「艦娘グラフティ」(第4部)<電チャンと一緒>   作:しろっこ

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私たちは中浦水門まで、やってきたのです。とても景色のいい場所でしたが、そこで霞ちゃんから無線が入ったのです。


第55話<緊急無線>

「違うわよ!馬鹿ねぇ……っ痛ぅ~」

 

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「艦娘グラフティ」(みほちん第4部)

 第55話<緊急無線>

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<<県道:中浦水門>>

 

でも、深い理由を聞くまでも無く、軍用車は境港市と大根島を結ぶ橋の袂(たもと)まで、やってきたのです。中浦水門っていう看板があります。

 

「渡らないからサァ、そこの脇の土手に停めたら?」

さっきから、島風ちゃんは詳しいのです。私の思いを悟ったのか、島風ちゃんが言います。

 

「ほらぁ、この橋ぃ真ん中が動くやつ、なんだか面白いでしょ~?だから、周りの景色も覚えてたんだ」

そうですね。軍人ですから、一回演習で通った場所の景色を覚えることも大切ですね。

 

車は右折して、土手の駐車スペースに停まりました。今日も天気が良いので、中海(なかうみ)と、橋の向こうにある平坦な大根島と、右手には島根半島が意外に、とても大きく見えるのです。駐車場の隣には、小さな船着場もあって、漁船や小さいボートがたくさん並んでいるのです。

 

ここから見ると、大根島と結んでいるその橋は、水門のようです。今は、その橋の上を車や人が通っていますが、その中央部分が水路になっていて、多分、そこの部分が跳ね上がるのですね。

 

島風ちゃんが、橋を眺めながら呟きます。

「ここはさぁ~、確か干拓するんだよね。やっぱり今、深海棲艦のせいで、外国から食べ物とか入ってこないジャン?だから、広い農場を作るんだって。中海は塩分も少なめだから、普通に干拓するよりも良いみたいだよ」

 

「詳しいのですね」

私は感心したのです。島風ちゃんは笑います。

 

「ムッフッフ~、利根がサァ、演習のたびに、同じこと繰り返すからさ、私も覚えちゃうんだよね~」

情報の出所は、利根さんのようでした。

 

「へぇ~、良いところジャン」

秋雲さんも、車を降りて腕を伸ばしています。やっぱり、全然悪い人には見えないのです。

 

「そうだねえ~、穏やかだねえ~」

巻雲さんも、ダブダブの袖で、メガネを持ち上げながら言います。本当に今日は、穏やかなのです。

 

<<県道:緊急無線>>

 

そのとき突然、私は無線を感知したのです。慌てて応えるのです。

「は、はいなのです!電なのです!」

 

「あんた!いまどこ居るのよ!!……っ痛ぅ~」

無線の主は霞ちゃんでした。何だか、頭が痛そうです。

 

慌てて答えるのです。

「いま、中浦水門なのです」

 

無線の霞ちゃんは呆れたように言います。

「はぁ?何でそんなところに居るのよ?着任の巻雲はそこに居るの?」

 

「は、はい。居るのです」

 

「で……」

ちょっと間が空きます。後ろの誰かと……大淀さんでしょうか?話をしているようなのです。

 

「ひょっとして、もう一人、そこに居る?」

探るような口調なのです。

 

「島風ちゃんが……」

 

「違うわよ!もぉ、バッカねぇ……っ痛ぅ~」

大声を出すと、霞ちゃんは辛そうなのです。

 

なぜか無線の声の後ろのほうから、ガハガハと言う笑い声と、それに対して怒っているような声が混じるのです。利根さんも、近くに居るのでしょうか?

 

ここでいったん、霞ちゃんの無線が切れて、再び無線が……今度は、大淀さんから新しく受電したのです。

「は、ハイなのです。電なのです」

 

やっぱり大淀さんからだと、ちょっと緊張するのです。

「落ち着いて聞いてね。巻雲さんと一緒に、もう一人別の艦娘がそこに居るの?」

 

「は……はい。居るのです」

何となく、後ろめたいのは何故でしょうか?

 

「その艦娘は、自分の名前を言った?」

大淀さんは冷静に質問するのです。

 

「……はい。秋雲さんなのです」

 

「……」

一瞬、無線の向こうで絶句しているような空気を感じたのです。

 

すぐに大淀さんは続けます。

「いいこと電ちゃん、良く聞いてね。これから神通を指揮官として車を廻すから。秋雲さんが逃げないように、上手に時間稼ぎをして。もし、移動するときは、その都度、連絡を頂戴。万が一に備えて、相手に抵抗したり、反発しないで刺激を与えないように注意してね」

 

ふと見ると、私以外の三人は、水門を眺めたり、笑いあっているのです。

「電、聞こえた?」

 

「は、ハイなのです。了解なのです」

はわわ~、秋雲さんは、そんなに悪い人には見えないのです。なぜ、こうなるのでしょうか?私だけが聞いてはいけないものを聞いてしまったような、重たい気持ちになるのです。

 

「なぁに?何の連絡?」

島風ちゃんが聞いてきます。

 

「ううん、何でもないの」

私は笑顔で応えます。でも多分、私の笑顔は引きつっていたと思うのです。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
「みほちん第4部」=「みほちんシリーズ4」です。
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