第99話
日課になっている訓練を終えて龍也さんの家に帰る。すると庭を見て驚いた……なんと庭には
「キュー」
「クー」
ドラきちと白い身体のドラゴンが戯れていた。なぜ?ドラゴンは一匹だったんじゃ?と私が首を傾げていると
「こんにちわ」
「え?うん。こんにちわ」
民族衣装のようなものを着込んだ。ピンク色の髪をした少女に声を掛けられる、少女はニコニコと笑いながら
「シェンさんですよね?お父さんに聞いてます」
にぱっと笑う少女はぺこりと頭を下げながら
「キャロ・ル・ルシエです。それとおいで」
キャロちゃんの呼びかけで白いドラゴンは空を飛びあがる。その姿はワイバーンと言う感じがした、そのドラゴンはキャロちゃんの足元に着地し
「フリードです。私のパートナーです」
「クー!」
ぴこぴこと翼を振るフリード。ドラゴンは本当に愛嬌があるようだ。私がそんな事を考えていると、リィンちゃん達が家からボールを持ってきて
「あそぼー!」
ぽーんと投げられたボールは私の隣のクリスさんに、クリスさんは良いよーと返事を返してボールを投げ返す。今度は私に投げられ、それを受け取り
「いっくよー」
「はーい」
両手を上げて嬉しそうに手を振る。アギトちゃん達へとボールを投げ返したのだった……暫く遊んだ後疲れたからと言って家の中に入り、庭を見ながらジュースを飲みながら。なんの気なしに
「最近こうして遊んであげているのが日課になってるよね」
龍也さんは訓練を終えて家に帰るなら、アギトちゃん達と遊んでやってくれと言っていた。最初は暇だしと思って遊んであげていたのだが、いつの間にか日課になってるねと呟くと
「だな。可愛いから良いのだが元気すぎて困るな」
途中で帰ってきてあそボーと言われて。断れずに遊んであげていたヴィクトリアさんも同意してくれる。するとクリスさんが
「これも龍也の訓練。シェンとヴィクトリアは理解してなかったの?」
へっ?私とヴィクトリアさんが振り返ると、クリスサンは涼しい顔をしたまま
「日常と非日常。ネクロと戦うと考えれば私達が足を踏み入れるのは非日常。だけど非日常に慣れてしまうと、日常の中にある物が見えなくなる」
クリスさんの視線の先ではドラきちとボールを追いかけている。アギトちゃん達の姿がある、楽しそうな笑い声と笑顔が溢れている
「日常の大切さを知る。それは護りたいという意思に繋がる。ドイツではそう習った」
そう言って部屋へ歩いていってしまうクリスさん。またISの分析でもするのだろう、私は窓の外で楽しそうに遊んでいるアギトちゃん達を見て
(日常の大切さか……うん。それは判るかな)
ネクロと戦うことはなのはさん達でも怖いと言っていた。それでも戦うのはこういう光景を護りたいからなんだなと思う、そして私もそうおもう。結構時間が掛かったけど見つけることが出来たみたい……ああいう、どこにでもある光景を護りたいって私は思うなあ……
シェンがそんな事を考えている隣でヴィクトリアは
(お父様……)
ホームシック&父に会いたい。それだけを考えていたりする、そしてヴィクトリアはIS学園に変えった後1度帰国すると事になるのだった……
この日。私とオータムは龍也に呼ばれて書類を書いていた、結構書くところが多いのだが、それも当然。中途採用しかも専属でのスカウトとして、訓練を飛ばして六課に就職するための書類だからだ
「住む所と仕事を用意してくれるって言うのは、嘘じゃなかったのね」
「私は嘘は言わんよ」
からからと笑う龍也。差し出された紙は雇用契約書なのだが、これがかなりの破格だ。要約すると
住む所として提供されるのは、街の一等地の高級マンション
魔法の適性がないが、PC系の操作に長けているので情報を集める部隊のロングアーチへ所属。オータムはアサルトで制圧等の任務についてもらう
交代制で夜勤もありだが、福利厚生も充実している。そして給料は
「年間1100万ってマジで?」
オータムが目を丸くしながらそう言う。私は1800万、はっきり言おう。予想の4倍以上の給料だ
「危険手当とかもあるからそれくらいだぞ?ヴァイスとか危険手当とかで1000万行ってるし」
龍也がそんな事をいいながら窓の外を見ると
「ぎゃあああああ……」
誰かが悲鳴と共に空を舞っていた、思わず隣のオータムと絶句していると
「あれがヴァイスだ。八つ当たりされたんだな」
八つ当たり!?それだけなの!?いろいろと話を聞いていたが、まさかここまでとは思ってなかった。どの道元の世界に帰ったところで、タスクに追われ、ネクロに狙われ続ける毎日だ。だからここで暮らしたほうがいいのだが
(スコール。あたし達は大丈夫なのか?)
(だ、大丈夫だと思うわ)
どうも不安が消えない。大丈夫なのだろうか、最後のサインの段階で止まっていると
「大丈夫だ。あれはスキンシップのような者だからな」
笑いながら言う龍也。あれでスキンシップ……生死の境を彷徨う事になるだろう。正直サインはしたくないというのが本音だが、どの道私とオータムには選ぶ道はこれしかない。私とオータムは覚悟を決めてサインをし龍也に手渡した
「ん、確かにじゃあまずはこれ」
机の上に置かれた鞄。置いたときに大きな音はしなかったけど……中身はなんだろう?
「当面の暮らしに必要な物はそれで集めてくれ、車が必要なら言えば貸すから」
あ、お金?給料の前借ってことね、鞄を受け取る。かなりの重量に少し驚きながら
「ありがとう。気前がいいのね」
「明後日には帰るから、それまでだがな」
そう言われて気付く。一週間って言うのは本当にあっという間だった。だけどこの一週間はとても有意義な物だったと思う
「ネクロに勝てるかしら?」
部屋を出る間際にそう尋ねると龍也はにやりと笑い
「勝つさ。絶対にな」
揺らぐ事の無い自信。これがもしかすると龍也の強さの秘密のかもね、私はそんな事を考えながら、龍也の執務室を後にしたのだった……
なお渡された鞄の中身は現金で500万入っており、魔導師の金銭感覚はおかしいと思ったのだった……
「えーと、これはここですか?」
前にティアナさん達に買ってもらった、デバイスキットを組み上げるのはISよりも難しかった。デバイスコアというパーツの調整に。基盤のハンダ付け……言い出せばきりがないくらい難しい作業が多かったが
「そうそう。そこでボルトを締めて溶接して」
自分の作業をしつつ、私とエリスの面倒を見てくれているティアナさんのおかげで、半日で何とか完成間近までこぎつける事ができた
「ありがとうございます、もう少しで完成ですね。ティアナのおかげです」
エリスが最後のボルトを締めて、道具を片付けてながら言うと
「簪もエリスも基礎が出来てたからね。私の教えることなんて殆どなかったわよ」
謙遜してそう言うが、基盤の組み上げやプログラミングを教えてくれた。ティアナさんがいなければとてもじゃないが、ここまで組み上げる事はできなかっただろう
「これはナイフなんですか?」
組み上げてきて、形が見えてきたのでそう尋ねると
「そうよ。護身用のナイフ形デバイスよ。魔力量で刃を調節できるから、ナイフじゃなくて剣みたいに使うことも出来るわね。簪とエリスは変換素質があるからそう言う攻撃も出来るわよ」
そうなんだ。完成したら搭載してみよう。効果は薄いかもしれないけど無いよりかはましなはずだから
「大丈夫よ、それだってある程度はネクロと戦えるんだから心配ないわ。それよりISだっけ?そっちの慣らしもしておいたほうがいいわよ」
ティアナさんの言う通りだ。改修したヤタガラスも弐式も出力が凄く高い、慣れておかないと
「続きは夜にしましょう。ここまで来たら完成は近いから心配ないわ」
そう笑うティアナさんに言われて、工作室を後にする
「行こうか?今なら訓練やってると思うよ」
今の時間なら間違いなく訓練をしているはず。だから行こうと言うと
「ですね。もうじきIS学園に帰るんです。思いっきり訓練できるうちにしておきましょう」
一週間は長いようで短い、もう明後日には帰らないといけない。そう思うと寂しいと思うけど
(この経験はとっても良かった)
違う世界があって、違う文化がある。この経験は誰にも言えないけどとっても貴重な経験だ。だから
(ネクロとの戦いが終わったらまた来たい。またここの人と話したい)
だけどその為には戦って勝つことを覚えないといけない。だから今は今時分の出来ることを全力でする、私とエリスは少し駆け足で訓練場へと向かったのだった……
訓練の後でシャワーを浴びて着替えにロッカーにいる時
「はぁ疲れましたわ」
深く溜息を吐くセシリア。日課になっている訓練だが、IS学園の物とは比べるまでもなくハードだ。だがその分色々と学べる事が多いので決して苦しいだけではない
「皆同じなんだから泣き言言わないの。それにセシリアの訓練が厳しいのは、ヴィクトリアさんの武器を自分のに搭載して欲しいって言ったからでしょ?」
そう。セシリアは本来ヴィクトリアのISに搭載されるはずの、実態とレーザーブレードを兼ね備えたブレード「アロンダイト」を搭載して欲しいと言い出したのだ。ネクロ相手では火力が足りないことを危惧していたセシリアが珍しく我がままを言ったのだ。ヴィクトリアは快くそれを譲ったのだが、セシリアには使いこなすだけの技能がなかった。それで剣の扱いに長けているシグナムにマンツーマンで訓練をつけてもらっているのだ
「うっ、はい……自業自得ですね」
なおシグナムの訓練は厳しいが、そのおかげでセシリアの剣術の能力は桁違いに上昇している。そしてクリス達の訓練は昼まで終わりだが、私達の訓練は自由参加だが、昼と夜もある。自分で望んで訓練に参加したが体力の消耗は激しい
「しかしそのおかげで大分馴れたじゃないか。改修されたISにも」
「確かにな。前まではまるで暴れ馬のようだった」
外見は同じでも何もかも違っていた。今までと同じように動かせば加速がつきすぎて、壁にぶつかったり。銃の反動を間違え背中から壁に追突したり……例を挙げればきりがないほどだ。だけど朝・昼・晩の訓練で漸くなれてきた
「模擬戦とかもできるかもしれないね」
髪を拭き終えたシャルロットがそう言う。確かになのは達に訓練をつけてもらうのも良いが模擬戦も良い……とここまで考えた所で我に帰り
「駄目だ。それは禁止されてる」
あっと言う箒と鈴。明日あたり模擬戦をしようと話していたからだ
「出力向上と武器の強化に伴い。監視下もしくは、なのは達以外との模擬戦は禁止されている」
治せるが怪我をする可能性が高いのでやめておけ。と言う事を龍也に言われているのだ
「そっかーそうだったわね。じゃああたしは明日はノーヴェに相手してもらおうかしら」
「では私は、ディードだな」
殆ど同じ歳なのに勝てない。なので明日こそはと息巻いている2人にシャルロットが
「でもさ。明後日の夜には帰るんだよね?僕は折角だから皆で観光にもう1度行きたいね」
確かに……折角だから皆で遊びたいなぁと話をしていると
「心配ない。兄様はちゃんと用意している」
「「「わ!?」」」
突然聞こえた声に驚きながら振り返るとオットーが髪を拭きながら。
「明後日バーベキューをしてくれるって、それにお土産とかを買いに連れてってくれるって。だから心配しなくていいよ」
そう呟いて出て行くオットー。独特な雰囲気を持っているのは知っていたが、さすがに驚いた。完全に気配を消していたからだ、だけどこの言葉で心配事はなくなったわけで
「では私はやはり、セッテだな。1度だけで良い勝っておきたい」
「僕はそうだねーチンクさんかなあ。あの人凄く応用力が高いから」
そしてそれぞれにそんなはなしをしながら食堂に向かった。腹も空いているし、何より疲れた。食べて取りあえず寝よう……
なお夜に大量に食べると太るが、龍也達の訓練は半端じゃなく厳しいので、体重はむしろ減り良い感じになっている。鈴にいたっては胸のサイズが増えたと言って喜んでいたのだった……
「はぁー疲れた」
朝からぶっ通しの訓練で正直へとへとだ。だけど
(強くなってるって実感できてる)
剣筋を見ることが出来なかった。ルシルファーの剣筋も当たっているのは変わりないが、直撃は避けれているし、良い感じだ。思わず握り拳を作っていると、突然膝の上に座ってくるマドカ
「一夏。髪といて」
首からタオルを提げて、ピンク色のパジャマを着ているマドカは後ろ手に櫛を渡してくる
「はいはい。動くなよ」
平常心を心がけながらそう言う。膝に当たる柔らかい感触とか、シャンプーの匂いは無視しろと自分に言い聞かせる。妹を意識するなんて変態もいい所だ。俺はノーマルなんだと言い聞かせながら、動くなよと言うとマドカは
「うん」
はやてさんの入れ知恵なのか、こうして最近は良くマドカは俺に甘えてくる。表情も少しずつだけど顔に出るようになってきてるし……良い傾向だと思う。それに素直になってきているので正直可愛い妹と思えるようになってきた。
「ん。終わり」
肩幅なので整えやすいと龍也に言われて教わったが、これで良いだろうかと思いながら言うと
「駄目だ、まだ毛先がぼさぼさ」
ん?んーそうなのか。じゃあ毛先を気をつけて梳こう。髪はデリケートらしいのでゆっくと梳いていると
「くすぐったい」
「え?えーと駄目なのか?」
ここで怒るとマドカがまた鉄面皮になるのでは?と思い言うとおりにしたほうが良いと思い尋ねると
「いや。その感じで良い、だがもう少し強めが良いな」
入浴を終えたらしく、部屋に戻ってきた千冬姉は首からタオルを提げたまま。俺の隣に座り
「マドカの後は私だな」
「なんで!?」
「姉さんを仲間はずれにするのか」
違う、仲間はずれとかそう言う問題じゃない。弟が姉の髪を梳くことがおかしいんだ、声を高らかにそう言いたかったが。ぐっとこらえて
(いや、ここは俺が大人になろう。千冬姉も髪を梳けば納得してくれる。ただの姉弟のスキンシップだ、問題ない)
「判った。マドカの後な」
とりあえず言う事を聞いておけば開放されるだろう。そんな事を考えながらマドカの髪を梳いた後に千冬姉の髪を梳いたのだった……
~20分後~
(どうしてこうなった!?)
左隣マドカ。右隣千冬姉。なおマドカは手錠で俺の手首と自分の手首を繋いでいる。少し、ほんの少し選択肢を間違えたらこれだ
「川の字で寝る。一夏が真ん中だ」
その言葉に即座に逃げ出そうとしたが、ボデイブローを喰らい悶絶。その間にマドカは布団をセット済み。抜群すぎるコンビネーションに思わず涙が出た、そしてそのまま逃げることも出来ず布団に寝転がされ今に至る。どうしたものかと考えていると
(んーん?)
不思議と逃げたいと思わない、それ所か安心する。これが家族のあり方なのかもしれない、いやブラコンとかは駄目だと思うけど。それでもやっぱり家族なんだなあと思う
(偶にはこういうのもいいかもな……おやすみ。千冬姉、マドカ)
俺はゆっくりと目を閉じて眠りに落ちた。寝るには少し早い時間だったけど、この安心感が余りに心地よくて、俺は深い眠りへと落ちたのだった。この日は不思議と悪夢を見ることはなかった、暴走してから見るオレの夢。牢獄の中から俺に手を伸ばしてくる俺の夢。それを見ることもなく、俺はとても穏やかな気持ちで眠ることが出来たのだった
なお翌朝。マドカと千冬姉に両サイドから抱き締められ、胸の感触と女性とは思えない膂力で締め上げられ、三途の川に叩き込まれると思いもしたのだが……なんかこれでも良いやと思えたのは何だろう……?
ちなみに俺は起こしにきた、箒と鈴によって救助されたのだが、手首と肩を脱臼しており。シャマル先生の元へと運ばれたのだった……
おまけ
その頃IS学園では
「あ、かんちゃんからメールが来てる~♪」
旅行に一緒に行けなかった本音が嬉しそうに笑いながら、ベッドに寝転がり携帯を見る
「たつやんの別荘なんだ~大きい所だねえ~それにこのワンちゃん可愛い♪」
かんちゃんの隣で嬉しそうに尻尾を振る灰色の子犬と大きな青い犬の写真に頬を緩める。だけど
「この犬なんだろう?雑種?」
見たことのない犬種に首を傾げる。ずんぐりした体格に短い手足と尻尾。見たことのない犬種だ。もう片方は体が大きくて野性味に満ちてるし……と首を傾げる本音は
「帰ってきてから聞こう~元気そうで安心安心♪」
幼馴染である簪だけ誘われたので断念したが、そこはやはり幼馴染と一緒に出かけたかったに違いない。だけど満面の笑みに安心した本音は携帯に
『楽しそうで良かったね~帰ってきたら思いで話をしてね? PSその犬なーに?』
とメールを打ち返信したのだった。なおこの犬は言うまでも無く
「キュー?」
「ちょっと大人しくしててね?」
「キュウキュ♪」
簪達がクラナガンに居る間に懐かれたドラきちであり、いくらなんでもドラゴンの写真は駄目だろうと言うことで幻術で誤魔化した物だったりする。そしてこの写真は
「おすわり。できる?」
「キュー?」
「やっぱり無理ですか?」
「んーお手くらいなら、教えれるかもしれない」
なお簪は結構犬好きで、犬に世話としつけは得意だった。それを生かしドラきちに芸を仕込もうとしていたのだが
「キュー?」
おなかを向けてころころと転がっているドラきちを見て
「少し難しいかもしれない」
どらごんに犬の芸を仕込むのは難しいと冷や汗を流している時の写真だったりするのだった。
なお簪の努力の成果でドラきちはなんとかお手とお座りを覚えるのだった……
第100話に続く
次回でクラナガン編は終わりです。さーてそろそろ束とかネクロ視点の話を大目にしてイベントを進めていこう
ちゃんと流れは出来ているので問題なく進むと思います。次回は終始ほのぼので行きたいですね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします