IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回から戦闘は無しでトーナメント編の終わりに向けての調整?の話になると思います。それではどうか宜しくお願いします


第33話

第33話

 

観客席のIS関連の会社と各国のスカウトは一切に携帯を取り出し連絡を取り始めた。異常なまでの性能を持つISを操縦する男性操縦者。そしてどこの国にも所属していない……これは充分に騒動を引き起こすだけの話題だった

 

「2人目の男性操縦者の戦闘技能とISの性能は今からでも充分な戦力になる!!すぐにスカウトの準備を!!アメリカや中国に遅れをとるな!!!」

 

「聞こえますか!会長!!凄い生徒が居ます!!!1年とは信じられない戦闘技能と操縦技能を持って居る子です!!すぐにスカウトの準備をしてください!!!」

 

どこのスカウトも連絡を取り合ってる中ゆっくりと歩き出す女性の姿があった。スコールだ

 

(信じられない。片腕でしかもあれだけ重症を負って。化け物相手にたった一人で勝つなんて)

 

話には聞いていた神王 八神龍也。あの化け物達の天敵で今の容姿は偽りの者で実年齢は25と聞いていたが、それにしても異常すぎる戦闘能力だ

 

(でもあの力は必要だわ。全てを変えるには)

 

この世界で動くと言っていたベエルゼ、その目的を防ぐ為にも戦力が必要だ。例えこの手を血に染めたとしても私には成さねば成らぬことがある

 

(なんとか接触をしたいわ……この世界を護る為に)

 

ベエルゼ……形だけの協力者。今は何をしてもやつらから情報を引き出す必要がある

 

(正義の味方の真似事なんて……何をやってるのかしらね)

 

スコールは現在亡国企業からの連絡を一切絶ち独自の行動を取っていた。それはMもオータムも知らない事実、トップ達はベエルゼの言葉を信じているがとても私には信じられる内容ではない

 

(協力すれば世界をやる?そんなの嘘に決まってる)

 

優れたIS操縦者を殺し自らの手駒にするベエルゼ。そして見たこともない動物が苦しみ悶えながら化け物へと姿を変えていくのを目の当たりにして。そんな言葉を信じる程私は愚かではない。今はプライドも何もかも捨てて少しでも多くの情報を手にする。それがスコールがベエルゼ達と手を組んでいる理由だ。私はどうやって八神龍也と連絡を取るか考えながら。IS学園を後にした……丁度その頃IS学園の医療室では

 

「で?八神龍也はどこへ行った?山田君」

 

「し、知らないですよ~!!!この有様なにやったんですか八神君は!!!」

 

医療室で安静にしているはずの八神龍也の姿はそこに無く。代わりに粉砕された医療室の壁が大穴を明けていた

 

 

夢を見た……

 

赤い大地……崩れ果てた廃墟……そして墓標の様に立ち並ぶ剣の群れ……その真ん中で全身を刃で貫かれた青年が仁王立ちしている

 

燃える様な緋色の髪

 

身を包む黄金の甲冑

 

背中しか見えないがそれは広く見えそしてとても小さく見えた……後悔、絶望を背負いそして……何も救えない自分を恥じて……それでも彼は立ち上がり進んでいく

 

強い風が吹く……それと同時に青年が振り返る

 

顔はよく見えなかった……でもその口元に浮かんだ儚げなそれでも優しい笑みを私は見た……

 

「私は……」

 

「よう。目が覚めたか。エリス」

 

うっすら目を開けた私にそう問いかける声、この声は間違いなく龍也君だ。私がゆっくり両目を開いてみたのは、揺れる左袖だった……肩から先は無くそして頭に包帯を巻いた龍也君が椅子に座って居た

 

「そ……その腕は?」

 

暴走したヤタガラスが切り落としたのかもしれない……震える声で尋ねると

 

「ん?これか?なにお前のせいじゃない。お前のISの暴走を止めた後。化け物が現れてなそれに腕を切り落とされたんでな。邪魔だったから肩から先を切り落としただけだ。あーそんなに青い顔するな義手だから換えは利く」

 

かっかと笑った龍也君は

 

「悪いとは思ったがお前の眼の包帯取らせてもらった」

 

「みたんですか……人なざるこの眼を」

 

ナノマシンにより水晶に様に変化したこの目が嫌いだった。言外にそういうと

 

「馬鹿か?自分の身体を嫌って何の得があるよ?」

 

その言葉に私は

 

「なにも!!何も知らないくせに!!!何勝手なことを言うんですか!!私は消えたかった!!死にたかった!!!なのになんで私を助けたんですか!!!」

 

思わず自分の中にあった醜い感情を全て龍也君にぶつけていた。クローンである事……純粋な人じゃない私が何を出来る……死にたかった、生きてる価値なんてないから。感情に身を任せ怒鳴り続ける。龍也君は無言で私の罵倒を聞き続け、そして話が終わったと同時に

 

「馬鹿が」

 

何が起きたか判らなかった、急に視点が変わり混乱する私に鈍い右頬の痛みが教えてくれる……頬を叩かれたのだと理解しまた怒鳴ろうとすると

 

「死にたい?消えたい?甘ったれるな!!!世の中には生きたいのに生きられない人間がどれだけ居ると思っている!!!」

 

その怒声に思わず身が竦む。

 

「生きる事を捨てるな戯けッ!!!その戯言をお前はツバキさんの前で言えるのか!!!」

 

!?

 

お義母さん、お義父さん……私をあの研究所から救い出して私の名前と暖かい場所をくれた人たち。

 

「そ……それは……」

 

言えない。言える訳が無い自分達が怪我をしつつ私をあの闇の中から引き上げてくれた恩人にそんな事は言えない

 

「エリス・V・アマノミヤッ!!!!」

 

「は、はいっ!!!」

 

突然大声で自分の名を呼ばれ思わず返事をする

 

「返事をしたな?ならばお前はエリス・V・アマノミヤだ。それ以上でもそれ以下でもない……ましてや既にいない人間でも無い。現在を生きるエリス・V・アマノミヤに他ならない、それでももし自分が自分であると言えないのなら」

 

そこで言葉を切った龍也君はにこりと微笑み

 

「お前は今からエリス・V・アマノミヤになれば良い。何、お前には優しい母も居る。頼りになる友も居る……時間はある自分が誇れる自分になれば良い」

 

心臓が一際激しく高鳴った。龍也君の笑みはいつもと違い儚く今にも消えてしまいそうで、でもそれでも強く心に残る笑顔だった。どこと無くさっきの夢で見た赤い大地を歩く青年の笑みによく似ているその笑顔は私を赤面させるには充分すぎた。だがそれはすぐに消えた

 

「居たか!」

 

「居ません!!腹に風穴開いてるのに何考えてるんですか!八神君は」

 

教師陣の怒声を聞いた私は

 

「え?腹に風穴?」

 

「うん。後ろから化け物に貫かれてな。正直血が出てる」

 

龍也君が足元を見るのでそれにつられて下を見ると。血だまりが出来ていた……

 

「っきゃッ!むぐっ!!!」

 

「しー、静かに見つかると不味いんだよ。医療室でジーとしてるなんて性に合わないんだよ。後で治療用のナノマシンを過剰投与として直すから問題ない」

 

いえ。それはかなり問題があると思うのだが

 

「ではな!私は逃げる」

 

「ちょっ!何してるんですか!?」

 

私の制止など知らないとでも言いたげに龍也君は窓へと駆け出し。右腕で頭を覆いそのまま窓ガラスを突き破って外に飛び出していく龍也君と入れ違いで

 

「八神か!?」

 

「織斑先生!?」

 

血相を変えて飛び込んできた織斑先生は割られた窓を見て

 

「ちっ!!今度は外か!外を監視してる連中に伝えろ!腹に風穴開けて、出血死寸前のど馬鹿を捕まえろと!!」

 

出血死寸前!?そんな状況で私の所に来てたの!?携帯を取り出し連絡を取り合っている教師陣の会話が聞こえる

 

「発見しました!!医療室で保管されてた医療用ナノマシンを大量に強奪して走ってます!!」

 

「捕まえろ!!過剰投与で死ぬぞ!!」

 

「ダメです!!走りながらナノマシン投与してます!!!」

 

「あのど馬鹿を捕まえて私の前に連れて来い。本気でぶん殴ってやる!!!」

 

「ああ!?壁を垂直に走って屋上に!?」

 

「あの人外め!!!あれだけ麻酔薬投与して何故動ける!?ええい!私が屋上に行く!!!」

 

私に何の声も掛けず走っていく織斑先生を見て思わず笑い声がこみ上げてくる。

 

何なんだ彼は……嵐めいた強引さで人の心に踏み込んで……

 

言いたい事だけ言って去って……

 

そしてそれでいてとても優しくて……

 

「本気になっちゃうじゃないですか……」

 

きっと2人の魔王もこれにやられたんだ。

 

「あははは……」

 

なんて……なんて心地よいのだろう……自分の生まれを知って同情するわけでもなく、慰めるわけでもなく。怒鳴り本気で怒られたのは初めてだ

 

「恋しちゃうじゃないですか……」

 

魔王と相対するのは怖ろしいのに、それでも彼に惹かれている自分が何故か誇らしかった

 

「ふはははは!!!」

 

「なんであんなハイなんですか!?」

 

「出血のせいで何処かおかしくなったんだろうよ!!とにかく捕まえろ!!!」

 

騒がしい捕り物の音に私は更に笑いがこみ上げてきて笑い声を上げて笑った。傷に響き痛いがそれでも私の笑いを抑えることはできなかった……

 

 

 

さて出血のせいでハイになっていた私だが。それももう冷めた、何故かって?そんなの簡単だ

 

「龍也?何してるの?」

 

「龍也さん?お話しましょう?」

 

ハイライトが消え漆黒のオーラを撒き散らすなのはとフェイトを前にそんなテンションが維持できるわけが無いだろう?

 

「はははは……山田先生、大人しくするんでこの2人から保護してくれません?」

 

「む、無理ですよ~怖すぎますから!!」

 

頼りにならん先生だ、生徒の危機を見逃すとは

 

「そうですか……なら……」

 

冷静に戦況を分析する。

 

なのは・フェイト

 

体力全開・魔力やや減り

 

 

体力・魔力共にレッドゾーン。更に出血のせいで立ちくらみ

 

今までの戦闘経験から推測される自分の勝率……0%……

 

「反省はしている、だが後悔はしていない!!」

 

「後悔してください!!龍也さんの馬鹿ッ!!!」

 

「どこかで絶対フラグを立ててるでしょ!!龍也の馬鹿!!!」

 

ソニックブームかと言いたくなるほどの大声を近距離で出された私は、出血のせいもあり意識を完全に吹き飛ばされた……

 

 

 

 

 

 

 

翌日、食堂に向かっていると視界に入るのは何時もの黒コートと、何時もと違う揺れる左袖……お姉ちゃんに義手を自分で切り落としたと聞いていたが。こうして目の当たりにすると言葉が無い。それに龍也君を見ると青い顔をして顔をそむける女子も多数居る、聞いただけでどれほど龍也君が重傷を負ったか判らないが、この反応を見ると相当酷い怪我だったようだ

 

「あ……龍也君」

 

「おう、簪。君付けに戻ってるぞ?」

 

そうは言われてもやはり君付けしてしまうのでどうしようもない

 

「腕……大丈夫?」

 

「何が?」

 

訳が解らないと言う表情でいわれ逆に困惑する

 

「不便じゃない?」

 

「隻腕には慣れてる。それに最近手術で視力を取り戻したが右目も見えなかったんだ。今更どうこう思わん。まぁトレーを運ぶときは不便だがな」

 

くっくと笑う龍也君は本当にそれだけと言う感じだった

 

「やっほー♪」

 

「やぁ。楯無元気そうだな」

 

はははははと笑いあうお姉ちゃんと龍也君が何故か面白くなかった。

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんは?」

 

「ああ、何か私の世話をするとか言ってうるさいから逃げてきた。隻腕には慣れてるしどうという事はないしな」

 

「普通は支障しかないわよ?」

 

呆れ半分のお姉ちゃんに龍也君は

 

「ふむ、では簪悪いがトレーを持ってもらっても良いかね?」

 

「ふえ?」

 

急に話を振られ困惑するが

 

「う、うん……それくらい良いよ」

 

こくりと頷くと

 

「それは助かる。簪は優しいな」

 

ぽふん……

 

頭から湯気が出るかと思った。何でこう龍也君は平然と言えるんだろう?漫画とかアニメの主人公のようだ

 

「あのさ?龍也君って何時もそんな感じで女の子落としてるの?」

 

「落とす?失礼な、私は女性を落としたことなど無いよ?背負うにしても抱き上げるにしても落としたことなど無い」

 

うん。絶対落とすの意味を理解してない。

 

「君いつか刺されるよ?」

 

「良く言われる。後刺された事は無いが監禁は良くされる」

 

……一体龍也君はどんな生活を送ってきたのだろう?それが激しく気になった

 

「びっくりするぞー?朝起きたら窓1つ無い鉄の部屋に居るのは。まぁ鉄を粉砕して逃げるんだが」

 

「それはそんな普通の顔で言うことじゃないわよ?」

 

ははははと乾いた笑い声を上げた龍也君は上を向き

 

「判ってる、判ってるんだ……でもそれを受け入れないと私はやって行けないんだ。だって一週間の内5日は監禁されるから」

 

本当にどんな生活を送ってるの?その余りに憂いに満ちた表情に私は何も尋ねる事が出来なかった

 

「それは……とりあえず頑張って」

 

「ありがとう。ところで何か用があってきたんじゃないのか?」

 

龍也君にそう尋ねられたお姉ちゃんは

 

「えーとね。予定してた事情聴取とISについての説明はとりあえず延期にする。ってさ」

 

「何故?面倒ごとは先に済ませたいのだが?」

 

お姉ちゃんは大きくため息を吐いて

 

「どうもねー昨日の龍也君流血と腕を切り落とす所を見てた生徒の大半がちょっとね、それのフォローで忙しいらしいのよ先生方が」

 

ふーんと言いながら龍也君は

 

「やれやれメンタルが弱いんじゃないのか?たかが腹を背後から貫かれ、2メートルほどの槍7本が身体に刺さって、腕を切り落としただけじゃないか」

 

「それはだけとは言わないわ。下手すれば一生物のトラウマよ」

 

お姉ちゃんの意見に全面的に賛同。私も多分見てたら龍也君と話せなくなったかもしれない。

 

「でもな、ああしなかったら。お前ら死んでたぞ?」

 

「まぁそうよね。そういう面では龍也君に助けられたし、私たちを助けてくれてありがとう」

 

ぺこりと頭を下げたお姉ちゃんだったが

 

「だけど……自分の命は大切にしなさいよ?」

 

「判ってる。あれはああしないと駄目だったからそうしただけで。何も好き好んで傷つこうなんて思わんさ」

 

そう笑う龍也君だったが、その顔は空虚で空っぽに見えた、何か言わないと思うが何を言えば良いのか。判らなくて開いた口を閉じようとした瞬間

 

「龍也どこ行ったー!?」

 

「龍也さーん!!!その状態で出歩くなんて正気ですかーッ!!!」

 

廊下の後ろから聞こえてくる魔王×2の声

 

「……凄く、逃げたいです」

 

「判るわ。あれは本能的な恐怖を感じる」

 

ゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

という擬音が聞こえてきそうな負のオーラだ。下手すると魔王にロックオンされかねない状況。足が震えるのは当然だと言える

 

「「見つけたーッ!!!」」

 

「見つかったッ!?」

 

魔王に捕捉された龍也君が全力逃亡を始め。それを凄まじい勢いで追走していく魔王2人

 

「あんな風に追い回したらダメよ、簪ちゃん」

 

「判ってるよ。お姉ちゃん」

 

何だかんだ合った者の姉妹の距離感は少し近付いていた……

 

 

 

 

 

 

 

翌日……

 

「龍也……それ……」

 

揺れる左袖に包帯が服の下から見え隠れしてる龍也を見てなんと言えば判らず言葉に詰まっていると

 

「私が選んでやった事だ。何も気にするな」

 

「でも……痛てえ!?」

 

突然放たれたデコピンに思わずそう言うと

 

「余計な気遣いは必要ない。義手職人にも連絡したし直ぐに替えが来る」

 

良いな?余計な気遣いはするなよ?と言う龍也の後ろから

 

「そう言う問題じゃないよ?龍也」

 

「そうですよ?あんだけ出血して。その上隻腕なの見たら誰だって気にしますよ」

 

ぜぇぜぇと酷く疲れた感じのなのはとフェイトに龍也はのほほんとした表情で

 

「撒いたと思ったのに。随分早いな2人とも」

 

荒い呼吸を整えている2人は

 

「壁を垂直に走って逃げます?普通?」

 

「おっ?HRが始まるな。席に着くか」

 

さっと椅子に向かっていく龍也。どうも自分に都合が悪いと判断したのだろう。龍也が席に着くと山田先生がふらふらと入ってくる、どうしたんだろう?ああ……昨日の教師陣全員が駆り出された龍也の捕り物で疲れてるんだろうと俺が思っていると

 

「残念ですけど。そうじゃないです、それも原因なんですけどね」

 

覇気の無い声で言う山田先生は

 

「今日はですね、皆さんの転校生を紹介します。いえ転校生と言いますか既に紹介は済んでるんですけどね……」

 

何か山田先生の説明は判りにくい。転校生なのに紹介は済んでいる?何を言いたい……

 

「じゃあ入ってきてください」

 

「はい、失礼します」

 

あれ~?この声聞き覚えがあるぞ?そしてとてつもない嫌な予感が俺を襲い始める。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん改めて宜しくお願いします」

 

スカート姿のシャルロットがぺこりと礼をする。皆がはッ?と言う顔をしながらも頭を下げる

 

「デュノア君はデュノアさんでした、と言うことです皆さん仲良くしてくださいね。あと織斑君は死なないで下さい」

 

不吉な言葉そして騒然となるクラス

 

「え?デュノア君って女?」

 

「ああ。やっぱりか。気配が違うから男装してるかと思っていたが予想とおりだな」

 

「って!織斑君。同室だから知らないって事は無いよね!」

 

「ちょっと待って。昨日って確か男子が大浴場使ってなかった?」

 

「シェン、違うよ。龍也は出血多量で死に掛けてたからお風呂は入ってないよ?入ったのは一夏とシャルロット」

 

フェイトのその言葉がきっかけで教室が騒然となる中、山田先生が

 

「織斑君。強く生きてください」

 

「そんな事言うなら助けてください!!」

 

遠い目をして言う山田先生にそう叫んだ瞬間

 

「一夏ぁッ!!!!」

 

ズドンッ!!!

 

扉を蹴り破り鈴が登場。その顔は怒り一色と思いきや慈愛に満ちたような表情に見えるが。その実鈴が纏う殺気がびしびしと俺に叩きつけられている。ああ……怒りすぎて色々新しい境地を開いたんだな鈴

 

「死ねッ!!浮気者!!!」

 

「俺は浮気なんかしてねえッ!!!」

 

思わずそう叫んだがそんな事を言っている場合ではない。

 

ジャカッ!!!

 

ISアーマー展開そして衝撃砲がフルパワーチャージを終えて俺に狙いを定め、そして不可視の弾丸が放たれた……

 

(あーこれは死んだなあ……)

 

どこか達観した気持ちになった俺はそんな事を考え、凄まじい衝撃音に思わず目を閉じた

 

ズドドドドオンッ!!!!

 

「ふーッ!!ふーッ!!!ふーッ!!!」

 

怒りのあまり肩で息している鈴が居る。その姿は猫に見えなくも無い……あれ?俺生きてる!?俺と鈴の間に割り込んでいたのは黒いISとラウラの姿。

 

「ラウラ!助けてくれたのか!?」

 

「当然だ、折角得た答えを失い気は無い」

 

答え?何を言って?あれ?もしかしてあれか?暴走したレーゲンとの戦闘を終え医務室で少し寝た時に見た、ラウラと白い世界で話したのは俺の夢じゃなかったのか?

 

満足気に笑い答えを得たと言っていたが、何の事だか俺には判らなかったので夢だと思っていたのだが

 

「答えてな……むぐうっ!?」

 

ラウラが得た答えとは何かと思い尋ねようとした俺の襟を掴み、ぐいっと引き寄せるラウラそして俺は突然ラウラに唇を奪われた

 

「「「!?!?」」」」

 

「おーい?何故目を塞ぐんだ?なのは?」

 

「龍也さんは見なくていいんです」

 

驚いているクラスの同級生の声にならない叫びと、どこか間延びした龍也の声が聞こえる中、ラウラは

 

「お前は私の嫁にする!それが駄目なら私の婿になれ!!一夏!!」

 

「それ意味合い同じだろ」

 

あまりに驚きすぎてそんなコメントが出てしまう

 

「私の副官が日本では気に入った相手を嫁にすると言うと言っていた、だがツバキさんが婿にすると言うのが一般的だと言っていた、だから両方言わせて貰った」

 

ツバキ先生、どうせなら最初の方を訂正してください、

 

「あ……あ……あんたねえええええッ!!!」

 

ジャキンッ!!!

 

鈴が再度衝撃砲の砲門を開き

 

「ラウラを嫁にする位なら!!あたしを嫁にしなさいよ!!!」

 

「混乱するな鈴!!落ち着け!!!」

 

「うるさい!うるさい!!あんたはあたしのなのに!!!キスしちゃうなんて許せないんだからーッ!!!」

 

「俺は被害者だーッ!!!」

 

何この修羅場誰か助けてくれよ

 

「おーい?フェイトなんで私の耳を塞ぐんだ?」

 

「龍也が聞くべきことじゃないからだよ」

 

この龍也の間延びした声が無性に腹立つ、だがそんな事を言ってる場合でないこのままここにいたら殺される!何とか脱出を!!

 

ビシュン

 

脱出先を探していた俺の鼻先を掠めていくレーザー。恐る恐るレーザーが飛んで来た方向を見る

 

「一夏さん?しっかりどういうことか話して下さいますわよね?大浴場の件そして今のキスの件、全て貴方の言葉で説明してください」

 

言葉使いは冷静だが目が単色になってる。あれはなのは達特有の魔王の目線!セシリアが魔王化しつつあるのか!?だが今はそんな事を考えてる場合ではない!逃げなければ命が無い。窓だ!窓から逃げれば何とか……

 

ダンッ!!!

 

突然目の前に日本刀が突き立った……これ箒の持ってた日本刀だよな。と言うことは

 

「説明してもらおうか?一夏」

 

「俺だって説明して……のおおおッ!?!?」

 

ブンッ!!ブンッ!!!

 

鋭い踏み込みで放たれる斬撃を頭を抱えて回避する

 

「なぁ?何時まで私は目と耳を塞がれたままなんだ?」

 

「全部が終るまで(一夏が処刑されるまで)

 

龍也はまだ目と耳を塞がれてるし。それ以前に隻腕かつ出血のせいで顔が青い龍也に助けを求める事は出来ない。ならば自力で逃げるしかない

 

ぼすっ

 

「ほへ?」

 

誰かにぶつかり思わず頭を上げる

 

「……」

 

そこにいたのはシャルロットだったが、その目に光は無く冷たい視線で俺を見下ろし

 

「一夏は……僕のなのに……僕のぼくのボクの……」

 

えっ?なにこれ?シャルロットが何時の間にかとんでもない魔王と化してる!?

 

「一夏が僕のになってくれないなら……潰すしかないよね?大丈夫ぼくも死ぬ」

 

ヤバイってえええええ!?!?なにこれ!?今まで俺の周りにいないタイプの魔王に進化してるうううう!?

 

「グレースケールなら一発だから痛くないよ?」

 

「即死だからな!!いうか正気に戻ってくれよ!!!」

 

「僕は正気さ。やっと見つけた僕の居場所……絶対に失いたくないんだッ!!」

 

ジャキン!!!

