それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第116話
下級ネクロの波状攻撃が徐々に収まって来ている。そろそろ向こうも戦力が切れてきたかと思っていると空間が裂け、そこから見たことのないネクロが姿を見せた瞬間
「「うっ!?」」
余りに強力な魔力の波動を受けて、隣のフェイトちゃんと一緒に片膝を付く。なのはちゃん達のほうも顔を歪めているのが判るし……
「か、身体が動かない……」
「な。なによこれ……」
「銃も動かないぜ」
ユウリ達も何かに縛り付けられたかのように動く気配が無い……ただの1体のネクロの威圧感でここまでなるなんて事はありえない。もしそれが出来ると言うのならそれは相当高位なネクロになる
(あかん。殺される)
身体が動かない状況でこれだけの魔力を持つネクロと対峙する。それはそのまま死を意味することに他ならない、何とか攻撃をと考えていると
「ああ、そう身構えないで。今は戦う気はありませんよ。今はね?」
魔力で全身を覆い隠してして姿を認識できない。声の感じは人間と同じに聞こえる
(高レベルの人型ネクロか!?)
異形型のネクロは声帯が違うのでここまで人間に近い声を出す事は出来ない。だから目の前にいるのが人型ネクロだと判断する。姿が見えない、動く事が出来ないの二重苦だが……この状態でも出来る事をと考える。フェイトちゃんも同様で微弱の魔力を発して姿形の予測をしている
「ああ。無駄な事はおやめなさい。魔力の無駄遣いですよ?今の私は影、影を認識など出来ないのですから」
くくくっと忍び笑いをするネクロの声を聞いていると意識がぼーっとしてくる
「それでは失礼を、この戦いを見逃すわけには行かないのでね。あとこれはお礼ですよ、この周囲にいたネクロは下げておきますので」
そう笑ってそのネクロの気配は消えた。いや最初から空間を引き裂いて現れたネクロなんかいなかったのだ
「戦況終了。近くで保護されている鈴を回収してIS学園に戻るで」
兄ちゃん達の援護をするにも1度千冬達をIS学園に連れて行かなければならない
「了解。魔力もユウリ達のSEも限界だしね」
私達の魔力も大分使いすぎている。戦えないレベルではないが、護りながら戦うというのは難しいレベルだ。状況と疲弊状態を考えるとここは1度IS学園に戻り念の為に備えたほうがいいだろう。私はそう判断し、SEを使い切り待機状態になっているISを見てへたり込んでいるユウリ達を連れてIS学園へと転移し、フェイトちゃんは兄ちゃんの結界で保護されている鈴を迎えに行ったのだった……
「ふむふむ。中々上手くいきましたね」
木の枝に腰掛けるタキシード姿のネクロ。ランドグリーズだ、別の時間軸での事を考え最盛期のある人間の観察に来ていたのだ。
「さてと行くとしますか」
こうして去っていくこの世界の人間と夜天達を嘲笑っているのもそれはそれで面白いが、本来の目的は別に在る。遊んでいる時間がない事を思い出したランドグリーズはネクロの脚力を持って枝を蹴り、高速で森の奥へと突き進んで行ったのだった……
あの小僧何があった?対峙している一夏とか言う小僧の動きは1合打ち合うたびに爆発的に洗礼されて行っている
(魔力量も増えている、本当に何があった)
戦いの中で考え事をする。それはある意味隙を作ることに他ならない、しかも強敵が2人もいるのに歯牙にもかけないはずの人間に意識を向けるなど愚の骨頂。だがそれでもなお俺は一夏という小僧を観察していた
「シッ!!」
「むん!!」
死角から飛び出してきたペガサスの突きを拳で弾き、フラッシュムーブで俺の間合いに入り込んできていた守護者を見て
「はああ!!」
手にしていたモロスとヒュプロスを鞘に収め。徒手空拳で応戦する
(ここまで中に入り込まれると剣は邪魔になる)
剣と言うのは近接から中間距離で最大の効力を発揮するが、ここまで懐にもぐりこまれると邪魔にしかならない
「むん!」
「シッ!!!」
俺と守護者の魔力を込めた拳が交差する。互いの魔力が摩擦し放電現象を起こす、視界の隅で突っ込んでこようとするペガサスを見て
「無粋な真似をするなッ!!」
魔力を固めて飛ばす。それだけの攻撃、いや攻撃と呼ぶには余りに稚拙すぎる攻撃だ。だが今の俺の魔力を持って放てばそれは必殺の一撃となりえる
「ぐあ!?」
ペガサスが咄嗟に作り出した巨大な西洋剣を盾にして直撃を伏せぐが、その威力で西洋剣は真っ二つに折れ使い物にならなくなっただろう
「これだから武人タイプは嫌いなんだ」
守護者がそう呟きながら俺の甲冑に手を置く。その瞬間強烈な寒気を感じて後ずさろうとするが
「遅いッ!!!」
守護者の魔力が篭った拳が守護者の手に叩きつけられた瞬間
「ガはぁ!?」
とんでもない衝撃が俺の中を走った。俺は甲冑を着ていたのに何故ただの打撃でここまでのダメージを
「日本には鎧を着ている人間の心臓を止めるって武術があるんだよ。覚えておけ!」
とんっとバックステップをする守護者。だがそれは余りに遠い距離だ
「合わせろ!」
「言われるまでもない!」
ペガサスと守護者、それに一夏が並んで同時に剣を振るう
「蒼龍月花ッ!!!」
「はッ!!」
「零落白衝ッ!!」
三日月状の魔力刃が3つ同時に俺に迫ってくる。回避は出来ない、ならば
「ちいっ!!」
舌打ちをしながら両手をクロスしてそのダメージに備えた瞬間。強烈な爆発が俺を飲み込んだのだった……
(ふむ。まだ人工リンカーコアではこの程度ですか)
その爆発の衝撃で周囲の事が理解できないでいた俺の脳裏に楽しげなそんな声が響いたと思った瞬間。俺の身体はダメージではない熱に焼かれたのだった……
「■■■ーッ!!!!!」
俺の喉からは凄まじい獣の咆哮が響き渡ったのだった……
「■■■ーッ!!!!!」
獣のような咆哮が聞こえたと思った瞬間。漆黒の閃光が何重何百と放たれる
【ちっ!良いか何も考えるな!】
頭の中に俺の声が聞こえたと思った瞬間。俺の手足が粒子と化していく
「なぁ!?」
突然の現象に驚き思わず上ずった悲鳴が出てしまう。だがそれと違い頭の中の声は
【うろたえるな!大丈夫だ!】
その声は妙に力があって言われた通り、出来るだけ無心を心がけた瞬間に俺の視界も粒子と化したのだった……
ズザアアッ!!!
「は、はぁ!はぁ!?なんだ何が起きたんだ!?」
気がついたら俺はかなりはなれた所で片膝を付いていた。一体何が起きたのか理解できないでいると
「ちっ、最悪な展開になったぞ」
プロテクションを張って今の攻撃を耐えていた龍也の大きな舌打ちがここまで聞こえていた
「ウ、ウォオオオオオッ!!!!!!」
ペガサスの獣のような咆哮に身が竦む。そして思わず振り返るとそこには
「ウォオオオオオ!!!!」
鎧が生き物の用に変化し、背中に漆黒の翼が現れ爛々と輝く紅い瞳をしたペガサスがいた
「何が起こって「共鳴現象だ。ハーデスの力が上がりすぎて引きずられる形でネクロ化が進んでいる!もう私の力でも抑え切れん!」
ハーデスはハーデスで既に人型としての姿は無く。おぞましいとしか言いようの無い漆黒のオーラに身を包んでいた
「グルルルウ!ウがアアアアアッ!!!!」
4つ這いになり龍を思わせる姿へとその姿を作り変えている。進化したのか!?だけどネクロはLV4までなんじゃ!?
