それでは今回もどうか宜しくお願いします
第28話
セシリアとの模擬戦の次の日の夜 寮のロビー
(負けた?この私が?セシリアに……ありえない)
本国にいた時は5勝2敗と勝ち越していた。しかも2敗というのは父上様見に来ていて必要以上に力が入りミスしたもので、私の自滅点と言っても良い
(魔王に師事するのも命懸けとかいってたな?魔王とは誰だ?)
転入した来たばかりでこの学園のことは良く知らない。だが魔王と呼ばれるやつがいてそれがセシリアを強くしたと言うのは判る
(魔王を探すのが強くなる近道か?)
私がそんな事を考えていると
「あーちくしょう!!!また勝てなかった!!!」
「強いよねー龍也君達は」
「魔王って言うのは冗談でも無い物だな」
青い髪と金髪の女子と
(あれは確か欧州連合のトライアルのラウラ・ボーデヴィッヒだな)
ラウラは何度か顔を合わせているし模擬戦もしたこともある。あいつになら話しやすいか……私はそんな事を考え掛けていたソファーから立ち上がった
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。少し良いか?」
「ん?ヴィクトリアか。フルネーム呼びは感心せんな、ラウラかボーデヴィッヒと呼べ」
話を中断させられ面白く無さそうなラウラに
「では。ラウラ、1つ聞きたい魔王とは誰の事を指している?」
私がそう尋ねるとラウラは
「1組の高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、の両名を指す。何でも試作型のISのテストパイロットらしいが。技量・操縦技術は1年の中でもトップクラスだろうな」
「なのはが射撃。フェイトが近接特化でね。勉強になるんだよねえ……訓練は殆ど拷問だけど」
金髪がからからと笑う
(ルゥ・シェンリーか?何故金髪になってる?)
中国の代表候補生の筈だが……確かデータでは黒髪だったと思うが……
「では龍也というのは?」
私がそう尋ねるとラウラは
「一言で言うのなら悪魔だ」
「だね、大体体力が限界になるようにトレーニングメニュー組むの止めて欲しい……死んじゃう」
「だーッ!!!!んなのどうだっていーんだよ!!!どうやったらあの無限組み手を突破できるかを考えるんじゃないのかよ!!」
青い髪の女子が怒鳴る
(こいつも見覚えが……!そうだ!ギリシャの代表候補の薄野弥生だ)
射撃とかはからきし駄目だが、こと近接においては天才と称される近接戦闘のエキスパートだった筈。それが勝てないという八神龍也
「そうだったな。弥生少し待て、もう少しすればクリスが来る。戦闘モーションの解析ならクリスの力を借りるのが一番だ」
ラウラがそう言うと小型のPCを脇に抱えた黒髪の女子が歩いてくるのが見えた
「?1人多い?」
「イギリスの代表候補生のヴィクトリア・スミスだ。お前は?」
「クリス、クリス・ファウスト。まだ専用機は準備中だけど一応代表候補。宜しくヴィクトリア」
クリスはそう言うと私達の向井側に座り
「まず、渡されたデータを分析してみた。ある程度パターンがあることが判った」
モニターには4つのパターンが映し出される
「まず彼は女性の「顔・腹・髪」を狙わない、だから主に肩や足を狙うがそれも跡にならない場所を選んで打撃している」
「だがそのパターンに当て嵌まらないパターンも多いようだが?」
「うん。八神龍也は中国拳法・護身術・合気道・ムエタイ・バリッツ・総合格闘技(CQC)考えうる限りの武術を学んでいる、足・手どこでも掴まれれば。そこから投げ技に持ち込まれて、無限組み手のルールに乗っ取りカウンターがリセットされる。それを繰り返されるうちに体力が無くなり、自動的に負けになる」
「では勝つには掴まれない様に間合いを取っていれば良いのか?」
「それも駄目。これを見て」
クリスがキーボードを叩く。ズームである動きが再生される。5メートル近い間合いを一歩で詰めている
「なんだ?この歩法は?」
「一歩で5メートルとは驚きだ」
私とラウラが驚いているのに大してシェンと弥生は
「中国拳法の1つ、八極拳の奥義の歩法「活歩」かな?」
「私は剣術の縮地法に似てると思う」
「どっちも外れ。これは八神龍也独自の歩法。名前は判らないけど何の予備動作も無く突っ込んでくる。これがあるから間合いを離して戦うと言うのは駄目。そもそも」
「あの長身からはそう簡単には逃げられんか」
「そう言うこと。でも彼は必ず反撃と言う形で行動する。そこを突きなおかつ5分立ち続ける方法は1つだけ。判る?」
クリスの問いかけにラウラは
「掴まれない様に気をつけ、あえてインファイトで龍也の攻撃をかわし続けるか?」
「正解、むしろ無限組み手はそうしないとクリアできないようになってる。つまり無限組み手とは」
「挑戦者の勇気を試すものか?」
「鋭いねヴィクトリア。そうあの無限組み手は挑戦者の勇気を試す物と言う役割が強い、まぁある程度の技能が無いと突破できない物みたいだけどね。どこへ行くの?ヴィクトリア」
話を一通り聞いた所で私は立ち上がっていた
「私は強くなりたい誰よりも、その為に八神龍也と模擬戦をする事には意味があると判断する。強者の情報感謝する」
もうラウラ達に用は無い。彼女達よりも強い者を見つけた……私がより強くなるために必要な敵。それを見つけれたことに感謝し私は自室へと戻った
「面白く無さそうだね。ラウラ」
「ああ、ヴィクトリアは正直嫌いだ」
モニターを切ったクリスに尋ねられ私は即座にそう返事をした
「なんで?」
「かつての私を見るようだ。強さが全てと考えていた嫌な私を」
教官や、ツバキさんにオクト中佐……彼らに会わなければ私はヴィクトリアの様になっていたかもしれない。そう思うとヴィクトリアの存在は過去を思い出す様で嫌だった
「今は違う?」
「違うに決まってるだろう?クリス」
判って聞いているクリスを軽く睨むと
「ふふふ。変なこと聞いたねごめん」
「良いさ。変わったと思うが確たる確信は無い。まだまだ私は迷ってる途中だ」
強さとは?その答えを探して彷徨う。だが最近はおぼろげだが強さが何か?と見え始めて来ていた
「何時か見つかると良いね。ラウラ」
「ああ。そうだな」
私はそう返事をしたが、心のどこかで感じていた近いうちに強さが何か判ると何の確証も無いのに私はそれを理解していた。それはきっと女の感とでも言うべき何かなのかもしれない
どこかもしれない山中の秘密ラボで
「やっほーネルちゃーん♪」
「うざい、束」
抱きついてきた束を片手でいなす。この女頭が良いくせに如何してこう子供っぽいのだろう
「ねぇねえ!今日は何を見せてくれるの?ベルカ式?それともミッド式?どっちの魔法を見せてくれるの?」
楽しそうな束に私は
「今日は魔法を見せに来たんじゃない。仕事の具合を見に来ただけ」
「えーつまんないなー。また見たいのに収束砲って奴」
1度こいつに魔法を見せたのは失敗だった。会うたびに魔法を見せろ、魔法を見せろとうるさい事だ
「ちゃんと仕事が出来てたら見せてやる」
「本当♪じゃあ渡しちゃうもんねー」
ぽいっ!ぽいっと何かが投げ渡される。盾と剣を模したアクセサリーにも見えるそれを受け取る
「性能は?」
「んー時間が無かったから急いで作ったけど第3世代くらいの能力ならあるよ?もー3日でIS2機作れなんて無茶苦茶だなー」
これはベエルゼにもベリトにも内緒で作らせた物だ。計画にある襲撃時に間に合うように私が無理に作らせた物だ
「でもさーなんで今回はベエルゼ?だっけ?それに秘密で動いてるのさ?あれの部下じゃないの?ネルちゃんは」
首を傾げる束に私は
「私は私の目的で動いてる。ベエルゼもベリトもベルフェも関係ない……私は私の好きにやる」
指示を受ければそれには従うし、命令も聞く。でも私の目的を邪魔するのは許さない
「じゃあさ?ネルちゃんの目的ってなーに?」
「今回の目的は1つ。この愚かで憐れな世界に!私の!私だけの!お父さんの強さを本当の姿を見せ付けるの!そしてこの世界の人間が以下に愚かで取るに足らない存在なのか!それを理解させるの」
それだけ、それだけが望み。あの偉大な姿を世界に見せてやって欲しい
「じゃあさ?なんで会いに行かないの?行けば良いじゃん?」
「ふふふふ。まだ早いの、出来るなら直ぐにでも飛んでいって会いたいでもまだ早いの」
まだ時期じゃない。時期がくれば会いに良く。だってあの人は
「私だけのお父さんなんだもの私の傍にいてくれるのが当然でしょ?」
私じゃなくてあの出来損ないが娘なら。私も同じはず……だからあの人は私のお父さん
「ネルヴィオ?」
「ふふふ……モモメノもお父さんに会いたいよね?」
何時の間にか私の服の裾を掴んでいたモモメノを抱き上げる。
「あいたい……モモもパパにあいたい」
「そうだよね?あの子だけなんてずるいよね?」
あの子だけがお父さんの愛情を受けるなんて間違ってる。そうに決まってる
「ふーん……まぁ良いけどね。で束さんはどうすれば良いのかなー?」
「時期が来たら合図する。その合図を切っ掛けに2機のISを暴走させて欲しい」
「どのIS?」
「ヤタガラスとドイツのレーゲン。レーゲンは簡単でしょう?」
「あーあの出来損ないのVTシステム?あれを外からの介入で起動させるの?」
「そう。出来るでしょ?」
まぁねーと頷く束は
「でもさヤタガラスはVT積んでないよ?」
「ヤタガラスの方は私が動く。だから何の心配も無い」
ISの暴走は難しいでもその中身を弄るのは簡単な事
「ふーんOK、じゃあ約束の魔法見せてよ」
「外で待ってなさい。ラボじゃ危ないから」
「OK~じゃあ外で待ってるよー」
タタタタと駆けて行く束を見ながら、背後に居る
「何のつもり?私は束の協力者よ?」
「私はお前たちは好かない。束に近寄るな」
がシャンッ!!
長大なロケットキャノンの砲口を向ける人間に
「悪いけど。そんなんじゃ魔導師には何の手傷も負わせられないわよ?」
「それでもだ。私には私の目的がある、その為に貴様らの存在は害悪だ」
揺るがない敵意を見せる人間に
「ふう仕方ないわね。モモメノ」
「うん」
「「ユニゾンイン」」
モモメノが私の中に吸収されそれと同時に武装が展開される
「言っておくけど。ISなんて私達にとっては子供の遊び同然よ」
腕を振るうと同時にゴトンと音を立てて私の方を向いていたキャノン砲の砲身が地面に落ちる
「なっ!?フォールディングランチャーが……」
「不可視の槍グランギニョル……これ以上刃向かうのならその心臓抉り取ってあげるけど?」
「くっ」
ISを解除した気配がするので私もユニゾンを解除する
「ふふ、賢い選択ね……どうせもうじき燃え尽きる命、大事にしなさいアズマ・ワンイレイサ」
どうせほっておいても1年も生きられない人間を態々手にかける必要は無い
「それじゃあね?アズマ」
「死ね。ネルヴィオ」
「ふふふ。その反抗的な態度嫌いじゃないわよ?人間?」
「がはっ!?」
フラッシュムーブからの蹴り上げを叩き込む
「良い?私が束と貴女達を生かしているのは役に立つからよ?道具は大人しく道具として扱われなさい?いいわね?」
アズマの頭を踏みつけながら告げる
「くっ……」
頭を踏まれながらも敵意の色を消さないアズマに
「ふふふ。精々憎みなさい。その憎悪……上質なネクロには必要なものよ」
「私は……ネクロなんかにならない!私は……私は最後まで人間だ!!」
「そう、それならそれでもいいわ」
ドゴッ!!
力なく倒れているアズマを蹴り上げ壁へと叩き付ける。そのショックで意識を失ったアズマに治癒の魔法を施す。下手に怪我をさせたままだと束が勘ぐるから
「ふふふ。貴女は私に良く似てる、だから好きよ……だから貴女もいずれ私の仲間にして上げる。ねぇ?出来損ないの人間?」
崩れ落ちたアズマの顔に月の光が当たる。それは稀代の天才、篠ノ之束に酷似していた……
「さてと面倒だけど魔法を見せに行きましょう」
私か気絶しているアズマを最後に一度だけ一瞥し、ラボの外へと向かった……
何時もの放課後の訓練の時間
「俺。死ぬ、死んでしまう」
「おお、一夏、死んでしまうとは情け無い」
倒れている一夏を見下ろして居る龍也。一夏は無限組み手の後で動く気力も無く死んでいる。あと3人ほど倒れているが、喋る気力も動く気力も無くピクリとも動かない。ラウラ・シェン・弥生の3名。私も誘われたが断った。あれは正真正銘の地獄だ
「お前のせいだろうが!!」
「まぁ落ち着け一夏」
ドビシッ!!
「ふぐおう!?デコピンがとんでもなく重い!?額が!額がアアアアッ!!」
額を押さえ転げまわっている一夏……気のせいかあのデコピンの瞬間、一瞬一夏の額が陥没したような……一夏は暫く悶えていたがそのうちピクリとも動かなくなった。体力の限界が来たのだろう少し休ませてやろう
「そういえばさ。もう直ぐ学年末トーナメントの日よねえ」
「そうですわね」
倒れている一夏達を無視して喋りだす鈴。下手に近付こうものならそのままなし崩しで無限組み手になる。それを理解しきったものの行動だ
「なのは達は参加するの?」
「うーん、今のところは参加する気は無いかな。多分教師側から前みたいに待ったが掛かると思うし」
まぁ妥当といえば妥当なところだ。正直龍也達を相手にするなら10人くらいいて漸く対等くらいかもしれない
「おーい、一夏?立てー訓練を続けるぞ」
「俺、今日、無理。もう動けない」
片言の一夏はもうぐったりとしているもうとてもではないが訓練は無理だ
「致し方ない。訓練はここまでにしよう。ではまた明日」
くるりと背を向け龍也が歩いていこうとして立ち止まる……いやそのまま後退する
ドスッ!!ドスッ!!!
2本の剣が龍也の居た所に突き刺さる
「やれやれ。非礼が過ぎるんじゃないかね?お嬢さん?」
「お前の力見せてもらおうか?」
赤い装甲を持つIS……たしか3組の代表候補生のISだった筈
「ヴィクトリアさん!!行き成りそれは無いんじゃないですか!」
「この程度かわせないのなら興味は無い。それを確かめただけだ」
一瞥し龍也を見るヴィクトリアに龍也は
「やれやれ。無粋な輩だ、イギリスの人間は如何してこうも高慢なのかね?」
「構えなければ死ぬぞ!」
瞬時加速で龍也に向かって切り込む。やばい龍也はISを展開していないぞ
「龍也さん!逃げてください!!」
セシリアがそう叫んだが次の瞬間
「止まって見えるぞ?ヴィクトリア?」
「なっ!?」
ISを展開すらしてない龍也が瞬時加速の一撃をかわし、そのままヴィクトリアの手首を掴んでいた
「くっ!!」
ヒュン!!!
滞空したいた剣を掴み龍也に切りかかるがそれは紙一重でかわされる。だが僅かに切っ先が龍也の頬を捉え肌を裂く
「やれやれISの操縦者と言うのは剣の扱いも知らないのかね?」
「くっ!馬鹿にするな!!!」
二刀流になり龍也に切りかかる、その速度は常人が反応できるものではない筈なのに龍也は笑みを浮かべたまま、その斬撃をかわし続けていた
「信じられない。龍也は一体何者よ」
鈴がそう呟いた、それを聞き届けたかどうか判らないが龍也はにやりと笑い
「どこにでも居る。ただの高校生さ」
お前のような高校生が何にもいて堪るか。私は即座に心の中でそう突っ込んだ
「くっ!!舐めるな!!」
上段から切りかかるヴィクトリアだったがそれはかわされ勢いあまり地面に突き刺さる切っ先、龍也はその上に爪先で乗り
「そこら辺で引きたまえ。私は弱い者いじめは好きではないのだよ?」
「ふざけるなぁッ!!!」
更に2本ソードビットを射出し龍也に切っ先を向ける。流石の龍也も4本のソードビットに2本の剣の攻撃はかわせない
「箒!龍也を!」
身を起こそうとして無理だと判断したのか一夏がそう叫ぶ。
「鈴!セシリア!」
「言われなくても!」
「判ってますわ!!」
疲労困憊で動けない一夏達は駄目だ。動ける私達が何とかしなければ。私達がISを展開しようとした所で
「やれやれ……あまり私を怒らせないでくれないかね?」
ゾクウ……
動かなければならないのに私達は凍りついたように動けなくなった
「模擬戦をしたいのなら相手になる。訓練をしたいと言うのなら訓練にも付き合おう。しかしただの独りよがりの強さの証明をする相手になるほど私は暇じゃない」
「あ…ああ」
ヴィクトリアがそのまま後退する。圧倒的なまでの闘気。ただ存在するだけでその場を制圧する存在
「そんな力が強さだと思っているのなら……貴様はいずれ誰からも見放され死ぬぞ?ヴィクトリア」
ゆっくりと歩き滞空していた剣を掴み取りその切っ先をヴィクトリアに向けた龍也は
「もう1度言う。私を怒らせるな」
「あああ……うわああああッ!!!」
パニックになったヴィクトリアが剣を振りかぶる
「ふー致し方ないな。少々痛い目に会ってもらおうか」
龍也が居合いの構えを取り一閃しようとしたところで
「やれやれ……これだだからガキの相手は疲れる」
「千冬姉!?」
「織斑先生」
龍也とヴィクトリアの間に織斑先生が割り込みその一撃を防いでいた
「ISも展開して無い人間に切りかかるか?代表候補生」
「え……あ、その」
しどろもどろで目に見えてうろたえるヴィクトリア
「そしてお前もお前だ。ISくらい展開しろ」
「どうにもその余裕が無かったもので」
「そうは見えなかったがな」
にらまれた龍也は
「買い被りですよ」
「どうだかな。まぁ良い、模擬戦をするなと言わんがこんな事をされては困る。学年末トーナメントまで一切の私闘を禁じる。いいな?スミス、八神」
「は……はい」
「別に私は争いたかったわけじゃないんですけどね」
しょぼんと頷くヴィクトリアとやれやれと肩を竦める龍也を見ながら
「では解散!!ああ、それとスミスは職員室に来い説教だ」
「はい……」
パンと織斑先生が手を鳴らしたのを合図に一夏が立ち上がり龍也に駆け寄る
「だ、大丈夫か?」
「この程度どうと言うことは無い」
血がポタポタと垂れている。見かけよりは浅いだろうが怪我は怪我だ
「大変。早く保健室に行かないと」
「問題ないと言っているシャルル」
「駄目だよ!化膿とかするかもしれないじゃない!!ほら早く保健室に行くよ!!」
龍也の手を取り強引に引っ張っていくシャルルと一夏を見ながら私も後を追った
「問題ないと言っているだろう?」
「駄目だっ!止血位しろ!!」
「そうだよ!!」
むうう……これくらい本当にどうでもないのだが頬にガーゼを当てられながら唸る。ヴィクトリアの一撃をかわせなかったのは私のミスだし。それにそもそもこれくらいの怪我で大袈裟だと思う
「これでよしっと」
パチン
シャルルがテープを切りながら言う
「礼は言う、ありがとう」
「どういたしまして」
シャルルがハサミをしまいながら言う、人数オーバーなので今保健室に居るのは、私と一夏とシャルルとセシリアだった
「申し訳ありません、ヴィクトリアさんが失礼な事を」
「お前が謝る事じゃない。怪我も大事無いし気にしなくていいさ」
ISを展開しなかった私のせいでもあるし。どうにも私は魔道師として生きた時間が長すぎた。あの程度態々特別な武装を展開しなくて良いと判断してしまった、その慢心が怪我の原因となった。全く持って私の自業自得だ。まぁ1つ幸運なのは。なのはとフェイトが居なかった事だ。あの2人がいればヴィクトリアは間違い無く半殺しになった筈だ。そんな事を考えていると保健室の外からズドドドッ!!!と走って来る音がする
「何の音だ?」
「さぁ?」
私と一夏が首を傾げていると保健室の扉が吹き飛びそして
「織斑君!」
「デュノア君!」
「八神君!」
うお!?視界が一瞬で手で覆い尽くされる、正直軽いホラーだ
「な。なんだ?」
「どうしたの皆、落ち着いて!」
「「「「これ見て!!!」」」
動揺している私達の前に1枚のプリントが差し出される。1番近くにいた一夏が代表して読み上げる
「今月末の学年末トーナメントはより実践的な模擬戦闘を行うため。2人組みでの参加を必須とする。なおペアが出来なかったものは抽選で決定する」
「そう!だから!!!」
女子達が手を伸ばし
「私と組んで!織斑君!」
「一緒に頑張ろう!デュノア君!!」
「お願いします!私と組んでください!!」
手が無数に差し伸べられる。はっきり言って超怖い。ネクロ300体に囲まれた時でもこんな恐怖は感じなかったぞ……
「悪いな!俺はシャルルと組む!!だから龍也を誘ってくれ!!!」
「な!一夏!私を見捨てると言うのか!!!」
そう言われた女子達が一斉に私を見る。こうなったら即座にコートを脱ぎ
「私も組む相手に心当たりがあるので失礼する!」
コートを頭から被り転移する。消えた後の保健室から
「き、消えた!?」
「マジック!?それとも忍術!?どっちなの!?」
と言う声が聞こえて来たが私は知らん……見つかると厄介そうなので転移した場所から走り整備室に逃げ込む。
「お前何してるんだ?」
簪がいつも陣取っている整備室の一角を目指し移動していると、近くのコンテナの陰に見知った人物を見つけた
「うっ……あのね?簪ちゃんと話をしようと思ったんだけどね?怖くて動けないのよ」
「お前。それでも学園最強を名乗ってるのか?」
「それとこれは別の話なのよ」
「こっち見つかると話も出来ん」
簪から離れたコンテナに楯無と並んで座る
「私はさ、小さい頃から当主になるべく育てられたのよ、完璧で強くなきゃいけなかったの……だから苦手な勉強もしたし料理も出来るようになった。でもね……何より大切な妹と疎遠になった……正直辛いのよね。大切な妹に頼られないのって」
「その気持ちは判らんでもないな。私も妹が居るし」
「あははは。お兄ちゃんとお姉ちゃんって共通点ね」
あはははと乾いた笑い声を上げていた楯無は
「はぁ……もう簪ちゃんは私を頼ってくれないのかな?」
「馬鹿かお前?」
「何よう。これでも私貴方の先輩よ?馬鹿は無いでしょ?馬鹿は?」
「そんなくだらん事を考えるお前は馬鹿者だ。大体血を分けた姉妹だろうよ?仲違いも些細な事なら仲直りも些細な事で出来るものだ」
よっと座っていたコンテナから飛び降りる
「どこ行くのよ」
「学年末のトーナメントのパートナーに簪を誘おうと思ってな。そもそも私はその為に整備室に来たんだし」
「高町さんとハラオウンさんは良いの?」
「良いさ、そもそも私も協力したISだやはり近くで見て見たいだろう?」
なのはとフェイトは恐らく2人で組むだろうし。私はどの道別のパートナーを探すつもりだったし、そう言う面で簪はベストパートナーとも言える
「簪ちゃんを虐めたら許さないわよ」
「そう言うのは普通に話せるようになってから言え」
「言うこときついわねー」
がっくり肩を落す楯無に
「人間本当に助けて欲しい時は心から助けて欲しい人物の名を呼ぶものさ」
「それが私だと?」
「さぁな?」
「貴方。私を慰めたいの?とどめ刺したいの?どっち?」
「お前の受け止め方次第だ」
「じゃあとどめ刺したいのね?」
「案外ネガティブなんだな、お前」
私がそう言うと楯無もコンテナから飛び降り
「じょーだんよ、じょーだん。一応慰めてもらったって受け止めとくわ」
「どこへ行く?」
「私も私で用事があってね?じゃあねー簪ちゃんを宜しく」
そう言って整備室を去っていく楯無を見ながら
「変わった奴だな。本当に」
どうにも掴み所の無い奴だ。だがまぁ嫌いなタイプではないなと思いながら私はさっき保健室で拾った、ペアの申し込みの紙を持って簪の所へ向かった
「えっと照準値を+30……あと機動力を10%上げて」
トーナメントに向けて私は弐式の最終調整をしていた。
(優勝できたら、龍也君と遊びに……って違う!違う!!やるからには勝つつもりで行くんだ)
一瞬本音が出かけたがそこは頭を振り、その考えを飛ばすそんな不純な考えでは駄目だ
「よう。簪調子はどうだ?」
「ふえ?たたたた。龍也君?」
気が付いたら隣に龍也君がいて驚きのあまり椅子から落ちかける
「おいおい、慌てすぎだ」
龍也君が即座に私の手を掴み椅子に引き戻し、私の前に紙を置く
「これは?」
「ペアトーナメントの申込書」
「へ?ペア?シングルじゃなくて?」
初耳の事だったので聞き返すと
「何でもルール変更があったらしくてな。ペアになったらしい、でどうだ簪。私と組まないか?」
「え、ええ!?で、でも優勝出来たらの約束はどうなるの?」
「うーん……私と組んでも優勝は優勝だろ?約束は護るぞ?」
……どどどどど、どうしよう!!優勝なんて無理だと思ってたからの約束で龍也君と組むと優勝の目が見えてくる。で、でもそうなると
(龍也君とデートするってことに!?)
嬉しいような、恥かしいような……
「あーもしかして嫌か?」
「嫌じゃない!嫌じゃないよ!!!」
私が手を振りながらそう言うと
「そっかそれならよかった、じゃあこれにサインしてくれ。後は私が職員室に持ってくから」
「う、うん」
渡された紙に自分の名前を書く
「よし、これでOKと。じゃあ明日からトーナメントに向けて準備しような」
その言葉に頷き
「よ、宜しくお願いします!龍也君!!」
「その君付けは止めて欲しいな。君付けには馴れてない。龍也でいい。ほれ言ってみろ」
え……えええええ!?男の子を呼び捨てなんてした事無い
「う……ううう。た、たた、龍也」
「うんOKだ。じゃあ明日から宜しく頼む」
そう言って整備室を出て行く龍也君……いや龍也の背を見ながら。高鳴る自分の心臓を宥めるのに一苦労していた……
「頑張ろう……龍也の足を引っ張らないように」
私はそんな事を考えながら弐式の調整を再開した
第29話に続く
龍也さんは簪さんとペアに、これは勿論私の考えている事に必要な要素だったものでそうしました。次の話でネクロや亡国企業の話を入れてその次からトーナメントの予定です。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします