ソードアート・オンライン もう一人のクオン   作:神滅

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25層 上

 初めて、迷宮エリアにボス級モンスターが現れた。

 エリアを探索するプレイヤーに襲い掛かり重傷を負わせたらしい。

「エリアボス。暴れているようだね」

 食事をしながら呟く。

「確か、リザードマンで赤い鱗。体格は人の二倍くらい。両手で持つ斧だっけか」

「付け加えるなら、全身を覆う鎧に兜で攻撃はほとんど通らない。肉体が出てる部分は腕と足」

 このゲームで鎧を着けているモンスターへの攻撃はなかなか通らない。鎧に攻撃をしても威力はがたおちだ。盾を持って盾で防御されたらダメージは通らない。

「鎧が面倒なんだよなー。エリアボスなら、1つのギルドで潰せる。聖竜連合あたりが潰してくれるんだろうな」

 ちなみに、聖竜連合は鎧持ちと解っているじてんで手を引いている。一部のメンバーでPTを組んで討伐をしに行ったらしいが、斧の勢いを殺せず。盾役が崩れたらしい。

「でも、クオンには鎧があっても関係ないよね?」

 ジルの言うとおり。無刀スキルに鎧通しというスキルがある。右拳で鎧を殴る。鎧を貫通してダメージを通すことが出来る。

「挑戦したいのか?エリアボスに」

 率直に聞く。

「私達ならいけるでしょ?」

 当然のことのように言われ俺も「解ったよ。食べ終わったら準備をして挑戦しよう」と頷く。

 

 

25層の迷宮は山である。

 俺たちは山道を探索する。

「前にはこのあたりにでたはずだな」

「油断すると一撃かもね」

 戦う前にそんなこと言うなよな…。

『ズシン』

 数分歩いていると大きな足音の効果音が鳴る。

 山の上から赤い鱗のリザードマンが落ちてきた。

「来たぞ」

「さぁ、行くよ!」

 拳とハルバードを構える。

『ギャォォ!』

 咆哮と共に戦いは始まった。

 俺が飛び出し、剣技の『鎧通し』で鎧を殴る。

 強い衝撃が起こり、敵は衝撃で後ろに滑っていく。

「あー硬い…」

 鎧の殴った場所を確認するがたいしたダメージをあえてないようだ。

「鎧の破壊は無理だと思え」

 無刀スキルはすべての攻撃に武器破壊の特性を持っている。その力で鎧を破壊をする予定だったが思った以上に鎧は硬い。

『ギャァァオ!』

 リザードマンが叫び、斧を振る。

「なら、一気に行くよ」

 ジルが前にでる。それに続き後ろにつく。

 ジルは迫って来る斧を体を倒すことで回避した。俺は斧を真剣白刃取りする。俺の目からしたら斧はたいした速度ではない。

「やぁぁ!」

 真剣白刃取りは1秒だけ相手を拘束することが出来る。

 この1秒が勝負を決める。

 ジルのハルバードが光を放ちリザードマンの腕を切り裂く。

 2本あるHPバーの上の1本が2割ほど減った。

「やっぱ、鎧なければ弱いね」

 ジルは苦笑しながら下がる。

 俺の拘束から解けたリザードマンの斧が再び狙ってくる。

「真剣白刃取りさ、再使用まで5分あるのは正解だよな」

 俺は振り下ろされた斧を左手でぶん殴り、軌道を無理やり変えてやる。

「俺みたいな奴が入たら戦闘にならないからな」

 地面を強くけり、膝蹴りをリザードマンの顎に放つ。

 リザードマンは今度は後ろに下がらずその場にとどまった。

 

 否

 

 とどまってしまった。

「つらぁぁぁ!」

 右足を上げ、振り下ろす。踵落としだ。

 それをリザードマンは斧を持ち上げて防いだ。

 地面へ落ちていく俺に向けて斧の一閃。

「がぁ!」

 吹き飛ばさる。

「クオン!」

 心配そうに声を出す。

「砕けろ!」

 俺は、纏いを使いステータスを上昇させる。

 一気に飛び出し攻撃を放っているジルの横を通り抜け手刀で鎧を攻撃する。

 

『ベコリ』

 

 そんな音が鳴る。

「案外、この状態なら壊せるようだ」

 そのまま蹴りを入れ吹っ飛ばす。

「纏いすると、本当に強いよね」

 ジルは高く飛び得物を鱗の腕に向けて振り下ろす。

 それにあわせて、足を蹴り倒す。

 ドンと体が倒れる。同時にジルが着地。

 軽く飛び、踵落としを鎧にぶち込む。ジルは再び腕を狙う。

 起き上がるときに腕を振り、二人は吹っ飛ぶ。

「っく…」「きゃ!」

 俺の体の上にジルが飛び込んでくる形になった。

 ちなみに、今HPバーは俺が3割を切って、ジルは7割くらいだ。

『ぐぉぉ!』

 咆哮を上げながら接近し、斧を横に振る。

 ジルはまだ起き上がれない。

 HPがかなり合っても、直撃でクリティカルヒットでもしたら一発でゲームオーバーだ。

 背後からの攻撃はクリティカルになりやすいと聞く。

 俺はジルを押しのけ…。

 両腕で斧をガードする。

 

『ボキ』

 

 嫌な音が二重に聞こえたのと同時に再び吹き飛ばされる。

「クオン!」

 何とか立ち上がろうとするが腕が動かない。

 部分破壊。

 両腕が破壊された。

 現在確認されてるだけで腕、足、目は破壊できることがわかっている。5分ほどすれば直る。

 腕だと持ち上げることすら出来ない。

 足は片足で移動速度半減。両足で動けない。

 目は片目で視界半減。両目で見えなくなるとなっている。

 俺の腕が垂れ下がる。持ち上げることが出来ない。

 HPバーは1割弱。

 纏いもそろそろ切れる。

 だが、リザードマンのHPバーもかなり減っている。残るは3割ほど。

「クオン!下がって」

 俺の前にジルが来るが…。それは間違っている。

 なぜなら、後ろから斧がジルを狙っているからだ。

 

 現在状況をまとめよう

 後ろから迫る斧にジルは気づいていない。

 俺は腕が上がらない。

 声を出しても間に合いはしない。

 

 なら、どうする?

 

 簡単だ。

 足で弾けば良い。

 腕を使わず無理やり起き上がる。何とか起き上がれるものだ。

 そのまま、ジルの横を通り抜け斧の側面に蹴りを入れる。

 軽く上に逸らすことが出来たが、HPバーは1割を切るという状況に陥った。

 蹴ったことでバランスを崩しその場に倒れる。

 倒れる瞬間。飛来するものが見えた。

 

 投剣だ。

 

 投げるための剣。数少ないこのゲームでの遠距離からの攻撃手段。

「危ない!」

 ジルが俺を守るように抱きしめた。

 投剣は止まずに投げ続けられる。威力はたいしたことがないがジルのHPは徐々に減っていく。

 ただ、投げている奴らの狙いは俺たちではなく、エリアボスのようだ。

 大体はリザードマンの硬い鱗に当たって弾かれている。俺たちに来ているのは外れている投剣だ。

 それでも、リザードマンのHPは全然減りはしない。

「ジル。行け、ボスを倒せ」

 俺を必死に守ってくれる彼女に声をかける。

「クオンはどうするのよ!何発も当たったら死ぬんだよ!」

「このままだと、このボスは倒せない。あいつらの攻撃は弾かれてダメージはすぐに自動回復で回復されてしまう。ここで決定打を撃つしかない。俺じゃダメだ。腕がまともに動かせれないからな」

 俺とジルの顔は現実であれば、相手の吐息が感じれるほど近い。

 その距離でジルは俺を抱きしめながら目を見つめた。すこしして、目を閉じ、決意する。

「死んだら。許さないから」

 そういって、ハルバードを握りリザードマンに立ち向かう。

 俺は頭を地面につけ、頭と足を使って立ち上がる。

 立ち上がるまでに二、三本の投剣が刺さった。

 ぜぇぜぇと虫の息で飛んでくる投剣を避ける。

「はぁぁ!」

 ジルはリザードマンと攻防を繰り広げる。

 俺が纏っていたオーラが消えた。

 HPは1割を切っている。このままだと俺はHPが0になる。

 

 

 このゲームでの死は現実の死となる。

 

 

 このゲームのゲームオーバーの意味を思い出す。

 自身の死を考えると背中がひんやりとして、冷静にこの世界を見つめられる。

 飛んでくるナイフがスロー映像に見える。

 一本一本の動きがはっきりとわかり、最小限の動きで避ける。

『ズドン!』

 投剣を避け続けていると、リザードマンが倒れた。

「終わった…」

 ジルが呟くと、リザードマンが消滅する。

「終わったよ。クオン」

 笑顔で俺に声をかけてくれる。

 俺とジルのHPは風前の灯だ。

「帰ろ」

「あぁ、そうだな」

 ようやく終わった。

 ジルはポーションを使い徐々にHPを回復させていく。俺は腕が使えないので危険な状態のままだ。

「ちょっと、待ちや!」

 聞き覚えのある声が響いたと思うと、ジルが倒れた。

「え…?」

 何が起こったか理解できない。

 後ろを振り返れば…。

「確か1階層のボス部屋の…」

「覚えてくれたんか。あのボス部屋攻略に入たキバオウや」

 黄色い髪をしたそいつが言う。

「そんでな、今のエリアボスのドロップアイテム。わいらにくれへんか?」

「ふざけるな。一体どれだけ危険を冒して戦ったと思ってんだ」

「しかしなー。あんたは腕が使えず。相方さんは()()()出来事で麻痺毒になっていてな。もしも、人殺しをする奴らに襲われたらレアアイテムも台無しちゃうか?」

 さすがの俺も理解した。このキバオウは言ってるのだ。

 

 殺されたくなければアイテムを寄越せと。

 

「そうか…」

 考える不利をして空を見上げる。

 とても良い天気だ。

「なぁ、ジル。良いか?」

 上見たまま呟くように聞く。

「好きにしなよ…。私は動けないからさ」

 了承を得た俺は、ジルのもとへ行く。

「そうや、下手なことせんほうがええで」

 ジルの近くまで来て…。

「ちょっと、我慢しろよ」

 腹を蹴り上げ、近くの岩の後ろへ飛ばす。

「う…。死んだら笑ってやるからね」

 振り返り、目の前の人間を敵と認識する。

「8人くらいか…。武器を壊される覚悟があるなら、かかってこい」

 腕が使えるようになるまで2分ちょっと。

「ビーターやからって調子のんなや!」

 キバオウが怒りが戦いの開始を知らせた。

 仲間達が投剣を投げ続ける。

 俺は、死ぬすんでだというのにとても冷静に物事を見ることが出来る。

 投げられる剣がスロー映像のように見える。どれが当たるとか弾道までは読めないがこんな速度のものなら、簡単に避けることが出来る。

 最小限の行動で全弾を避ける。

「なんや、なんやこいつ!」

 周りはあれだけの数を避けた俺に気味悪がり、動けない。

 キバオウともう一人がつっこんでくる。

 キバオウが片手斧を抜き剣技を発動させる。それを右足で蹴りはじく。

 つもりだったが、蹴りで壊してしまった。

「な!?」

 もう一人の刀スキルが俺に向けて放つが、体を倒すことで当たることは無かった。

 刀を持ってる奴の腹を蹴り距離を取る。

「はぁはぁ…」

 正直いって、こいつらは雑魚だ。そんな雑魚の攻撃でも一撃で死ぬ。

 体力的ではなく、精神的につらい。

「あんたが、そんなに強いんやったら…。ディアベルハンが死ぬことなんてなかったはずやろ!」

 新しい斧で剣技を放つ。

「あれは、守れなかった。今の俺でも無理だろう」

 そういって、向かってくるキバオウを蹴り飛ばす。

 そうしてる間に、腕が回復した。

 やっと動く用になった腕で、回復結晶を持つ。

「さぁ、どうする?今なら10人でも殺すことが出来るぞ」

「お前みたいなビーターがいるから、一部の連中しか強くなれへんねん!」

 そういって走って逃げていった。その後を他の連中が逃げていった。

 軽くため息をついて、回復結晶は高価なので効き目の良いポーションをつかう。

「終わったよジル」

 岩の後ろで倒れてるジルの麻痺毒を治癒して町へと向かった。

 

 

 ちなみに、町に戻って宿で嫌と言うほどキバオウたちへの愚痴と、蹴り飛ばしたことを言われ続けた。「女の子を蹴るなんて…。どう責任取ってくれるつもり?」なんていうから「結婚システム使うか?」と問えば「好感度が今日でマイナス値になりました」といわれる。どうしろっていうんだろうか…。

 もう一つの余談だが、ドロップしたアイテムは重鎧で、ジルが使うと重すぎるとのことなので露天で売った。良い値段になった。

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