ソードアート・オンライン もう一人のクオン   作:神滅

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25層 下

 とうとう、この日がやってきた。25層のボス部屋攻略。

 前調査では中にいるのはエリアボスのような巨大なリザードマン。

 鎧や兜はエリアボスと同じだ。違うのはエリアボスより大きな肉体と両手斧を片手で持ち上げ二本持っている。

 雑魚はPOPしないがボスの二本の斧が厄介だ。2本の斧を受け止めれるかどうか、避けられるかどうかが鍵となるだろう。

 今回のボスの討伐には俺やジルはもちろん。キリトにアスナ、攻略メンバーのほとんどの顔がそろっていた。その中には、昨日戦ったKと同じ格好の連中もいた。

「クオン、どう思う?」

 隣を歩くジルが俺にだけ聞こえるように呟いた。

「ボスをみないと解らん」

 感想をそのままいってやる。

「クオンさー。キリトとの決闘から機嫌悪いよ。勝ったんじゃないの?」

 その問い、「あぁ」と頷く。

「そして、探していたもう一人のクオンに出会い勝った」

「そうだ」

「何で機嫌悪いの?」

「悪くない」

「悪い」「悪くない」

 ピリピリした雰囲気になる。

「はぁ…」

 ため息を吐きジルは何も聞かなくなった。

「気持ち切り替えていくぞ」

 とうとう、ボス部屋前まで来た。

「エリアボスのようにさせないでくれよ」

 両腕が使えなくなり一撃で死ぬ状況になったあのエリアボスとの戦い…。

「今度は大丈夫。もう、迷惑かけないから…」

 震えた声でそういった…。

「あぁ…。今度は二人とも無事に帰るんだ」

 

 

 ボス部屋に入った俺たちを出迎えたのはエリアボスより大きいボスだ。

「全軍戦闘開始ー!」

 リーダー格が言って、壁役が前に出て攻撃を受ける。

「一斉攻撃ー!」

 その合図にアタッカーが攻撃を仕掛ける。もちろん、俺やキリト、アスナたちのことだ。

 だが、攻撃の合図で大体の人が見落としていることが、攻撃を受け止めたのは一回だ…。

 そのことに一番に気づいたのはキリトだった。

「全力で後ろに飛べ!」

 俺やアスナ大抵の奴はその言葉に体が反応してしまい、後ろに飛んだ。そこに、大きな斧が通過した。俺たちが突っ込んで行ったらかなりの被害だろう…。

 逃げれなかった3名が入るが被害は軽くすんだ。3名も2から3割ほど減っただけだ。剣技でない、ただの攻撃のようだ。

「武器を二つ持ってる!両手の動きを良く見ろ!」

 キリトが指示をしている奴に叫ぶ。

「はぁぁ!」

 斧が通過した瞬間に飛び出したおれは剣技を発動させて鎧を叩く。防具を通すスキル『鎧通し』そこまでの威力はないが鎧の破壊が目標である。

「離れろクオン!」

 キリトが叫ぶが、鎧を殴るために飛んだ俺はまだ空中だ。

 右から強い衝撃。ボスの拳が俺を叩き潰した。

「クオン!」

 ジルが叫ぶ。

 もろに直撃した俺のHPは2割ほど削られていた。

『ぐぉぉ!』

 リザードマンが吼える。

 斧が振り下ろされる。

「あぶねーぞ!」

 壁役の一人が巨大な盾で攻撃を受け止める。

「攻撃を止めても油断するな!」

 一本目の斧を止めても、二本目を振りかぶる。

「フン!」

 その一撃を一人の男が止めた。

 そいつの持つ盾は十字型の大きな盾で片手剣を持っている。

 見覚えのある顔かと思えば…。前に決闘をした鎧の男だ。

「行くんだ。ここは私達がおさえよう!」

 いや、俺はここでいい。

「はぁぁ!」

 二人が止めている武器に向かって剣技を放つが…。壊れない。さすがに頑丈だ。

「ボスを倒すんだ」

「あぁ、そうする」

 ボスが斧を振り上げたの俺たちは別れる。

 壁役が攻撃を受け、アタッカーが攻撃する。すこしして気づいたのだが、攻撃をされたときにボスは攻撃出来る状態なら攻撃をした者に攻撃を仕掛けてくる。いわゆる、反撃だ。

 しかし、壁役や鎧の男が皆を守るおかげで大きな被害は起きていない。

 とうとう最後のバーが削れ始めた頃に問題が起こった。

「ラスト一本だ!気を締めて行くぞ!」

「「「「おぉぉぉ!」」」」

 士気は十分だ。このまま押し通せると思った…。

『ギュァァァ!』

 ボスが苦しそうな声で吼えた。その時POPした…。

 エリアボスよりも一回り小さいリザードマンが両手剣を持って現れた…。

「うわぁぁ!」

 一部の場所から悲鳴が上がる。

「何だよこれ…。こっちにもうわぁぁ!」

 そう、2体現れ、POP時に範囲攻撃の剣技を放ち周りを切り裂いていく。

「来るな来るな!」

「下がれ!下がれ!」

 周りで悲鳴が上がり、そこに危険を感じた者達が転移結晶でボス部屋から退避する。

「クオン。私達も…」

 ジルが周りの雰囲気にのまれ撤退を勧める。

「ダメだ。ここで引いたらボス攻略は難しくなる一方だ」

 そう、以前ボスが中ボスクラスをPOPさせた時、時間を置いて攻略しに行ったら、POPM(現れたモンスター)はそのばに入続けた。このことから今回のボスもそうであるといえるだろう。

「以前の攻略で現れた時は、ボスに密着してはがすのに苦労したはずだ」

 その時は1体だったが、今回は2体だ。現在POPMはボスから離れている。今のうちに倒すのが得策だろう…。

「でも…」

 ジルが言いたいことは解る。攻略メンバーは半分以下に減っている。

「それでも1体は倒す」

 ボスに背を向け、一体のPOPMに向かう。

「いい判断だ。ボスは私が任されよう。君はあのモンスターに集中したまえ」

 すれ違った時、鎧の男がそんなことを言った。

 ボスは何とかしてもらうとしても、もう一体はどうなるのかと見て見ればキリトやアスナ、攻略ギルド風林火山のメンバーが戦っている。

 目の前の敵に集中できることを確認して、拳を握り締める。

「加勢する」

 『K』と同じ服装をした奴らに言う。

「助かる。攻撃パターンは…」

 リーダー格が今までみた攻撃パターンを教えてくれる。

「解った!」

 飛び出し、縦に振り下ろされる剣を蹴りで軌道をずらす。

 周りでざわめきが起こるが気にせずに剣技を打ち込む。

 右と左の掌底撃ちを叩き込む。

『ギュウララ!』

 バーを軽く減らしたが…。

 左からの衝撃で右に飛ばされ、地面を転がる。

「な、なんで…」

 剣を持たない方が俺がいたところ辺りにあるのを見れば、拳によって吹っ飛ばされたのが解る。

 俺のHPバーがどんどん減っていく。2割ほど残して止まった。

「クオン!」

 心配そうにジルがこちらを見る。

「バカ!前見ろ!」

 モンスターの剣技が周りの人を倒す範囲系でジルも攻撃範囲内に入る。

「きゃ…」

 剣に切られたジルは周りの人と一緒に吹き飛ばされる。

「つぁぁ!」

 体が思ったより速く動く。昨日、会得したスキルのおかげか…。

 剣技の手刀を打ち込む。

『ズン!』

 今までにない効果音が出てモンスターのHPの4割以上を抉り取った。

「なんだあいつ!?」

「さっきより強い?」

「クオン…?」

 周りは俺の変化に唖然とする。

 反撃で振り下ろされる剣を裏拳の剣技で軽く弾く。

『バキン』

 つもりだったが、剣の方が折れてしまった。

「え…?」

 さすがの俺も驚いた。だが、攻撃を繋げるチャンスを見落とさない。

 回転しながら繰り出す蹴り、回し蹴りを決め。モンスターは散った…。

「はぁはぁ…」

 俺は、次に倒すべき敵を睨みつけていた…。

 

「このまま、倒す…」

 視界の端では、キリトたちがもう一体のPOPMと戦っている。 

「クオン…。その力は…?」

 不思議そうな顔をしている回りの人たちからジルが聞いた。

「スキル、バーサーク。ある場所で受けるスキルだ。HPが半分を切った時から発揮して、能力値を上げる。HPが減れば減るほど強くなる。今、二割だかなりの力を出せる」

 それがこれほどとは思わなかったがな…。

「ここでボスを倒す!」

 告げると走り出し、ボスの目の前まで一瞬で詰め寄る。

「待たせたな」

 正拳突きをボスの鎧を殴る。『ベコン』となった。

「ここからは俺のワンマンだ」

 ボスの反撃を横に転がって避ける。

「回復をしたまえ、そのHPだと一撃で死ぬぞ」

「俺の持つスキルのためだ」

 肘撃ちをボスに当て、反撃を弾き、斧の柄を折る。

「凄い力だ。このままならボスを倒せるぞ」

 本来HPバーは一人の攻撃では変化は良く見ないと解らない、何ドットか減るだけだろう。

 だが、今の俺は違う1割とは言わないが、かなりの量を減らしている。

「クオン。危ない!」

 片方の斧が折れたので片手にしか気をつけていなかったが何も持っていない拳がこちらに近づいてくる。

 壁役たちは遠く間に合わない。

「つらぁ!」

 自身の肩を相手の拳に向けてタックルする。これもまた、剣技だ。

 攻撃を攻撃で相殺できずわずかにダメージを受ける。

 わずかといえど、ボス級の一撃。俺のHPは2桁にまで減っている。

 元々のHPは3000はあるのが2桁まで減っている。本来のゲームなら逃げる。または、今回はあきらめて次をがんばろうと考えるだろう。

 だが、この世界は違う。

 今、この部屋にいるのはPOPMを倒すために残っているジルやKと同じ服装を含めた8名ほど…。ボスを倒すために残ってる俺と鎧の男。

 向こうのモンスターはHPはまだまだある。今、俺が死ねば…、鎧の男も限界が来るだろう、そうすればボスがフリーなる。その時点でこの戦いは負けるだろう。

 

 次こそ勝てるか?

 どこからかそんな問いが聞こえた。

 そんな保証はない。

 君はここで死ぬのか?

 死にたくはない。

 なら、ここで引くべきだ。

 

 あぁ解ってる…。

 引くべきだ…。

 だけど引けない時があるよな!

 拳をボスに打ち付ける。

 反撃が来る。今の俺なら簡単に避けれる。

「これで終わりだ」

 HPバーがほとんどなくなった相手に右の手刀が敵を貫く。

 

 

 

『バチン』

 

 

 

 

 攻撃が届かなかった…。

 システム的に攻撃が…。

 リザードマンの体が金色に輝いている…?

 おれの思考が停止した。その時右と左から攻撃が来る。

「避けろ!」

 鎧男が右からの斧を止める。

 左から拳を弾こうと腕を動かす。

 さっきの速度なら、攻撃を弾ける。

 俺の目が見せる世界は理不尽だった。

「嘘だろ…」

 俺の腕が届かない。

 攻撃の速さが遅くなっている…。

 HPバーの表示が2桁から4桁近くにまで回復している…。

 このゲームの回復手段は回復薬を使うか、回復結晶だ…。

 どちらも使っていない俺は、回復をしないはずだ…。

「あ…」

 俺の手は届かず。敵の手が届いた瞬間。気づいた…。

 戦闘時回復スキル10秒後とにHPを回復させる。死のゲームを生き残るための必須スキル…。

 それがこの運命を作り出した…。

 

 HPが回復したことでバーサークが弱まり、俺は死んだ…。

 

 HPが0を告げ、俺の体が消えていく…。

 俺の死が確定した。

 この世界で死んだら、現実で死ぬか…。

 俺がこの身でそれを知ることになるなんてな…。

 

 

 茅場 晶彦…。答えはどっちだ?

 

 

 

 25層。ボス部屋にて、ボスが出したモンスターを一瞬で倒した素手の剣士は勇敢に戦いその命を落とした…。

 他、始まりの町を拠点としていたギルドのマスターが彼の意思をついで戦い戦死。

 素手の剣士と共に行動をしていた鉾使いはボス攻略後姿を消した。

 

 これが、二人目の使い手は現れることがないエクストラスキル『無刀スキル』の使い手の冒険だった。

 

 

 

 茅場 晶彦 side

 

 私が用意したエクストラスキルのうち1つを持った少年が死んでしまった。

 私は『エクストラスキル』という、ネットゲームではない『特別な存在』を作り出したかった。

 『特別な存在』は人々を束ねるために必要だ。たとえば、ギルドの中のギルドマスターのように誰かが大勢を導く必要があった。

 その存在が『エクストラスキル』を持つべき者に与えられた役割だ。

「しかし、良かったともいえるか…」

 『エクストラスキル』のうちの1つの習得条件はこの世界で反応速度がもっとも速い物に与えられる者がある。ある時期まである少年がトップだったのだが、つい数日前から、死んでしまった者がトップになってしまった。さすがに一人に二つのエクストラスキルを持ってもらうのはまずかった。今回のことはそういう面では良かったとも言える。

 本来は『特別な存在』が人々を導いて育ててもらう予定だったが…。『特別な存在』な者達は一人で行動してしまうようだ。オンラインゲームなのだから協力プレイをして欲しいものだ…。

「しかたない…。私が本格的に動くとしよう」

 そういって、赤と白が特徴の服を手に取った。

 

 (完)

 




一瞬で終わってしまう物語…。
前作のクオンはバーサークで窮地を乗り切って生き残り、
今作のクオンはバーサークに裏切られ死亡…。

 打ち切りじゃね?とか思われたり、ボス攻略急ぎすぎとか言われそうだが…。
 打ち切りではありませんので、安心を最初からここまでの予定でした。
 ボス攻略については倒せる時に倒すべきだろ?って感じで理解していただきたいです。
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