが」
「そゆこと。五郎よ、ジャンの作ったドローン大事に使え」
肩をポンっと叩かれ、先ほどまでの緊張がほぐれた。
「さて、最初は攻撃側だ。頑張ってこい」
訓練は順調に進み、誰一人として欠けることなく攻撃・防衛両方で勝利した。肝心の五郎は被弾こそあったものの心配だった無謀な突撃は一切なく、冷静に対処出来ていた。一方、派手に撃ち合うことを期待していた仁美と亜季は想像と違う展開にトークに盛り上がりが欠けたため、映像はお蔵入りになったのは別の話。
IQのうわさ
日々女子力を磨いているが、(物理)の方しか成長していないらしい