第113話
雲が月を覆い隠す中。俺は数対のネクロを連れてIS学園に向かっていた。無論連れているのは少数だが、直接転移でIS学園の近くに戦線を展開できる準備も出来ている
(守護者の気配はない。どこに居る)
向こうが俺の気配を感じ取るように向こうも俺の気配を感じ取っているはず、それなのに向こうの気配がしない
(何か考えているのか?)
守護者が単独の時は、今のように集団戦術ではなく、ゲリラ戦術。しかも少数で多数を討ち取る戦術を得意にしていた。今回もそうであるのでは?と言う考えが頭を過ぎる中
「おーと、ここから先は通さへんで?」
「ここで止まってもらうよ。ハーデス」
夜天と雷光が姿を見せる、だがその魔力を感じ取る事はできなかった
(何かの策か?それとも結界か?)
突然現れれた2人に一瞬混乱しかけるが、直ぐに気を取り直し
「いけっ!」
「「キッシャアアアア!!!」」
咆哮を上げながら飛び掛っていくデクスに2人を任せて、更に奥へと進むと今度は、ISとか言うガラクタを身に纏った人間が姿を見せる
「邪魔だッ!!!」
全身から魔力と殺気を飛ばすと顔を青くして引き下がる人間を無視して、周囲にネクロを散会させる。これで戦力は更に分散するはずだ。更に奥に進むと
「ふっ、やってくれるな」
そこには甲冑を展開した守護者とペガサス。そして人間の小僧……確か「織斑一夏」が待ち構えていた。俺はここに誘導されていたわけか……ヒュプノス・モロスを抜き放ち
「3人如きで俺を止めれると思っているのか?」
「止めるのではない、殺すんだ。そこを間違えるな。ハーデス!!!」
凄まじいまでの殺気と魔力、そして清涼な闘気を放つペガサス。俺は知らないが、もしかするとあいつの生前と何か関係があったのかもしれんな、だが
(期待はずれが1人居るが仕方ない)
織斑一夏とか言う小僧は顔を青くしている。正直って邪魔物だが、別に構わない。ペガサスと守護者と闘えるのならば、他の存在などどうでも良い。今は俺が戦うに相応しい猛者が2人もいる、その2人だけで充分だ
「行くぞ!存分に死合を楽しもうではないか!」
俺はそう叫び守護者とペガサスへと駆け出したのだった
「シャアアアア!!」
「キキ!!!」
影から次々出てくるネクロを見ながら私は隣のユウリに
「作戦通りらしいけど、これってさ?結構ピンチじゃない?」
「今更気付いたのか?」
呆れたように言うユウリ。周囲にはネクロ・ネクロ・ネクロの数々。どう考えても2人で処理できる数じゃない。
(予定通り引き付けながら下がるぞ)
プライベートチャンネルのユウリの言葉に頷き。ネクロ達を適度に攻撃しながら、下がっていく。ネクロは当然ながら追いかけてきて、私とユウリがある程度下がった所でステルスモードを解除したオータムさんとアラクネ改が姿を見せ
「邪魔だ!オラオラオラ!!!」
オータムさんのガトリングが火を噴き続ける。あれって最初魔改造とか言って気に入らなかったはずなのに、いつの間にかトリガーハッピーになっているような気がする
「制圧戦にはいいのよ。後最初の弾幕は重要だわ」
スコールさんが展開しているのも当然改造が完了している、ゴールデンドーンだ。ブレードとすらスターの増量で機動力を強化しているらしい
「森吹き飛んでますけど」
アラクネに搭載された重火器が火を噴き続け、IS学園の周囲の森の1部が完全に消滅している事を指摘すると
「必要経費よ」
「いや、違うだろ?」
ユウリの突込みが炸裂する。ネクロは私達に近づく事ができず、弾幕にやられて消滅していっている。
「AMFフィールド弾って凄い威力ね」
クラナガンで搭載された新型の弾丸。ネクロの障壁を突破する特殊弾らしいのだが、とんでもない破壊力だ。その分反動も凄まじいが……
「ちっ!弾切れだ!スコール!作戦変更だ!」
早!?おかしいわよね!?AMF弾は1000発搭載してあったはずなのに!?
「打つのが楽しくてな。使いすぎた」
トリガーハッピー!!!大丈夫なの……強化パーツをオミットして通常形態に移行しているアラクネを見ながら
「とりあえず、ここからが本番だ。油断するなよ」
影からどんどん這い出てくるネクロを見ながら言うユウリ、ネクロとの戦闘に慣れる為とは言えこれは相当きつい
(100人抜き所か200人抜きよね)
どんどん這い出てくるネクロを見て溜息を吐く。影のようなネクロがメインだが、その数は明らかにこちらの数十倍だ
「実戦は100の訓練に勝る。気を入れなさいよ」
スコールさんがレイピアを構えながら言う。確かにその通りだ、これはこれからの戦いの予行練習だと思えばいいんだ。私はそう判断し蒼流旋を構えながら、それでも言わずにはいられないことを口にした
「あの鬼を今度なんとしてもとっちめる!!」
いきなりこんな実践訓練にほりこんでくれた龍也さんに必ず報復してくれると叫び。ガトリングのトリガーを引くのだった……
目の前で見ている光景を見ていると、なのはさんとツバキ先生。そして千冬さんが
「はいはい、目をそらさない。ちゃんと見てね」
「そうよ。乱戦のこれ以上にない実戦よ、ちゃんと見ておきなさい」
「後でレポートを提出してもらう。しっかりと学んでおけ」
私達はなのはさんの張った障壁の後ろに隠れながら、ネクロと戦っている楯無さん達を見ていた
「見ることも稽古。ちゃんと見るんだよ」
優しい口調のなのはさんは、ここならネクロに見つからないからと笑う。少しだけ身を乗り出して戦いを見る
「ユウリ!フォローよろしく!」
「撃ち過ぎだ。馬鹿者」
「スコール。装填の間頼むぜ」
「ええ。任せておいて」
AMF弾。ネクロの障壁を貫通する特殊弾を搭載している。ミステリアス・レイディとアラクネが下がり、入れ替わりでユウリとスコールさんが前に出て
「このAMF加工と言うのは便利だな」
「そうね。ネクロにもダメージって言うのがいいわ」
そんな会話をしながら襲ってくるネクロをいなし、切り裂く。そして
「装填完了!下がって!」
「行くぜぇ!!!」
弾丸を装填しなおしたミステリアス・レイディとアラクネの弾雨がネクロを貫いていく。それは完全に互いに互いをフォローしており。完璧な乱戦でのフォーメーションになっていた。それを観察していたマドカが
「質問は聞いてくれるのか?」
「いいよ。これも勉強だからね」
「何故切り込んで攻撃しない?あのAMF加工の剣ならばダメージを与えるのではないか?」
それは私も思っていた。私達のISにはまだ搭載されていないが、その内搭載予定の武器だ。それを持っているのに何故自分から攻撃しないのか?と言う問い掛けに
「過信は厳禁だからね。生き残り戦いをするための戦術。深追いはしないで安定して攻撃できる射撃武器を使う。これは常識だよ」
そう言われると確かにとおもうが、攻める時に攻めるべきなのではないだろうか?」
「ネクロは神出鬼没。今優性でもどうなるか判らない。慎重に戦うのがセオリーだよ」
むう……何回も言われたがやはり私はまだ猪突猛進の気が抜けてないのかもしれない。集団戦術とその有効性は何度も教わったはずなのに
「だけどその心意気は買うけどね。慎重すぎて動けなくなるよりかは、思い切って行動。それも大事なんだよ、まぁそれが出来るならついでに指揮とかも覚えると良いよ。前線に出れる指揮官は優秀だよ?」
なのはさんにそういわれるがそう言うのは私の性格では出来ないだろうな。力を過信しがちな私には到底向いていない
「ラウラはあれと同じ事が出来る?」
「……難しい所だ。戦いながら周囲を見ることは今の私では出来ない。そう言うのが出来るのはヴィクトリアやエリスではないか?」
「私もそう言うのは苦手だぞ?」
「謙遜しなくてもいいのよ?ヴィクトリアちゃんは見ることたけてるわ。充分指揮官としての器は持ってるわよ」
ツバキさんにそう言われて照れているヴィクトリアを見ながら、1番前で戦いを見ている鈴に近づくと
「集団戦って言うのは簡単だけど。こうして見ると難しいわね」
「だな。だが覚える必要のあることだと私は思う」
今こうして近くで戦闘を見ることが出来る。父にも言われていた見て学ぶ事も大事だと、ならば今私が出来るのは
(しっかりと見て学び。あの動きを覚える事だ)
「箒は随分と集中してるね、いいことだよ」
真剣に戦いを見ている箒を見ながら言うなのは
「篠ノ之は剣士としてのレベルは充分だ。だが視野が狭い。こうして戦闘を見ることも良い経験になるとおもう」
「それは千冬にも言えるけどね?」
「耳が痛いです」
顔を顰める千冬を見てなのははくすりと笑い
「学ぶ事。省みる事ができれば引き返せるよ。今からでも充分にね」
真剣にネクロとの戦いを見ている箒達。実戦の後に、実戦を見せることで自分たちの戦いのどこが駄目だったのか?そこを理解させる。これは龍也がクラナガンでも行っている訓練方法の1つであり。そしてもっとも効率的であり、ネクロと闘う事を決めさせる一種の授業なのだ。ここで諦める者とかも出てくるのだが
「皆良い目をしてるから大丈夫だよ」
なのははそう断言した。箒達の目に怯えや恐怖の色は浮かんでいる、それでもなおその色に負けない。決意の色が浮かんでいた、こういう人物は強いとなのはは知っていた。だからそう断言できたのだった
「むんっ!!!」
「ちっ!固い」
ハーデスの一撃を弾き、その勢いを利用して間合いを放す。近くに居るペガサスに
(本気で固いな。有効打を与えれない)
(あの障壁は相乗効果で強化されている。そう簡単には突破できない)
話は聞いていたが、ここまでとは予想外だ。あの障壁を突破するには「約束されし勝利の剣」もしくは発動に時間の掛かる詠唱魔法でなければ突破できないだろう
「くそっ!俺の零落白夜で」
痺れを切らして零落白夜を発動させようとした一夏。だがそれは
「馬鹿か!貴様は!大人しくしていろ!」
ペガサスの一喝で止められる。私でもペガサスでもあの障壁は突破できず、私とペガサスがそれぞれの魔力で障壁を中和し。そこに零落白夜を叩き込む。それは今取れる最善の策だ。ここで一夏に暴走されては意味はない
「何を話しているかは知らんが、行くぞ!!!」
背後に浮かんでいる楯から魔力を放出して突っ込んでくるハーデス
「ちいっ!!!」
両手で剣を持ちその一撃を受け止めるが……
「この馬鹿力が!!」
その勢いに押されて地面に足がめり込む。信じられない破壊力だ、膂力に加えて魔力のブースト。正面から衝突すればこっちが弾き飛ばされる。かといって魔法で攻撃すれば吸収される。
(とんでもなくやっかないネクロだな)
加速力・防御力・攻撃力。どれをとっても今まで戦ったネクロの中でも最強に数える事ができる。ペガサスが1人で戦えないといったのも納得だ。私がハーデスと鍔迫り合いをしていると
「取った!!」
ペガサスが間合いを詰めて横薙ぎの一撃を叩き込もうとする。その動きは何回も見た「御神流」の徹の技だが
「余り舐めないでもらおうか!!」
ハーデスの背後の楯が動き魔力を放つ、それによってペガサスが弾き飛ばされる
(本当に固い。さすがは特異型という所か)
滅多に存在しないLV4の特異型。その力はある程度理解していたつもりだが、事実固すぎる。突破口が見出せない
(聖王の魔力しかないか)
普通の魔力では駄目だと判断し、聖王の魔力に切り替える。虹色の魔力を全身にまとうと
「それを出すのを待っていたッ!!!ウオオオオオッ!!!!」
ハーデスの背後の楯が開き、そこから漆黒の魔力が溢れだす
「ちっ!離れろ!」
ペガサスの言葉を聞く前に距離を取り、後方で待機していた一夏のほうに跳ぶ。その間にハーデスは楯から溢れ出した漆黒の魔力に包み込まれる
「あいつは何をしている」
この現象はネクロの進化前の現象に似ているが、既にLV4のハーデスが更に進化できるとは思えない。なにか別の奥の手を隠していたのか?と思いペガサスに尋ねるが
「知らん!俺が戦ったときハーデスにあんな能力はなかった!」
と言うことは隠していたのか、最近目覚めたのか。両方の可能性がある
「ここからが本番だ!行くぞ」
鋭利な甲冑に8枚に増えた楯。そして両手の剣は更に一回り大きくなる、最悪な方の予想が的中した事に眉を顰める
(LV4が更に進化しただと!?)
魔力量も上がっているから間違いない、ハーデスはLV4から更に進化したのだ。ネクロは進化する生命体だが、まさかLV4を超える存在が居るとは思わなかった。
「これは覚悟を決めねばならないな」
ペガサスがそう呟くと甲冑がパージされ、背中に漆黒の翼が現れる
「そのようだな」
こっちは聖王の魔力発動中が最強状態なのでこれ以上うえはネクロ化しかない。だがハーデスと共鳴すると確実に我を失うので、このまま戦うしかない
「仕切りなおしだ。行くぞ!!」
8枚の楯から魔力を放出して信じられない速度で突撃してくるハーデスの一撃に対抗するために、全開の魔力を伴った魔力刃を繰り出した
「はっ!!!」
ハーデスも負けじと繰り出した十字の魔力刃と私の魔力刃がぶつかり爆発を起こす。その爆発が合図となり、私達とハーデスの戦いの第二幕が幕を開けたのだった
第114話に続く
次回は一夏視点で進めて行きます。戦闘回はまだ数回に分けて続けていくつもりです、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします