「艦娘グラフティ」(第4部)<電チャンと一緒> 作:しろっこ
「その気持ちだけで嬉しいよ」
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「艦娘グラフティ」(みほちん第4部)
第36話<涙とお酒>
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<<縁側:月より団子>>
お母様が、三角形に持ったお団子とは別に、大きな皿に別のお団子を持って来られました。
「さぁ、食べない」
(食べて下さい)
『わぁ~』
花より団子という言葉があったような気がするのですが、こういう場合は月より団子って言うのでしょうか?
みんな縁側の縁に腰かけたり、板のところに正座したりして、お団子を頂いてます。お団子からは、薄っすらと湯気が出ているのです。出来立てのお団子は、とても美味しそうなのです。
お父様が奥から大きなビンを抱えて、利根さんの隣に座ります。
「おう、またやるか?」
「あ、はい。頂きます」
急にかしこまった様な口調になった利根さん、面白いのです。
その大きなビンは、お酒のようです。薩摩白波というラベルが貼ってあります。お酒にも、いろいろな種類があるのですね。
「この前はちょっと、やりすぎだったな。ワシも後からうちのに叱られてな。だから今日は、静かに呑もう」
「そういうことなら……」
利根さんは、他の私たちをチラッと見ました。
「駆逐艦は今宵は、お預けじゃな」
私は別に、お酒は欲しくはないのです。隣で団子を食べている霞ちゃんも、まったくその気はないようで、黙々とお団子をつまんでいるのです。
でも島風ちゃんは、ちょっと不満そうなのです。
「え~、ずるい!」
「ダメダメ、これはな、大人の飲み物じゃ」
そう言いながら、二人は小さい器で呑み始めています。
聞いた話では、夏に訪問したときは、お祭りがあったり、人数も多かったりして、とても賑やかだったそうです。でも、今日はとても静かなのです。秋はやっぱり、こういうものなのでしょうか?
<<縁側:涙のわけ>>
とても静かな雰囲気の中で、庭からは、何か音が聞こえてきます。
「あれは?何ですか?」
私は誰ともなしに聞いてみました。
「あれは、鈴虫よ。あんた何も知らないのね」
霞ちゃんが言うのです。
「いえ……」
私は、知っていると反論しようかと思ったのですが、留まりました。ふと、さっきの霞ちゃんの涙を思い出したのです。
一方では島風ちゃん、さっきから利根さんと、呑ませろ、いやダメじゃと押し問答です。司令のご両親は、それを見てニコニコされているのです。
何となく今しかチャンスはないなと思って、私は霞ちゃんに声をかけたのです。
「霞ちゃん、月を見ると何か思い出すのですか」
私の問いかけが意外だったのでしょうか?霞ちゃんは、ものすごくギョッとしたような顔をしているのです。
「な……なによ、いきなり……」
こんなに慌てたような顔をする霞ちゃんを、初めて見るのです。私はひるまず続けるのです。
「ちょっと、心配になったのです。私は何も出来ないと思うのですけど、お話を聞くだけでも、気が紛れるかもしれないのです」
霞ちゃんはキッと、険しい表情をしたのです。私はまた怒られるかと思って、少し身構えてしまいました。
でも霞ちゃんは、すぐに自制したようなのです。手に持っていた残りのお団子を食べて、近くにあったお茶を飲みました。
「……」
しばらく、黙っていた霞ちゃんは、ちょっと遠くを見るような目をして語り始めたのです。
「私はね、アンタが想像できないような、いろんなものを見てきたのよ……」
「はい……」
思わず、私は正座してしまったのです。
「今さら話す気もないし、話したってアンタには分かりゃしないでしょうけど」
そこまで話して、霞ちゃんは私の目を見ました。一瞬、ドキッとしたのです。いつもの霞ちゃんとは違った、何となく穏やかな目に見えたのです。
「……ありがとうね電。その気持ちだけで嬉しいわ」
ちょっと、ビックリしたのです。でも、霞ちゃんはいろいろな物を抱えているのだなと思ったのです。
縁側のススキの生け花が、風に揺れているのです。月に照らされて、とてもキレイなのです。
<<縁側:やっぱりお酒>>
「そういうことなら、これも必要じゃな!」
突然利根さんが、霞ちゃんに覆いかぶさるようにして、肩に手を回したのです。
「な、なによ!いきなりっ」
「これじゃ、これ!」
利根さんは、霞ちゃんの目の前に器を差し出したのです。
「何よ?呑めってこと?」
「もちろんじゃ。じゃが、お主にと言うより、お主の思い出に対して呑むのじゃ」
利根さんのその言葉に、霞ちゃんは、一瞬で何かを悟ったような顔をしたのです。
私には分かりませんが、霞ちゃんには、何かが分かったのでしょう。そのまま器を受け取って、利根さんからお酒を注がれると、一気に飲み干したのです。
「ほぉ~、良い呑みっぷりじゃ」
「だ、大丈夫なのですか?」
私は思わず叫びます。
「大丈夫よ!このくらい」
霞ちゃんは応えます。もしかして、呑み慣れているのでしょうか?
すると、それに気付いた島風ちゃんが振り返って言います。
「ああ~、ずる~い!」
利根さん、観念したように言います。
「仕方ないのう。呑みすぎはダメじゃぞ!お母様……」
「わかっちょ~がな」
(わかっていますよ)
直ぐにお母様が、新しい器を取りに台所へ戻ります。
そして、ささやかですが、私以外のメンバーは、お酒を飲んで、静かに盛り上がったのです。
私は、お酒は要らないのです。それからも、ずっとお母様と一緒に、盛り上がる皆さんを見ていたのです。
お父様も、優しい目でニコニコされています。
夜空に浮かぶ月も、何となく、ニコニコしているような気がしたのです。
こうして、静かな夜は、過ぎていくのです。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
「みほちん第4部」=「みほちんシリーズ4」です。