「暴走だ。コアが魔力に耐え切れなくなって対応できる姿に変化したんだ」
「そんな事があるのか!?」
予想だにしない事に俺が驚いているとハーデスの瞳が俺を見る。その威圧感にまけて目をそらすと
「馬鹿が!目をそらすな!」
龍也の怒声が聞こえたと思った瞬間空気が爆発したような音が響き、ハーデスの牙が俺を噛み砕こうと迫ってくる
【これが最後だからな!】
俺の声が聞こえた瞬間。俺の身体は再び粒子化しその突撃を回避する。離れた所に着地するのと同時に
【もうこれ以上。俺はサポートできない……死ぬなよ】
ノイズ交じりの声が聞こえ、それは徐々に聞こえなくなり。俺の気配は完全に消えた
「一夏。そのレアスキルはそれ以上使うな。自我の境界が無くなって戻って来れなくなるぞ」
使いたくてももう使えないが、何より危なそうな事を言われたのでもう使わないでおこうと心の中で呟く
「グルルルルルッ!!!」
甲冑はその形状を変え装甲となり、人が他の面影は無く最初からドラゴンの姿をしていたのではないか?と思うほどにハーデスの姿は変貌していた
「目を逸らすな、今のあいつは外見通り獣だ。目を逸らしたら喰らいついてくるぞ」
野生動物と対峙したときと同じだと言うが、あれそんな生易しい者じゃないだろう。それに
「ペガサスは」
「判らん。完全にネクロ化するか、意思で捻じ伏せるか……いやどっちにしろ。もうペガサスは倒すしか道が無いだろうな」
倒す。協力してくれていたのに?俺が少しだけ嫌悪感を見せると龍也は
「元よりそう言う約束だ。いざと言うときは頼むってな、これを違える事はできない」
約束って言ったってそう簡単に割り切れないぞ。ISのハイパーセンサーを利用して蹲っているペガサスを観察する。頭を抱えて動く気配が無い、だけどハーデスと一緒に敵に回られたら勝機は無いという事は俺でも判る
「!飛べ!」
龍也の言葉に咄嗟に足のブースターで飛び上がると、俺と龍也の居た所を薙ぎ払う漆黒の刃が見えた
「剣は魔力刃に転化されたか。まずいな」
龍也が観察しながら呟く、今のはハーデスの6枚の翼のうち2枚の攻撃だったが、あと4枚は刃が増えると見て間違いないだろう。それに……
「あの肩のは間違いなくあれだよな」
ハーデスの背中に展開されていた盾に違いない、魔獣となった事で知性は失ったが、戦闘力は上がっているようだ
「グルル」
唸りながら俺と龍也を睨んでいるハーデス。さっきまではまだ知性的だったが、今目の前にいるのはその外見の通り獣そのもので
(どう戦えば良いんだ!?)
人間の形をしていればある程度動きの予測は出来る、だが今のこの状態のハーデスとどう戦えばいいのか判らない
「獣との戦いは目を逸らさない事。それと攻撃に対して警戒しておけ、どこから仕掛けてくるか判らんぞ」
ハーデスに視線を向けるとその翼で空中に駆け上って着て来た。つまりここからは空中戦になると思った瞬間
「逃がすと思ってるのかああああ!!!!」
凄まじい怒声と共にハーデスの胴体に魔力の糸が何重にも絡みつき
「うおおおおッ!!!」
「ギャアアアア!!!」
まるで爆弾が爆発したような轟音と共にハーデスの巨体が地面に叩きつけられる。当然俺も龍也も何もしていない
「見事だ、そこまでネクロ化してもなお自我を保つか」
ペガサスの半身は既に完全にネクロと化していた。獣のそれを思わせる異形の手と真紅の瞳。それでもなおペガサスは自我を失ってはいなかった
「守護者!小僧!俺の邪魔をするな!俺が俺が!!!こいつを倒す!!!」
ペガサスの怒声に身が竦む。それだけの闘志と迫力に満ちていた。だけど1人でなんてと思っていると、龍也は剣を粒子に返し腕を組んで
「判った。私はもう手を出さない」
「龍也!?}
龍也の真意が判らず龍也の顔を見るが、龍也を見ても何を考えているのかは判らない
「一夏。戦いの中には決して手を出してはいけない物がある。それがこれだ、黙って見守っていろ。どう転んでも結末は同じだ」
「結末が同じってどういうことだ?」
嫌な予感を感じながら尋ねると龍也は深刻そうな顔をして
「ハーデスを倒せばペガサスは完全にネクロ化する。それを倒すのが私とお前だ。覚悟を決めておくんだな」
龍也の言葉が理解できなかった。だけどネクロと化せば倒すしかない事は判っている……
(俺は……ペガサスに攻撃できるのか?)
乱暴で口は悪いが人情味を持っていた。それに俺に戦い方を教えてくれた、そんな存在に俺は剣を向けることが出来るのか?俺は思わず手にしていた剣を鞘に収め龍也に渡し、ペガサスとハーデスの戦いに目を向けたのだった。
(もしこれが別れになるのなら、その一挙動その全てを覚えてやる)
ペガサスいわく。俺の剣術はペガサスの剣術に近いらしい、ならその全てを覚えてやる。俺は心の中でそう決心し、ペガサスの背中を見つめるのだった……
力はこれ以上に無いほどに満ちているが、その代償として鑢で手足を削り落とされているかのような激痛が全身に走る
(この程度で!!)
あいつらは仲間同士で殺し合いをさせられた……
笑い合った思い出の場所を自分たちで壊した……
「おおおおッ!!!」
ハーデスの胴体に巻きつけた糸を掴んで引っ張り寄せ、その顔面に拳を叩きつける。骨が砕ける音と即座に再生されネクロとなりつつ身体を見つめながら
「まだだ!!!」
この程度!この程度で俺は怯んだりはしない!!!
何度も何度も糸を引っ張り自分のほうに引き寄せ拳を叩きつける。当然ハーデスもただでやられる気はないのか
「シャアアアア!!」
魔力刃と障壁で俺を攻撃してくるが、知性も何も無い本能だけの攻撃などよける事は容易い
「くたばれえええッ!!!」
魔力を収束して拳をハーデスの腹に突き立てる
「ギシャアアアッ!?!?」
聞くに堪えない絶叫を上げて弾き飛んでいくハーデス。奴の胴体に巻きつけていた糸は今の一撃で切れたが問題ない
(これで少しは気が晴れた)
直ぐに倒すのでは俺の気が晴れない。だからこそクラウソラスを使わず素手で攻撃を仕掛けたが、今ので充分だ
「殺してやる!ハーデス!!!」
地面を蹴ると同時に神速に入る、それと同時に景色が歪み爆発的な加速の中に突入する
「シャアア!」
普通のネクロや魔導師では対応できないが、このレベルのネクロになると普通にこの加速時間の中に入り込んでくる
「シャアアッ!!!」
6枚の翼のうち3枚の翼から魔力刃を作り出し、更に両爪からの魔力刃を作り出し9本の魔力刃が前後左右から迫ってくる
「舐めるな!」
クラウソラスの刀身を自ら砕き、魔力で刀身を作り出しハーデスの魔力刃と切り結ぶ
1合2合3合と例え守護者でも認識できない世界で何度も何度も打ち合う
(遅い、いや俺が早いのか)
完全なネクロ化が進み、それにより神速に使う魔力が上昇し加速領域が増したのだ。それが判れば遊んでいる時間はない、速攻で片付ける
「おおお!!」
神速の中で更に神速に入る。神速重ね、生身の人間ではこれを使う事は捨て身になるが、今の俺ならば問題ない。そしてこの神速重ねに入った事で
「グオ!?グガアアアア!?」
ハーデスが認知出来ない高速の世界の中でハーデスを引き裂き、その牙と爪を打ち砕く。こいつの知性があろうがなかろうが関係ない。俺の敵であるという事実だけあればいい
「これでトドメだッ!!!」
ボロボロのハーデスの胴に蹴りを叩き込み宙に跳ね上げる。視界に見えるのは既にその牙と爪を失い瀕死のハーデス
「シッ!!!」
もっとも俺が信用する奥義。そしてもっとも考え深い技……御神流奥義之六・薙旋。完全にネクロ化したことで強化された魔力刃と魔力で作り上げた鞘を使い。超神速の高速連撃がハーデスの身体に叩き込まれる
(この際で進化させたか)
既に人のみを失い、化け物と化した今。俺は本来4連撃の螺旋を更に進化させ8連撃を一息で放つ事ができた
(ふっ……なんとも皮肉な話だな)
もはや俺は死ぬだけを待つ運命。そんな俺が螺旋を進化させる事ができたとはなと苦笑していると俺の両手にコアを砕く鈍い感触が残る。それと同時に
「グッギャアアアアア!?!?」
暴走し獣と化しているハーデスの断末魔を聞いたと同時に、俺の中で何か満足してしまった。俺はハーデスを倒す事だけを考えてネクロ化を防いでいた。だがその目的を達した今、俺は自分の意志でネクロ化を抑える事が出来なくなっていた。爆発的にネクロの因子が活性化していくのを感じる、この身体を奪い取ろうとするネクロの意思に
(貴様らにこの身体は渡さんぞ!)
既に死んだこの身体だが、それでもなお剣士としての誇りがある。利用されるつもりなどない
「小僧!来い!俺と勝負をしろッ!!」
最後に剣士としての誇りを貫く道を選んだのだった……
やはり私ではなく一夏を選んだか……自分の見出した才能。自信の最期を看取るのがその才能が良いというのは判らなくも無い
「龍也。俺はどうすれば良いんだ」
困惑している一夏の背中を叩き、その肩に手を置いて
「望みを叶えてやれ」
「だけどそれってペガサスを殺すってことじゃないのか!?」
確かにそうなるだろうな。だがネクロにとっては殺しは救済だ。それにもう死んでいると自覚しているのだろうからな。悪夢を終わらせてもらうという意味もあるだろう。一夏にとっては辛い事かもしれんが、ペガサスがそれを望んでいるのなら、それを叶えてやるしかないだろう
「うぬぼれるなよ、小僧。貴様なんかが俺をどうこうできると思うのか?こい、最後の戦いだ」
もう喋るのも辛かろうに、この強い精神力。ネクロの因子を意思で押さえ込めるだけはある
「判った……」
雪片を構えて降下していく一夏と肩で呼吸しているペガサスを見る。ここから先に私に出来る事は無い、ペガサスが最後にやろうとしているのは一夏に覚悟を持たせる事なのだから
「行くぜ」
「来い!悪いが手加減などしない、俺は貴様を殺すつもりで行くぞ!!」
白と黒の閃光が何度も何度も交差するが、ペガサスの方が明らかに劣っている
(ネクロの因子を押さえ込むのも限界か)
一夏を殺さないように気をつけているのか、大分動きが鈍い。一夏もそれに気づいたのか剣の勢いを緩めようとした瞬間
「ぐはあ!?」
ペガサスの鉄拳が一夏の頬を打ちぬいた。口から血を吐き出す一夏にペガサスは
「舐めるなよ小僧。貴様なんぞが俺の手加減など仕様なんて考える余裕があると思うな」
鋭いかざきり音と共に白式の肩の装甲が切り飛ばされる。しかし一夏も反撃に左手の雪片弐型と右手の雪華を振るう。それはペガサスの胴を穿ったが……
「……どの道これが最後だから、教えておいてやる」
ペガサスはさほどダメージを受けた素振りも見せず、握っていたクラウソラスの柄を一夏に見せながら
「この剣が折れない限り死なない……俺を倒すにはこのコアを壊し殺すしかない」
ペガサスはそう言うと腰溜めにクラウソラスを構えて一夏を見据え
「来い。この一太刀で決着だ」
自分の限界に気付いたか、だからこそ一撃勝負に出たか……同じように剣を構え
「こんな形しかなかったのか?」
仲間として過ごす事や、もっと別の結末があったのではないか?そう思い尋ねるとペガサスは一瞬だけ苦笑して
「俺がネクロとなった時点でこの結末は替えることなど出来ないさ」
ペガサスの顔が僅かに和らぐ、この一瞬だけはペガサスは元の人間としての自分を思い出していたのかもしれない
「行くぞ。話している時間はないからな!」
ペガサスが地面を蹴り加速する、一夏はそれから送れて地面を蹴り加速に入る。だがペガサスは神速が使える。態々そんな事もしなくても良い。これはあるいみ一夏に対する、ペガサスの最後の指導と言うことになる。一瞬の交差だったが、私には見えていた。ペガサスがわざと一夏の刀身の方にクラウソラスを向け、あえてコアを砕かせた事を……コアが砕かれ身体が消滅しているペガサスに駆け寄る一夏
「ど、どうして」
業と剣を引いたことに気づいた一夏がペガサスにそう尋ねる。ペガサスはその問い掛けに
「ただの……気分だ。良いか良く聞け……小僧」
消えていくペガサスは一夏の手を掴みながら私を見て
「己まで犠牲にする守護は自己満足にしかすぎん。お前はアイツと同じではなく違う守護者になるといい」
皮肉か、最後までやってくれる……だが私はその道しか知らん。だが一夏は違う、今ならまだ自分の道を変える事だって出来るのだから
「龍也!なんとか!何とかならないのか!」
それは治療を施せという事か、しかしネクロには治療は出来ない。仮に出来たとしてもそれはネクロになりかけている存在だけだ、ここまでネクロカしているペガサスを治療する手段はない。それにペガサスも
「いい……俺はずいぶんと待たせてしまっているからな……そろそろ俺も逝かなきゃ……アイツが寂しがってる」
ペガサスの顔は今までの鬼気迫るものではなく、穏やかな表情をしている……
「龍也さん……もう終わったんですか?」
なのはが上から降りてきてそう尋ねる。ペガサスはなのはを見て小さく微笑み
「後悔だらけの人生だったが悪くはない……最後に……アイツじゃない……アイツに会えたしな。一夏……剣をとる覚悟とその理由を忘れ……るな」
ペガサスはその言葉を最後に完全に粒子化し消え去った……
「あ、ああ……」
既に姿のないペガサスの姿を見て涙を流す一夏の肩にてを置き
「帰ろう。ペガサスは最後まで剣士としての誇りを貫いたんだ。涙するくらいなら、その存在を忘れてやるな」
「……うぐ……ああ。判ってる、ペガサスは俺に大事な事を教えてくれたんだ」
涙を拭いながら立ち上がる一夏。その顔は今までの甘えただけの子供の表情ではなかった……とは言え精神的疲労と肉体的疲労のせいで意識を失いかけているが……
(すまんな、ペガサス。本来は私のやるべきことだったんだがな)
一夏に戦うこと、護る事の本当の意味を教えるのは私の役目だったんだが……それを自分のみを使って教えたペガサスに頭を下げ私は様子を見に来たなのはと戦闘疲れで意識を失った一夏を連れてIS学園へと戻ったのだった……
第117話に続く
ここでペガサスは死んで、宵闇のほうの時間軸に移動します。ハーデスが暴走してしまった理由は次回に明かされます
高位のレベル4が暴走なんて無様な真似をするわけが無いので別の外的要因があるんですよ、それが何かはもう判っていると思いますけどね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします