第120話
ネクロの攻撃に備え、私が出来る準備は全てしたと言える……それでもなお不安は消えない……
(私がどこまで出来るか……)
私にはリンカーコアなんていう器官はない。私に出来るのはISにAMFの加工をISに施すこすだけだった。これでどこまで戦えるのか?それが不安だ……
「むー最近ネルちゃんから連絡ないね~」
束が机の上に伏せて不貞腐れながら言う。毎日のようにあったネルヴィオの連絡は今はない……それはすなわちもう束に協力を求める必要がないと言うことだ
「ねーアズマちゃんには連絡ないのー?」
「あるわけないだろう?私はネルヴィオは嫌いだ」
向こうは一方的に私をある程度気に入っているようだが……私はあいつはキライだ……
「ふーん……あーあー……暇だねぇ……」
ぶつぶつとつまらない、暇だと繰り返し呟いている束にクロエが
「束様。今紅茶とメロンパンを焼きましたが、お召し上がりになりますか?」
束が今までの不機嫌な顔を止めて喜色満面と言う感じで身体を起こして、クロエを見て
「食べるー♪」
本当に嬉しそうにそう笑う束。クロエの料理は最初こそ消し炭だったが、私がある程度教えたことで今では普通に料理が可能になっている。嬉しそうに笑う束に微笑み返しながら目配せするクロエ、ここは任せろという所か……私はその気使いに感謝し、軽く頭を下げてから自分用のラボに向かった。
「……漸くここまでこぎつけたか」
元々はゴーレムを元に改造したブラッドバニー。それゆえにもうこれ以上の出力の強化は勿論、セカンドシフトをする事も適わない。だから私が出した答えは後付装甲。しかもクアッド・ファランクスのように火力と防御力を追求する形にしたのだ、だがあのような欠陥品と違いしっかりと機動力も確保している。通常字の装甲の上にAMFの加工と炸裂装甲を搭載した「アクティブカーテン」のせいでフルスキンにも見えるが、これで防御力は通常の倍以上の物を確保できた、さらに背中には複数の装備を搭載したアームドベース。これで圧倒的な火力を手にした、これならばISなど問題ではなく、楽に殲滅できるだろう
(元よりそのために設計したのだから)
圧倒的な火力による制圧戦。それだけを考えて設計した……AMF弾を打つことのできる銃も搭載した、だが……
(人知を超えた相手にどこまで行けるか……)
どれだけ準備をしても不安になる。八神龍也を呼ぶ為の魔力発生装置はある、だがそれでもすぐ来てくれるわけではない。少なくとも数時間の時間は掛かる……
(それだけの時間を私だけで戦うことが出来るのだろうか)
ネクロ。そして束を捕えようとする人間……そして私自身の身体……不安要素は挙げればきりがない……そして私の生存率は恐らく0……だがそれでもなお私はやらなければならない……
「束のために?」
突然聞こえた女の声。この声は!?咄嗟にスカートの中から拳銃を取り出し振り返ると同時に照準を合わせる
「やほー♪元気?」
ネルヴィオがにやにやと笑いながら私を見つめていた。気配も何もしなかったのに……どこから……
「ああ、そんなに警戒しなくてもいいよ。これは幻像だから、私はアズマには触れられない。OK?」
そう笑うネルヴィオの手はノイズがかかっているかのように、途切れ途切れになっている……私は拳銃をスカートの中に戻しながら
「何をしにきた」
今更何をしにきたと言うんだ。ネクロは既に束を見限ったのではないのか……
「取引しない?」
「取引だと……」
ネルヴィオはニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。外見が人間だから気付かないが、こいつもれっきとしたネクロなのだ……その事を改めて認識する。そしてどんな話だろうと断ると心に決める
「束とクロエ助けてあげようか?別に私が助けるんじゃなくてお父様に渡す所までなら手をかしてもいいよ。その代わり……お前を頂戴。その魂も、亡骸も……全部」
くすくすと笑いながら言うネルヴィオ。こいつは随分と私の事を気に入っていたが、まさかここまでとはな……そう苦笑しながら
「断る。束は私が助ける。お前の力など借りない」
それに仮にその場は良かったとしても後で束の敵になる可能性がある、そんな取引を受ける必要性はない
「ふーん……後悔するよ。絶対に」
考え直せば?と言外に言うネルヴィオ……だが私はそんな罠と判っている取引をする必要性が見出せない
「しない。とっとと失せろ」
私は自分の選択に後悔などしない。死も受け入れた、なら後は束を護る事だけだ。それでいい、それだけが私の生きた証拠になる
「あと2時間だよ……あと2時間。しっかり覚悟しておくんだね、死んだら私が回収してあげるよ。アズマ」
そう笑って消えていくネルヴィオの幻影。2時間……それが本当ならもういくばくも時間はない……
「いざと言う時の為に用意しておいて良かった」
恐らく束は八神龍也の話を聞かない。その時を考慮して用意しておいた言葉による遺書データ。それをクロエのPCに転送しておく、これで後はクロエが上手くやってくれる……あと私がやるべきことは1つ……最後まで倒れない事、そして何をしても、自分がどんなケガをしようとも……
「束だけを守り切れればそれで良い……」
私は恐らく、今日この場所で死ぬ。だけどそれで構わない……私の命で束が救えるのならば安い物だ……あの暗い場所でただ死ぬだけを待つ私を光の中に連れ出してくれた束……彼女を護れるのならば……
「この命など惜しくはない……」
知らずの内に手を伸ばし、頭の上の黒いウサ耳に触れる……これが私の生命線であり、これを外せば私と言う存在は急速に壊れていくだろう……来ると判っていた日……それが今日……ならば
「残された時間を全て使いきるのも……また運命だな」
椅子に腰掛け、引き出しの中からカプセルと錠剤を取り出して噛み砕く……禁止薬物だが、これで更にISとの適合力が増す……
「最後と言うのは自分でおもっていたよりも早いのだな……」
まだ時間はあると思っていた、だがもう私の時間は尽きていたようだ……私はそう苦笑しながら目を閉じた……最後の時まで僅かな時間でも良い……安らかな夢を見たいと祈ったから……
束の隠し研究所の近くで不似合いなテーブルと椅子に腰掛ける金髪の女性。ネルヴィオだ……ネルヴィオは優雅な手つきで紅茶をカップに注ぎながら
「馬鹿だねえ……私は約束は護るのに……」
アズマとの取引は本気だった。アズマは上質なネクロになる……それで考えれば充分に束とクロエを逃がしてもおつりが来る。まぁ無論あとで束とクロエも殺すので結果論的にはあの2人は死ぬ運命だったのだが……
「ネル。来た……」
ステルスで隠れているモモメノが両手にクッキーを抱えて呟く、その視線の先にはゆっくりと進軍してきている複数の人間の部隊が見える。中に数人ネクロが紛れているが、恐らくイナリとラクシュミだろう
ガサ!
「ん?」
「こんな所に……女が……」
結界を張っていたのに数人の軍人が私の前に現れた。結界を張っていてもたまに波長があってそのまま素通りできる人間がいる。無論それは言うまでもなくく不幸なのだが……品定めをするかのよう私を見る男達……その視線に気付いた私は
「失せろ。私を見ていいのはあの人だけだ」
手を持ち上げて振り下ろす。そして響き渡る不気味な水の音と何かが落ちる音……私の能力でもある不可視の刃。それにより何が起きたか判らないうちに絶命した……
「ふん。人間如きが……」
指を鳴らし、私の配下の下級ネクロを呼び出し、光がないくせに私を見ている肉片に眉を顰め
「食っていいわよ。ただし目障りだから奥でね」
「「グルルル」」
その肉片を抱えて奥のほうに消えていくネクロ達。まぁ多少は糧になるでしょう、多少は……魔力も何もない人間なんて大した糧にはならないが、まぁそれでもないよりはましだ
「お父さんは?」
新しいクッキーを両手で抱えているモモメノ。無論今の惨劇を見ているが、その程度で動じるのならば私と一緒に入られない。戦闘時は常にユニゾンしているのだから……私の視界を通じて、外の光景を見ているモモメノはこんな光景にはなれきっている
「もう少しだよ、もう少し待っていようね」
モモメノの頭を撫でて、紅茶に砂糖とミルクを加える。まだ戦いは始まっていない、だがもし戦いが始まればすぐにお父様は来るだろう。それまではこうしてゆっくりとお茶会を楽しもう……
(ふふ、頑張りなさいよ。イナリ)
LV3にしては優秀だと認めてあげるけど、こうして指揮を取るのは初めてのはず……どうなるか見物ね。私はそんな事を考えながら紅茶を口に含んだのだった……
私はラクシュミと協力して、色々な国の軍事関係者そして政治に関係する人間の元へ向かった。無論アポイトメントもないのに突然来た私に誰もが顔を顰めたが……
「篠ノ之束の研究所を見つけましたがどうしますか?」
その一言で一気にVIP扱いだ。無論証拠品を持ってきたからのこの待遇だろう
「この情報は頂いても宜しいのですか?ミス・玉藻」
私は最後に訪れた国「アメリカ」と言う国の最高軍事責任者と話をしていた。他の国はあくまで前座、メインはアメリカとドイツの2つの国。この国が一番軍事力が高いと聞いているからだ。
「そのためにここに訪れましたわ。無論報酬と……少しばかりのお願いがありますが」
私は人間としては玉藻と名乗っている。人間界で有名な狐の妖怪「九尾の狐」からその名前を借りている。同じ狐と言うことでなにかシンパシーも感じたしね……
「報酬のほうはこれくらいでいかがでしょう……」
差し出された小切手を見る0が9個で7が1つ……これは他の国よりも0が2つ多い……
「結構ですわ。どうもありがとうございます」
これでネクロディアシリーズの作成費用に回せる。機動時間がある程度の時間になると操縦者を取り込んでネクロ化させる擬似ISだ
「お願いとしてですが、私達の会社で開発した新作ISシリーズのテストと、私のところのIS操縦者候補を連れて行ってもらえますか?」
私がそう言うと軍事責任者は眉を顰めて、私を見て
「ISコアには限りがあるはずですが、そのコアはどこから?」
あ、そういえばそうだったわね。ISコアは数に限りがあったのよね……うっかりして忘れていたわ……
「これは試作段階なのでそこまで流通させていないのですが……」
鞄から取り出したのはISコアに似せて生成したデクスコア。無論微調整を施してISにも対応するようにしてある、まぁネクロ化のおまけがあるけどね……
「これはまさか……いや、しかし……」
信じられないと言う顔をしている男を見ながらデクスコアを鞄の中に戻す。私が戻したコアをじっと見つめている男
「これの試験データが欲しいのです。実用化段階になれば貴方の国に優先的に販売させていただきます。そのためにご協力願えますよね?」
その言葉に目の前の男は悩むまでもなく頷いた。ISコア1つで軍事のバランスが変わるというこの世界でこれはかなり有効な交渉道具にになりえる。暫く交渉を続け、全ての条件を私に有益な物にする事ができたので執務室を出る
「ご苦労様でした。イナリ」
カソックの青年……ヴォドォンがそう声をかけてくる。ヴォドォンはLV4で私よりも格上なのだが、指示を出されればそれに従うネクロだった。私の護衛役として連れて行けと言うベリト様の命で一緒に動いているが
(やりやすいのよねえ……)
アヌビスとかと違って、本当にやりやすい。それに戦闘力も高いし、態々最後まで説明しなくても私の考えている事を理解してくれる……難点は
「神の愛を布教するのは難しいですねえ……」
やれやれという感じで肩を竦めるヴォドォン。だけど肩をすくめたいのはこっちだ……私は深く溜息を吐きながら
「あんたさ?こんな中で人殺しとか止めてくれない?」
ヴォドォンの足元に転がっている腐りきった肉片。既にどろどろに解けているが、それはまだ人型を残している。ヴォドォンはネクロ化を神の奇跡と呼ぶ。これだけはどうしてもなれない
「問題ないですよ、記憶消去と結界はちゃんと使いましたから、しかし神に選ばれない人間があまりに多いのは実に悲しい」
とは言え、存在した人間の経歴を消すことは出来ないし、若干の違和感が残る。それがバレれば行方不明として捜索願が出るかもしれない。そうなると不味い事になるのだが、既に殺してしまっているのでは何も出来ない
「はいはい……好きにしてよ。もう……」
ヴォドォンの信仰心は全てネクロにある。より上位のネクロを神とし、そして自分と同類はその命を賭けて護る。これがヴォドォンだ。あとはこの歪んだ信仰心さえなければもっと良いネクロなんだけどねと苦笑しながら
「篠ノ之束の研究所へ向かうわよ。仕上げがあるからね」
人間への擬態を止めて、ネクロとしての姿、狐の耳に尻尾そして着物姿になると同時に浮かび上がる。大分時間が経ってしまった……動きの早い人間なら既に束の研究所に進軍してるかもしれない。時間はあまり残されていないはずだ
「了解です。あの人間ならば尊い神の愛を受け入れる事ができるでしょう」
尊いというか異常者だから受け入れれるんじゃ?とは思ったものの、それを言うと私も異常者になってしまうので敢えて口にはしない
「はいはい。どうでもいいから行くわよ。だけどあんたは戦闘に参加したら駄目だからね」
ヴォドォンの能力を使う上では別の世界のガイアメモリとか言うのが必要なのだが、あいつはこの世界で人間をその姿で殺しすぎた。生身ならまだしも、その姿では有名すぎるので駄目だというと……
「それでは神の愛を伝えることが出来ないではないですか!?」
「知らないわよ!ベリト様の命令なんだから従いなさい!」
ベリト様の名前を出すとむぐうと呻くヴォドォン。私はその姿を見て
「逃走者の排除はOKよ。作戦が始まれば人間が逃げるとおもうから、それの排除を任せるわ」
紛れ込ませたデュラハンとディースが活動を開始すれば人間は恐らく逃げ出す。だが目撃者を生かしておけないので排除を頼むと
「判りました。その中で神の愛を受け入れる事が出来る人間が存在する事を祈ります」
嬉しそうに笑うヴォドォンに好きにすれば?と声をかけ、私とヴォドォンは束の研究所へと転移した。後は成果を出してベリト様に褒めてもらうだけだが……
(守護者が来ると不味いわね。それも合わせて考えておかないと)
守護者が来れば束は連れて行かれてしまう、そうなれば作戦は失敗だ。だからそうならないように丁寧に事を進めなければ……
「……動く気配はなしと……」
私はそろそろネクロ達が束の研究所を襲う頃だと判断して、ネクロの気配を探していたのだが気配はない
「龍也さん?読みが外れたんじゃないですか?」
同じように索敵しているなのはがそう告げる。ハーデスが死んでから数日。ネクロも手痛い打撃を受けたので動かないのでは?と考えるのが普通だが……私には確信があった
「いや、そろそろ仕掛けてくるはずだ」
ベエルゼは慎重に策を講じるネクロだが、電撃戦も得意とする……だからこそ普通は動かないとおもう時期に動くはずなのだ……
「ん?あれ?」
フェイトがしきりに首を傾げながらそう呟く。それを見たはやてが
「どうした?ネクロの気配でもあったんか?」
「ううーん……わかんない……でも一瞬何か変な反応が……気のせいだよね」
そう笑うフェイト。私はフェイトのディスプレイを覗き込み、少し前の履歴を見る。確かに変な反応が一瞬現れたがすぐに消えている
「……嫌な予感がする。私が出るからはやて達は待機していてくれ」
気のせいと思えるだけの反応だが、何か嫌な予感がする……この感じはどこかおかしい
「気のせいやないんか?」
「それならそれで構わない。警戒を続けてくれ」
はやてとなのはとフェイトが残っているならネクロもおいそれと攻撃を仕掛けることは出来ない。それに私1人なら隠密行動も取れる。複数で動けばネクロに発見される確率が上がるのだから
「気をつけてくださいね。もし上位ネクロがいたら危ないですからね」
「そうだよ。龍也は1人だと無茶するから……」
「見張りが必要やな」
……まぁ私が無茶をするのは殆ど決まっているような物だが、ここまで言われると若干複雑な気分になる
「大丈夫だ。すぐに戻る」
1人では1人の戦い方と言うの物がある。私はそれを何年もしてきた、そしてこれが今回は必要だと判断したのだ。私を敵対している人間を助けるとなると1人の方が都合が良いと言うものだ
「そっちも気をつけろよ。誘導だと不味いからな」
これがもし二重作戦で、束の研究所を襲っていると思わせるミスリードかもしれない。普通のネクロならそこまで手の混んだことはしないが、ベエルゼならやりかねない。何故なら私が1人で戦っていた時代を知り、そして今とはまるで異なる戦術を好んでいたことを知る数少ないネクロだからだ……何重にも策を講じて私の動きを束縛してくる可能性は充分に考えられる……となると1人で動くのは得策ではないかもしれない
(少し寄り道していくか)
なのはやフェイトを連れていくことが出来ないと判断したのは、IS学園の護りの事もあるが……あの3人に自分達と同じ人間を傷つけさせる。それをさせたくないと言う親心?という物もある。それにあの3人は隠密行動に向いている性格ではない。ここはやはり専門の人間の力を借りるべきだろう
「ツバキさん。アイアス達3人から誰か1人。私に預けてもらえないだろうか?」
私の言葉にツバキさんは少しだけ眉を顰め、作業を中断して
「束の研究所に連れて行くの?」
「ええ。隠密行動にたけた人材が良いですね」
正直な話。なのはとフェイトも派手な戦闘を得意とする。隠密行動は極めて苦手なのだ。はやては運動神経に若干不安が残るので留守番だ。
「……フレイアかシェルニカが良いわ。アイアスはスナイパーだからそう言う行動には向いてないから、私から話は通しておくからログハウスに迎えに行ってくれる?」
思ったよりもすんなりOKが出たな。何か裏があるのか?私がそんな事を考えていると後ろから
「ワタシも着いて行く。束はネクロと通じていた、ワタシの求める情報があるかもしれない」
ユウリの気配はしていたが、まさかついてくると言い出すとは……私は溜息を吐きながら
「ユウリの同行が条件なんですね?」
「その通り。ユウリのスキルは知ってるでしょ?足手纏いにはならないわ」
本当なら駄目だと言いたいが、今回のような相手の出方が判らない上に。短期決戦を目的とする以上……隠密行動と破壊工作に長けた人間は必要だ。それにユウリならあのラボからデータを抜き出すことも出来る……ユウリを連れて行く上で発生するリスクとリターンを考え
「判った、準備を急げ。時間がない」
「判った。ログハウスで合流しよう」
待機状態のアマノミカゲを持ってラボを出て行くユウリ。私は特に準備する物もないので、ログハウスに向かおうとすると
「ユウリには過去を振り切る切っ掛けが必要だわ。今回は良い機会だと思うの」
確かに強烈な過去を振り切るには、それ相応の経験が必要になるだろう。だがネクロとの実戦ではそれはかなり厳しい条件だ……私はツバキさんの言葉に返事を返す事無くラボを後にしてログハウスへ向かいながら
(鬼が出るか、蛇がでるか……)
ユウリが来ると知ればあのネクロが来るかもしれない、その可能性は極めて高いが、ユウリが過去を振り切るためには必要なことなのかもしれない。その面ではツバキさんの意見には賛成だ、だが正直不安な面もある。普段冷静なユウリが激情する可能性もあるのだから……だが既に賽は投げられた。今更引き返すことなどで気はしない
「今回は私が同行する。よろしく頼む」
ログハウスで待っていたのはフレイアだった。冷静と状況判断能力に長けていると聞いている。この場面では一番力を借りたいタイプだ
「ワタシも準備完了だ」
ユウリがログハウスに来た所でステルスで探知できないようにしてから、私はIS学園を後にした。かりに束が襲われていたとして、私を信じるかどうか?など問題はかなり残っているが、それでもなお束がネクロ化する可能性を考えれば、救出するだけの価値はある。協力してくれないのなら申し訳ないが終わるまで軟禁していれば良い。私はそんな事を考えながら束の研究所がある山の中へと向かうのだった……
そして様々な思惑が交じり合う場所で終焉への物語の幕が上がるのだった……
第121話へ続く
次回からは戦闘回になります。対人・対ネクロの両方を描いていこうと思います。感じとしてはあれですね、国から切り捨てられた人間が束を襲撃する感じにしようと思います。アズマが孤軍奮闘する感じになるかもしれないですね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします