IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は黒一夏と一夏の話をメインにして行こうと思います。話の大筋としては黒一夏の記憶を一夏が見る感じですね。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第110話

 

 

第110話

 

寝ているはずなのに妙に意識がしっかりしている……それは言うならば映画を見ている様な感覚と言えるだろう。だがその内容は映画とはいえないような凄惨な者だった……

 

『ああ。うあああああッ……』

 

廃墟の中で蹲り泣き続ける青年。白い鎧……だがそれはISではないと判る

 

(デバイスなのか?)

 

龍也達が使うデバイスと言う物と同じ物だと判る。しかし……

 

(あれは血なのか……)

 

本来美しいはずの白の甲冑は赤黒く染まっている。それは返り血だと判るのに、その近くには誰も居ない……いや

 

(ネクロなのか……)

 

黒い粒子が湯気のように天に向かって伸びている……ネクロが消えているのだと思い近づき

 

(うっ!?ラウラ……!?)

 

今まさに消滅しようとしているのは成人しているがラウラだとわかるネクロだった。虚空を写している目と目が合った瞬間。景色がぶれ今度は

 

『さよなら……ですわね……』

 

『ああ……そう……だな』

 

青いデバイスを身に纏っている、先ほどのラウラと同じく成人しているとわかるセシリアの胸に突き刺さっている剣……それを基点に消滅していくセシリアは

 

『ああ……死にたくないですわね……もっと……』

 

セシリアの最後の言葉は紡がれる事無く粒子として消えた。そして剣を落とした青年は

 

『ああ……セシリア!!すまない……ッ!すま……ない!!!』

 

激しい嗚咽と共に景色がまた変わる。そして俺は理解した、これはオレの記憶なのだと

 

(その通りだ、織斑一夏。最後まで見るが良い、オレの記憶をな)

 

脳裏に響いたオレの言葉。そしてそれから俺は流れ続ける記憶を見ることしか出来なかった。目を閉じても、耳を塞いでも景色も映像も俺の脳裏に浮かび上がっては消えていく

 

(う、ううううッ!!!)

 

余りに深い絶望と悲しみの記憶に押しつぶされそうになる。しかも俺と同じ顔をしているオレが、俺が良く知る人間を涙ながら殺していくのだ、ネクロになっているとは言え知人が死んでいくのを見て、俺は平気で居られるような人間じゃない。そして最後は

 

『ごふっ……』

 

『ははは……これでお前は私の……物だ』

 

箒いや、最後までネクロとしての意識を持つ桜鬼とオレは相打ちになり、俺が見ている景色は途絶えた

 

「お前の記憶を俺に見せてどうするつもり何だ……」

 

精神的に痛めつけられ、夢の中にも関わらず蹲っている俺にオレは

 

『別にどうもする気はない。だが今のままではお前の進む末路もオレと同じだという事を言いたいだけだ』

 

にやりと笑いながら言うオレに思わず俺は立ち上がり

 

「そんなことをはありえないだろ!」

 

この世界には龍也達が居る、オレが歩んだ記録を歩むわけがないのだ

 

『ただ1人の英雄では何もかも救う事など出来はしない、現実は非情なんだ』

 

龍也の記憶でも見た。龍也が全てを救おうと尽力し、そして救えなかったものに涙する記憶を……

 

『心当たりがあるようだな。それが『それ以上余計な事をしないでください』

 

俺の言葉を遮り姿を見せたのは白の少女と黒の少女。2人は俺の手を引いてオレの前から引き離す

 

『ちっ、まだオレの邪魔をするか……まぁ良い。俺はまたオレを必要とするさ、力がなくては何も救えないからな!!!』

 

重々しい音を立てて、無数の鎖が周囲から放たれオレの姿を覆い隠していく……徐々に鎖の中に消えていくオレだが、その鎖を引きちぎり、俺へとその手を伸ばしながら

 

『いつかお前の身体はオレがもらう。全てを救う為になッ!!!』

 

ついに鎖に捕まり、その姿を飲まれながらも、どこまでも深い絶望と狂気をその目に宿し俺を見つめ続ける……俺はその目に本能的な恐怖を覚え

 

「う、うわああああああああッ!!!!」

 

悲鳴を上げながら飛び起きた。嫌なくらい心臓が脈打っているし、額からは大粒の汗が零れ落ちる

 

「一夏!どうした大丈夫か!?」

 

俺の悲鳴を聞いた千冬姉が医務室に飛び込んでくる。俺は両手で顔を覆い

 

「酷い夢を見たんだ……大丈夫。大丈夫だから……」

 

千冬姉に言うのではなく自分に言い聞かせるように繰り返し言うと

 

「馬鹿。どこが大丈夫だ、酷い顔をしているぞ」

 

千冬姉は平気そうな顔をして俺の手を取り、自分の方を向けさせて

 

「泣け。情けない事に私に出来るのはこれくらいだが……泣きたい時は泣けばいい」

 

ぎゅっと俺を抱き締めながらいう千冬姉。その暖かさに昔の事を思い出した、両親が居ない事や千冬姉と俺のこと……考えても答えの出ないことと判っているのに、考えてしまい。泣いていた……その時も千冬姉は俺の傍にいてくれた

 

「ああ……うあああああッ……俺……俺はどうすればいいのか判らない……俺は……俺はぁ……」

 

俺はどうすればいいのか?それが判らない、ベールとの邂逅、オレの存在。そして俺は護りたい者を守れるのかどうなのか?そんな言いようの無い不安が俺を押し潰そうとしてくる。

 

「泣け……泣くだけ泣いてそれで眠れ一夏」

 

優しく俺の背中を撫でながら言う千冬姉の言葉。俺はその言葉の通り、泣いて泣いて泣き疲れるまで泣いて、千冬姉に抱きついたまま眠りに落ちるのだった……

 

 

 

泣き疲れて眠ってしまった一夏をベッドに横にして、カーテンでベッドの周りを覆ってから振り返ると

 

「随分と弱っているな、一夏は」

 

さも当然と言う感じで腰掛け、紅茶を手にしている龍也が居た。いかがかね?と言いながらカップを向けてくる龍也に

 

「見ていたのか?」

 

「さて?何のことかな?」

 

相変わらず食えない奴だ、何を考えているのか全然判らない。同じ歳でもこうも違うものなのかと苦笑しながら、龍也の前に座る

 

「ミルクティー?珍しいな」

 

龍也が進めてくるのは大体がストレートティーだ。それなのに今日はミルクティーだったので珍しいなと尋ねると

 

「そう言う気分の時もある。それだけの話だ」

 

そうかと返事を返し、自分の分のミルクテイーを口にしていると龍也が

 

「一夏は今重要な分岐点に立っているな」

 

その言葉を聞いて私はカップを机の上に置き

 

「どういう意味だ?」

 

何か私に隠しているのでは?と想い睨みながら尋ねるが……

 

「深い意味はないさ。このまま闘いから遠ざかるのも、それとも立ち向かうのも一夏次第。そう言う意味での分岐点と言ったんだよ」

 

その言葉の裏に何かあるとは思うのだが、残念な事に私では柔和な笑みの裏の龍也の真意を読む事ができない。これがもしはやてとかなら判るんだろうなと思いながら

 

「逃げるといったら如何するんだ?」

 

「別にどうもしない。一夏が出した結論がそれならそれで良いだろう?あくまで私はネクロに殺されないように鍛えはしたさ、だが気持ちで負けてしまったのなら……」

 

そこで言葉を切った龍也は私の目を見返してくる。その目はまるで吸い込まれるかのような、そんな不思議な目をしていると同時に、全てを見透かすような不思議な色をしていた

 

「一夏はそこまでの人間だったと言うわけだ。だから私がやることなど何もないよ」

 

笑うでもなく、怒るでもなく、ただ淡々と告げる龍也はカップを手に

 

「自分で片付けておけよ?じゃあな」

 

「まて……またか」

 

呼び止める隙も無く部屋を出て行ってしまった龍也。私は背もたれに背中を預けながら

 

(龍也は何を考えていた?)

 

あの目には絶対何か他の意味が合ったはずだ。龍也の真意は何だ?何かあるはずなんだ……

 

(一体何を私に……そして一夏に言おうとしていた?)

 

考えても考えても答えは出ない。変な話だが、私と龍也では見ている場所が違う。考えた所で龍也が何を見ているのか?それは理解できない……龍也と私では見ている光景が余りに違いすぎるからだ

 

「はぁ……まずい」

 

ミルクティーは不味くないのに、思わず私はそう呟いてしまったのだった……これから先ネクロの襲撃があったとして私に戦う力はない。暮桜は凍結状態だし、量産型のISでどうにかできる相手ではないだろう。思わず溜息を吐いていると

 

「千冬。出かけるわよ」

 

「何処へですか?私は一夏が心配なのですが」

 

いきなり医務室に来て出かけるというツバキさんにそう尋ねる。ツバキさんは地下のラボでISの修理をしているはずで、今出かける余裕なんてない筈なのに

 

「たまにはお酒でも飲もうって話になってね。気分転換にいいわよ?」

 

スコールも姿を見せてそう言う。これはあれだ、もう私は断る事ができないようだと苦笑しながら振り返り

 

「気配も無く後ろに回りこむのは止めてくれないか?」

 

「んー覚えとくわあ♪」

 

拳を振りかぶっているはやてはにこにこと笑っているまま……こういう所は怖いなと思いながら立ち上がり

 

「偶には付き合いましょう」

 

それに気分も落ち込んでいるし、アルコールを飲むのも悪くないと思いながら私は、はやて達に連れられるように医務室を後にしたのだった

 

 

 

 

走り去る車を見ながら私は熱い紅茶を口に含み。医務室で眠っている一夏の事を考えていた

 

(一夏の気配が変わり始めていたな……)

 

一夏の気配にまるで水の中に墨汁を落としたように、黒い濁りが混じり始めていた。暴走している……いや、別の世界の一夏の力が徐々に強まってきているのかもしれない

 

(魔力で押さえ込むのも限界か……)

 

私が身につけているブレスレットの魔力石に亀裂が走っている。これは白式に融合しているデバイスとリンクさせ、そのデバイスを媒介に一夏に私の魔力を流していたのだが、それも限界が近いようだ

 

(切っ掛けはやはりベール達か)

 

鈴やヴィクトリアから聞いた話だと、ベールと別の世界の一夏は同じ生まれで魔導師だったらしい。そしてネクロとなったベールたちを倒したのも一夏だったと……こうなると最悪のケースも想定しないといけないけだろう

 

(自分が殺したはずのベール達を再び殺すことだけを考えている復讐鬼……いや、壊れた心の持ち主か)

 

その一夏が表に出ているときに鈴達を庇っている。護る為に壊す、壊されないために殺す。私もかつてそう考えていた次期があった……私は飲み終えたカップをそのまま魔力で消滅させ

 

「最悪のケースを想定しなければならないな」

 

1つの体に2つの魂は存在できない、どちらかが消滅しなければ対消滅する。向こうはなんとしても身体の主導権を取ろうとするだろう、それに対して一夏は精神力も何もかも劣っている。それで考えれば消えるのはこの世界の一夏のほうだろう……

 

(心で負けるなよ、一夏)

 

魂同士の戦いで必要なのは力でも魔力でもない、折れない心だ。それさえ判っていれば後はどうとでもなる。今も医務室で眠り続けている一夏が再び剣を取れるかどうかは判らない。逃げるも戦うも一夏次第、私が口を挟む問題じゃない。その結果この世界の一夏が消えたとしてもそれは運命としか言いようがない。が

 

「殴られるかもしれんな」

 

千冬とかにな。もしそうなるとならば甘んじて受けるがな。この世界の一夏とあの世界の一夏は違う、千冬達が大切に思っている一夏ではないのだから

 

(だから、負けるなよ。一夏)

 

私にも誰にも今のお前に力を貸すことは出来ない、全てはお前次第なんだからな。私は心の中でそう呟きその場を後にした……ペガサスの事や束の事もある。考える事は山ほどあるだから一夏1人に気を向ける余裕はない、この世界でのネクロとの戦いはもう直ぐ傍にまで近づいてきているだろうから……

 

 

 

 

何重にもオレを縛り上げている鎖。ぱっと見抜け出る事は出来無そうだが

 

「ふん!」

 

軽く力を入れるだけで鎖は風化し消えていく。オレは自由になった拳を握り締め周囲を確認する、白一色だったここは徐々にグレーに染まり、そして黒へと近づいてきている。つまりオレの世界になりつつあるのだ。だから一時はオレを封じ込める事ができたが、それまでだったと言うことだ

 

「後はこの世界の俺を消す事だけだな」

 

雪華ともう1人が俺を押さえ込もうとしている。今はまだあの2人の方が力が強いが、そのうちオレの力が上回る。そうなればもう1度この世界の俺をここに引きずり込むだけで全てが終わる

 

「今度こそオレは全てを護る。全てを破壊したとしても」

 

あの世界でオレはリン達を救えなかった。だからあいつらはネクロになってしまった、だからあいつらを倒すのは同じ世界で暮らし、共に笑い合ったオレがやらねばならない事だ。そしてこの世界の俺では鈴達を守ることなど出来はしない、あいつには覚悟がない。剣を取る理由も判っていないだろう、そして護ると言う事がいかに難しい事なのかも……

 

「ならば絶望も悲しみも知らぬうちに殺してやるのが情けと言うものだ」

 

オレの手の中に現れた剣を振るうたびにこの世界の色は徐々に灰色になっていく、この世界が全て黒く染まったとき。その時こそが

 

「オレが完全に身体を手にする時だ」

 

徐々に鋭さを増していく風切り音を聞きながらオレはそう呟いたのだった……オレはもう何も失いたくない、だからこうして魂だけになってもなお生き永らえて来た。もうオレは魂だけの偶像ではないのだから……

 

「その身体は貰うぞ。織斑一夏」

 

オレの呟きは灰色の空へ吸い込まれ消えていくのだった……

 

第111話に続く

 

 




次回は箒とかと一夏の絡みを書いていこうと思います。今の一夏は相当弱っているのでいつもと違う感じの話で進めて行きたいですね。もう少しでハーデスとペガサスの戦いに入っていこうと思いますので、どうかよろしくお願いします
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