第18話
ついてる、私はそんな事を考えながら、自分の番が来るのを待っていた。この班のグループリーダーは八神龍也だった
(箒から聞いてたが、どれ程の強さなんだろうか?)
箒からは化け物じみた強さと聞いているが、一体どれ程の強さなんだろうか?
(楽しみだなー本当にそんなに強いなら1度模擬戦してみたいな)
そんな事を考えている少女の名は「薄野 弥生」鈴と同じく2組の代表候補生だ、代表候補といっても日本ではなくギリシャの代表候補で、専用機持ちでもある。まぁ調整中で前のクラス対抗は出場できなかったが
(あの時の剣筋…間違いなく強い!)
あの謎のISと対峙していた、八神龍也の剣捌きを見て私は興味を持った。そして今八神龍也のグループで実習と言うのは接点を作る良い機会だ
(大体なんだよ、箒のやつ。紹介してくれってつったら無理って即答しやがって)
剣道の全国大会決勝で戦い、紙一重の差で負けた物のお互いの強さは良く判った。それ以来友達の箒に大してブツブツと心の中で文句を言う
(魔王とか、私はまだ命が惜しいとか……そんなん言われてもわかんねーよ!)
箒の言い分が判らず文句を言ってると
「次、最後の1人は誰だ?……おかしいな?もう終わりか?」
「薄野さんの番だよ?」
「あっ?……悪ぃ、教えてくれてサンキュー」
考え事に夢中になり周りが見えてなかった。教えてくれた同じクラスの女子に礼を言い。私は一歩前に出た
「私だ、薄野弥生。一応代表候補だからそこまで教えてくれなくても大丈夫だぜ?」
そう言うと八神龍也は
「そっか、では早速。起動と歩行を頼む」
「いや。それは良いんだけどよ?なんで立ったままなんだ?」
私達の班のIS「ラファール」は立ったままであり。そう尋ねると
「弥生の前の前かな?立ったまま装着解除されてしまったんだ」
弥生って…名前呼びかよ…まぁ良いけど…
「んで?どうやって乗れと?」
立ったままのISには流石に乗れない。なのでそう尋ねると
「抱き上げて乗せるつもりだが?」
「抱き上げる!?……私を?」
うんと頷いた八神龍也は
「あー、嫌なら踏み台とかでも良いけど?」
「いや。ちょっと待て、ちょっと考えさせてくれ」
抱き上げってあれか?振り返った私の視線の先では、織斑先生の弟である。織斑一夏が女生徒をお姫様抱っこで抱き上げていた
(伝説のあれか!?あれなのか!?似合わないにも程がある!?だが踏むのは駄目だよな)
むううう……と頭を抱えて唸る
(踏むのはやっぱ駄目だ。よし)
「あーじゃあ。その抱っこの方向で」
「ん、了解」
さっと流れるような感じでお姫様抱っこで抱き上げられる
(うわっうわっ!?か、顔が近い!?)
あの整った顔が近くにあり。非常に落ち着かない……それに
(細身だけど……筋肉質なんだな……)
細身ながら鍛え抜かれた身体に触れていると
(!!!殺気!?)
凄まじいまでの殺気が2つ
「「……」」
ハイライトの消えたどんよりとした目で私を見ている。高町とハラオウン……殺気で人を殺されるなら私はもう死んでる。そんな風に思うほどの殺気だった……
(あれが魔王か!?)
魔王の意味を理解した、あれは確かに危険な存在だ
「弥生、コックピットに着いたぞ。乗り込んでくれ」
「あ……うん」
龍也に促されラファールに乗り込む。専用機の「デッドクリムゾン」と比べて
(安定してんなあ……物足りないけど)
軽く歩行をさせてから、蹴りや突きを試してみる
(反応が鈍いなあ……出力も物足りないし……)
量産型だからといえばそれだけだが。やはり物足りない気がする
「まぁ。こんなもんか」
ラファールをしゃがませ降りると
「やるなあ、流石代表候補」
パチパチと手を叩く龍也に
「褒められるほどの事じゃねえ、それよりISの片付けしようぜ。私で最後なんだろ?ほれほれ!教えてくれた龍也に片付けさせるなんて真似すんじゃねぇ。私達でやんぞ」
手を叩きながら私達の班の女子に声を掛ける
「うん。判ったよ薄野さん」
「判ってるって!丁寧に教えてくれたし。それくらいはしないとね~」
そう言って笑う女子達と協力してISを運搬用カートに乗せる
「いや。私がやるぞ?」
そう言って運ぼうとする龍也に
「良いから休んでろ!それ位は私達で出来る!」
少しだけ強い口調で言うと龍也は何も言えず黙り込んだ。私はそれを確認してから、格納庫へと向かった
「なんと言うか、お姉さんと言う感じだったな」
弥生が先導し、ISを運んでいく様子を思い出しながらそう呟いた。何処と無くヴィータに似た雰囲気を持つ弥生は随分と私の印象に残っていた。
「さてと。行くか」
午後の授業はISの整備系の授業。またここに戻らなければならないので何時までものんびりしているわけにも行かない。私はそう判断し
アリーナを後にした
「龍也。良かったら一緒に昼にしないか?」
「別に構わんが、食堂か?」
私がそう尋ねると一夏は
「違う違う。屋上で箒たちと食べるんだけど。良かったら龍也達もどうかと思ってな」
「そう言うことならご一緒しよう」
どうせ屋上で食べるつもりだったし。大勢で食べたほうが楽しいし。断る理由も無く良いと言うと
「ほう、では私も良いか?織斑一夏?」
「ボーデヴィッヒさん、フルネームはちょっと」
フルネームで言われた一夏が複雑そうな表情で言うと
「ふむ。ラウラと呼ぶのなら考えるが?」
顎の下に手を置き言うラウラに
「…ラウラさん?「ラウラだ」…はい、ラウラ。フルネームは止めて欲しい」
「一夏。で?私も良いか?ああ、勿論私の友人も一緒だが。構わんよな?」
そう尋ねてくるラウラに一夏は
「ああ、良いぜ。屋上はわかるよな?先に行って待ってる。行こうぜ龍也」
「ああ、なのは達には書き置きでも書いておくか」
今2人ははやてに今の所の調査結果の報告の為に自室に戻っている。私だと報告が大雑把で駄目だそうだ、まぁ他にも理由はあるが(はやての暴走を未然に防ぐとか)なので机にメモを張って。
「シャルルも一緒にどうだ?」
「うん、ご一緒させてもらうよ」
にっこりと微笑むシャルルと共に私達は屋上へ向かった
「と言うわけだ。一緒に行くぞクリス」
「もう少し説明して欲しいんだけど?」
食堂に行こうと準備をしていると突然現れ屋上で昼食だと言うラウラにそう尋ねると
「説明している時間は無い。行くぞ」
ぐいっと私の手を引くラウラ、内心溜め息を吐く。同じくシュヴァルツェ・ハーゼ隊の所属だが、そこは隊長と平隊員の差、強く出られると従うしかない
「はいはい、判りましたよ。隊長殿」
私がそう言って立ち上がるとラウラは面白く無さそうな表情で
「ここはドイツじゃないんだ。隊長とは言わないで欲しい。私はお前を友人だと思っているから一緒に来てもらったんだ。普通に同年代の友人として接して欲しい」
ラウラは一時期比べると丸くなった。織斑教官とアマノミヤ中佐のおかげだろう、まだ少し硬く天然気味だが、以前と比べれば大分丸くなり冗談を言ったり歳相応の反応をしてくれる。それが少しだけ嬉しくて
「はいはい、それじゃあ行こうかラウラ」
「うむ、行くとしよう」
上機嫌なラウラと共に階段を昇りながら
「織斑教官の弟さんってどんな感じだった?」
「あれは相当に鍛えてるな。私の手刀も難なく受け止めていたし、反応速度も素晴らしい、流石は教官の弟だ」
うむうむと頷きながら言うラウラに
「そういう言い方は良くないよ?例え教官の弟でも、織斑君は織斑君。ちゃんと分けて考えないと」
「むっ?そうか。それもそうだな…いかんな私はどうもまだそう言うのが良く判らない」
首を振りながら反省していると言う素振りのラウラに
「ゆっくり行けばいいんじゃない?少しずつ理解していけば良いよ」
そう笑いかけるとラウラは
「うむ……そう言ってもらえると嬉しい。ありがとうクリス」
そう言って礼を言えることがもう変わり始めてる証拠だよ、と心の中で呟き。私とラウラは屋上へ続く扉を開いた……その瞬間私は心臓を鷲掴みにされたようなプレッシャーを感じた。屋上の奥に腰掛ける黒いコートに目立つ銀髪の男……いや、あれは本当に私と同じ人間なのか?人の形をしているだけでもっと違う何かなのではないか?近付いてはいけない、私の本能がそう告げている。あれは人間じゃない、もっと上位の……言うならば天使や神に等しい何か……おかしな話だが、私はそう感じた
「ん?ああ、やっと来たかラウラ。隣が言っていた友人かね?」
にこやかに尋ねてくる男にラウラは
「ああ、私と同じドイツの軍属の「クリス・ファウスト」だ。私と同じく代表候補生でな、ずっと軍属だった私にとっては頼もしい友人だ」
ラウラが私を紹介してくれるが、私は沈黙したままだった。ここにいてはいけない、それだけを感じる
「クリス?どうした……顔色が悪いが?また何かを感じたのか?」
ラウラが心配そうに尋ねてくる、私が代表候補生になったのは、高い感受性と非科学的だが第六感、俗に言う霊感や予知と言った能力があるからだ。故に強すぎる力を感じると硬直してしまう、それを知って居るラウラがそう尋ねてくる。その直後、感じていたプレッシャーが霧散する……ゆっくりとだが私の体を抑えていたプレッシャーが消えていく……何事かと思い男を見ると
「……」
すまないなと言う感じのリアクションをしながら、片目を閉じていた……やはり、今の不調はあの男……八神龍也が原因だろうが……
(一体いまのプレッシャーは……)
今まで感じた事のないまでの凄まじいプレッシャー……彼が一体何者なのか?私はそればかりを考えていた……
ミスったなぁ……まさかあそこまで感受性が高い子が居るとは……ラウラの隣でもくもくとサンドイッチを齧っている。クリスを見ながら私は自分の失態を悔いていた。無意識で垂れ流している、私達の魔力に当てられていたようで。慌てて魔力を抑えたが、もう完全に怪しまれているだろう…警戒するようなそんな気配を感じる
(ミスりましたねえ……私達の魔力を感じ取るなんて、もしかしてリンカーコア持ちでしょうか?)
食事をしながら尋ねてくるなのはに
(いや、違うな。恐らくは人より感受性が高く、霊感が強いのだろう。だから私達の魔力を感じ取ったと言うところだな)
その証拠に彼女からは魔力を感じない。それが何よりの証拠だろう。私がそんな事を考えていると
「ほう……中々旨いな」
何時の間にかラウラが私が作ったサンドイッチに手を伸ばしていた
「むっ?駄目だったか?旨そうだったのでついな」
飲み込んでから駄目だったか?と尋ねてくるラウラに
「あ……ああいや構わない。ドンドン食べてくれて構わない。作りすぎてしまっているのでな」
私がそう言うとシャルルが
「あ……あはは……確かに多いよね」
「作るのに夢中になってしまってな。良かったらシャルルも食べてくれ。残すのは勿体無い」
今日のメニューはハムサンドやフルーツサンドと言ったパン食をメインにした弁当だ。おかずも唐揚げやパスタを用意しているが、少々多いのでそう言うと
「あっそうなの?じゃあ、唐揚げもーらい」
「では私はフルーツサンドを」
バスケットに手を伸ばすセシリアと鈴、そしてそのまま手に取った物を口に運び
「あんたさあ?ISの操縦も上手い上に料理も完璧なの?弱点ないの?」
「これは……龍也さん、今度教えていただけないでしょうか?」
少しばかり悔しそうな顔をで言う鈴とセシリアに頷いていると、なのはが
「龍也さんは基本なんでも出来るよ。指輪作りとか料理とか、裁縫とか、龍也さんは出来ない物の方が少ないんだよ」
「それは羨ましいな。俺なんか出来ない事ばかりだぜ」
箒が作ってくれた弁当を食べながら言う一夏に
「誰だってやれば出来るものだ。諦めや自分はここまで何だと言う決め付け、それが成長を抑えるものだ。自分は出来るんだと思えば大概の事は出来る」
私がそう言うと箒が
「想いの力と言うやつか」
「ああ、想いの力はどんな物より強い。自分を信じて、前を見るそれが一番大事なんだ」
まぁ判っていても難しいがな?と付け加えると
「龍也はそうやって進んできたんだよね」
「まぁな。言い換えると私はそれしか知らん。苦しくても悲しくても歯を食いしばって前に進むことしか出来ないんでな」
肩を竦めながら言うと一夏が
「どうしてだ?相談に乗ってくれる人とか居なかったのか?」
「居るにはいたが、その人達に会ったのは割かし最近でな。親の居ない私と妹は家族間だけで生きていく必要があったのだよ」
苦笑しながら言うとセシリアが
「親が居ない?……失礼ですが。龍也さんのご両親は?」
「私が6歳の時に死んだよ……それ以降私の家族は妹だけ、強くある必要が会ったんだ。妹の為にも自分の為にもな、私が泣けば妹が不安がる。私は強くなければならなかった故にありとあらゆる物を学ぶ必要性があった。それだけの話だ」
肩を竦めながら言うと
「龍也って結構苦労してるんだね」
「そうでもない。私は苦労してるなんて思ってない。ただ、私が大切に思う者が笑っていてくれればいい。それだけが私の望みさ」
んん?何かしんみりしている?何でだ?
「何か龍也の強さの一部を垣間見た気がする」
うんうんと頷く箒達。そんな大した話はして無いと思うんだが……
「まぁそうきにしてくれるな。ほれほれ、早く食べないと午後の授業に遅れるぞ」
時計を指差しながら言うと
「うわ!やべ!!早く食わないと!!」
ガツガツ!!
と急いで食べ始める一夏。ああ……そんなに慌てて食べると
「むぐう!?」
どんどん!!
胸をドンドンと叩く一夏。案の定喉に詰まらせたか……
「わわ!大変!大丈夫?」
パンパンと一夏の背中を叩くシャルルと
「全くしょうがないわねあんたは。ほら水」
鈴に差し出された水を勢いよく飲む一夏……騒がしくも平和な日常がそこにはあった……
(これだな。私が護りたいと思うのは、いつになっても変わらないただ1つの願い…)
私はそんな事を考えながら、ゆっくりと空を見上げた…雲ひとつない快晴がそこにはあった
第19話に続く
今回は会話メインでした。新キャラは「シェン」さんと同じく囚人様に頂きました。キャラが増えてきてたまに混乱しますが
楽しく執筆しています。それでは次回の更新もよろしくお願いします
PS フェイトのアンケートや龍也さんの決め台詞募集に参加してくださった方から。現在番外編のリクエストを募集しています
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