 

グレースケールが何のためらいも無く心臓に向けられる。ヤバイ……ヤバ過ぎる。シャルは本気だだって切っ先が震えてるから

 

「お、落ち着け!!シャルロット。いくらなんでも心臓狙いは不味い」

 

「そ、そうですわ!落ち着いてください!シャルロットさん!!」

 

流石にシャルロットの表情から本気で俺を殺めかねないと判断した、箒とセシリアが止めに入るが、遅い

 

「ごめんね?」

 

心臓に向かってくるバンカーがゆっくりに見える、俺が目を閉じようとした瞬間

 

「何をしてる戯け」

 

「ふぇ?うわああああッ!?」

 

その腕を掴みそのまま窓の外に投げ捨てる黒いスーツの腕

 

「千冬姉……」

 

「大丈夫か?少し待ってろ。すぐこの戯けどもをぶちのめす。特にラウラ!お前は念入りにな!!!」

 

ブンッ!!!

 

風切音を立てて千冬姉が構えるのは異形の日本刀

 

「それは?」

 

「ん?ああ、折れた零式の斬艦刀をツバキさんが打ち直してくれてな。さてこれならIS装甲でも引き裂くぞ。さあ私の一夏を奪おうとした罪。死を持って償えッ!!!」

 

近くに浮いていたティアーズが両断される、えーと生身ですよね?ISの補助とかないよね?え?それでこの威力?箒達も目を見開き額から滝の様な汗を流し、回れ右して全力逃亡を始めた

 

「逃がすかアアアアッ!!!一度三途の川に叩き込んでやる!!特にラウラアアアアッ!!!!」

 

ああ……脳内リミッターがもう完全に意味を成してないんですね。だって目に光ないし徒歩でISに追いつくってどんな脚力してるの?

 

「うわああああッ!!ドイツでの悪夢がッ!!!!」

 

「■■■ッ!!!」

 

凶化がログインしてる!?もうあれは鬼神だ、誰も止める事など出来はしない。世界最強が凶化?誰が止めれるというのだ?

 

「織斑君。止めて来てください」

 

「山田先生!?あなたは俺に死ねとッ!?」

 

外の音を聞けば、あそこは死地としか思えない

 

「衝撃砲を弾き飛ばした!?」

 

「ISでも抑えれない!?」

 

「■■■ッ!!!」

 

理性など無いとしか思えない、あんな千冬姉の前に出てみろ。食されて終わりだ

 

「それもそうですねー。では代表候補生へと特別訓練という事で……処理しましょう」

 

「良いんですか?」

 

「織斑君?今の織斑先生を止めれると思いますか?」

 

「無理ですね」

 

すまない。箒・鈴・セシリア・ラウラ・シャルロット……俺は無力だからお前達を助けれない。俺が心の中で謝っていると龍也が窓際に立つ

 

「私が止める」

 

「どうやって?」

 

隻腕・出血多量で瀕死の龍也では止めようがない筈だが

 

「まあ見てろ」

 

龍也が大きく息を吸い込み叫んだ

 

「俺は優しい千冬姉が大好きだーッ!!!!」

 

俺と全く瓜二つの声で

 

「うおおおおいっ!?!?なんで俺の声が出せるんだよ!!!」

 

「ふっ!物真似などたやすい!」

 

「そういう問題じゃねえよ!!!」

 

「逃げないと死ぬぞ?社会的にか肉体的にか。どちらかでな」

 

運動場を見る。箒達の絶対零度の視線+千冬姉の肉食獣の目が俺を捉えている。そして一斉に走ってくる

 

「嘘だろおおおおッ!?!?」

 

「強く生きろ、一夏」

 

「一応出席という形にはしておきますんで。頑張って逃げ延びてください」

 

ドドドドッ!!!

 

「凄い音が近付いてくる!?くそ!死んでたまるか!!!」

 

俺はその日。極限状態になるまで千冬姉達に追い掛け回される羽目になった。この恨み……いつか必ず晴らしてやるぞ龍也!!!

 

第34話に続く

 

 




前半シリアス?後半壊れギャグでお送りしました。次回は色々と面白い事になるので次回もどうか宜しくお願いします
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