第19話
都内某所の高級マンションの一室
(生きる意味か……)
研究室襲撃後から1週間。ワタシはそればかりを考えていた……あの研究室で遭遇した更識楯無の言葉が妙に心に引っ掛かる
(どこへ行くのか?何処へいけるのか?……ワタシは……)
自分が何の為に生きているのか?どうしてもそれを考えてしまう
「……何をしている。ユウリ」
窓の外を眺めながら考え事をしていると、背後から声を掛けられる。振り返りながら
「ふむ、考え事だよ。M」
ワタシより少しばかり年下の黒髪の少女。Mは少しばかり眉を顰め
「お前が考え事か、はっ明日は槍が降るか?」
「……酷い言い草だな。ワタシとて考え事くらいはする」
ワタシが肩を竦めるとMは
「貴様はいつでも任務だ、依頼だと言って何も考えず。対象を抹殺するのが仕事の筈……それが考え事とはどういう心境の変化だ?」
ワタシの前に座りながら尋ねてくるMに
「お前は考えた事は無いか?何故生きるのか?何のために生きるのか?」
私がそう尋ねるとMは軽く笑いながら
「愚問だな。お前は知っているだろう?タイプ00ファースト「その名でワタシを呼ぶな」……はっ!ようやくらしい顔になったな」
即座に抜き放ったサバイバルナイフをMの喉元に突きつける。Mは突きつけられたナイフを見て
「それでいいんだ。ユウリ、貴様は何も考えず対象を殺すことだけを考えればいい。余計な事は考えるな」
ナイフに反射した自分の顔を見る。無表情で冷酷な暗殺者の顔……そして自分か根っからの殺戮者なのだと……ナイフをMの首元から離しながら
「すまなかった」
「気にするな。その冷酷な顔……私はそれなりに好きだからな」
にいと邪悪な笑みを浮かべながらMは
「さて、話を戻すか。私の生きる意味だったな、私の目的は1つ。織斑一夏を殺し、私が私になる事それだけだ。お前も似たようなものだろう?アマノミヤに保護されたタイプ00セカンドの抹殺、それを目的とすれば良い、そうすれば貴様も貴様になれる。そうだろう?」
そう笑ったMはそのまま立ち上がり
「では私はこれからイギリスに向かう。ロールアウトされたばかりのBT兵器搭載型の2号機を奪取してくる。貴様にカスタムしてもらったラファールも悪くないが、所詮は第2世代だからな」
違法改造を繰り返し第3世代並みの性能を持たせた。ラファールの改造機、アスモデウスの待機状態である。黒い十字架を見せるMに
「言ってろ。ISの整備所か料理も碌に作れんお前にはカスタム型のラファールがお似合いだ」
お互いに憎まれ口を叩くこの関係はそんなに嫌いではない。Mも同じ気持なのか少しだけ柔らかい笑みを浮かべ
「ではな、奪取してきた機体の整備は任せるぞ」
「ああ、判ってる。武運を祈っていよう」
最新型の機体だ。奪取は相当に難しいだろう。だからそう言うとMは
「心配はない、ネルヴィオが幾つか手駒を出してくれるそうだ」
ネルヴィオ……あのネクロとか言う化け物集団の幹部か…
「ワタシは信用できるとは思わんがな」
光のない瞳と冷酷な笑みを思い出しそう呟くと
「どうでも良い。敵なら排除するそれだけだ」
Mはそう言うと今度こそ、この部屋から出て行った……スコールもオータムも居ない部屋で1人再度窓の外を見つめ
「生きる意味か……セリナお前なら、ワタシに教えてくれたか?」
暗き闇の中でも笑顔を忘れなかった彼女の事を思い出し、ワタシは1人そう呟いた…
私は「ミステリアス・レイディ」の修復具合と自身の身体の検査をしてもらう為に。街外れにあるツバキさんの個人ラボに来ていた。ツバキさんはエリスの母親であり優れたIS研究者でもあり、IS操縦者としても優秀な尊敬できる人だ。
「骨に異常はなし、もう大丈夫そうね」
「どうもありがとうございます。ツバキさん」
私がそう言うとツバキさんは
「しかし、ミステリアス・レイディのアクアクリスタルごと機体を引き裂くなんて……どういう性能なのかしら」
現在修復中のミステリアス・レイディを見ながら言うツバキさんに
「私個人の判断としては零式と同格か、それ以上の機体かと」
「出力や安定性は劣ってるみたいだけど。私も同意見よ。全く第3世代を軽く上回る機体が2機も今年はどうなってるのかしらね?」
確かに今年は異常な数の専用機持ちに、異常な戦闘力を持つ者が4人……正直どうなっているのか?と私も思う
「うーん……修復はもう少しかかるわね。まあ修復が終ったら、持ってて上げるわ。暫くは暗部の活動は止めて、大人しく学生生活でもしてたら?」
まぁISが無い内は大人しくしてるしかないので頷いた
「それで……ツバキさん、聞きたい事があるんですけど?」
「うん?何?」
コーヒーを啜るツバキさんに
「あの違法研究所で黒武士に遭遇したとIS学園に報告しました。ですが貴女の耳だけ入れておきたいことがあるんです」
「何かしら?」
首を傾げるツバキさんにあの研究所で回収した、黒武士の仮面を見せながら
「これは黒武士が身に付けていた仮面です、ISは行動不能に追い込まれましたが、辛うじて出来た唯一の反撃で、この仮面を落とす事が出来ました……」
ここで言葉を切り一度大きく息を吐いてから
「仮面の下は……男性の物でしたが……確かにエリスの顔でした」
一瞬見ただけだが見間違える筈がない。黒武士の仮面の下はエリスの物だったと告げると
「……そう、エリスの……」
「教えてください。エリスと黒武士の関係を」
私がそう言うとツバキさんは
「悪いけど……教えられないわ。貴女には関係のない事だから」
「しかし!「黙りなさい、知るべきでは無いと言ってるの」……!」
凄まじい殺気に当てられ黙りこむと
「何も知らない学生如きが踏み込んで良い事じゃないの、ごめんなさいね」
形だけの謝罪をするツバキさんに
「いえ、こちらこそすいませんでした」
ツバキさんの酷く辛そうな顔を見て、私が聞いてはいけない事を聞いてしまったのだと理解した。私は謝罪しながら立ち上がり
「フレイアが待ってるのでもう行きますね」
本来はエリスの護衛の1人だが、ここまで来るのに車で送ってきてもらった。何時までも待たせるわけには行かないのでそう言って立ち上がると
「そう、それじゃあね。楯無、早く簪ちゃんと仲直りしなさいよ?」
「うっ……はい」
聞いてはいけないことの逆襲だろうか、良いエガオでそう言うツバキさんに頷き、私はその場を後にした……
「どうでしたか?お怪我のほうは?」
「問題ないわ、ISはまだまだだけどね?」
外で待っていたフレイアの車に乗り込みながら言うと
「それなら良いのですが、余り無茶をなさならいように」
「判ってるって。じゃあ行きましょうか?」
小言を言い出すと長いフレイアの言葉を途中で切り、発進するように促す…フレイアはまだまだ言いたりなそうな顔をしていたが。頷き車を走らせた。流れていく景色を見ながら
(エリスには何か秘密がある……ツバキさんの反応で確信した…)
それが何なのか気にはなるが……そう簡単に踏み込んで良い話ではないことも理解した…懐にしまっている黒武士の仮面を触りながら
(はぁ…あの研究所の一件から、何かとんでもない事が起きそうな気がするわね)
こういう嫌な予感は当たるので内心溜め息を吐きながら、空を見上げた……雲1つない青空がそこに広がっていた
走り去る赤いスポーツカーを見ていたツバキは
(……タイプ00ファースト、サード……あの時保護できなかった2人……でも2人とも女の子の筈……男とはどういうこと?)
鋭い戦士の顔で思考の海に浸るツバキは、PCのロックデータを閲覧しながら、携帯を手に取り……
「もしもし?轡木さんですか?頼みたい事があるんですけど……」
IS学園の裏の運営者である。轡木 十蔵にへと電話を掛けた……
「いや、あれはマジでヤバイな。視線だけで人殺せるぞ?」
「だろう?流石にあの域の魔王と敵対するのは避けたいんだ」
食堂で箒と前の授業で体験した魔王の事を話す、箒が避けるのも理解できた
「いや、でもお前も織斑先生と敵対するつもりだろ?じゃあ良いじゃん紹介してよ」
だが箒も箒で、一夏を物にするため。魔王と敵対する覚悟があるんだ。今更1人2人に睨まれても良いはず、そう思いそう言うと箒は
「だから嫌だと言っている!あの2人は生身でも強いんだぞ!下手をすると命に関わる」
ぶんぶんと首を振る箒。こりゃ駄目だ、何を言ってもうんとは言わないな。箒を経由して八神龍也と接点を造るのは諦めるか
「自分で話しかければ良いだろう!あれは見た目こそ怖いが温和で良いやつだぞ。……訓練時は悪魔だが」
「ん?何か言ったか?」
ボソリと呟いた箒の言葉がよく聞こえず、そう尋ねると
「いや、何でもない。お前は専用機があるんだ。確か今日は第2アリーナで龍也達が訓練をするそうだ。どうだ?お前も行って見ては?」
そう進めてくれる箒だが
(なんだ?妙に必死な表情をしてる気が)
何が何でも私を連れて行く。目がそう言っている……何か裏がありそうだが、今の私はとりあえず「八神龍也」との接点が欲しい。
例えそれが危険な橋だったとしても
「そうだなー、じゃあ今日の放課後私もその訓練に参加してみようかな」
丁度私の専用機の調整も終り手元に戻ってるし。1度動かして感触を確かめたい
「そうか!では今日の放課後、第2アリーナで待ってるぞ!良いな!絶対に来いよ!」
「おおう……判ってる」
何度も念を押す箒に頷き、私は食堂を後にした…だが後に私は知る事になる。悪魔と言うのは実在するのだと……
第20話に続く
弥生さんも悪魔の訓練にご招待!箒のこの時の思考は「何が何でも弥生も訓練に参加させる!」でした。人数が増える=1人頭の訓練時間が短くなる…地獄の時間が減る…その為の生贄として友人を巻き込む事を決意したのです。鬼教官×2と悪魔の訓練はそれほど厳しいと言うことです、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします