第31話
「ちっ!あの化け物どもめ!どこへ行った!」
報酬を受け取り予定の場所へ向かったがそこにネクロの姿はなかった
「どうする戻ってエリスの暴走を食い止めるか?」
「ええーそんなつまらない事しないでよー!」
空間が引き裂かれネルヴィオが笑いながら顔をだけ出して笑いかけてくる
「貴様がエリスのISを?」
「そーだよ?お父さんの実力を世界に見せ付けてその上であの子が死ねば1石二鳥!手駒も増えて私は大満足」
にやにや笑うネルヴィオに腹が立ち。懐の試作型武器の柄を意識してしまう
(提供されたAMFの応用したナイフならコイツに手傷を……)
ダメージを与えた後なら話を聞きだすのはたやすいはずだ。タイミングが問題だが……
「あ。そうそう?早く離れたほうが良いよ?エースオブエースと雷光の戦乙女がこっちに近付いてきてるんだよね?」
この場を見られればワタシは奴等の敵と誤解されるだろう、それはタイミングが不味い……
「ふふふ?スコールを裏切る算段をしてるときに体力の消耗は避けたいよね?」
「ちっ。お見通しか」
確かにワタシは今タスクを抜けるタイミングを計っている。だがコイツが知っているという事はスコールにも筒抜けという事か?
「あーううん?スコールには言ってないよ?だって言ったら面白くないしね」
からからと楽しそうに笑うネルヴィオは
「おっと、あいつらが来るちゃう。ここは撤退。撤退♪」
こっちに向かってくる白と黒の影が見える。もう数分で補足されるだろう
「デコイが会って助かった」
煙幕を発生させる機械を設置し2人が来ている方向に向かって走る
(エリスを助ける為ならば。ここで正体を見せるのも何の問題もない)
たとえエリスがワタシを知らなくても構わない。ワタシにはエリスを助ける義務がある。
そんな事を考えながら走っていると携帯がなる。嫌々携帯をとる
「もしもし?ユウリ。貴方の報酬はこちらで受け取ったわ。そろそろ帰還して頂戴」
案の定電話の相手はスコール……
「しかしワタシは!?」
「今の貴方は私に雇われてるの。もう1度言うわ帰還しなさい」
ぐっ……くそ!エリスも心配だがこれ以上この場に残ってネクロをけしかけられても困る。ワタシは渋々撤退準備を始めた……
(頼む。エリスを救ってやってくれ)
今恐らくエリスと対峙しているであろう八神龍也がエリスを救ってくれる事を願い。ワタシはIS学園を後にした
(だが、そうそう全て思い通りに行くと思うなよ、ネルヴィオッ!!!)
ワタシは一通のメールをIS学園のメインコンピュータへと送信した
「さっきまで誰か居たんだけどね」
煙幕を発生させる機械の電源を切り辺りを見回すが
「龍也がインフィニティアを使った見たい」
「それだけの自体が起きてるって事だね」
インフィニティアはデバイスだ。それを起動したのは直ぐに判った。
「どうする?戻る?」
「戻りたいけど警戒もしないと」
この騒動に合わせてネクロが襲撃してくるかもしれない。それを危惧した龍也さんの指示でIS学園の外を見張っていると
ヒュンッ!!!
無数の矢が降り注ぐ、咄嗟にプロテクションを発動させ防ぐと
「流石はエースオブエースそして、雷光の戦乙女。奇襲は無駄でしたか」
赤い甲冑に法衣を身に纏ったネクロが弓を構えていた。あの姿からしてLV4なのは間違いない
「まさかこんな魔素が薄い世界にLV4が居るなんてね」
LV4はその身を維持するだけで莫大な魔力を必要とする。そんなネクロがこんな魔素の薄い世界に居るとは予想外だった
「なに。魔力だけが糧ではない。魂食いでも充分な糧になる」
なるほどね……魔力が無いなら人間の魂でか……しかもネクロの仲間も増えやせる1石二鳥って訳ね
「さて。申し訳ないのですが。あの子の目的が済むまで私と踊って頂きましょうか?」
パチン
ネクロが指を鳴らすとLV2が10体ほど姿を見せ。更に空間が歪んだ……
「結界ね……」
かなり強固な結界だ。そう簡単には敗れそうに無い
「ええ。邪魔をされては元もこもないのでね。それでは始めましょうか?」
ネクロが再度弓矢を番えるのを見ながら。私とフェイトちゃんはネクロへと向かっていった……
「なによ。あれ……」
黒い閃光と白い閃光が何度も何度もぶつかっては離れる。とんでもない速度だ
「あれが……龍也さんの本当のIS。信じられないくらい高性能ですわ」
加速力だけ見れば第3世代型を大幅に上待っているし、4基のスラスターでの個別瞬時加速なんて。たしかアメリカのファングクエイクに試験的に搭載されている機能のはず。しかし龍也のはそれを完全に使いこなしている
「どこのIS科学者も完成させてない機能を龍也君のISは搭載してる。誰が作ったの?あのIS」
シェンが驚いた様子で呟く。あたし達のISよりも高性能なそのISに驚いていると
「皆。ロックが外れた」
アリーナの観客席のロックを外していたクリスに言われ
「とりあえず管制室へ!そこで織斑先生の指示を!」
いかに代表候補とはいえ勝手にISを起動するわけにも行かない。あたし達は急いで教師達が集まっている管制室へと向かった……だがロックを解除したクリスは首を傾げていた
(おかしい、ピットや観客席のロックはかなり弱かったのに、アリーナのロックは異常なほど固かった……一体なぜ?)
その小さな疑問を抱えたままクリスは管制室へと向かった
ちい!思ったより速い!
暴走状態のヤタガラスは思いのほか厄介だった。暴走の原因として恐らく僅かながらにISに付着したネクロの細胞が空気中にある魔力を無尽蔵に吸い上げ。シールドエネルギーと機体のエネルギーに回している。つまり今のヤタガラスはほぼ無尽蔵のエネルギーを持っている
と言っても良い
(それに剣技もエリスと同じ物。厄介だよ全く!)
ガキーン
獅子王刀で死角から突き出された槍を弾く。ヤタガラスは今右手に突撃槍を持ち右手にルナライトを構え槍と刀の間合いの違いと無尽蔵のエネルギーに後押しされた瞬時加速を連続で使用してくる。これは正直持久戦に持ち込まれると不味い。私自身も魔力を使いインフィニティアのエネルギーをカバーしているのでエネルギー面に不安は無い。だが持久戦になればなるほどエリスの生命反応は弱くなっている。恐らくなんらかの力を使ってISを強化してるのだろうが、このままでは不味い
エリスの生命反応が低くなれば一気にネクロの細胞が活性化する。そうなればエリスは……ネクロと化す
(そうなれば私はエリスを殺すしか無くなる。その前にネクロの細胞だけをピンポイントで消滅させなければならないが……
(どこに寄生している?)
エリスの身体を見るがそれらしい物は見つからない。となるとISの装甲と生身の身体の間だと思うがそれがどこか判らない
(普通に考えるのならば、頭部もしくは胸部だが……)
嵐の様なヤタガラスの連撃を獅子王刀で防ぎ目を凝らすがスピードのせいか目星が付かない
(かと言ってナイトヘブンズやレーヴァティンを使うわけにも行かないしな)
今のヤタガラスに下手にダメージを与えるとネクロの細胞が活性化しかねない。つまりは
(ジリ貧か)
防ぐしかないが、かと言って時間を掛ければエリスがネクロと化すし、かと言って攻撃する事も出来ない
(勘でいくか?)
頭か心臓か……どちらかだ……今までの経験からすると頭部の可能性が高い
(一か八か……勝負をかけるか!?)
だがエリスのあとの人生がかかってる。そう簡単には決断できない
(どうする!?)
攻撃に出るかもう少し侵食が進みネクロの魔力を認識出来るまで待つか!?
くそ!全くネクロどもの性格の悪さには毎回呆れ果てるな!!!私は放たれた槍の穂先を斬り飛ばし、ヤタガラスの装甲を注意深く調べ始めた
「どうして攻勢に出ない?あれほどのISならヤタガラスを制圧できるだろうに」
モニターを見ながら呟く千冬を見ながら遠隔スキャンでヤタガラスを調べる
(幾らなんでもおかしい、もうとっくにエネルギー切れを起こしてる筈なのに)
暴走を始めて既に5分、その間も連続で瞬時加速を使い、エネルギー消費の激しいハーミットを振るい続けるヤタガラス、とっくにエネルギー切れを起こしても不思議は無いのにまだその予兆は無い。考えられるのは
(何か外付けのパーツで無理やりエネルギーを補充してるとしか思えない)
エリスちゃんに何が合ったのか判らないが。私が目を離してる隙に何かがあったに違いない。スキャンを繰り返していると私の使っているPCにメールが届く
(何!この忙しい時に!!!)
苛々しながらメールを見る。差出人は……ユウリ・クロガネ!?名前だけは知っているエリスちゃんを保護した際。片っ端から回収したクローンプロジェクトの完成体の1人の名前が確かユウリ!生きていたの?メールを見る
『エリスの心臓の辺りをスキャンしろ。そしてそれを八神龍也に伝えろ』
短い文面に目を通しそのまま熱スキャンでエリスちゃんの胸部を見る。そこには
(何よこれ!?)
黒い脈打つ何かの影が丁度心臓の斜め上に張り付いている。丁度ISとISスーツの間の何ミリと言う隙間に。それが脈打つたびにヤタガラスにエネルギーが補給されている
(これね!?これを取り除けば!エリスちゃんは助かる!!)
ステータスブーステッドの維持限界は7分。あと2分間に合うかどうかは正直言ってギリギリだ。しかしこれを伝えるにも、オープンチャンネルは不味い高速戦闘中の八神龍也に伝えれば集中力が途切れかねないならば!
「楯無!聞こえる?八神龍也に伝えて!心臓の右斜め上に何か脈打つ物があるって!」
『判りました!!龍也君!心臓の右斜め上を狙って!』
これで私に出来る限りの手は打った。あとは彼が上手くエリスちゃんを救ってくれる事を願うだけ……
(あれだけ疑って都合の良い事を言ってるのは判ってる。でもお願い私の大事な義娘を助けて)
「龍也君!心臓の右斜め上を狙って!!!」
楯無の言葉が聞こえる。危ない所だった私は頭部を狙うつもりだったが、どうやら頭部を狙わなくて正解だった。しかし
(ただネクロの細胞を狙うだけでは駄目だ、少しでもエネルギーがあればそこから再生する。ISを行動不能にし尚且つネクロの細胞を打ち抜き、エリスの精神が崩壊する前に助ける)
なんとまあ悪い状況だ。だが……
「分の悪い賭けは嫌いじゃない、一撃で決める」
狙う場所は判った。そしてヤタガラスも一撃で沈めれるだけの攻撃力もある
「ジョーカー切らさせて貰う!!!」
バシュ!!!
背中の翼はナイトヘブンスと呼ばれる特殊兵装。本来ならこんなところ出来るつもりは無いが出し惜しみは無しだ
「行けッ!!!」
ヒュン!!ヒュヒュンッ!!!!
分離した翼が変形しビームと実弾を放つビットになる
「どんな装甲だろうとただ撃ち抜くのみ!!!」
ビットの射撃の嵐に合わせて瞬時加速でその弾幕を突っ切る
「!!!」
「逃がしはしない!!!」
ガシャッ!!!
腰の装甲に収納されたビームライフルを両手に持ちヤタガラスの退路を絶つ
「続けて行くぞ!!!」
ビームと実弾をバレルロールで回避しながら両肩の装甲に搭載されたミサイルをヤタガラスの足元目掛け撃ち込む。連続でミサイルが爆発しヤタガラスの視界を奪う。
「ブースト!行けぇッ!!!」
瞬時加速でヤタガラスの間合いに飛び込みブースターで破壊力を増加させた回し蹴りを叩き込む
バキャンッ!!!
咄嗟に腕に付いた盾で防いだヤタガラスを上空へと蹴り上げる
「射撃は苦手だがこれくらいは出来る!!!」
実弾を放つナイトへブンスのビットが更に変形しハンドガンになり私の手に収まる
ミサイルとビームの嵐で碌な機動ができないヤタガラスに1マガジン分の弾丸をフルオート射撃で打ち込む
ガン!!ガンッ!!!ガガガガンッ!!!
狙いは機体の各所に付けられたブースター。自立制御のヤタガラスは被弾しながらも弾丸の幾つかを回避するがブースターの大半をやられ空中での機動が取れず落下してくるヤタガラスの腹部の装甲に
「貰った!!!」
右腕を叩き付ける、インフィニティアの右腕には近接用の武装。通称二ーベルングアイゼンが搭載されている
「!!!」
「全弾持って行け!!!」
ズガンッ!!!ズガンッ!!!ズガンッ!!ズガンッ!!!ズガンッ!!!
それはリボルバー式の回転機構を搭載した爆裂式手甲。6発全弾打ち込んだがヤタガラスは行動を止めず。暴れバンカーから抜け出した。間合いを取るヤタガラス今の内に弾をリロードしようとシリンダーを開放した瞬間
シュッ!!!
「ちいっ!!!」
ヤタガラスがさっきまで振るっていたビームエッジを投げつけ私の手から換えの弾がはじけ飛ぶ
カラン……カラカラ
乾いた音を立てて転がっていく弾の音を聞きながら
(ちいッ!あと一歩だと言うのに!!)
破壊した装甲の下からネクロの細胞を確認した。あれを貫けばエリスを助けれる。だが剣や銃ではエリスの心臓を傷つける可能性が高く使うに使えない。心臓を傷つけずネクロの細胞を破壊するには二ーベルングアイゼンが必要だと言うのに
(最後の最後でミスを!やはり鈍っていたか!)
この世界で学生をしたのが間違いだった。気が緩んでいた……くっ……私は歯噛みしながらどうするか必死で考え始めた
龍也が歯を噛み締めているのが見える。最後の最後でミスをした自分を恥じているのが一目で見えた。龍也の手から弾け飛んだ弾……あれが必要なんだと判った私は即座に転がって行った弾を捜し始めた……
(弾け飛んだのは3発……どこ!?どこにある!?)
ハイパーセンサーで探す、1発目……駄目だあれは2人の激突で発生した炎の近くに落ちているあれは使い物にならない。2発目……あれも駄目だ距離がありすぎる……となると私が取れるのは
(あの崩れ落ちそうな瓦礫の下にある。最後の弾丸……)
今にも崩れ落ちそうな瓦礫の下に光る弾丸を見る。あれを取れたら龍也を助けれる、でもそうすると私が瓦礫の下敷きになるかもしれない……そうなればISがあっても危険だ……怖い……死ぬかもしれない……その一念が私の体を縛る。助けたいでも死ぬのが怪我をするのが怖い……私の背を押してくれた龍也を助けたいのに
「ギ……ギギギッ!!!」
ダメージのせいかぎこちなく動くヤタガラスはそのまま腰の鞘にルナライトを収めた。最後に抜刀術で勝負に出ようとしているのが見える
「ちっ!!こうなったら一か八かだ!!」
ヒュウウウウ
龍也が息を吸い込む音が聞こえる。徒手空拳でヤタガラスを戦闘不能に追い込もうとしている。だがそれは無謀すぎる、私が何かを言う前にお姉ちゃんが
「龍也君!!無茶よ!!そんな事したら下手したら大怪我じゃすまないわよ!!!」
エリスの抜刀術はISの装甲えさえ引き裂く。そんなの相手に無手なんて正気の沙汰ではない。だが龍也は前を見たまま強い意志の込められた言葉で
「だが。私は簪と約束した……エリスを助けると、なら私は命を賭ける。死を必すればすなわち生く、覚悟を決めれば運が良ければ生き残れるさ」
ダンッ!!!
PICを解除して自らの足で地面に立った龍也はは足を踏み変え
「恐れが人を殺す……ならば私は恐れない。歯食いしばって前を見る。何故なら……エリスをここで見捨てたら……私はもう私に戻れないからだ」
空気が軋む程の闘気を纏いながら静かにそう告げる龍也の言葉を聞いて
(私のお願いを聞いて命を賭けてくれてるのに!私は自分の事ばかり考えてっ!!!)
情けなかった……自分が傷付くのを恐れ動かない弱い自分が……龍也が命を賭けるのなら私も命を賭ける
「簪ちゃん!?」
「簪さん!?」
驚くお姉ちゃんと織斑君の声を聞きながら、瓦礫の下に向かい落ちている弾丸を拾い上げ
「龍也君ッ!!!」
ブンッ!!!
そのまま反転し龍也目掛けて拾い上げた弾丸を投げる。それと同時に瓦礫が崩れ私を押しつぶそうと迫る
(やっぱり……私はこれが限界か……)
弾丸を拾って投げる。それだけ出来れば十分……多少の怪我は覚悟の上、あとは全部龍也がうまくやってくれる
(私は……変われたかな?)
もう弱い自分は居ない、今私の中にあるのはどんなに怖くても前に進めるようになった。自分……それがとても誇らしかった
「簪ちゃん!!!」
「お、お姉ちゃん?」
ゆっくり目を閉じた私を抱き上げ瓦礫の下から抜け出したお姉ちゃんはそのまま私を抱き抱えごろごろと地面を転がり出た
「お姉ちゃん」
「簪ちゃん!!何やってるの!!死ぬ気!!」
本気でお姉ちゃんが怒ってるのが判る、でも私は少しだけ笑いながら
「ねえ、私……前に進めた、怖いけど……前に進めたよ」
「何を?」
困惑してるおねえちゃんに私は笑いかけながら
「死ぬのも怪我するのも怖かった。でも……龍也が私とエリスの為に頑張ってくれてるから。私も勇気が出せた……もう私は弱虫じゃないよね?」
もう限界だった、ゆっくり意識が闇に沈んでいくのを感じながら私がそう尋ねると。お姉ちゃんは
「ええ、簪ちゃんはもう弱虫じゃないわ……だから今は休みなさい」
優しく頭を撫でてくれるお姉ちゃんの手の温もりを感じながら私は意識を失った……目が覚めたらきっと……私は昨日までの私とは違う私になっているそんな気がした……
パシッ!!!
簪が投げ渡してくれた弾丸を掴む。楯無に抱きとめられ眠っている簪、怖かっただろうに……本当の命のやり取りに自分が死ぬかもしれないと言う恐怖……それを超えて行動をした簪が私にくれたチャンス……
「これに答えれんのなら男じゃないな」
簪は命を賭けて私にチャンスをくれた、ならばそのチャンスに全てを賭ける!!!
ガチャン……
右腕のシリンダーから最後の弾丸を抜き左手に持つ
「賭けるか?お前の抜刀術が上か。私の一撃が上か……勿論私は自分の勝ちに全賭けだ!」
ブースターがやられたヤタガラスは地面に両足を着け腰を深く落す
「ジジジ!!!」
紫電を巻き散らしながら間合いを計るヤタガラス。私もまたエリスの心臓の右上に狙いを定める
(装甲を破壊したおかげでネクロの細胞が見えた)
弱々しく脈打つネクロの細胞。あれをピンポイントで打ち抜く……
「勝負だ!!」
キンッ!!!
最後の弾丸を指で弾く。全てがスローモーションで動く中、右腕の装甲を開き最後の弾丸を空中で装填する
ドウッ!!!!
ヤタガラスと同時に瞬時加速に入る
「!!!!ッ!!!」
「悪いな、如何にお前の抜刀術が速かろうと……そこにエリスの魂は無い、ならばそんな紛い物の剣で……」
神速の抜刀を首を捻る事で交わし。そのままカウンターに右腕をネクロの細胞に叩き付ける
「私を切れる等思うな!!!」
ズガンッ!!!!
最後の弾丸でネクロの細胞を打ち貫き消滅させる……
キン……
排出された薬莢が軽い金属音を辺りに響かせる
「言っただろう?エリスは返して貰うとな」
ISが強制解除され何時も目を覆っている包帯が外れたエリスと目が合う、包帯で隠された右目は水晶の様に光り輝いていた。震える手で手を伸ばすエリスの腕を掴みそのまま身体を反転させる
「賭けは私の勝ちだ」
操縦者と切り離されたヤタガラスが紫電を撒き散らしながら待機状態に戻る。メタルブラックのリボン止めがアリーナの床で跳ねるのを空いている右手で拾い
「コード、ワイルドジョーカー……確かに切らせて貰った」
多少派手に立ち回ったがまぁエリスを助ける為だ、別に良いだろ……疲労とダメージで眠りに落ちるエリスをしっかりと抱きしめ。私は楯無達の元へ向かった。
「す、すげえ……」
俺は思わずそう呟いた。射撃・高速機動・ゼロ距離での近接戦闘にビットとの並行突撃。どれも俺が見たことの無い戦術だった。長いように思えた戦闘時間は約1分……1分で龍也は暴走したヤタガラスを止め操縦者であるエリスさんを助けたのだ
「楯無、ヴィクトリア。エリスを頼む。そして……早く逃げろ」
龍也は気絶したエリスさんを2人の前に寝かせ、空中を睨んだ
「どうして逃げろなんて言うの?もう敵は……」
シャルルがそう尋ねる中龍也は
「来る……敵が来るんだ。もう時間が無い」
龍也がそう言った瞬間
バシュッ!!!!
アリーナの床に黒い穴が無数に現れ。その中から
「ギシャアアアアアッ!!!!」
「グルルルルッ!!!!」
不気味な唸り声を上げて無数の異形達が姿を見せる
「ば……馬鹿な。あれは!?」
俺には見覚えが合ったそれは過去に俺と千冬姉を殺そうとした黒い亡霊達だった
「な。何でここに……居るんだよ」
俺の恐怖が目の前に現れたそして1番最後に現れた2体の異形を見て更に俺は驚いた
「IS!?」
黒い亡霊達の一番奥に居る2体がISを展開していたのだ、打鉄とラファールに酷似した物を展開していたのだ
「ふーどうやら、まだ私は戦わないといけないようだ。楯無、皆を頼む……何心配するな……私の後ろには……」
両手にビームの刃を持つ剣を持った龍也は振り返らずに
「唯の1発の弾丸さえ通さん!!!」
ゴオオオオッ!!!
空気が軋む、龍也の全身から湯気の様な闘気が吹き上がる
「無茶よ!あれにはISの武器は通用しないわよ!」
楯無と呼ばれた女性徒がそう言うと龍也は
「だから?だから退けと言うのか?残念だが私にはその選択肢は無い、それにどうもあいつらが用があるのは私のようだしな」
「「ギシャアアアアアッ!!!!」」
唸り声を上げ身体を引き摺るように龍也の方に向かっていく異形達
「た、龍也!駄目だ!!死んじまうぞ!逃げるんだ」
「その通りだ!八神龍也!私はあれを知っている!あれにはISは通用しない!!!」
俺とヴィクトリアさんがそう言うが龍也は平然と歩いて行く
「ギシャアアアッ!!!!」
咆哮を上げ異形の1体が飛び掛るが
「ぎゃあぎゃあとうるさい事だ」
バンッ!!!
振り上げた龍也の足が異形を蹴り上げ。宙に浮いた異形をその手にした剣で両断する
「来い化け物ども。そう簡単にこの私を倒せると思うなよ」
にやりと笑った龍也は鋭い視線で異形達を睨み
「私の後ろに居る者に貴様らは触れることなど出来はしない、なぜなら……護る戦いなら私に敗北の二文字は……」
ビットが変形したハンドガンを両手に構えた龍也は
「――――ない!!」
龍也はそう言うと異形達へと向かって行った……
第32話に続く
次回も戦闘メインの話です。今回の戦闘描写は如何でしたでしょうか?自分では中々良い出来かな?とは思っていますが。まだまだ戦闘描写は苦手なのでアドバイスとか貰えると嬉しいです。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
それと今回は以前募集した、龍也さんの決め台詞でいただいた物を使用させていただきました、アイデアをくれた月影夜葬様どうもありがとうございました