PS 番外編にラウラの過去編の話を投稿してありますので、ぜひこちらも宜しくお願いします
第25話
「まぁとりあえずそこに座ってよ」
私が部屋の奥のイスを指差すと八神龍也は
「そうですね、立ち話もなんですし」
一瞬考えた素振りを見せたが直ぐに奥のイスに腰掛けた。ここで私が奥の椅子に座るように八神龍也をうながしたのは、いざと言う場合私は逃げ易い位置を確保する為であり。天井裏に待機しているアイアスが行動し易い位置と言うわけで私とアイアスに都合のいい場所だからだ
「今1年で最強って言われてる君と話をしてみたかったのよね」
「そうですか。学園最強の座を脅かされる事でも危惧しました?」
にやりと笑いながら言う八神龍也に
「あら?知ってるの?IS学園での生徒会長と言うのは最強と言う称号って言う事を?」
「ええ。聞いてますよ、まぁ自分で最強だのどうだの言う人は酷く幼稚だと思いますがね?」
ぐう……嫌味を折り混ぜてる……多分私の意図に気付きそれでもここに来て居ると言うのは間違いないだろう。
「まぁ良いじゃない。強い相手が居ればお互いに切磋琢磨できるでしょう?」
「それもそうですね、目の前に強い相手が居ればそれを越えよう、もっと強くなろうと思う。そう言う面では最強を自負する意味はあると思いますよ。自分にプレッシャーを掛ける意味もありますしね?」
(何この子の目……何でもお見通しとでも言いたいの?)
その余裕の色を消して崩さない八神龍也に対しての警戒の具合を上げる。ここは確かに私の部屋で天井には息を殺しているアイアスも居る。自分のほうが明らかに有利なのに優位に立ってる気がまるでしない、目の前の男の意図がまるで読めない。まるで深い闇を覗き込んでいるようなそんな不透明さを感じる
「しかし……この部屋はネズミでも居るのですか?どうにも何かの視線を感じるのですが?」
天上を一瞬見てそう告げる八神龍也
(アイアスにも気付いてる!?奇襲は無駄とでも言いたいの?)
あくまで余裕の色を崩さない八神龍也はそのまま、目の前の紅茶を飲み
「しかしですね。私はネズミは嫌いなのですよ、早く何処かに行ってくれると良いんですけどね。落ち着いて話も出来ないですし」
(遠まわしにアイアスを離せと言ってるのね)
少し考えるアイアスはあくまで念のための護衛、離すかどうか考え……直ぐに判断を下した
(アイアス、撤退して頂戴)
(お嬢様!?相手の言う事に従うのですか!?)
プライベートチャンネルでそう言うとアイアスは酷く動揺した声で言葉を返すが
(今は情報が欲しいの、ここは八神龍也の言うとおりにするわ)
(わ。判りました……このまま下がります、何かあればご連絡を)
そう言ってアイアスの気配は遠ざかって行った
「ふむ、ネズミは何処かに行ったようですね、これで落ち着いて話が出来ますね、更識会長?」
「ええ。そうね」
これ条件はイーブン、ここで私が八神龍也と話しているのは織斑先生達も知っている。いざとなれば連絡用のスイッチを押せば直ぐに駆けつけてくれる手筈になっているので特に心配は無い
「それで私に聞きたいこととは?あっ、お代わり貰いますよ」
特に気兼ねした素振りも見せず目の前のティーポットから紅茶のお代わりを注いでいる八神龍也に
「如何してそんなに強いのかな?って思ってね。何処かで訓練でも受けたの?」
「別に訓練なんか受けてないですけどね?基本は独学ですよ、ありとあらゆる剣術・武術の良い所を組み合わせてるだけですよ」
組み合わせてるだけと言うが実際はそんな簡単にできることではない。それを何でもないように言う八神龍也に
「へぇーどうしてそこまで武術とかを教わったの?」
「強くなりたかった。何者にも屈しない強い力が欲しかった。大切な……自分の命よりも大切な者を護る為に、力を欲したそれだけですよ」
自分の命よりも?あの2人じゃないわよね?要注意人物の高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの2人を一瞬思い浮かべたが、イントネーションからその2人ではないと感じた
「まぁそう言うわけですよ、私は私の護りたい者を護り自身の正義を貫く為に力を得た。それだけですよ」
「じゃあ、聞くけど?君の正義って何?」
私がそう尋ねると八神龍也は軽く笑いながら
「己の大切な者を護る為なら大を切り捨てる正義……ですかね?」
「大より小を取ると?」
「そうですよ?それが何か?だいたい自分の護りたい者を護れずなにが正義か?救えるなら救う、救えないなら救わない。まぁ自分の大切な者なら何をしてでも護り抜きますよ?例えその行いが誰かを殺したとしても……私にとってはそれは正義だ」
揺るがない信念そして強い決意の込められた言葉だった
「貴女のような人にはわからないでしょうね?己のために妹を切り捨てるような人間には」
簪ちゃんの事を言われて一瞬頭に血が上るが、紅茶を飲み何とか気を静めてから
「私が簪ちゃんを蔑ろにしていると?」
「違うのですか?簪は助けを求めている、なのに貴女は何もしない。全く持って理解できない行動だ。兄や姉は何をしてでも下の者を守る者、それをしない貴女は正直軽蔑に値する」
「何も知らないくせに良く言うわね?」
「知らないですよ?でもね、簪が助けを求めてる事はわかる。そして今の貴女に私は理解できない、そしてまた私も貴女を理解できない。何故なら貴方の在り方と私の在り方は間逆の物だからだ」
八神龍也はそう言うと立ち上がり
「お茶ご馳走様でした、申し訳ないがこれ以上私は貴女に話す事はない。貴女が自身の在り方を代えたのならその時また話し合いの場を設けよう。しかし……」
ここで言葉を切った八神龍也の雰囲気が変わる、どこまでも鋭く研ぎ澄まされた刃のような気配に……その何処までも鋭利な闘気に呑まれその場で動けずに居る私に
「それが出来無いのなら私とお前の道は決して交わらない。そしてお前は心から護りたい者も失い孤独になる、そしてその時に後悔するだろう。どうしてあの時私は行動しなかったのだろうと。そうなったら全てはもう戻らない、戻れるうちに戻る事を勧める」
言うだけ言うと八神龍也は私の横をゆっくりと歩きながら出口に向かう。声を掛けようにも言葉が無い、今の私には八神龍也を呼びとめるだけの覚悟が無い。ここで呼び止めたら私は徹底的に言い負かされるだろう、私の間違い指摘される事を恐れ、私は開きかけた口を閉じた
「そうそう、最後に1つだけ言っておこう、私はお前達の敵ではない。今言えるのはそれだけだ、後は時を待て私が何者なのか?何の為にここに来たのか?それは時が来れば自ずと判る。それまでは余計な詮索をしないことだ」
そう言うと八神龍也は私の部屋から出て行った……残された私はイスに腰掛けたまま、八神龍也に言われた言葉を繰り返し思い出していた
時間の無駄か……私は自室に戻りながらそんな事を考えていた。更識楯無との話し合いで何か判るかと思ったが、正直時間の無駄も良い所だった。彼女の在り方は全く理解できない、最強だのなんだの言われ自惚れ、自分の妹が今どんな立場に居るのかも理解していない。
(簪が可哀相だな。姉のつてで代表候補になっただの、何の実力も無い癖にとか陰口を言われ続けているのに良く耐える)
10代女子と言うのはどうもそう言うことばかり気にするから良くない、簪が代表候補になったのは実力だと私は考えていた。16歳であれだけISの知識、独学でISを組み上げる技術、それに冷静な判断力に柔軟な発想。どれも突き抜けるだけの才を秘めている、惜しむらくは
(自分には何も出来ないと思い込んでいる点か)
簪は楯無と比べられるのに耐えれなかったのだろう、だから自分はここまでだと、自分には何も出来ないと思い込んでいる。それが簪の成長を妨げている。だがもしその壁を越えたのなら簪はもっと強くなる。そんな事を考えながら通路を曲がるとそこには
「簪?どうした?」
「あ……ちょっとね……」
簪が通路に背中を預け立っていた。その目は不安と恐怖の色を浮かべていた
「少し話しでもするか?」
「あ……う、うん」
こくりと頷く簪と通路に備え付けられたソファーに腰掛ける
「どうしてあんな所に居たんだ?」
「お、お姉ちゃんと……龍也君が歩いてるのを見て……気になって」
俯きながら言う簪に
「ふむ。お前の心配してるような話はしていない、私は私の意思でお前に協力しているんだぞ?」
「!?……本当?」
簪が考えているのは恐らく、姉に頼まれたから私に協力してくれていると言うところだろうか?だから私と楯無が一緒に居るところを見て不安になったのだと判った。だから安心させる為にそう言うと簪は俯いていた顔を上げ私の顔を見る
「本当だ。私は嘘をつかない事を信条にしている、それに私は誰かに言われて動くような事はしない。私は純粋にお前を助けたいと思ったから協力している」
ぽんぽんと簪の頭に手を置きながら言うと
「あ……」
「んん?ああ、悪いつい癖でな。すまん、嫌だったろ?」
「……い、嫌じゃないよ?……えーと、えーと……安心する」
頬を赤らめ嫌じゃないと言う簪はきょろきょろと落ち着き無さそうにしながら
「えーと、明日、弐式の飛行テストと稼動試験をするの、見に来てくれる?」
「もうそこまで行ったのか?」
「う、うん。エリスと龍也君のおかげ……思ったより速く形になった。後は稼動データを集めたいの」
嬉しそうに笑う簪に
「そうか、それなら見に行こう。私も弐式がどうなったか気になってたしな、何時やるんだ?」
「あ、明日の放課後の……14時から。第6アリーナで」
「14時から第6アリーナだな、判った必ず見に行く」
ぱあっと華の咲くような笑みの簪を見て私は
「ああ、そうだ、良い物をやろう……右手を出してくれ」
「?」
不思議そうな顔をしながら右手を差し出した簪の右手首に
「これはな私が作った御守りだ、身に付けてくればきっとこれがお前を護ってくれる。だからちゃんと身に付けておけよ?」
中心に蒼い魔力石を埋め込んだ金のブレスレットを巻いてやる。これは私が得意とするバリア系の術式を組み込んだ簡易型のデバイスといって良い代物だ。衝撃を和らげたり色んな効果を持っている。後基本的にはやて達に渡した物なので見た目もお洒落だ
「い、良いの!?こんな高そうなの」
目を白黒させる簪に
「おう、手作りだから殆ど唯だ。気に入らなかったら捨ててくれても良いぞ?」
「す、捨てない!だ、大事にする!」
ギュウウとブレスレットを抱き抱えるように言う簪に苦笑しながら
「それじゃあな、また明日」
「う、うん。また明日」
ひらひらと手を振りながら私は簪と別れ自室に向かった。1人残った簪は鮮やかな紅い頬をしながら渡されたブレスレットを見つめ。嬉しそうに笑っていた
龍也がナチュラルにフラグを建てている頃一夏は、夕食後鈴に拉致され人気の無いアリーナに追い詰められていたりする……
「ま、待て!鈴!落ち着け話せば判る!!」
「ふーッ!ふーッ!!!」
怒りのあまりか肩で息をし全身から殺気を放っている鈴を説得しようしていた
「シェンに聞いたわよ……よりによって、よりによって男にだなんて……許さない……あたしに構わないところか男にあれこれやられ嬉しそうにしてるなんて……絶対に許さないッ!!!!」
濃厚な暗黒瘴気に押されそのまま数歩後退する
(やばい!やばい!鈴は勘違いしている!!!)
どうやら俺がシャルルと仲が良いのを妙に勘繰っているようだ。そう男子としてその誤解は致命的な心傷を与える物だ
「よりによって男が好きだ何て、信じられない!!!」
「誤解だーッ!!!!!」
鈴に負けない大声で叫ぶ鈴はシャルルを男だと思っている、だが実は女である事を知らない。そして俺とシャルルが仲が良いその事から、俺に男色の毛があると勘違いし俺をここまで拉致した上で制裁を加えようとしているのだ。
「あんたはあたしのなの。だから絶対に道を踏み外させたりしないんだから」
「いや、鈴さん。誤解です、俺は普通に女の子が好きです」
「あんたがそうでもシャルルに変な道に引きずりこまれる可能性があるでしょうが!!!」
「それは無いと思うんだが?」
「うっさい黙りなさい!!あんたにはちゃんと教えてあげないといけないんだから!……そ、その。お、女の子の身体の柔らかさとか?そう言うのを!!!」
リンゴかと言いたくなるくらい頬を赤らめた鈴は俺の逃げ道を塞ぐようにじりじりと摺り足で近付いてくる。ハイライトの消えた瞳が死ぬほど恐ろしく、なんとか逃れようと、隙を見て駆け出すが
「甘いわよ!」
「う、うおっ!?」
俺の進行方向を読んでいた鈴は俺の腕を掴みそのまま流れるような体重移動をし、俺の足を払いそのまま床に叩き付けた
「いってえ……」
受身も何も取れず叩き付けられた為身体中が痛い。その痛みに顔を顰めていると
「ぐはっ!」
無言で鈴が俺の腹の上に座る、完全にマウントポジションを取られた
「あんたはあたしのなの……もうそれは決まりきってる事なの、それなのにシャルルに……男なんかにあんたを盗られるなんて耐えれない」
ぶつぶつと呟く鈴が恐ろしい、しかも凄まじい力で俺の身体を押さえつけてる、とてもではないが振り切れそうに無い
「だから……印をつけるあんたが……あたしのだって印を……」
ぞくう……俺凄いピンチなんでは?貞操の危機をひしひしと感じる
ガシッ
鈴が俺の服の襟元を思いっきり掴む、そしてそのまま力任せに引っ張る
「ちょっ!?何してるんだよ!!!」
首元と肩が完全に露出するそれを見た鈴がにやっと笑う。それはもう獲物を見つけた吸血鬼のような笑みだった
「じゃ……じゃあ。その……頂きます?」
「何をする気だお前は!!!」
あーんと口を開きそのままゆっくり首元に近付いてくる、これはあれか?昼ドラとかにあるあれか?ヤバイ!!ヤバイ!!あんなのされた千冬姉に殺される(千冬姉だけじゃなく箒とセシリアにも殺されそうだ)だが鈴の力は俺を上回っているので力付くで振り解く事も出来ない
(万事休すか!?)
誰かに助けて貰わなければ俺だけではこの状況を打破できない!だが時間が無いもう鈴の吐息が素肌に当たる所まで来ている。俺が目を閉じた瞬間
「私の物に何をしている、化け猫」
「ちい!ブラコン!」
高速の左フックを飛び跳ねるように回避し、獣の様に4つんばいで体勢を整えた鈴がキッと俺の目の前の人物を睨む
「千冬姉……」
千冬姉が俺の前に立ち鈴を遠ざけるように立っていた。流石は千冬姉だ。教員として助けに……
「一夏はね!あんたのじゃないの!!あたしのなのッ!!」
「はっ!貴様なんぞに一夏はやらん!!これは私のものだ!」
ですよね。千冬姉も基本は鈴側の人間ですよね。
「うっさい!うっさい!うっさい!!!一夏はあたしのなの!!!誰にも奪わせないんだからッ!!!」
素早い動きで肉薄する鈴だが
「甘い!」
「ふぎゃっ!!」
貫き手のような鋭い鈴の一撃を脇で挟みそのまま投げ捨てるが
「そう簡単には!!」
投げ飛ばされながらも手を突きそのまま体勢を整え、蹴りを放つ鈴だったが次の瞬間
「うっ……!?」
「隙だらけだ」
ガクガクと失速し鈴が膝を着き倒れる、何が起こったのか判らず首を傾げていると
「あ、顎を……」
「顎先を打ち抜かれると三半規管が狂い動けなくなる。これでお前の負けだ」
その言葉通り鈴は動けないようだったが、その鋭い眼光で千冬姉を睨んでいる
「ふん、これは連れて帰る」
「あの小脇に抱えるの止めてくれない?」
がっと脇に抱えられたので一応そう言うと
「お姫様抱っこの方が良いか?」
「絶対嫌だ!!それ以前に俺は動ける!」
ジタバタともがいていると千冬姉は溜め息を吐きながら、俺の耳の後ろをついて
「これでも動けるか?」
「な、なあ!?足が痺れて動けない!?」
ビリビリと足が痺れまるで動かない、何をしたんだ!千冬姉は
「ふっふふ。動けなければ仕方ないよな?私の部屋で介抱してやろうではないか」
「あんただろ!俺を動けなくしたのは!!って言うかその獲物を見る目は止めてくれ!!」
鈴の比ではない貞操の危機を感じる
「さーて部屋でゆっくり休もうな?」
「ちょっ!待って!お願い!!放して!!誰でもいいから助けてーッ!!!!」
俺の悲鳴は誰にも聞き入られる事は無く、しーんと木霊した
「篠ノ之は正拳を全力で打ち込んだし、オルコットは後ろから絞め落とした。ついでにシャルルはアッパーで意識を刈り取っておいた、お前を助けてくれる者は居ないぞ?」
「良いのか!教師が生徒に暴力を振るって!!」
「良いに決まっている、人の物を取ったら泥棒だ。悪党に掛ける情けは必要ない」
「駄目だ!この人教師に向いてない!!!」
仕事より私情を優先、教師としてどうかと思う
「まぁいいさ、私は仕事より恋に生きる」
「弟は恋愛対象に見ちゃいけません!」
「愛さえあれば良いのさ」
「駄目だ!この人俺の話聞いてない!!」
結論から言うと俺はこの後、編隊を組んだ教師陣によって回収された。ただ俺の見る限り7人の先生が千冬姉の狂拳に倒れていた。しかしそれでも俺を助けてくれた教師の皆さんには心から感謝したいと思う、もしあのまま俺が千冬姉の部屋に連れ込まれていたら……俺のENDは実姉ENDに決まっていただろうから……
第26話に続く
はい!一夏さん危機一髪とナチュラルに簪フラグを建てた龍也さんの話でした!面白かったら良いのですが……まぁそこは感想を楽しみに待とうと思います
次回からはトーナメントに向けて動いていこうと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします