IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回も戦闘回で3つの視点でお送りします。前回よりも激しい戦闘で行こうと思います
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いしま


第106話

 

 

第106話

 

ネクロとの実戦は初めてだったが……驚くほど冷静なくらい周りが見えている。ゆっくりとまでは言わないが、無数のネクロの動きの1部がしっかりと見えている

 

(なんだ案外行けるじゃないッ!)

 

ネクロの目から放たれた魔力弾を回避し、素早く距離を取り

 

「お返しよッ!!!」

 

両肩の衝撃砲を放ちネクロを吹き飛ばす。だがその反動で2Mほど後退してしまう

 

(ちっ連射が売りだったのに、いやあたしの訓練不足か……)

 

強化された甲龍の衝撃砲の威力は凄まじい物があるが、その分反動も増した。正直な話今のあたしでは連射は無理だろう

 

「はっ!!」

 

「いっけえ!!」

 

ヴィクトリアのグローリアス・ヴィクトリーの横薙ぎの一撃と一夏の白式の雪羅のビームクローがネクロを引き裂き、消滅させる

 

「ふーこれで終わりかしら?」

 

構えを解きながら呟くと、後ろのほうで警戒していたマドカから

 

「馬鹿!なにをしている!この状況で警戒を解くな!」

 

マドカの鋭い怒声に驚き、構えを取り直すと同時に背筋が凍るような殺気を感じた

 

「へー中々頭が切れるのがいるじゃない?ねえ?」

 

この声は!?咄嗟に飛びのくと同時に地面にクレーターが出来る。何かの飛び道具の攻撃だと判る

 

「あそこだ!一夏!ヴィクトリア!下がれ!」

 

「ああ!判ってる!」

 

「ちっ。よりによってこいつか」

 

一夏とヴィクトリアがあたしのほうに来る。あたしは震える手を見て

 

(情けないわね。あたしッ!!!)

 

力強く拳を握り締め自らの足を叩き、気合を入れる。マドカが指差した方向を見た、そこには

 

「はーい、あたし?このあたし、ベールが殺しに来てやったんだから感謝しなさいよ?」

 

木の枝の上に座り、足を揺らしながらあたし見ているネクロの姿があった。山吹色のISを展開したそのネクロ……いや……

 

「平行世界のあたし……」

 

ベールと名乗ったそのネクロは楽しそうに笑いながら、拳を打ち鳴らし

 

「そうよ♪同じあたしだから……思いっきり惨たらしく殺してあげる!!!」

 

楽しそうにそう笑い、両手をあたしに向けて突っ込んでくるネクロ。咄嗟の事に反応できずにいると

 

「させねえ!」

 

一夏が割り込んでその突撃を止めてくれるが、そのままガリガリと地面を削りながら押し込まれてしまう。とんでもない力だ

 

「あーそっちの一夏か。別にあたしはどっちでも良いけど……さきにあんたを殺して連れて帰るのも良いわね!!!」

 

急に狂ったように笑うその声に、逆にあたしは冷静になった。ここであたしが引けば一夏が殺されると思うと恐ろしいまでに頭が冷えた。震えていた手足の震えも収まった

 

(マドカ、ヴィクトリアは支援!あたしが一夏のフォローに入る!)

 

2人の返事を聞かず、雪片弐型で応戦している一夏の脇に並び

 

「へー向かってくるんだ?あたしより弱いのに?」

 

馬鹿にするように笑うベール。同じ顔だけど、あれはあたしじゃない!怖いとなんて思わないし!逃げない!!!

 

「舐めんな!化け物になった奴に負けないわよ!!一夏!いくわよ!」

 

「お、おうっ!!」

 

あたしは隣の一夏にそう叫びベールに向かって、双天牙月を振り下ろしたのだった……

 

 

 

 

 

ネクロの動きが鈍くなってきた。エリスとシェンさんのおかげかな?そんな事を考えながらも、しっかりと教わったマルチタスクを続け魔法の発動の準備をしていると、静電気に似た刺激が首筋を走る

 

「シャルロットさん!」

 

「えっ!?」

 

呆然としているシャルロットさんの手を引いて、その場を離れると。巨大な火柱と雷の玉がその場を焼く

 

(あ、危なかった)

 

あのままだったら、ISごと焼き尽くされて死んでいた……

 

「へー良い感してるじゃない?小娘」

 

闇が人の形になる。和服に似た衣装に身を包み、金色の尻尾と耳を持つ女のネクロだった

 

「私はイナリ。いやさーこの世界ってさ。魔力少なくて調子でないのよねえ」

 

お札を胸の間から取り出して、くすくす笑っているイナリ。

 

(な……名にこのネクロ……なにかおかしい)

 

化け物だからまともとはいえないのは当然だが、それでもなおおかしいと思える

 

「いけっ!」

 

先手必勝と言わんばかりにシャルロットさんの手の中のショットガンが火を噴くが

 

「そんなの効く訳無いじゃない。バーカッ!」

 

お札を地面に叩きつけると地面が盛り上がり銃弾を弾く、しかもそれだけではなく岩の柱が地面を走りシャルロットさんに迫る

 

「嘘ッ!?「このおっ!!!」

 

予想外の攻撃に驚き反応が遅れたシャルロットさん。だけどシェンさんが横から岩の柱を殴り破壊する

 

「じゃあ次はこれ!雷よ走れ!」

 

イナリが無数の札を放り投げると黒い稲妻となり、私達に迫る。それを見た瞬間私はシェンさん達の前に出る

 

「簪!」

 

「判ってる!」

 

エリスの言葉を聞く前に前に出て詠唱待機にしていたプロテクションを発動させる。龍也さんいわく緊急程度の効果しかないらしいが体勢を整える時間稼ぎくらいにはなるはずだ

 

(え?なにこれ)

 

プロテクションに当たった瞬間弾け飛ぶ稲妻。衝撃もダメージも何一つ無い

 

「はッ!!」

 

稲妻と私のプロテクションの合間をすり抜けてエリスがイナリに切りかかるが……

 

「おっと危ない危ない」

 

お札が剣になり、エリスの一撃を弾く。イナリはその反動を利用して後退しお札を両手に構えて

 

「今ので大体判ったわ。そこの金髪は攻撃と防御特化。そこのポニーテールは攻撃と機動力。後ろの金髪は射撃支援。そこの眼鏡は支援タイプの魔導師ね」

 

!全員のタイプを一瞬で見破った!?もしかして今の攻撃は偵察の為に……

 

「そうと判れば後はねじ伏せるだけ。眼鏡と金髪はまぁ……手足をもぎ取ってヨツンヘイムに連れて帰ろうかしら?私達には魔力が必要だしい?」

 

にやりと笑うイナリは私とエリスを見つめている。その目は肉食獣と言って良いほどにギラギラとした輝きに満ちていて、思わず後ずさりそうになるが

 

(簪!私が直ぐ行くから少しだけこらえてて!!)

 

脳裏に響くフェイトさんの声。どうやら今こっちに向かってきてくれているようだ。私は恐怖で思考が止まりそうになるのを必死に我慢して

 

「シェンさん、エリスは前衛!私とシャルロットさんが支援する!フェイトさんが来るまでこらえるよ!」

 

今は戦うのではなく、生き残り時間を稼ぐことだけを考えるんだ……私は頭の中を切り替え、防戦のシュミレートと魔法の詠唱。そして全員が生き残るための作戦を考えるのだった……

 

 

 

 

激しい剣激の音が何度も何度も響き渡る。

 

「ふっはははッ!どうした!どうした!どうした!!防戦一方か小娘ぇッ!!!!」

 

高笑いしながら連続で振るわれるシャムシール。空裂と雨月を振るい続ける

 

(早過ぎる!それになんて重い攻撃だ!)

 

アヌビスと名乗ったネクロはセシリアもラウラもクリスも無視して、私だけを狙って攻撃して来ている。

 

「くそが!!!」

 

「はっ!ぬるいぞ!!」

 

弥生もネクロに殴りかかるがその攻撃を素手で受け止め、お返しだと言わんばかりに繰り出された拳が弥生を殴り飛ばす

 

「うわっ!」

 

「弥生!」

 

殴り飛ばされてきた弥生を受け止める。死線の紅(スカーレッド・オーガ)の装甲は陥没し、カラーリングも剥がれて来ている

 

(くそったれ、なんて馬鹿力だ)

 

(それは同意する。勝つ目が何も見えないな)

 

アヌビスはセシリア達を完全に無視している。それに対してセシリア達は何もしてない訳ではないのだが

 

「隙ありですわ!」

 

「思い通りにはさせん!!」

 

アヌビス目掛けセシリアとクリスの射撃を放つが

 

「無駄だ。我に射撃は届かない!そこで大人しくしていろ!雑魚共がッ!!!!」

 

完全に死角から放たれたのにアヌビスは見もしないで打ち落とす。これはさっきからも何回も繰り返されている

 

「くっ!やはり届きませんわ」

 

「これがあいつの能力か!厄介な能力だな……」

 

推測は確信へと変わった。アヌビスは直接攻撃に特化しており、そして射撃を完全に無効化する能力……

 

(戦えるのは私と弥生。それにラウラだが……)

 

ラウラの武装は完全に相手の懐に入らなければ使えない。間合いが広いシャムシール相手では戦えない。そして弥生のISは完全に近接特化で、SEがそのまま攻撃力になる能力だが、これだけダメージを受けていると攻撃力は低下している

 

(戦えるのは私だけか)

 

赤椿の能力で辛うじてSEが残っているが、それもいつまでも続かない。

 

「ふふふ。どうした?さっきまでの勢いはどうしたんだ?」

 

シャムシールを肩に担ぎ笑うアヌビス。その態度には余裕が見えている。

 

(いや、事実余裕があるのか)

 

自分に負けは無いと判っているのだ。だからこそのこの余裕……くやしいと思えるほど余裕が無い。

 

(圧倒的な戦力差。これがレベル3の上位レベル)

 

私達が倒していたLV3とは比べようが無いほどに力強さに満ちている……それに対して私達のISは半壊している。今のこの状況では何をしても勝てる見込みが無い

 

「箒!弥生下がって!!!ディバイン……バスターッ!!!!」

 

「こ、この攻撃は!?ぬぐあっ……」

 

なのはの声に驚き下がると同時に桜色の光がアヌビスを弾き飛ばす

 

「間に合ってよかった。ここからは私が」

 

「なのは……助かった」

 

完全にジリ貧だった。なのはが来てくれたことに安堵していると

 

「なのは!あのネクロに射撃は」

 

ラウラが射撃は効かないと警告しようとした時。砂煙の中から

 

「くっ……エース・オブ・エースッ!!!!」

 

シャムシールの片方が砕け、片膝を付いているアヌビスが姿を見せる

 

(どういうことだ、何故攻撃が……)

 

ラウラ達の射撃は無効化されたのに何故なのはの攻撃は通ったのか?それが判らず首を傾げていると

 

(もしかするとアヌビスはこの世界のネクロなのかもしれない)

 

龍也さんの言葉によるとネクロはその世界に適応した進化をするらしい、もしかするとアヌビスの射撃無効化能力は実弾。しかも私達の世界の武器。ISの兵器にだけ対応する物なのではないのか?

 

「ふっふふふふ……」

 

突然笑い出したアヌビスは私達を見て、シャムシールを鞘に収めながら

 

「我が目的はこれで達成した。IS学園の人間の戦力分析……末恐ろしい成長スピードだ。貴様等の警戒は必要なようだ……これからは貴様らも標的にさせてもらうぞ。シノノノ・ホウキ。ススキノ・ヤヨイ」

 

笑いながらアヌビスの背後に黒い影のようなネクロが現れる。あれはLV1ネクロか……?

 

「逃がすと思っているの?」

 

なのはがデバイス。レイジングハートを向けるとアヌビスは

 

「ふっはははは!!!逃げさせてもらうまでよ!覚えておけ!シノノノ・ホウキ!貴様の姉。シノノノ・タバネは既に我らにとって何の価値も無い!そのうちあの女は死ぬぞ」

 

姉さんが……死ぬ?突然の宣告に思考が停止する。殺されるのか?ネクロに……

 

「愚かしい人間を利用するまでよ!ふっははは!!!さらばだ!」

 

アヌビスの後ろのネクロがアヌビスを飲み込む。なのはが咄嗟に魔力弾を放つが

 

「待て……くっ。逃げられた」

 

命中したはずなのにアヌビスの姿はない。どうやら完全に逃げられたようだ。くやしいのか、何なのか良く判らない気持ちを感じる。手の中の空裂と雨月の柄ががしゃりと音を立てる。力を抜こうと思うのにそれが出来ずにいると

 

「最後の最後でしくじるなんて……はぁ……取り合えずご苦労様。よく頑張ったね」

 

なのはさんにそう言われて、やっと手の中から力が抜けた、いや手だけじゃなくて全身の力が抜け思わずその場に座り込む。私だけではなくセシリア達も同じようだ

 

「つ、疲れましたわ……」

 

「ああ……疲れた。一挙動一挙動に死ぬかも知れない恐怖。さすがに私も堪えた

 

「聞くだけじゃなくて、こうして目の前にして判った。ネクロの脅威を……」

 

「あーまだまだだなあ……」

 

口々に疲れたと呟きISを解除する弥生達を見ながら私は

 

(姉さん……今どこにいるんだ)

 

携帯には連絡が付かない、ネクロに切り捨てられた事を命の危機が迫っていることを伝えなければならないのに……それが出来ない。私は今どこにいるかも判らない姉さんの無事を心から祈るのだった

 

 

 

 

私は目の前で繰り広げられている高速戦闘に完全に圧倒されていた。援護とか手伝わないとすら思えない凄まじい戦闘に動くことが出来なかった

 

「雷光の戦乙女……まいったわねえ!」

 

「そうは思ってるようには見えないけどね!!」

 

黒い死神のような姿から、空色のボデイアーマーに赤いマントを羽織っているその姿は騎士の様に見えた

 

「全く……私みたいなLV3を相手に本気なんて大人気ないんじゃない!」

 

お札が宙にばら撒かれ、それぞれが炎・水・氷・稲妻の形を取り、私達に迫るが

 

「悪いね。子供しか狙わない相手に手加減する気なんて無いんだよ!」

 

赤いマントが振るわれると、突然私達の前に風が発生し、それが逆巻き向かってきた炎を掻き消す

 

「風と雷は私の味方。いつでも力を貸してくれるんだよ!ハーケンセイバーッ!!!」

 

紫電を纏った飛ぶ刃がイナリの手にしていた剣を中ほどから切り裂く

 

「すご……なにあれ……エリスさんは出来るの?」

 

シェンにそう尋ねられた私は首を振りながら

 

「出来ません。あそこまでの高密度なのは私にはまだ」

 

魔力刃自体を飛ばすことが出来るが、あそこまでの威力は無い。精々牽制が手一杯だ

 

「ふーん。流石に分が悪いわね……ベリト様に頼まれてきたけど最悪」

 

あーやだやだと呟いたイナリは手にしていたお札を全て和服の中に戻す。フェイトさんはその様子に訝しげに見つめ、油断無く左手のブレスレットから、発生している黄色の刃を向けながら

 

「何を企んでいるの」

 

「べっつにー?仕事を済ませて、ついでのそこのポニーテールと眼鏡を連れて帰ろうかなー?位に思ってただけだしぃ?」

 

その喋り方にさっきまでの刺々しい感じが無い。本気でこれ以上戦う気はなさそうだ

 

(なんとかなったみたいで良かったね。簪・エリス)

 

(う、うん……そうだね)

 

プライベートチャンネルで無事に戦いが済んでよかったと話している声を聞きながら。私も構えを解いた瞬間

 

「だからさー。任された仕事だけして帰るわ」

 

「!皆離れて!」

 

フェイトさんの怒声が聞こえたと同時に

 

「え?うわああああ!?」

 

「!きゃああああッ!!!」

 

シェンさんと簪の悲鳴が聞こえる。それに続いて

 

「くっ!これは!?」

 

シャルロットさんの悲鳴が聞こえた瞬間。地面から黒い手が現れヤタガラスの装甲を掴む

 

「これは!ぐっううううう!!!」

 

凄まじい放電音がする。ISのアラート音が繰り返し響く、絶対防御越しでも身体が痺れる。そして

 

(うっお義母さんが作ってくれたバックパックが!?)

 

その電圧に耐えれなかったのか、バックパックから火花が散り爆発する

 

「くっ……そこっ!!!」

 

フェイトさんが腕を振るうと雷の槍が地面に突き立つ。それと同時に電撃は止まったが、

 

「ラファールが……」

 

「私の神武も駄目だ……」

 

「そんなぁ……」

 

私含め全員のISが壊れてしまった。過剰な電圧に耐え切れず、制御PCの基盤が焼きついてしまったようだ。だけどそれでも最後まで私達を護る為に絶対防御を続けてくれた。それが無ければ私達も黒こげになっていただろう……しかしその僅かな時間にイナリは姿を消し

 

「あっははは!!!!この勝負は私の勝ちよ!」

 

高らかに勝利宣言の声だけがその場に残っていた。私は完全に壊れ機能を失っているバックパックとヤタガラスを見つめ、その場にしゃがみ込んだまま動けないのだった……

 

 

 

強い……なんて強さなんだ……俺はひび割れた白式の装甲と、刃こぼれしている雪片を見てベールの余りの強さに驚愕していた

 

「ほらほら!少しは反撃してみなさいよ!!!」

 

甲龍と同じく搭載されている衝撃砲。だが威力が桁違いに高いそれを乱射するベール。俺達はバラバラに分断され、追い掛け回されていた

 

「くっ!ぐう!?」

 

「がっ!?くそっ!!化け物が!」

 

マドカとヴィクトリアさんが衝撃砲で弾き飛ばされる。マドカの悪態にベールは一瞬きょとんをした顔になったが

 

「そうよ!化け物で悪い!!!」

 

狂ったように笑いながら鈴の使う双天牙月より一回り大きいそれを振り回しながら、マドカとヴィクトリアさんに追撃しようとするが

 

「俺を忘れてもらったら困るんだよ!!」

 

「あんたの相手はあたし達って言ったでしょ!!!」

 

雪羅から放ったエネルギークローと衝撃砲が背後からベールを打ち抜くが……

 

「あー忘れてたわ。だって弱すぎるしねぇ?」

 

完全に無傷でにやにや笑うベール。そしてベールが纏う甲龍。いや「落凰」には傷1つ無い

 

(くそったれ!なんて防御力だよ!)

 

心の中でそう叫ぶ。魔力をなんとか使えるようになった俺にはぼんやりとだが見えていた

 

(魔力にネクロの力、それにISか……ちょっとした要塞だぞ。これは……)

 

黄色に似た魔力の光に重なるように黒いネクロの魔力。そして最後に半透明なISの絶対防御の光。外見こそISに似ているが、その本質は城と言っても良い防御力を持った別物だ

 

「化け物になってまで生きてどうするのよ!」

 

「はっ!なーにも知らないあたしに言われたくないわね!あたしがどんな世界で生きてたかも知らないくせに!」

 

「知りたくなんかないわよ!化け物!!!」

 

(一夏。零落白夜の準備は?)

 

ベールと口論しながら双天牙月を必死で振るい応戦している鈴がプライベートチャンネルで尋ねてくる。普通に攻撃しても効かない、零落白夜を使うしかないのだ

 

(大丈夫だ、直ぐに発動できるようにしてある)

 

今まで1回も使わず機会を窺っていた。奇襲でしか効かないだろうし、仮に絶対防御を貫通したとしても3重の障壁を切り裂ける可能性は殆ど無い。だが少しは時間を稼げる筈だ

 

(少しずつだけど近づいてきてる。あと少しだ)

 

今こっちに高速で向かってきているはやてさんの魔力を感じる。だが近くにネクロの気配もあり、中々進めて無い様だが確実に近づいてきている。はやてさんが来るまで時間を稼げればいいのだ

 

(だったら早くして!もうそんなに持たない!)

 

鈴の悲鳴にも似た声が聞こえ零落白夜を使おうとした瞬間。ベールは鈴の双天牙月を片手で受け止めて

 

「あーイナリもアヌビスも撤退したのね」

 

静かな呟きだが、その言葉に込められた威圧感に気圧されて思わず零落白夜を発動することを忘れてしまう。そして次の瞬間

 

「遊びは終わり……死になさいッ!!!!」

 

双天牙月を握り潰すと同時に重々しい音を立てて落凰の両腕から鎖が放たれ、ヴィクトリアさんとマドカを締め上げる

 

「あっがああ!!!」

 

「ぐうう!?ISのぼうぎょ……ぐああああッ!!!」

 

凄まじい音を立てて放たれる電撃と鎖の締め付けにマドカとヴィクトリアさんの苦悶の声が響く、咄嗟に動こうとしたが

 

「う、動けない!?なんで!?」

 

まるで全身が鎖に締め付けられたように動かない。その事に驚き叫ぶと

 

「バインド……一夏は後で連れて帰る。だから大人しくしてなさい……んで……お前もだ!!!」

 

「えっ!うああああ!!」

 

「あっはははははは!!!」

 

鈴の頭を掴んで力づくで地面に叩きつけ、頭を踏みつけ笑うベール

 

「全部殺す……殺して、殺して、殺しつくす……ヴィスティーラもルーシエも皆殺す。あたしに必要なのは一夏だけだから」

 

落凰の纏う光が強くなると同時に鎖に締め上げられていた。マドカとヴィクトリアさんが吐血し悲鳴を上げる

 

「あがああ!うあああ!!」

 

「がはっ!うぐうう……」

 

「足をどけ……「うるさい。ゴミが」きゃああああッ……」

 

強烈な電撃でISが黒い煙を出している。もう何分も持たない、それに鈴は頭を踏みつけられるだけではなく、魔力で圧迫されているのかISの装甲が見る見る間にくぼんでいく。あのままでは圧死する……それが判っているのに身体が動かない

 

(力が足りない……俺は……俺には力が足りない)

 

バインドで縛り上げられ、苦しんでいる鈴達を助けることも出来ない。その事に激しい怒りを感じ……そして己を呪った

爪が掌の皮膚を突き破り、血があふれ出す。激しい怒りと自分への絶望。そして力を渇望した時……

 

(オレの出番だなッ!!!)

 

(そうだ。お前の力を寄越せ)

 

(てめえが消えても力が欲しいのか?)

 

(欲しい。護る力が……欲しいッ!!!)

 

俺はオレのささやきに耳を傾けた。そして次の瞬間には俺の意識は闇へと沈んでいた……

 

 

 

「う、ウォオオオオオオオオッ!!!!!!!!」

 

獣じみた咆哮が一夏の口から放たれる。それはまるで衝撃波のようにベールを弾き飛ばし、拘束されていたマドカ達をそして踏みつけられていた鈴をベールから開放した。だが鈴達の表情に安堵の色はなかった

 

「暴……走」

 

美しい白い装甲は闇のような黒に染まり、その姿を鋭利な甲冑へ作り変えていく、背中には赤黒い魔力で出来た4枚の翼が発生する

 

「ベールッ!!!!」

 

黒い仮面から覗くその目は赤く、殺意と憎悪に満ちている。そして鈴やマドカの姿をその目に映していなかった。憎悪と殺意に満ちた声でベールの名を叫ぶ

 

「あ……あは♪イチカーッ!!!!!!!」

 

それに対するベールも先ほどまでいたぶっていた。鈴やマドカに何の反応も見せず一夏を見つめ

 

「殺す!殺してやるぞ!!!ベール!!再びオレが貴様を殺す!!!!」

 

2振りの剣を構えるとその刀身が開き、黒い零落白夜の光が刀身を覆う

 

「あは!やってみなさいよ!出来るわよねーッ!!!あんたは前にあたし達を全員殺したんだから!なんでこの世界の一夏の中にいるかは知らないけど……今度はあたしが殺してあげるわよ!イチカッ!!!!!」

 

ベールとイチカにはそれぞれ互いの姿しか見えていなかった。そして2人は同時に瞬時加速に入り、互いを殺すことしか考えていない。狂刃を振り下ろしたのだった……

 

第107話に続く

 

 




一夏再びの暴走。イチカとベールは同じ世界の存在と言うわけですね。次回も当然戦闘回です、イチカとベールの戦いがメインになりますね。途中ではやてとか龍也も出しますけどね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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