本名はシュウ・メイ・リン
SDU出身オペレーターで転がして使うこともクラスターチャージみたいに使うこともできる閃光弾、カンデラデバイスをガジェットを使う
実は楊菲菲とは歳の離れた友人同士で、菲菲の性格は彼女の影響が大きい
月が綺麗に見えるイギリス・ヘリフォード。ジョーダン・トレイスは自室でヒートチャージを作成していた。任務で頻繁に使うため、時間があれば余分に作っておく。
(これで9個目だ。かなり手間の掛かる爆弾だが、効果絶大だから見返りはデカイ)
ふと、源太と初めて会った日のことを思い出す。あの頃の彼は四六時中殺気を放っており、日本に帰る時間があってもイギリスに留まって訓練漬けになっていた。無論、それが原因で過労で倒れたこともあった。医務室で目を覚ました彼の傍らに座り、本気で心配していたことを打ち明けたこともあった。
「戦闘狂いの寂しい奴に終わるかと思ったら、ちゃっかり彼女作ってイチャツキやがって・・・保護者役が終わったのに何言ってんだか」
10個目を作り終え、気晴らしに外に出てビールを飲みに行こうとすると源太とすれ違う。
「よぉゲン、今日はデートじゃないのか?」
「毎日デートしてませんってば、帰還報告を終えたんです。そういうあなたは何してたんです?」
「ヒートチャージ作成だ、一段落したからビール飲みに行こうと思ってな。どうだ、久しぶりに師弟で飲みでも」
「いいですね。俺着替えてから行きますから」
男二人パブに入りビールジョッキでグラスを鳴らす。
「くぁ~一仕事した後の一杯はいいねぇ!」
「えぇ、ですがいつ任務が来てもいいようにほどほどに」
「わかってるよ。ったく、頭でっかちは変わらねえな」
「なんでも吹っ飛ばそうとするよりはいいでしょ?」
「言うようになったな。よし、明後日までドクが帰ってこないし飲み明かすか!」
おう、と言おうとしたその時、近くの席にいた化粧の濃い若い日本人女性が中年男性に大声で説教臭い話をし始めた。成績が悪いだの海外のプレゼンで恥をかいただの、飲みの場には全く相応しくないことを延々と続ける。気分を害したジョーダンは止めに入った。
「その辺にしておけ。他の連中の気分を害して飲むなんて狂ってるぞ」
「はぁ?誰アンタ、アタシを誰か知ってんの?」
「さあな。少なくともこのパブで最もいちゃいけない女だってわかる」
「桐生つかさ。アンタみたいなおじ様じゃ知らないも同然か」
「ここは子どもが来るところじゃない。さっさと帰ってねんねしな」
馬鹿にされたのが癪に障ったのか、彼の胸倉を掴む。
「ようやく夢見た海外進出をこのオッサンに台無しにされたわけ!わかる?経営者として会社を育てる苦悩をさ!」
「俺がお前の下にいたとしたら、3秒で転職する自信がある。それか筆頭株主になって、ものを言わせない自信もな」
ジョーダンの顔は笑っていた。しかも根拠のある余裕綽々とした目だった。
「ふん!ヘリフォードで有名なパブがこんなだなんて・・・今日は帰るよ!」
つかさは一人でパブを出て行った。残された男も続いて出て行ったのを確認すると、自分の席に戻った。
「やっぱ飲み明かそうぜ。口直しだ」
「ジョーダン、気づきましたか?あの男怪しかった」
「あぁ。能無しの平社員じゃあなさそうだ、むしろあのまま殺して乗っ取ってやるって目をしてたな」
「実は俺、彼女を知ってます。アパレルの会社を営んでる346プロのアイドル、桐生つかさ。ハッキリ言ってガキのまま社会に出て運よく成功したアバズレです、例えるならエラに近い。まぁ実力はある方ですが、レインボーじゃ通用しませんな」
「・・・なぁゲン、ここ最近346プロ関係多くないか?」
「俺も同じこと思いました。それと、彼女の会社に黒い噂が」
「なんだ?まさかホワイトマスクに献金してたってか?」
「千川に多額の資金提供してたって噂です。現在、エコーとジャンが調べています」
「それなら白黒ハッキリしそうだな」
注がれた黒ビールを一気に飲む。
「いずれにせよ、騒ぎが起きたら我々の出番も考えられますね」
彼らが飲みを再開して2時間後、桐生つかさは何者かに襲われ捕らわれの身になった。彼女が目を覚ましたのは取引先になるであろう会社のビルディングの中であった。
翌朝。目覚ましの代わりにけたたましく出撃の通信が鳴り響く。作戦服に急いで着替え移動のヘリに乗り込んだ。メンバーはジョーダンことサーマイト・イング・源太の3人。もう二人いるだろうと思ったが源太が乗り込んだと同時にヘリが離陸する。
「今日は3人か。頼んだぞイング、ゲン」
「珍しいわね、いつもは5人なのに」
「朝の体操代わりに行きましょうか」
目的地上空に到着しファーストロープで降りる。3階建てのビルディングで、昨夜飲みに行っていたパブから歩いて行けるほどの距離だった。窓は全てバリケードで塞がれ外から見えない状態だったが、先に来ていたパルスとミュートがピザ屋に扮して潜入し敵と人質の数と場所を特定してくれた。
