本名:エリック・ソーン
ボストン生まれ。デルタフォース出身の不愛想な髭男。ブズカシ(アフガニスタンの馬術競技)の名手でもあり馬術が得意
どこか達観した感じもある
2年間行方を眩ませていたオペレーターがいた。彼が何故、仲間に伝えないで姿を消したのかは不明だが、反乱勢力の機密情報を手に入れて再び姿を見せた時は誰もが驚いた。当時のシックスは彼の専門性を高く評価しレインボーに入隊させた。彼の名はエリック・ソーン。コードネームはマーベリックという。
金髪に無精髭、不愛想な表情のマーベリックは源太の部屋のドアに、脱獄してから使用しているブリーチングトーチ片手に立っている。理由は彼なりのイタズラだ。任務を終え帰還報告をした源太が彼を見つけ、大慌てで止めに入る。
「ちょっと、人の部屋のドアに穴開ける気ですか!?」
「ノックしても反応ないから覗こうと」
「そんな人じゃないのに何言ってんすか。っで、ご用件は?」
「カルロスの日本人女性恐怖症を治すの手伝え。この前の作戦で日本人女性の人質ケガさせやがった」
「・・・は?それだけのためにバーナーで穴開けようと?」
「アイツはバカだが戦闘能力は高い。少しでも障害を取り除かない限りは一生腑抜けになっちまう」
「なるほどねぇ。っで、作戦は?」
「彼の友人、星輝子に協力してもらい多くの時間を費やしてもらう」
「ヒバナじゃダメなんです?」
「ほぼ男だからダメ」
「フーン、誰が男ですって?」
恐ろしいオーラを放ったヒバナが鬼の形相でマーベリックを睨みつける。
「まだピッチピチの乙女だ!」
「・・・この時点でもうアウトだ」
腹を立てたまま自室に戻り頭を冷やしたヒバナは、なんてことを言ってしまったのだと後悔することになった。
数日後。オフを利用しカルロスを日本に連れて行く。ジャンのセーフハウスを借り、輝子の他に小梅、薄紫の髪の少女、輿水幸子と合流した。
「フヒヒ、久しぶりだなカルロスさん。真田さんと一緒なんて珍しい・・・」
「でももう一人誰だろ、見慣れない人・・・」
「紹介が遅れたな。俺はエリック、コイツの上司に当たる男だ。質問はあるか?」
「ふふん、カワイイボクが最初にします。いったい何をすればいいんです?」
「そうだな。特に変わったことはしなくていい、日常会話でもなんでも、コイツと交流して緊張をほぐしてくれ。行くぞゲン」
二人は車に戻る。珍しくなにか疑問に思った顔で源太に問う。
「ゲン、本当にあの面子でいいのか?」
「輝子の友好関係から大丈夫そうな人間だけを集めました。よっぽどのことが無い限り、大丈夫かと」
「あの薄紫頭のガキ、無駄な自信な割にはあまり友人いなさそうだから、かえって酷くなるんじゃないのかって話だ。俺の経験じゃ、騒ぎを大きくする類によくみられる」
「てっきり小梅を警戒するんじゃないかと思いましたが?」
「あのレイモンドの妹分だ、悪い子じゃないのは知ってる」
「だったら」
「太陽が近すぎると害にしかならない。そう言いたいだけだ」
「・・・こりゃ賭けですな」
気になって窓から様子を伺う。今のところ特に問題なく楽しそうにしているが、幸子の一言で状況が変わった。
「森久保乃々さんと一緒にスカイダイビングのロケも面白かったですけど、やっぱり、佐久間さんとのロケがとっても怖かったですね。だって、突然現れるんですから」
カルロスが息をしていない。笑顔のまま気を失っていた。
「カルロスさん!?これを嗅ぐんだ!」
輝子の友達のキノコを鼻の位置まで持って行く。すると息を吹き返した。
「・・・は!?俺としたことが、どうやら動揺してしまったようだ」
「もしかして、佐久間さんが苦手?」
「励ましたら勝手に好意を抱かれて・・・あぁ怖い、この前は実家に押し掛けて恋人だって名乗ってきたんだ!父ちゃんはバカ受けして弟たちは式場予約しようとして・・・普通初対面の人間にそこまでするか!?」
「「「しない」」」
「だろ!確かにスペック自体はいいけど、ここまで来るとキチガイかストーカー、妖怪の類だ!」
窓の外から話を伺っていた源太は頭を抱える。
「マーベリックさん、どう思います?こりゃ俺でも怖いですわ」
「女には気をつけろってあれだけ言ったのに・・・はぁ、てっきり監禁されたもんだと思ってた。佐久間って確かテロリストを縛り上げた民間人だろ」
「はい。好意を抱いていたプロデューサーがテロに加担したのを知って無理心中しようとしていたそうです。最近吹っ切れて自分だけを見てくれる新しい王子様を探しているとのことです」
「・・・その王子様候補がカルロスか。ダメ男に引っ掛かるタイプだな」
「さりげなくどころか、モロ貶してませんか?」
「問題はコイツにもあるが、彼女が否定を肯定に取る体質も問題だ。俺がなんとかする」
数日後、マーベリックは彼女にアポを取って話をすることにした。軽く挨拶すると早速本題に入る。
「どうしてカルロスを慕うんだ?おかげで任務に集中出来てない事態に発展してんだが」
「あの人はまゆを本気で見てくれるんです。前のプロデューサーと違って、まゆを売ろうとしませんし、優しくしてくれました。だから、それに応えようと」
想像以上に惚れっぽく、身を犠牲にする傾向がある。しかも社交辞令や単なる励ましを愛の言葉と勘違いしてしまう。その結果、交際してるわけでもないのにいきなり相手宅の家族に挨拶する等の問題行動を取ってしまったと結論付けた。
「・・・お前、世間一般って言葉知ってるか?」
「はい。いわゆる常識、ですよね?」
「じゃあ励ましてくれた男に勝手に惚れて、ソイツの家訪ねて交際してないのに恋人ですって言うのはどうだ?」
「な、何が言いたいんです!?」
彼女の表情が少しこわばった。それでもマーベリックは眉毛一つ動かさない。
「ハッキリ言わせてもらう、これじゃ前のプロデューサーと君は変わらん。自分のために相手の心を踏みにじっている点で既にテロリストと同列に並んでいる」
「!?」
「動揺してるのならまだ間に合う。アイツとはこれっきりにしろ、そんなに運命の出会いが欲しいなら、まずは相手の嫌がることを考えてから行動に移れ。俺からは以上だ」
マーベリックはその場を去った。一人残されたまゆは放心状態になり、糸の切れた操り人形のように力無く座り込んだ。そして、声を上げて泣き出したのだった。
(俺がカブールで見てきた人間に比べれば、まだカワイイ分類だ。あの国でイカれた奴らは監禁はもちろん、精神も壊しにかかる。本来優しい彼女はもう大丈夫だろう、あとはカルロスだ)
数週間後、カルロスは無事トラウマを克服することに成功し、任務に支障をきたすことはなくなった。また、まゆからのアプローチも一切なくなり、落ち着いた日々を過ごしているという。
ドクの噂
世界中の総合病院から院長就任のオファーが来るが、全て断っているらしい