股間のダメージは思った以上に深刻そうだ。だが今はこの場を離脱することを意識する。まぁ、あの坊主頭の先生っぽい奴にだけ気を付ければ良さそうだが。そう思っているとシャルティエが喚く。
「男の象徴を蹴られといて、蹴った本人を無視するとは何事よ!貴方は私をなめてるの?それともただの化け物なのかしら?」
うん、とりあえず無視だな。そう決め込んだ俺は彼女を無視する。さらに怒りが強くなったのが分かる。顔が真っ赤だし気が大きくなってるし。
「ちょっと言いかな?」
坊主頭の先生が声をかけてくる。やっぱりただ者でないな。長年の勘が教えてくれる。まあ、記憶だけの話だが。
「私はここ、トリステイン魔法学院の教師コルベールだ。君はいったい何者なんだ?」
コルベールと名乗った男は俺の見立てが正しければもと軍人か傭兵かと言ったところであろう。他の生徒と違い足さばきが素人ではない。とりあえず敵対の意思はなさそうだが。
「俺はエルヴィス・イングヴァルト。覇王流の継承者で祖先は覇王クラウス・イングヴァルトだ。」
大半の生徒ははてなマークを浮かべているが眼鏡で、青髪の少女は顔をしかめている。そして目の前のコルベール先生も少し苦い顔をしている。それもそのはず、覇王流は伝説とも噂だけの存在とも言われている流派だ。先ほどやって見せたが拳で魔法を無効化することができる。そんな技法は覇王流以外ではこの世に存在するしていない。
さらに近接特化型の覇王流はメイジでは防ぐことはほぼ不可能である。
「そうか、ではエルヴィス君。君は彼女、シャルティエ・ビ・ドラパーズ嬢の使い魔に選ばれた。これが何を意味するか分かるね。」
つまり大人しく使い魔になれと言うことであろう。使い魔、という言葉が出てきて予想はしていたがまた面倒なことに巻き込まれたものだ。
「断ったらどうなるんだ?」
「彼女が進級できなくなる。」
うっ!とうめくシャルティエ。
「それは私としては回避したい。・・・、彼女だけでなく生徒全員が使い魔召喚の儀式を成功させたい。先程同じように人間を召喚した、ヴァリエール嬢は成功させた。一番心配していた彼女が成功したんだ。あとは学園1、2を争う彼女だけだ。」
何気にピンクの髪の子を侮辱した気もするが無視して良いだろう。ふぅ、と息を吐く。確かにコルベール先生の言うことは正しい。先生が意図して進級できなくするなど言語道断。それどころか進級させるために頑張る先生は素晴らしいと思う。
だが、それはそれこれはこれだ。向こうの言っていることは確実に俺の人生を何も考えていない。例え使い魔になるとしても自分と比較して弱すぎるのでは困り者だ。できるだけ自身の主の力は強い方がよい。だがそれだけで良いわけでもない。
(仕方ない。戦い方と人柄だけは見してもらうか。)
「じゃあ、鬼ごっこしようか。」
俺以外全員の頭の上にはてなマークが浮かぶ。おっと、色々説明が抜けていたな。
「言っとくがただの鬼ごっこじゃあないぞ。逃げるのは俺、追いかけるのはシャルティエ嬢だ。俺は防御もしくは回避のみで鬼から逃げる。んで、シャルティエ嬢は何をしても良い。ここにいる生徒を使って囲んでも良いし、先生に前衛を任して攻撃してきても良い。それは自由にやって良いぞ。」
「勝敗条件と勝者の権利はどうするかね?」
コルベール先生が聞いてくる。さすが大人だ。まずそこが気になる辺りガチで来るつもりだ。俺も二十歳は越えているとはいえまだ子ども・・、までは言わないがガキだとは思っている。そのためか自然と思う。大人って意地汚いよな。
「そうだな、スタートして30分逃げきったら俺の勝ち。俺にクリーンヒットを与えればシャルティエ嬢の勝ちで良いだろ?
んで、権利はもちろん俺が勝てば即刻ここから出ていく。シャルティエ嬢が勝てば使い魔になってやる。それでどうだ?」
かなり破格の条件のはずだ。こっちは攻撃なしだから向こうは何も恐れずに攻撃に専念できるんだからな。まぁ、腐っても魔法学院。変な魔法とか撃ってくるんだろうな。ちょっと楽しみだ。
「どうするかね?ミスドラパーズ。私はやるしかないと思うが。」
コルベール先生は杖を持ち出し構えている。ヤル気満々だ。この中で一番強いだろうから少し楽しみだ。
「やるわ。人間だろうとなんだろうと強い使い魔が私には必要なの。」
シャルティエ嬢の決意も決まったようだ。回りの生徒が一番喜んでいる気もするのは何故だろうか。
「じゃあ、行くぞ。よーい、スタート!」
瞬時に気配を偽る。消すのではなく偽る。これでコルベール先生のスタートの妨害に成功した。やはりと言うべきかコルベール先生は気配を辿っていたようだ。焦った表情で俺を探している。
さて、シャルティエ嬢はと視線をめぐると魔力弾が此方へと飛んでくる。それを打撃で相殺して小屋の上に飛び乗る。
「あそこだ!みんな撃て!」
嵐のように魔力弾が降ってくる。怪我をさせないようにとの手加減なのだろうか、魔力弾のみの攻撃である。俺ははぁ、とため息をつき当たりそうな弾を掴む。
「なっ!」
と言う声が聞こえる。まぁ、普通は出来ないよな。魔力を掴むなんて。俺は満面の笑みでその魔力弾を投げ返す。金髪の改造制服の生徒の足元で爆発する。ギャーと叫んでいるが無視だ。
「ちょっと!攻撃しないんじゃなかったのかしら?」
赤髪の胸の大きい少女が此方に文句をぶつけてくる。学生であのスタイルは最早反則ではないだろうか。
「はっはっは!投げ返してやっただけだ。攻撃はしとらん。」
ものは言い様ってことかしら?と愚痴っているが無視する。
目の前が光で覆われる。それを拳で相殺する。拳が少ししびれる。雷系の魔法のようだ。中々いないレアな技能だ。雷系の魔法は真っ直ぐ飛ばすことが難しいため使い手を選ぶのだ。狙って撃てる奴は天才を自負できなくもない。
「雷を打撃で相殺できるなんて貴方はやっぱり化け物ね。」
いつの間にかシャルティエ嬢が接近していた。しかも魔法の詠唱はもう終わっている。中々のセンスだと思う。だが圧倒的に速さが足らない。此方の懐に杖を突きつけてくるが膝で杖の向きを強制的に変える。
その反動で真上へと雷が飛んでいく。いつもなら蹴りを叩き込むところだが約束があるためぐっと我慢して大きく飛び退く。
「やっと見つけましたよ。」
後ろからコルベール先生の声が聞こえる。前からはシャルティエ嬢が追撃のために迫ってくる。俺は空中で止まる。驚きと感嘆の声が聞こえるが無視して両腕を地面へと叩きつける。
「覇王震烈!」
地面が揺れる。その揺れは凄まじくコルベール先生以外全員が地面に座り込んでいる。それは自分を天才と称するシャルティエ嬢も同じだ。
ただ水色の髪の少女のみ自分の使い魔であろう龍に乗っているため無事のようだ。
「このっ!」
本気になりつつあるコルベール先生が接近してくる。魔法による牽制を避けるのではなく打撃で相殺する。至近距離で魔法と拳がぶつかる。俺はすべてを相殺しきる。それでもコルベール先生は杖で殴りかかってくる。それを見て回避する。
「かかったな!」
コルベール先生が笑う。足元に魔方陣が現れ、赤い鎖が俺の両足と左腕を拘束する。設置型のバインドだ。なかなかに硬い。コルベールは肩で息をしながら言う。
「私たちの勝ちだ。さぁ、ドラパーズ嬢。決めてくれ。」
シャルティエ嬢が待ってましたとでも言いたげな顔で詠唱を始める。長い詠唱だ。そんなに俺を殺したいのか。だが先ほども言ったがやはりスピードが足りない。バキッと鎖にヒビが入り割れる。
「アンチェイン・ナックル。」
俺は拳を魔方陣に叩き込んでいた。すると鎖が全て切れていた。もちろんそんな状態で彼女の最強魔法が当たるわけがない。俺はあえて避けずその場に構え、またしてもあの技を放つ。
「覇王断空拳!」
シャルティエ嬢の最大魔法とぶつかり互いが消滅する。この時他の生徒たちの心が折れたのは言うまでもないだろう。
さて、なのは側の要素魔力弾とバインドが出ました。
効果はお互いともなのはの時と代わりはございません!