「艦娘グラフティ」(第4部)<電チャンと一緒>   作:しろっこ

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鎮守府のトラックがやってきたのです。そのトラックが何を意味しているのか?すぐ分かったのです。


第57話<追手、そして拘束>

「あれはね。お迎えなんだ~」

 

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「艦娘グラフティ」(みほちん第4部)

 第57話<追手、そして拘束>

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<<中浦水門:トラック>>

 

泣いている私を皆が心配してくれているそのとき、遠くから聞きなれた美保鎮守府のトラックのエンジン音が響いてきたのです。

私には、そのトラックがこちらへ来る目的が、直ぐに分かりました。ふと顔を上げて皆を見ると、島風ちゃんも、巻雲さんも、そして秋雲さんも急に無言になっているのです。

皆も、そのトラックが、なぜここにやって来るのか、何となく察しているようでした。

その姿を見ていたら、やっぱり哀しくなってきたのです。

 

「うっ、うっ……」

涙が止まらないのです。秋雲さんとは、ついさっき出会ったばかりなのに、なぜこんなにも哀しくなるのでしょうか?不思議なのです。

連装砲ちゃんたちも、不安そうに動き回っています。そのうちの一台が”アレは何だ”という感じで島風ちゃんを見上げているのです。島風ちゃんは、黙ってその連装砲ちゃんを抱き上げたのです。

 

「あれはね。お迎えなんだ~」

島風ちゃんは、ゾッとするほど淡々と呟くのです。私よりもたくさんの実戦を潜り抜けて、たくさんの戦果を上げてきた島風ちゃんなのです。

私は島風ちゃんよりも、いろんなことで負けているのは分かるのです。島風ちゃんは素晴らしいと思うのです。でも、ちょっと違う!このまま黙って、秋雲さんが連れて行かれるのを見ていても良いのでしょうか?

 

何とかしたい!私は、このままではいけないと思うのです。絶対に、助けてあげたいのです!……でも、なぜかダメなのです。やっぱり命令は絶対。軍規は絶対。哀しいけど、仕方が無いのです。

敵の兵隊は助けられても、味方の過ちは、どうしようもないのです!哀しいのです。もしこれが軍隊でなければ、何とかなったのに……。

 

巻雲さんは、ちょっと泣いているのか、さっきからメガネを何度も外して、その長い袖口で顔を拭いているのです。

秋雲さんは、もう観念したのでしょう。黙って、口をきりっと閉めて無言でトラックを見つめているのです。

 

<<中浦水門:拘束>>

 

やがてトラックが駐車場の手前で停まります。運転していたのは、神通さんでした。運転台からちょっと、こちらの様子を伺っているようでしたが、何かを後ろの荷台へ話しかけた後、無線でしょうか、耳に手を当てて呟いています。

 

直ぐにこちらにも無線が入ります。私は嗚咽を何とか押さえて応えます。

「うぐっ……、はい、電なのです……」

 

「電ちゃん、無事なのね?」

開口一番、大淀さんが心配してくれるのです。私はこみ上げて来るものを必死で押さえながら応えます。

 

「……はい、大丈夫なのです。神通さん、到着なのです」

 

「分かったわ。あとは神通の指示に従って」

 

「了解……なのです」

無線が霞ちゃんでなくて良かったと思ったのです。もしかしたら、霞ちゃんは調子悪そうだったので、ダウンしたのかもしれませんね。

 

やがてトラックのドアが開いて、神通さんが降りてきました。珍しく腰に銃のホルスターを下げているのですが、それには手は触れていません。

荷台からも、雷ちゃんや暁ちゃん、響ちゃん……ああ、第六駆逐隊のメンバーが降りてきたのですが、皆、ヘルメットをかぶって、やっぱり神通さんのように武装……銃を持っているのです。ちょっと大げさ?

 

その仰々しさに、秋雲さんの行動の重大さがまた、すごく私の上に圧し掛かってきた感じなのです。哀しさと同時に、気持ちが重くなってきたのです。車から降りた神通さんは、第六駆逐隊のメンバーを軽く手で制しながら近づいてくるのです。そしてジッと立っている秋雲さんに話しかけます。

「あなたが秋雲さん?」

 

「そうです」

 

「私が何のためにここに来たか、お分かりですね?」

 

「はい。ご迷惑をお掛けしました」

それを聞いた神通さんは、軽くうなづくと続けました。

 

「指令により、あなたを逮捕、拘束いたします。よろしいですね?」

 

「はい、お任せします」

 

「あ、秋雲ぉ~」

初めて、巻雲さんが袖を降りながら声を出しましたが、どうしようもない諦めのような、それは何とも言えない悲しみのこもった声でした。

連装砲ちゃんたちも、ジッとしています。きっと、こういう光景は初めて見たのでは無いでしょうか?それは私も同じなのです。

 

さっきまで、明るく話していた艦娘が、突然目の前で捕まってしまう。居なくなってしまう。これは……そう、戦場の感覚に近いのです。

でも戦場と違うのは、私がどんなに望んでも、決して目の前の秋雲さんを助けることは出来ないということ。目の前に居るのに!轟沈したわけではないのに……!

 

軍隊の規律を乱すことの恐ろしさを、初めて肌身で感じたような、キリキリと胸を刺すような、感覚的な痛みを覚えるのです。苦しいのです。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
「みほちん第4部」=「みほちんシリーズ4」です。
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