死屍累々という言葉が正しいんだろうなぁ。生徒はほとんどが疲労により倒れている。魔力不足だ。立っているのは金髪の改造制服の少年と青髪で眼鏡の少女、コルベール先生とシャルティエ嬢である。
根性はあると思う。だが根性だけでは駄目だ。最悪あとひとつは主足る資格がほしいところだ。
「さぁ、もう終わりか?眼鏡の子はやる気無さそうだし、改造制服はフラフラだし、コルベール先生は本気じゃないし、シャルティエ嬢も体力がギリギリだしな。」
と言ってもシャルティエ嬢は目をギラギラさせているからまだ大丈夫だろうな。
シャルティエ嬢がまたもや詠唱を開始する。今度は早く数を出す。格上を相手にするなら正解だ。まぁ、対メイジの話だが。此方に向かってくる雷の魔法を打撃で相殺すると、目の前に大きな氷が現れる。それを蹴り落とす。砂煙でなにも見えない。
「けど、気配でバレバレだ。」
砂煙に紛れ二人が迫ってくる。一人はコルベール先生。もう一人は多分シャルティエ嬢だ。ふぅ、と一息いれコルベール先生の目の前に移動する。急に現れた俺に驚きとっさに後ろに飛ぶ。
それで、コルベール先生は暫くこちらを補足できなくなる。そして背中に手を回し拳を受け止める。
「まぁ、狙いは悪くないんだがな。」
ギリッと歯軋りが聞こえる。そんなに俺をぶん殴りないのかシャルティエ嬢よ。
「私は負けられない。誰にも負けたわけにはいかない!母さんを助けるためにも。」
その言葉に眉を潜める。そして頭に声が響く。
(待ってください。オリヴィエ!オリヴィエー!)
目を伏せる。嫌なものを思い出していしまった。クラウス・イングヴァルトの一番辛い記憶。負けたくないと言うは覇王と同じだ。きっとシャルティエ嬢にもやらねばならないことがあるのだろう。
「はぁ、俺もお人好しだなぁ。」
はてなマークを浮かべるシャルティエ嬢の顔を見る。
「俺の敗けだ。お前の使い魔になってやる。」
驚いたような嬉いそうな顔をするシャルティエ嬢。その顔を見て少しホッとする。ただし、と付け加える。
「一つ言っておくぞ。使い魔契約はしない。けど、お前が抱えているものをどうにかするまで俺はお前のものになってやる。」
それで良いわというシャルティエ嬢が手を此方に出す。少し固まってから照れながら俺はその手をとる。
「これからよろしくね、エルヴィス・イングヴァルト。」
「おうとも、シャルティエ嬢。俺のことはエルで良いぜ。」
そうして俺はシャルティエ嬢の使い魔となったのだ。
あの戦いから1ヶ月がたち、学生たちは忙しく学業に精を出していた。と言ってもシャルティエ嬢はコルベール先生の言うとおり相当優秀らしく困っている様子はない。それをほほえましく思いながら庭に出る。
ここ、トリステイン魔法学院は貴族が魔法を学ぶ学校であるため設備がとても整っている。俺は使い魔扱いだからどれも使用させてもらっていないが。しかし友ができた。
「おはようさん、サイト少年。」
「おはようございます、エルさん。」
平賀サイト。黒髪黒目でこの世界には無い服を着ている。言わずと知れた『ゼロのルイズ』ことルイズ嬢に召喚されていたもう一人の人間使い魔である。始めは変な少年だとしか思っていなかったが今では完全に悪友である。俺たち二人は並んで食堂へと向かう。貴族が利用するため俺たちが食堂へと行けるのは授業中だけだ。
「あ、サイトさん。エルヴィスさん、おはようございます。」
と挨拶してくれたのはメイド服の女の子だった。黒髪黒目という珍しい容姿をしているがとても美人である。そして極めつけなのがシャルティエ嬢に劣らないほど大きな胸である。俺とサイト少年が鼻の下を伸ばす。
「ど、どうしたんですか?」
心配そうに聞いてくる彼女。おぉ、上目遣いは強烈だなぁ。
「いやいや、大丈夫だよシエスタ。おはよう。」
「おう!」
シエスタと呼ばれた少女はまだ少し心配そうにしながらも笑顔を見せてくれる。はぁ、主人にはぜひこうなってほしいものである。
「親父ー、今日も賄いをもらいに来たぜ。」
「またか!餓鬼ども。」
そう言って豪快に笑いながら厨房から出てくる大男の手には色々な料理の乗った大皿を抱えている。それを舌舐めずりしながら受けとる。
「親父、サンキューな。また後で皿を開始に来るわ。」
そう言って俺とサイト少年は親父とシエスタに手を振りこの学校のグランドに向けて歩き始めた。
グランドでは二年生、それも俺の主人のシャルティエ嬢とサイトの主人であるルイズ嬢が体育の授業に精を出している。
「なぁ、サイト少年よ。」
「なんですか?エルさん。」
「俺んとこのシャルティエ嬢とあの赤毛の子、キュルケ嬢だっけ?ってどっちがおおきいんだろうな。」
サイト少年が世界の確信に触れた人間のような顔をしている。いや、そんな人間見たこと無いけどさ。むむむ、と唸るサイト少年。他の人から見ればどうでも良い話かもしれないが俺とサイト少年にとっては生きるか死ぬかの選択肢を選んでいるかのようなレベルである。
「エルさんはシャルティエのおっぱいを揉んだことあるんですよね。どうでした。」
真面目な顔で聞いてくるサイト少年。自分の主人は無いもんな。まな板だもんな。そう思いながら親父からもらったサンドイッチを一口食べる。うん、旨い。
「何て言うかさ。第一印象が、柔らかくて、弾力があって気持ちよかった。」
ごくっと唾を飲み込むサイト少年に皿を差し出し一つ食べさせる。しかし俺に羨ましそうな目は向けたままである。
「くそ!ルイズにそれだけの胸があれば自ら靴紐踏んでラッキースケベになるのに。」
恨みがましく言うサイト少年とともに笑いながらシャルティエ嬢を見る。相変わらず大きいなぁ。サイト少年も鼻の下が伸びている。まぁ、気持ちが分かるため二人して鼻の下を伸ばす。
そんな状態で体育を見ていると突然サイト少年の横で大きな爆発が起きた。ズレは五センチほど。ギギキという擬音語よろしくの首の動きで右を向くとそこにはルイズ嬢がいた。かなり怒っておられるお様子。
「あ、あ、あ、あんたたち!何体育見て鼻の下伸ばしてんのよ!そんなにお、お、大きな乳がゆ、ゆ、揺れているのを見て楽しいのかしら?」
あぁ、駄目だ。サイト少年は死んだな。安らかに眠れと心の中で告げながら俺は反対方向に四つん這いで逃げようとするとそこには黒のニーソックスがあった。おお、綺麗な太ももだ。まるでシャルティエ嬢のような・・・、と思いながら顔を見るとブルマ姿のシャルティエ嬢だった。グラビアアイドル並みのスタイルを持つシャルティエ嬢の姿は最早眩しく見えた。ルイズに説教を食らっているサイト少年がまた鼻の下を伸ばす。
「エルさん。約束しませんでしたか?女の子をやらしい目で見ないって。」
「あぁ、したな。だが俺はやらしい目で見てはいない。」
でしたらどんな目で?と言うシャルティエ嬢の目を見ながらドヤ顔で言う。
「もちろんうちのシャルティエ嬢が一番可愛くてスタイルよくてエロいなって目で見ていたのさ!」
この後俺とサイト少年が魔法を乱射しながら追ってくる鬼と言う名の主人に捕まりお仕置きされるのは言わなくても分かる結果だろう。
この二人は煩悩枠確定