ソードアート・オンライン もう一人のクオン   作:神滅

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19層

 霧と枯れ木ばかりのステージ。灰色の狼が襲ってくる。

 手刀を狼の顔に叩きつける。

 無刀スキルの手刀は本物の剣のような切れ味で攻撃できる。

 狼の顔に横に一線入る。しかし、倒すまでの威力はない。

 そう、一撃では潰せない。なら、左腕が止めを刺すだけだ。

 狼の胴体に左腕が突き刺さる。

 HPバーが無くなり消滅する。

 息を吐いて気持ちを整える。

「そっちはどうだ?」

 振り返り、ジルが入る方を見れば。

「はぁぁ!」

 大きなハルバードを振り回し、周りのモンスターを消滅させていく。

「今、終わったわ」

 ハルバードを装備し始めてから殲滅力はジルの方が数段上になった。

 そもそも、俺は武器を使わないぶん。攻撃力アップをするのが難しい。

 無刀スキルの熟練度を上げるたびに素手の攻撃力は上がる。しかし、熟練度がなかなか上がらない。ジルの鉾スキル(ハルバードや鉈も含む)は10層あたりから使い始めて、すでに熟練度はMAXだ。

 しかし、俺の無刀スキルは2層から使いはじめて3分の1の熟練度しかたまっていない。

「この辺も弱く感じるようになってきてるわ」

「強くなったんだろう」

 俺たちのコンビは攻略組でもかなり名を広めた。

 聖竜騎士団からのスカウトがあったが黒い噂を知っている俺たちは蹴った。

 

 

 最前線である19層のレストランで飯を食べてる。

「この辺は霧で視界が悪いからボス部屋がなかなか見つからないわね」

 ジルが夕食を食べながら呟く。

「その内、見つかるさ、攻略組が血眼になって探しているからな」

 俺ももぐもぐと食事をする。

「それにしても次でやっと5分の1なんだよな」

 このゲームは100層まである。次で20なので後5倍もあるんだ。

「いつまで、ペアで行けるかな…」

「さぁ、ソロで攻略組も入るらしいからな。比べたら、ペアなんて余裕なんだろう」

 食べ終えた食事を片付ける。

「ペアなら、どこまでも行けるかもな」

 冗談のつもりでいう。

「なら、どこまでも行かないとね」

 二人が食事を終え店を出て行く。

「この灰色の世界も飽きてきたな」

 呟きながら歩いていると人にぶつかってしまった。

「すまない」

 前を見ずに謝る。

 目の前には、重鎧を着込んだ男がいる。

「いや、私のほうこそ余所見をしていた。ところで、軽鎧で手袋を装備していない。君が素手で戦うというのは君のことかい?」

 武器を持たないだけでもかなり有名である。これまでも何人かは尋ねてきたこともある。

「そうだが?」

「ぜひ、君には私のギルドに入ってもらいたい」

 これも多い誘いだ。

「いや、俺たちペアだからギルドはいいよ」

「ふむ、それでは、二人でギルドに入らないだろうか?」

 しつこく誘いをする。

「結構だ」

 そういって、立ち去る。

「なら、あきらめよう。どうだね。私と決闘を受けてくれないか?」

 俺はため息をついて、しつこい男を見た。

 真剣な眼差しだ。

「いいか?」

「いいよ」

 ジルの許しがでたので決闘をすることになった。

 

 

 圏内の建物がない場所まで移動した。

「戦う前に言っておくが俺の攻撃は武器破壊が基本だ。武器や防具が壊れても責任はとらないぞ」

「あぁ、大丈夫だ。そのつもりでいる」

 決闘の申し込みにOKのボタンを押すとカウントダウンが始まる。

「うらむなよ」

 そうつぶやく。

 カウントが0になった瞬間動いたのは…。相手だ。

 重い鎧を着込んでいるはずなのにかなり速い。

 相手の剣が光る剣技が来る合図でもある。俺は冷静にスキルを発動させる。

 俺の両手が光出した。次の瞬間、

 

 俺の目の前で剣が砕け消滅する。

 

「終わりだな」

 剣技が振られた瞬間。俺は右と左の拳で剣を挟むようにして殴り砕いた。

「君はすごい」

「さぁ、どうだろうか」

 そういってその場を去った。

 

 この時、戦った男が後に攻略組トップのギルドマスターになるなどクオンは知らなかった。

 

 昨日、ボス部屋が発見され本日攻略PTで攻略に向かう。

 もちろん俺とジルのペアも参加している。

「今日で5分の1か」

「クオン。気を抜いたらダメだよ」

「もちろんさ」

 ボス部屋への移動時に雑談を交わす。

「アスナさんとキリトさん。さらには先日の重鎧。いろんな人がいるね」

「あぁ、キリトはまだソロで活動してるようだな…。アスナは重鎧と一緒か」

「私達は変わらずのペアだけどね」

「それぞれの道なんだろうな」

 旧友に話しかけることもなくボス部屋に到着する。

 

 仕切っている奴が勝とうとか言って中に入る。

「さぁ、行くぞ」

 19階層までくると1階層での戦いと違って、作戦や役目などはない。

 理由はラストボーナスである。このことが明らかになってから雑魚の駆逐部隊にはチャンスがないといったことが問題になり、戦いが自由になってしまった。

 ボス部屋はすべて真っ暗でプレイヤーが入ると明るくなる。

 今回そこにいたのは、大きなゴリラだ。

 大きな大剣を片手に一本ずつ持っている。

「行くぞ!」

 誰かの掛け声で戦闘は始まった。

「はぁぁ!」

 俺の武器は両手両足あわせて4つ。他の武器持ちと違い、一つの攻撃が防がれたとしても次の攻撃に繋げることが出来るし、連撃を撃つことが出来る。

 剣技を繰り出し、拳で殴る。

 殴った瞬間衝撃が発生する。

「つぅ…」

 皮膚が硬い。殴った拳の方が痛いとか…。

「とてつもなく硬いぞ!」

 俺は後ろに飛び距離を取る。

 ボスは毛深い腕を構え剣技を発動させる。

 ボスの目線の先には俺!

『ぐごぉぉ!』

 鳴き声のような咆哮を放ちながらこちらに飛ぶ。

「うらぁぁ!」

 剣技を発動させ、蹴りで攻撃の軌道をそらす。

 武器で弾けばダメージは0だが、素手は別だ。素手で武器に触れた場合、特殊な条件を除けばダメージになる。

 弾いただけで5分の1も持っていかれた。直撃すればどれくらいくらうのか想像できない。

「今だ!」

 俺の横から人々が入り、攻撃を仕掛ける。

「回復しておといい」

 重鎧のあいつが横を通る時に言った。

 それにしたがい。一度後ろに下がって回復薬を飲む。

 この世界は回復薬は時間差効果だ。飲んでから一定時間自然治癒を高めるような能力しかない。

 瞬間で回復するには回復結晶が必要だ。ただし、高価なもので俺たちも二人で3つしか持って入ない。

「クオン。先行くわ」

 俺の横をジルが通る。俺も回復してきたので前にでる。

 今回のボスは雑魚をPOPさせるタイプではないようだ。

「次が来るぞ!」

 ボスの剣技が発動して、壁役の大きな盾を持った者が構える。

 ガキン!

 金属同士がぶつかった音が鳴り響き、剣が止まる。

 全体が気を緩めた。その中でも一部の者は気づいていた。攻撃が終わっていないことに…。

「盾を構えろ!まだ終わってないぞ!」

 キリトが叫ぶが遅い。二本目の剣が盾部隊をなぎ払う。吹き飛ばされる人を掻き分け、前に行く。

「行くよ!」

 剣技を放ち、ハルバードを振り回す。

『ぐぉぉ!』

 ボスが2本の剣を振り下ろす。

「肩」

 俺がそう言うと軽く飛び、ジルの肩に乗り、飛ぶ。

 2本の剣の間に入り、剣技で2本の剣を殴る。

 軌道がずれ、ジルの横に剣が落ちる。

「やぁぁ!」

 ハルバードを横に振り、ボスを切り裂く。

「クオン。危ない!」

 ボスの剣が地面から振り上げられている。もう一本は周りの人を蹴散らした。

 迫って来る剣を避けられない。

「クオン!」

 キリトが叫ぶ。そうあせるなよ…。

 俺は確信している、この攻撃を直撃してもHPは半分も減らない。なぜなら…。

 

 スキル『纏い』発動!

 

 構えをして纏いを発動させる。これから1分間俺の無双が始まる。

 青いオーラを纏い攻撃、防御、速さが格段に上昇する。

 迫って来る剣を腕で受け止める。

 吹き飛ばされ、天井にぶつかる。

「クオン!」

 俺を知ってる奴が騒ぐがHPバーは2割も減ってない。

 天井から落ちながら剣技を放つ。

「喰らいやがれ!」

 踵落しを放つがボスが他の人をターゲットにしたのか避けられた。

「はぁぁ!」

 キリトの片手剣のスキルが2本の剣を弾いていく。

 キリトの反応速度は相当なものだ。

「スイッチ!」

 キリトが弾いて大きな隙ができ、叫ぶ。

「まかせろ!」

 地面を蹴り駆ける。2本の腕に力を溜める。

「はぁぁ!」

 俺より先にアスナが剣技を決めている。

 

 

『がぁぁぁ!』

 あれから何度も攻撃を決めていきHPバーが最後の一本になった。

「いける。いけるぞ!」

 誰かがそう叫んだ時、ボスが持つ2本の剣の内1本を投げ捨てた。

『ごぉぉぉ』

 咆哮と共に剣を横になぎ払う。

 壁役が大きな剣で止める。辛うじて止まりはしたが盾がヒビがはいるような音が聞こえた。次は止められないだろう。

 だったら、次をなくせばいい。

「一気に決める」

 再び纏いを発動させる。纏いは1分間オーラを纏うが発動から5分間発動できなくなる。

 先ほど使ってから5分以上たっているので使うことができる。

「行くぜ」

 駆け出す。

「クオン。俺が行く!」

 キリトが後ろにつく。

 ボスはこちらにターゲットを決め向かってくる。

 剣を斜めから振り払う。

「砕けやがれ!」

 肘と膝に力を入れ、両肘と右膝で挟む。

 

 バリン!

 

 俺の攻撃で剣はついに砕けた。

 敵の武器にも耐久度がついている。武器を砕いたとしても10秒くらいで新たな武器を取り出す。

 この間が勝負である。

 周りから一気に剣技が放たれる。

 キリトは片手剣による4連撃。アスナは鋭い突きの連発(目で追えない)。他にも周りからいろんな剣技が放たれる。

 HPバーが4分の1を切った所で「今だ」と聞こえた。

 今まで後ろにいた10数人の団体が前にでて剣技を打ち出す。

 こうして、ボスは討伐された。

 ラストボーナスを得たのは…。最後に前に出てきた集団。聖竜連合だ。

 

「なによ。最後にだけ前に出てきて、ラストボーナス狙い丸見えじゃない」

 ジルはご立腹だ。最後の止めを聖竜連合が持っていたのが気に食わないようだ。

「倒したらさっさと次の層に行って。クオンが武器を壊したから勝てたのに!」

「そうだな」

 聖竜連合は悪い噂しかない。ボスのラストボーナスは取っていくし、噂ではレアアイテムを取ったメンバーを闇討ちしたとかも聞いたことある。

「まぁ、あいつらは関わらないほうがいいな」

 そう、関わらない方がいいのだ。

 

 

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