「3階の道路側の窓に人質と敵が合計6人いる。人質は1人だが、ビル内から攻撃するには補強壁を突破する必要がある。ジョーダン任せていいか?」
「ちなみに監視カメラはジャマーで使用不可能だ」
「よし、イングとゲンはダイナミックエントリー前にカンデラで目を眩ませてくれ。俺は一度、下に降りてクロスファイアの準備をしてくる」
ラペリングで定位置につき、合図を待つ。耳を澄ませると人質とテロリストが口論しているのが聞こえる。
「池島!アンタバカじゃないの、テロリストになってどうする気!使えないにも程があるでしょ!」
「うるせえ!ガキが一人前に口きいてんじゃねえ!」
鈍器みたいなもので殴られる音が聞こえる。早く突入するべきか考えたが、内容が気になり気持ちを抑える。
「だいたい20で社長やってて美人でサバサバした性格の人気者?てめえのようなブスに日陰者の気持ちがわかるか!外回りで頭下げて苦労した身にもなってみろやエェ!今回のアレもてめぇが気に入らなくておじゃんになったんだよ!」
「な!?なんでそのこと言わないの!」
「ガキの子守りなんてしたかねぇよバーカ!」
殴られた音の後に通信が入る。既に準備が出来たようだ。
「騒がしい奴らに一発やるぞ」
カンデラをすぐに起爆できるように調節しバリケードに張り付け閃光が走ったと同時にダイナミックエントリーで突入。ほぼ同時にヒートチャージが発破し二方向から銃弾の雨を降らせ敵を無力化させた。
「オールクリア、彼女を基地に連れて行ってくれ。事情聴取が必要だ」
源太は気を失った人質、つかさを肩に担ぎ上げる。
「了解・・・ププ、派手な格好なミュート・・・」
青と赤と白の縦じま模様の服の上にガスマスクと防弾チョッキ。何といえばいいのかわからないほど似合ってない。恥ずかしさのあまりコードネーム通り黙ってしまった。
つかさが目を覚ましたのは丁寧に清掃された病室のベッドの上だった。そこの主、ドクが現れ安否確認をする。
「目を覚ましたようだな。安心しろ、ここはヘリフォード基地だ、テロリストの巣窟ではない」
「・・・なんでここにいるのか教えなさい」
「結論を言えば事情聴取だ。すぐに終わるだろう」
「は?なんで?」
今度はサーマイトが素顔をさらした状態で入ってきた。さすがのつかさも驚きを隠せない。
「あ、アンタこの前の!?」
「よぅ。顔の痣がひどいな」
「!?」
「安心しろ、お前の顔を殴った奴は別室で尋問を受けている。そろそろ終わる頃だぜ(カベイラがやったらすぐ済むしな)」
初めて会った時のように余裕の態度で椅子に腰かける。
「単刀直入に聞くぞ、千川ちひろに送金した覚えはあるか?」
「ちひろさんに?ないわよそんなの」
サーマイトは懐からエコーとジャンが発見したマネーロンダリングの証拠資料を取り出し彼女に見せた。先ほどまで気絶していたとは思えないほど驚いた表情で紙面を見る。
「うそ・・・どうりで資金ネリが大変だと思った」
医務室の壁越しにパルスが心拍センサーで様子を見ていた。無線でウソは付いていないという報告が来る。
「アンタは自分の金事情も知らなかったのか?誰かに任せらてたらこうなったってか?(エラよりはマシかもな)」
「・・・ちょうどODT事件が始まった辺りでムチャクチャ優秀な会計が入ったの。すぐに打ち解けて財布の紐を握らせたんだけど・・・まさか」
「おいおいさっきの自信はどうした?騙されてしょぼくれたのかよ」
「はぁ、人生勝ち組のアタシに何言ってんのオッサン!?」
調子に乗っているガキに堪忍袋の緒が切れた。しかし、口調は冷静だった。
「・・・勝ち組か。言っとくが俺の稼ぎはお前よりもいいぞ、なにせかのレインボーだからな。そこの医者もレインボーだぜ」
レインボーのエムブレムを魅せると急に大人しくなった。
「うっそ!?」
「そうやって人を馬鹿にした態度が原因でテロリストが産まれたんじゃないのか?その池島ってやつがテロリストになったのはお前の責任でもある。人間追い詰められたら何が起きてもおかしくない、いい意味でも悪い意味でも。一からやり直せ、根性鍛え直せ、お前なんかより346プロの仁奈ちゃんの方がよっぽど大人だぜ、そういった意味ではな」
「ぐぅ・・・」
「もし会社をたたんだら武内に相談しろ、アイツは修羅場を俺達とくぐり抜けた仲だ。返り咲く方法を知ってるハズだ」
後日、つかさは会社をたたみアイドル業も休業することにした。武内に相談後、彼と日本で行われる小規模な勉強会に出席することになった。そこで彼女が変わるきっかけになる男と出会う。隣で座っていた武内は驚きを隠せないでいる。
「人生再生塾へようこそ。私はクラーク、過去の経験が君達の糧になることを祈ってるよ」
サーマイトの噂
銀行の大金庫を破れる威力のヒートチャージを作ったことがあるが、実用化されなかったらしい