第3話
俺は困り果てていた…クラスメイト(全て女子)の期待を込めた眼差しに…
(何をしろって言うんだよ…とりあえず状況を再確認しよう…)
心の中でそう溜め息を吐く、今日はIS学園の入学式。そして今は自己紹介の時、目の前に居るのは29名の女子、背後には恐らく涙目の副担任の「山田」先生が居る…状況確認は終了した。やるべき事は1つだ
「えーと、織斑一夏です。趣味は身体を鍛える事で、特技は剣術です。一年間よろしくお願いします」
自己紹介を完璧にやり遂げる事だ。我ながら完璧な自己紹介だった筈だ…だが
パアンッ!!
後から凄まじい痛みを感じる…何だよ、自己紹介が不味かったのかよ…恨みがましい目で叩いた本人を見る。黒のスーツにタイトスカート…狼を連想させる鋭い眼差し…まぁ俺の実姉の「織斑千冬」なんだけど。俺の視線を無視し、千冬姉は
「山田君、クラスの挨拶を押し付けて申し訳なかった。このクラスに入れる3人の手続きに少々手こずっていてな」
いつも通り冷静で威圧感のある声だ…もう少し優しさを…
パアンッ!!
「何か考えたか?」
「イイエ、何でもありませんマム。変な事を考えてすいませんでした」
これ以上変な事を考えれば、俺の頭蓋骨がいかれる。そう判断し謝ると千冬姉は判れば言いといってから、クラスメイトに
「諸君、私が君達の担任の織斑千冬だ。私は君たち新人を、1年で使い物になる操縦者にするのが仕事だ。私の言う事はよく聴き、理解しろ。逆らっても良いが…私の言う事は聞け。良いな?」
凄まじいまでの暴力宣言、だがクラスメイトの反応は違っていた
「キャーッ!!千冬様ッ!!!」
「ずっとファンだったんです!!」
「私、お姉さまのためになら、何でも出来ます!!」
とりあえず、一番最後発言者は千冬姉に近づけないようにしよう。それが良い、なんかヤバイ気がする
「毎年よくこれだけ、馬鹿が集まる物だ。感心する、それとも私のクラスにだけ、馬鹿を集めてるのか?…まぁ良い、貴様らに言っておくことがある」
千冬姉はそう言うと俺を自分のほうに抱き寄せ
「コレは、私のものだ。もし色仕掛けなんぞ仕掛けてみろ、地の果てまでも追い掛けて殺してやるからな」
…教室が静まり返る。そうだよ…これが千冬姉だよ、普段はクール美人だが、何かのスイッチが入ると途端に駄目なブラコンになる。ってそんな事を考えてる場合じゃない!!
「な、何言ってるんだよッ!!千冬姉ッ!!皆ドン引きしてるだろう!!っつうか放してくれッ!!」
クラスメイトの視線が痛い、特に幼馴染の篠ノ之箒の視線が死ぬほど痛い。何とかはなれようとするが
「だが断るッ!、お前は私のそばに居ればいいんだ…永遠に」
「いやいや、俺だって結婚とか、彼女とか考えたいから!永遠は無理だッ!!」
「私では駄目か?」
「無理だからッ!俺千冬姉嫌いじゃないけどッ!!俺達、姉弟だから!」
「愛さえあれば、問題ない」
「もうやだッ!!誰か俺を助けてくれッ!!」
何故かモンドグロッソ後から、こんな風になってしまった。何故なんだ?何故こんな風になってしまったのだ?あれか?あの黒い悪魔のせいか?千冬姉は何も覚えてないが、黄金の騎士と出会ってから超が付くブラコンになってしまった。一体何が原因なのか今も判らない。クラスメイトの反応は
「…姉と弟ってこういうのあるって聞いたけど」
「初めて見ると結構引くね…」
「きっと外だから、織斑君も嫌がってるけど。満更じゃない筈よ」
「……ギロリッ!!」
ひそひそと話す女子の中から、凄まじいまでの殺気を感じる…間違いない箒だ、箒に違いない。だがここは俺の名誉の為にも言わなければ
「違う!!俺はノーマルだッ!!俺には好き…ッギャアアアアッ!!痛いッ!!痛いッ!!」
万力のような力で締め上げてくる、千冬姉を見ると
「私以外を女と見る事は許さん。指導室で教育してやる」
「嫌アアアアッ!!お願い!!誰か助けて!!!俺の心に消えない傷がアアアアッ!!!」
駄目だ!この状態の千冬姉と2人きりになれば、俺の全てが終る!誰か助けて!そう思いクラスメイトの目を見ると
「「「サッ!」」」
「この薄情者達がアアアッ!!!」
全員一気に目を逸らす。ちくしょう、誰でも良い助けてくれッ!!
「あの~織斑先生?手続きを終えた子は何時まで廊下で待たせるんですか?」
山田先生!貴方は俺の救世主だ!!よくこのブラコンモードの千冬姉に話しかけてくれた!!これで冷静になる
「むっ?忘れてた。とりあえず、一夏は席につけ。後でまた話し合おう、私達の今後について」
「絶対嫌だッ!!!…ッギャアアアアッ!!話し合いますッ!!絶対に話し合いますっ!!!だからアイアンクローは勘弁してくださいッ!!!」
ギリギリと締め上げられる頭蓋骨、俺は痛みに屈しそう言うことしか出来なかった…
「絶対だからな?」
「はい、判ってます…」
しくしく…どうしてこんな事になってしまったんだろう?昔は格好良かったのに…どうしてこんなブラコンになったの?俺は痛む頭を押さえながら、席に座った
「コホン、では新しい生徒を紹介する。入って来い」
咳払いしてから千冬姉が廊下に居る生徒を呼ぶ、がらりと戸を開けて入ってきたのは、男子が1人と女子が2人だったが…
「離れろ、重い」
「嫌」
「嫌です」
何故か女子2人は、男子の背中にしがみ付いていた。とても幸せそうな顔をしているのが印象的だった、それに比べ男子は酷く消耗した顔をしていた
「何をしてる?」
「離れてくれないんです、助けてください」
男子がそう言うと、千冬姉が出席簿を男子の背中の女子2人に振り下ろす
パアンッ!!!×2
「「フギャッ!!」」
十代乙女にあるまじき悲鳴を上げる。女子は頭が痛むのかその場に蹲る。背中から女子が離れた男子は
「助かりました。織斑先生」
「礼を言う暇があったら、自己紹介をしろ。HRの時間が無くなる」
HRの時間が無くなったのは。千冬姉のせいではないでしょうか?俺はそう思いながら、男子の顔を見て目を見開いた
「八神龍也だ。1年間よろしく頼む」
何故か黒いIS学園の制服に、黒のロングコート(暑くないのだろうか?)腰元まで伸びた銀髪に、右目の切り傷のある。凄まじいまでの美形だ…だが、俺が気になったのは容姿ではない
(に、似てるッ!!)
その男子は恐ろしいまでに黄金の騎士に似ていた。記憶にある物より少し若いがそっくりだった…俺が混乱してると
「高町なのはです!好きなのは龍也さんで、嫌いなのは龍也さんに言い寄る女です。よろしくお願いします」
「フェイト・T・ハラオウンです。好きなのは龍也、嫌いなのは龍也に色目を使う全ての存在です」
………思わず黙り込む、何この2人?千冬姉と同類?そんな事を言って恥かしくないの?
「……もう嫌だ、私に平和な学生生活はありえないとでも言うのか?」
何かを堪えるように天井を見上げる、八神の姿を見て俺の脳裏に浮かんだのは
(苦労人だ。俺と同じタイプの…)
きっと八神はあの2人を恋愛対象と見ていないのだろう。それなのに言い寄られて困っている…同じだ、俺と全く同じだ
(きっと仲良くなれる。共感しあえるはずだ、放課になったらすぐ話し掛けよう。そうだ、それがいい)
この時、俺の頭の中から八神が黄金の騎士ではないのか?という考えは吹き飛んでいた。この時俺の頭の中にあったのは同じ苦労人に遭遇した事への喜びだった。そんな事を考えてるとチャイムが鳴った
「さぁ、SHRは終わりだ、諸君らには半月でISの基礎知識を覚えてもらう、その後は実践だが基本操作は半月で身体に染み込ませろ良いな?良いなら返事をしろ、良くなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
なんと言う鬼教官…目の前の姉は人の皮を被った悪魔なのだろうか?いや悪魔の方が融通が利くか?俺がそんな事を考えてると
「少なくともお前には優しいぞ、一夏♪」
俺を横目で見る千冬姉の言葉は聞かなかった事にしよう。それがいい
「八神は一番後ろ、その両隣は高町とハラオウンだ。早く席に着け」
「はい…」
「「はいっ♪」」
悲しげに一番後ろの席に向かって行く八神と、それと正反対に、嬉しそうに歩いて行く2人が席に座った所で
「それでは授業を始める、教科書16pを開け」
千冬姉の言葉と共に授業が始まった…
第4話に続く
…なんででしょう?千冬さんがはやて様と同レベルのヤンデレになってしまいました。何ででしょう?当初の予定では「箒」「鈴」「ラウラ」をヤンデレにする筈が、何故か最もヒロインに遠い人をヤンデレにしてしまいました。まぁ何とかこれで進めて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくおねがいします