それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第112話
地下の整備室に来たワタシは思わず顔を引き攣らせた、なぜならそこには本来居るはずのない存在が居たからだ
「なんだ小僧」
不機嫌そうな顔をしているペガサスが腕組してどっかと椅子に座っていた。同じく整備室には普段いないフレイヤとシェルニカの姿がある。念の為の護衛と言うところだろう
「そうきにする事はないさ。外見が化け物って訳じゃないし、見た目は人間だから。見た目はな」
恐らくペガサスをこの場に招いた龍也が笑いながら言う、だがペガサスは不機嫌そうに
「2回言うな、腹が立つ」
刺すような殺気を叩きつけるが龍也は涼しい顔をしている。ここらへんはあれだな、確実に経験の差っと言うところか
「で?なんでいるの?」
ペガサスを見ながら尋ねるツバキに龍也は
「本格的なネクロの攻撃が近いと警告に来てくれたのさ。そして……「おい」ふむ。失礼少々口が滑った」
龍也の言葉を遮るペガサスはますます不機嫌そうな顔になる。龍也は平気そうに笑っているが、ワタシ達には少々きつすぎる殺気だ
「でも本当にネクロが協力してくれるなんてね?あ、砂糖入れる?」
「そのままで構わん。コーヒーにしてくれ」
平然とコーヒーを要求するペガサス。それを見ているしかないワタシ達は小声で
(座ってるだけなのになんていう威圧感なの?)
ペガサスは座っているだけなのにこの空間を全て掌握しているような威圧感を持っている。これが最上位レベルのネクロの力とでも言うのだろうか?
(私達がいても無駄と思うな)
(ISを展開しても勝てねえよ。だけどここにいるしかない)
小声で聞こえてくるシェルニカ達の声。だがその判断は間違いではない、シェルニカ達は傭兵上がりと言える。最も重要なのは生き残る事であり、クライアントの指示を守ることだ。例え力が足りないと判っているとは言え離れる事はできないのだろう
「それで?ここのせめて来るネクロはどんなネクロなんだ?」
「お前に話しても無駄だと思うがな、織斑千冬」
ふふんと笑うペガサスに千冬が顔を歪めるが
「安い挑発に乗るな、それとお前もだ」
龍也がペガサスと千冬の間を取り持つ。どちらも互いを信用する気はないという態度が見え見えだ
(私部屋に帰りたい)
(ワタシもだ)
いつものようにISの整備に来たのだが、明らかに今日はタイミングが悪かったと言わざるを得ない。出来るなら引き換えして訓練でもしていた方が良いと言うものだ。しかし1度この部屋に入った以上外に出るわけにもいかず、この居心地の悪い場所に居続けるしかない
「攻めて来るのは「覇皇ハーデス」。万全ではないはずだったんだが……ここ数日の奴は今まで以上に最高の状態になっている」
「万全ではないはずだった?どういうことだ?」
その言い回しに引っかかる物を感じてそう尋ねるとペガサスは
「やつはリンカーコア。魔導師が魔法を使う器官だが、説明は聞いているか?」
龍也から何回も聞いているので間違いない。魔法を使うのに必要な器官で、若い魔導師は再生する事もある、摘出される事で死に至る事はないらしいが、それでも身体に深刻なダメージを受けるらしい。そして
「ネクロにとっては毒だと聞いている」
ネクロにとっては魔力は必要な物だが、リンカーコアを直接取り込むことは自身の消滅に繋がり危険だと
「ああ、その認識で合っているが、極稀にリンカーコアを取り込めるネクロが存在する。特異態だ」
特異態?聞いた事が無いと視線で龍也に言うと、龍也は肩を竦め
「希少種だからな。滅多に存在しないネクロだ」
「ヴォドォンもそれに含まれるがな」
あの腐敗を使いこなすネクロか、確かにあいつも他のネクロとは違う能力を持っていたというのは見て理解している
「ハーデスはリンカーコアを体内に蓄積する事で自身の能力を上げる。この世界にリンカーコアは存在しない自身の能力を上げる事は出来ない筈だった……だが奴は何処かでリンカーコアを入手し体内に大量に蓄積している。今の奴の力がどんな物なのかは知らないが、相当強力になっているのは判る」
リンカーコアを力に変える……普通のネクロの常識に当て嵌まらないネクロか……そんなネクロが如何してIS学園に来るんだ?
「あいつは戦闘者としての意思が強いネクロだ。そしてこの世界の存在はあまりに脆弱、ここまで言えば判るだろう?」
「私が目的か……まぁ色々と策を講じてくるネクロよりかはやりやすいがな」
「IS学園が更地になっては困るんだが?」
千冬の言葉に龍也とペガサスはやれやれという感じで肩を竦め
「向こうが私を狙っているのなら移動してやれば良い。迎え撃つほうが楽だからな、とは言え一夏が不安要素か」
ここ数日の一夏の様子を考えるのなら、戦闘に出すのは控えたい所だ
「あの小僧がどうかしたのか?」
「精神的に不安定でな。出来る事ならば私とお前だけで戦えればいいんだが」
「無理だ。あいつの障壁はこの世界の技術と魔法のハイブリッド。両方同時に対応しなければならない」
「しかしだな……「それにハーデスは一夏を狙っている。1度死んだネクロが蘇った原因とも言えるしな」
その言葉に千冬の眉が動く、龍也も信じられないという顔をしている。
「えーと良い?」
「なんだ小娘」
ペガサスに見つめられた楯無は少し肩を竦めてから
「その言い方だと1回鈴ちゃん達のネクロは死んでいるように」
「死んでいるんだ。俺も見たから間違いない、あのネクロ達は1度死に、消滅している。それなのにコアを自ら復元し肉体の再生を始めていた。丁度その時に回収され、この世界に運び込まれたんだ。確か運び込まれたときは殆ど肉片だったはずだ……」
とんでもない話になってきたな、普通のネクロはそこまで消滅すれば再生できないはずなのではないのか……しかし肉片からあそこまで回復するとは、ネクロとは本当にとんでもないな
「執念かはたまた愛憎か……どっちにしろ厄介な存在である事は間違いないな」
「俺には関係のない話だがな。まぁこれで俺の話は終わりだ、警戒しておけ」
ペガサスはそう言うと立ち上がり、闇の中に溶けるように消えていった
「ネクロは皆あんな能力があるのか?」
「基本的にネクロは影に関する能力を持つ。まぁ上位レベルは失う事が多いがな」
龍也の説明を聞きながらツバキがコーヒーを啜りながら
「より強い能力を得ることができるから?」
「そうだ。影を移動する能力は大体はLV3の地点で失う事が多いがな」
ネクロの進化能力と言うのは本当に常識に当て嵌まらないようだな……
「まぁなんにせよ攻撃してくるのが判れば対策はいくらもで取り様がある。ISの修理は間に合うのか?」
龍也の問い掛けにワタシとツバキは
「不可能だ。戦闘可能になるレベルには程遠い。動かす事なら大丈夫だがな」
「ええ。しかも動いたとしても戦闘には耐えれない」
龍也はうーむと唸りながらIS学園の周辺の地図を見て
「やはりなのは・フェイト・はやてが主力になるか、シェルニカ達のISの改造は出来ているのか?」
「改修は出来てるが……ネクロとの戦闘には不安があるぞ」
フレイアがそう言うと龍也は
「戦わせる事が目的ではないのでな。それでいい、千冬・ツバキ……ハーデスの攻撃に対してだがあえて防衛網を薄くして、本陣に切り込ませるのが目的だ」
龍也の作戦を聞いたワタシと楯無は
「やっぱり性格悪い」
「ああ。性悪だな」
ワタシと楯無はやはり龍也の性格が悪いのを実感し、そう呟いたのだが
「戦術としては優秀よ。本陣に招きよせるための作戦としてはな」
「ああ、間違いないな……優秀な軍師だよ。お前はな……」
性格が悪いのはではなく、軍師として戦略家として非常に優秀と言うことなのか……ワタシと楯無はまだ若いということかと苦笑するのだった……
IS学園の上空に佇む女性「ネルヴィオ」だ。彼女はIS学園の敷地から遠ざかっていくペガサスの気配を感じ取り
「ふーん。やっぱり裏切ったかぁ……まぁ私には関係ないけどね」
形場はベエルゼの配下をしているけど、私は正直のこの世界の戦いなんてどうでも良いし……空中の上に寝転がりIS学園を見下ろす
「あーあ、お父様はこんなに近くにいるのになあ」
手を伸ばせば、愛に行こうと思えば会いに行ける距離にいるのになあ……
(今は会いに行けないしなぁ……)
あの煩わしい女達が居ないから会いに行こうと思えば行ける、だけどIS学園にはネクロ達の監視がある……それにお父様も今会いにこられても困るだろうし……
「ネルは良い子だからお父様に迷惑をかけたくないしね」
お父様が何よりも大事で、その為に私は動いている。それはこの世界でも代わりはない……
「ネール?どうするのー?」
「モモメノ……モモメノはどうしたい~?」
同じようにふわふわと浮いているモモメノを抱っこしながら尋ねる。モモメノは首を傾げて
「んーわかんない……モモ。お父様に会ったことないしね……」
「あーそっかーそうだよねー。ごめんね」
モモメノは私がネクロとして活動して……んー何年だっけ?忘れた。まぁいいや、最初から私と一緒じゃなかったから知っているわけがないのだ
「お父様はねー、とっても優しくて暖かいんだよ?モモメノと私の居場所なんだよ?」
「居場所?お家?」
「そう家、私とモモメノが帰るのはお父様の所なんだよ。その為にはまだやらないといけない事が沢山あるけどね」
まずはお父様に会うことが大事だし、あの女たちを潰さないといけない、それに何よりも
(この時間から移動しないと駄目なんだよね)
私はこの時間軸よりも先の存在だ。だから私を見た物は名前・能力と言った事は話すことが出来る、だけど詳しい容姿は話すことが出来ない、簡単に言うと時間の修正力と言う奴だ。だから今のお父様は「ネクロマンシー」を扱う事のできる女性型のネクロが居る
と言う認識しかないわけだ
(そろそろ帰ろうかなあ……)
ベエルゼも回復してるし、ハーデスも動くようになった。徐々に戦力は充実しているし、態々私がネクロマンシーを使わなくてももうネクロは増え始めているのだから。だけどこの時間軸は外れるとランドグリーズがうるさい
「ネル?どうした?」
「んーなんでもないよ、難しい話だからね」
モモメノは外見の通り子供だ、難しい話をしても理解できないだろう
「帰ろうか?「いやいや、お待ちください」帰れストーカー」
虚空に突然現れたランドグリーズにそう言うと、ランドグリーズは肩を竦め
「手厳しい」
そうは言うが笑っているので特に何も感じてはいないだろう。そもそもそんな事で傷つくのならネクロなんて出来ない
「んで?今日は何しに来たわけ?ハーデスにリンカーコアを渡して帰ったんじゃないの?」
私がそう尋ねるとランドグリーズは眉を顰め
「少々不味い事になってきてましてね。本来の時間軸でね」
「……興味ない。お父様に関係ないならね」
そう言って帰ろうとするとランドグリーズはそうですか?と呟いてから転移しようとしたが
「盟主が守護者を消しました」
「……どういう事だ!!」
振り返りそう怒鳴るが既にランドグリーズの姿はない。くそっ!あの狸め!!!
「守護者?お父さん?」
「……1度帰るよ。モモメノ……盟主の所にね」
情報を整理しないと不味い。特に盟主の動きは私は何一つ知らないのだから
「おいで。モモメノ」
「うん」
「「ユニゾンイン」」
モモメノとユニゾンし甲冑を展開すると同時に、腰の剣を抜き放つ、いや正しくは鞘に収まったままなので剣を抜き放つとは言えないか……
「開け」
魔力を纏わせ振るうとゲートが作り出される、だがそれは普通のゲートではなくもっと豪奢な物だった。金の装飾が施された正真正銘のゲート
「行くよ。モモメノ。怖かったら意識を閉じてて」
『うん……』
モモメノの小さな呟きを聞いてから私はゲートの中に足を踏み入れた、ここから先は通常のネクロは存在も出来ない世界。盟主の許可を得てなおかつ、通常のLV4の倍以上の魔力を持つ者しか進むことの出来ない世界。
(また強くなってるわね)
盟主の魔力がここまで流れてきている。その力は既にお父様と同じかそれ以上だ、内心舌打ちする
(前にあったときはもっと魔力も少なかったのに……)
いつの間にここまで力をつけたのか?そしてこれだけの魔力ならお父様を倒せても不思議はない……とにかく一刻でも早く情報を得なければ……私はそれだけを考えゲートの奥へと進んで行ったのだった……
訓練の後皆で昼食を食べていると龍也が来て俺にそう告げる
「戦う事になるかもしれない?一夏が!?今の一夏の状態を知ってて言ってるんですか!」
「こういうのはなんですが、些か無謀では?」
「僕もそう言うのは止めたほうがいいと思う」
箒が龍也にそう怒鳴り、セシリアとシャルは柔らかい口調だが駄目だという。周りの反応を見る限りだと結界でも張ってあるのか無反応だ。こういう時魔法は便利だとおもう
「判っている。だが……越えねばならぬ壁もある。まぁ無理強いはしない、決めるのは一夏だが……」
ここで龍也は言葉を切ってにやりとまるで悪戯坊主のような笑みを浮かべ
「心配だから止めているようじゃあ、いい女とは程遠いな」
「どういう意味ですの!?」
セシリアがそう尋ねると龍也はやれやれという感じで肩を竦めて
「鈴かラウラにでも聞いて見ろ。あとマドカにもな」
そう笑って歩き去っていく龍也。首を傾げている箒達を見ながら鈴に
「いい女の条件ってなんなんだ?」
「はぁ?何言ってるのよ?一夏」
何馬鹿言ってるの?と言う顔をしながら鈴は自分が注文したデザートの杏仁豆腐を頬張りながら
「男の決めた道を邪魔しないのがいい女よ。どうせあたし達が言ったって聞きゃしないんだから、好きにすれば?その代わりついてけどね!」
「うむ。クラナガンで龍也や、その周囲の人間を見ていて思ったが、龍也の周囲の人間はきっと心配こそすれど止めはしないだろう。止める事は龍也を信じないことに繋がるからな」
「と言うわけだ。一夏、自分で決めろ。私達は止めない」
ばんっと背中を叩くマドカ。俺はマドカとかの話を聞いて、皆随分とたくましくなったなあと思いつつ、言っている事は正しい思う。俺が何をしたいのか?それはいつだって決まっている
「俺はやるぞ。戦う」
箒とかが俺を見るがそれで揺らぐような気持ちではない、確かに暴走は怖いし、ネクロも怖い。だけど
「いつまでも逃げていても意味ないしな!やるだけやってみるぜ!!」
注文していたカツ丼を慌てて食べ終え、そのまま立ち上がり
「龍也に話を聞いてくる!じゃな!!」
俺はそのまま食器を返却し龍也を探して走り出したのだった。残された箒達は
「なんか負けた気がする」
「私もですわ」
「僕も……」
深く溜息を吐いていたが、鈴達は平然とした顔で自分の注文した料理を食べ終え
「さーてあたしも龍也を探しますか、話を聞かないと何をすればいいのか判らないしね」
「その通りだな。ISやデバイスがなくても戦える術はあるかもしれないしな」
「整備室だな。行こう」
さっさと食器を片付けて食堂を後にしていた。それを見ていた箒はぼそりと
「これがいい女とそうじゃない女の差なのか……」
と呟き、更に深い溜息を吐くのだった……同年代でも考え方の違いが徐々に出てきているのだった。この次期は少しのきっかけで大きく変わる。それが特に大きい鈴達だった……
そして一夏達が動き出した頃。ハーデスもまた動き出していた
「……行くか」
魔力・気力共に過去最大といえるほどに充実している。全身が叫んでいる、戦わせろと俺に相応しい敵を待っていたのだ
「ハーデス」
「ベエルゼか。どうした?珍しいな」
普段で歩く事のないベエルゼが俺の前に現れた。なにか予定の変更でもあったのか?と思っていると
「ペガサスが守護者側に着いた」
「ほう……それはまた朗報だ」
あのペガサスと言うネクロが俺を敵対視しているのは知っていた。だがベエルゼは仲間同士の争いを嫌う、だからあえて無視していたが、敵に回るというのなら好都合だ。
「念のためにデクスを連れて行け。守護者が何の手も打たないとは思えない」
守護者の策はどれもこれも少数で多数に勝つ作戦だ。確かに警戒しておいたほうがいいだろう
「判った。デクスを数体連れて行く。ではな……」
「武運を祈るハーデス」
ベエルゼの言葉に俺は少し考え、悪いがと前置きしてから
「俺は……戻らんかもしれんぞ?」
俺は途中で逃げるような真似はしない。戦うと決めたのなら戦場で死ぬ……無様な真似はしない。守護者相手ならば俺が戻れる確立は良くて20%と言うところだ、だが俺には俺の誇りがある。だからこそ無謀だと言われようが他の高レベルのネクロを連れて行かないのだ
「知っている。だから見送りに来たんだ。お前の性格は知っているつもりだからな」
「そうか。戻れたらお前の指揮に従う事も考えよう」
俺はそう言い残しヨツンヘイムを後にした。IS学園とやらに向かうに連れて血が滾るのを感じる
(守護者・ペガサス!俺を満足させろ)
こんな生ぬるい世界と言うのは癪だが、最高の敵がいる。そう考えるだけで魔力が滾り、否が応でも手に力が入る。俺は自分でも判る獰猛な笑みを浮かべ、一直線にIS学園へと向かったのだった……
第113話に続く
次回からは戦闘回に使用と思います。当然出てくるのはハーデスですね。宵闇を見てくれている人はもう気付いていると思いますが
神刃のペガサスと宵闇のペガサスは同一人物です。まぁ判っていると思いますけどね?彼がこの世界で何を見て宵闇の時間軸に移動したのか?そこを楽しみにしていてほしいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします