第35話
「このっ!!」
「貰ったッ!!」
「まだまだ甘い、甘い」
しっかりと体重移動しくりだされたスバルの正拳とノーヴェの上段回し蹴りを受け流し捌きながら
(感覚は駄目そうか?)
恐らくジェイル作の幻術発生器で姿を誤魔化しているであろう2人にそう尋ねると
(はい、どうもラグがあって動きにくいですね)
(私もそう思う、ちょっと身体が硬い感じ)
そうは言いながらも鋭い風切り音を立てて迫る2人の拳を左手で防ぎながら
(となるとそこまで本気は不味いなー。ガードまにあわんだろう?)
剛手甲が当たった時の手応えがおかしかったので気になったいた事を尋ねると。目線だけで頷く2人、こと受身と防御が上手いのに完全に命中した手応えにどこか不調もしくは幻術との同期が上手く行ってないと思っていたがやはりか
(では、基礎の体捌きと攻撃。体重移動がちゃんと出来てるか見せてもらうぞ、それくらいなら大丈夫だろ?)
(はい!)
(まぁそんくらいならいつも通りかな?)
念話を止め、そのまま2人から距離を取り
「義手のテストだ。全力で打ち込んできてくれ」
となれば義手の耐久度。神経伝達のラグを確認する事を最優先にしよう。いざネクロと戦って壊れました、反応が遅れましたじゃ、笑い話にもならないからな
「あれさー、凄げぇな。フレイア」
アリーナを監視してるモニターを見ながら呟く、龍也と戦ってる女の子……見た所12~14くらいだろうが、驚くほど技量が高い
「私は剣士だ闘士の戦い方を見ても強いかどうか位しか判らん、どこが凄いんだ?」
まぁ。そりゃそうか。フレイアは剣をメインし、後は補助程度に射撃が少し、主な役割が現場指揮だからそう言われても判らないか
「まずは体重移動だな。攻撃にしろ防御にしろきっちり体重移動してやってる。あれなら軸がずれないから反撃に出やすいし、連打も出る。多分足腰がかなり強いんだろうよ。良い拳打は足腰の強さで決まるからな」
あたしはどっちかって言うと突っ込んで殴る。とシンプルな戦闘しか出来ないから良く判る
「ノーキンだからなお前は」
「黙れ、暴走特急」
思い込んだら一直線かつ人の話を聞かないフレイアにそういわれるのは納得行かない、って言うか
「なんでお前が脳筋なんて言葉知ってるんだよ?」
「アイアスがな。教えてくれた」
「あの味覚音痴!いっぺん殴る!!!」
辛味と甘味に酸味にくらいにしか反応しない、あの毒舌はいっぺん殴るべきだそうに違いない
「全く、少しは落ち着け馬鹿者」
「ああ……っておめえ!なに食ってんだよ!?」
「何って、八神龍也が置いていったチーズケーキだが?」
「数少なくなって来てるのに食うんじゃねえよ!ああーもういいあたしも食う」
冷蔵庫から龍也が置いて行ったケーキの箱から
「やっぱ、チョコだろ、チョコ」
チョコケーキを取り出し、ふと隣を見ると
『エリスの食べるな!!』
とご丁寧に看板がかかったクリーム餡蜜が
「これって?」
「ツバキ殿がやっていかれた」
殿って何だよ、殿ってお前どこの人間だよ、スペイン人
「そうよ、だから食べちゃ駄目よ?医療室でもエリスちゃんが気にしてたから」
「「うわあッ!?」」
突然聞こえたツバキさんの声に驚き、振り返ると
「ほう、悪くない」
「でしょ?あの子。芸達者よねー」
アッシュブロンドの髪をオールバックにした男性とツバキさんが普通にケーキを食べていた
「「……え?」」
何で居るの?ツバキさんは判る、だが
「何故そんな不思議そうな顔をする。シェルニカ」
「いや……オクトさん?何で日本に?」
ドイツ軍に所属し男性でありながら中佐の地位を持つ。ツバキさんの夫である。オクト・V・アマノミヤが居ることに驚きながら尋ねると
「エリスが怪我をしたと聞いて黙っていられると思うか?」
「あ、はい。返答ありがとうございます、よく判りました」
ツバキさんもオクトさんもある共通点がある。エリス様を溺愛してると言う点だ
「しかし、こうして見ると八神龍也と言うのは中々に出来る奴だな」
「そうね。今回は徒手空拳だけど、剣を使わせるともっと凄いわよ」
モニターを見る2人に
「えと、来た理由って何なんですか?」
アリーナを見たいのなら管制室にでも行けば良い。ここに来たと言うことは何か理由があるはず。そう思って尋ねると
「トーナメントでの黒い亡霊の襲撃の映像を見たい。IS学園は特記事項として閲覧を許可しなかったのでな」
「私も持ち出せたのってこれだけなのよね」
空の薬莢が2つ、それと砕けたISコアの破片?でもあれって
「あのツバキ殿、それ色がおかしくないですか?」
赤黒くまるで血のような輝きを持つISコアは見る角度によってその色を変え続けている
「そっ。それがおかしいから画像で見に来たの。この破片とこの薬莢が何なのか知りたいからね」
何か危ない橋のような……まっ今更か、親も名も知らず戦場を渡り歩いていたあたしを保護した、更識家。そして目的も無くただ与えられた事をこなすあたしに自分の意思で考える事を教えてくれた、ツバキさん。あたしは更識家とアマノミヤ家の為に動く。もうずっと前にそう決めた。今更危ない橋だから退くだなんてことはしない
「判りましたIS学園に提出する前にコピーしてます。少し画像は荒いですけど……そこは勘弁してください」
あたしは隠していたアリーナの監視カメラのデータを再生し始めた
「強いねースバル!!」
「ずっと頑張ってましたからね」
ははははッ!!!
バンバンと背中を叩きあう、シェンとスバルを見ながらあたしは
「つうか、2対1でノーダメージどういうことよ?」
あの模擬戦は30分ほどで終った、スバル・ノーヴェ。(スバル・ナカジマとノーヴェ・スカリエッティの体力切れとなり終了になった)
「馴れだな、馴れ。私は1対多の戦い方に慣れてるからな」
「いや。私も慣れていると言う自信はあるが。お前のは完成度が高いぞ。龍也」
ラウラがそう言うと龍也は遠い目をして
「昔、武術の奥義の制空権を身に付けようとして1対40とかの組み手をしたのが良かったのかもしれない。なんせあっちは皆。刀を持ってたから」
「「「「お前は何をしてるんだ!!!」」」」
本当龍也って何やってきたのよ。
「うーん、いやほら。あの当時は目見えなかったし。腕ないし、それをフォローする答えがそれだったてことで」
「なぁ箒。俺が強くなるには龍也みたいな無茶をしないと駄目なのか?」
「一夏!? それは違うぞ! 生き死にを賭けた修行は止めろ!」
箒ががくがくと肩を揺するが一夏は
「それも1つの方法か」
「あんたはアホかッ!!」
いっぺん殴って正気に戻そう。思いっきり踏み込み一夏の横っ面に拳を叩き込む
「はっ!? お、俺は !? つうか右頬がむちゃくちゃ痛いんだけど何があった!?」
「何もないわ、ちょっとどっかの馬鹿が変な結論だしそうだったんでそれを引き戻しただけよ」
拳を振る……硬かった、思ったより手首に反動が来て痺れてしまっている
「そうか、お前はそう言うのが好きなのか簪」
「う、うん、おかしいかな? チンクさん」
「いいや、そうは思わない。私の父もそんな感じだ、暇があれば変なロボを作ってる、だからそう言うのが好きと言うのは理解できる」
簪が和らいだ笑みで笑い
「初めて理解された……なんか嬉しい」
「そうか。では友達だな、私とお前は」
「うん、うん! 友達」
……えーと、龍也の知り合いって皆あんなん?
「なぁ? 何でお前リボン手にまいてんの?」
「うえ!? えっと、これはその……あの」
ノーヴェが物凄い勢いできょどってる、それであたしとシェンの中で何かが光った気がした
「もしかして~好きな人からのプレゼントだったりして~」
「そうなの? 誰よ。教えなさいよ」
「おい!? なんだその絶妙なコンビネーション!?」
逃がせないように2人で問い詰める。龍也は
「だから、ここで剣を振る時に力任せにするから次の行動が遅れるんだ」
「む。そうなのか……」
「力任せだとその分身体が硬くなる。しなやかに振るうべき」
分析が得意なクリスと一緒にヴィクトリアと話をしてる、で一夏は
「はい、一夏。これ食べてね♪」
「あ、うん。ありがとうシャルロット」
「へへ♪」
シャルロットに色々やってもらって締まりのない顔をしてる。うん。後で死刑決定。ていうか気付きなさいよ。シャルロットはどう見てもあたし側の人間よ。同属だから判る者。必要ならば手段を選ばない人間だと、まそれは後で良いわ今はノーヴェを……
「まぁ。ほら言っちゃおうゼ?」
「大丈夫♪ だいじょーぶっ♪ 馬鹿になんかしないから」
「信じられねえよ! つうか来るな! 目が怖いんだよ!!!」
ノーヴェがそう言って逃げようとするが、あたし。弥生。シェンからどうやって逃げれると言うのだ?
「あれ? まだ龍也さんに貰ったリボンしてないの? ノーヴェ、龍也さんにみ……もがもが」
「黙れええええッ!! この天然馬鹿!!!」
ノーヴェが赤面しスバルの口を塞ぐが遅い
「へえーノーヴェは龍也君狙いか~」
「まぁ判らんでもないか。龍也格良いしな」
「ちょっとハードル高そうだけどね」
魔王×2のハードルはとても高いと思うが、本人がやる気なら大丈夫。あたしも越えるあのブラコン・ヤンデレを!
「ちなみに私も好きですよ、あとチンクさん……もごもご」
「てめえは頭沸いてんのか!?」
へー今日来た3人も龍也狙いかー、これは良い事聞いたかも。
「でね。私の知ってる限りでは16人くらい龍也さんのことが好きな人がいますよ?」
「……え? 何人って?」
聞き違いだろ?幾らなんでも二桁はあり得ない
「いや。だから16人」
「どこのハーレム王だ」
「……16人かぁ……」
シェンがぼそっと呟く、んん?もしかして……まあ良いや、一夏に惹かれるくらいなら龍也の方に行って貰えば良い
「龍也さんの妹さん達がえーと。4人で、ノーヴェの姉妹が6人で、後は私とギン姉とティアナになのはさんたちで……ああ、15人でしたね」
「呼んだ?」
「いえ。呼んでないですよ?」
龍也がこっちを向いて尋ね。直ぐまた簪やヴィクトリアと話してる
「モテモテ?」
「モテモテッて言うより。うーん?なんて言えば良いのかなノーヴェ?」
「龍也は困ってる人を見捨てられない。それでどんどん人を惹き付ける。龍也は人誑しって言うのかな?こう、暖かいんだよ……龍也の近くは」
よく判らない例えだが、人誑しと言うのは判る。
「1回あの暖かい場所知っちゃうと離れたくなくなるんだよ」
「春の陽だまり見たいに暖かいんだよな」
きっと2人が言ってるのはまだあたしが知らない龍也の一面と言う事になるんだろう。それを知って2人は惹かれたのだろう
「ふーん、じゃあがんばんなさいよ。頑張ってあの朴念仁に気付かせてやれば良いのよ、自分達の良さをさ」
なーんかこの2人、気に入ったかも……それはきっとあたしと同じ想いを得てその人を好きになった、2人だからだろう……あたしも一夏の傍は暖かくて心地良い……その暖かさの正体はきっと優しさなのだと思う……
「いやー結構良い人達でしたね」
「まぁな、ちょっと魔王化しかけてるのが居たけどな」
のほほんと喋るノーヴェとスバルを見ていると
「はい、終ったよ。チンク姉」
「ご苦労、セイン」
今回私達が3人で来たのは理由がある、IS学園の地下にあると言う研究施設そこにセインを潜り込ませる為に目くらましとしての役割だ
「回収は?」
「んーカートリッジの空薬莢が1個とネクロの細胞が付着してると思えるなんかの部品が2個かな?」
ごそごそと魔力で構成されたケージの中に収納されたものを見せるセイン。確かにこの黒く変色した部品には魔力を感じるが、ネクロの物かはわからない
「あーでもなー、私も龍也に会いたかったなー。頭とかなでて……ふえ?」
「よし、よし、良い子だセイン」
IS学園に居るはずの八神が本来の姿で現れ、セインの頭を優しく撫でていた
「ふん、幻術か?」
「IS学園のほうにな。ずっと幻術維持も疲れるんだよ」
肩を竦める八神にセインは
「頑張ったんだよ! 苦手なハッキングとかももっと褒めて」
「よしよし。セインは頑張った」
にへらとだらしない顔で笑うセイン。近いうちに完全に落ちるかも知れない。まぁそれはそれで良いのかもしれないが
「それと態々来てくれてありがとう、チンク、スバル、ノーヴェ」
そのままよしよしと私達の頭も撫でる八神。こういう何気なさはきっと自分よりも幼い妹を褒めるような感覚なのかもしれないが
(何時までもそれは嫌だな)
何時までもそれは嫌だ、それはきっと六課で八神の事を想っている全員が感じている事だろう
「チンク、ジェイルに伝えておいてくれ。どうもこの世界でのネクロとの戦いは激しくなると」
「お前らしくないな、なぜそこまでこの世界のネクロを危惧する?」
私がそう尋ねると八神は
「カートリッジシステム内臓型の新種のネクロ。それにガセかも知れんが、人からネクロ化した者も居るらしい」
「? 人からって、普通なんじゃ?」
スバルがそう尋ねると八神は
「基本は遺体や魂からネクロは生まれる。しかし例外的に高い魔力や身体能力を持つ者にネクロの細胞を植え付けネクロ化する方法がある。シグナムがそれをやられて体調を崩していたんだろう?」
確かにパンデモニウム事変の時、シグナムはネクロ化させられかけ、半年の間魔力を使えず、筋力も落ち杖を使っていた
「私自身10年の間に2・3回しか遭遇してないが、恐ろしく強かった。どうもそのタイプが居るらしくてな。警戒を強める必要がある」
八神がそう言うのなら装備の充実を父さんに言っておく必要があるだろう
「悪いが頼む。また近いうちに奴らは仕掛けてくる、そんな気がするんだ」
「判った。必ず伝えておく、ではな八神」
はやてにも報告しないといけない、このままダラダラと長話をするのもよくない。私はそう判断し話を切り上げ転送ポートへと向かった
「むうう……身体が重い」
治癒魔法で回復させれば良いのだが、筋疲労まで治すと流石に怪しまれる。そこは我慢だ、あと投与した医療用ナノマシンは結論から言って私には合わない事が判った。
どうも私の中の高密度の魔力にナノマシンが耐え切れず消滅してしまったようだ。なのでナノマシンで回復してるように見せかけるためにゆっくりと再生させた
「うーむむ、治癒魔法に如何に依存していたか判るな」
体の重さとダルさを感じながら首を鳴らしていると、ドアをノックする音が聞こえ
「龍也君。居る?」
「どうぞ」
この声は楯無だ、包帯を巻きなおしてる振りをしながら出迎えると
「事情聴取の準備が整ったらしいの、悪いけど来てくれるかしら?」
「判った。少し待ってくれ」
包帯を巻きかえ立ち上がる
「悪いわね、こっちよ」
楯無に先導され部屋を出ると
「よっ」
「……」
シェルニカとアイアスが居て私の背後を取る
「まるで犯罪者のような扱いだな?」
「気を悪くしないで、そう言う指示なのよ」
申し訳無いと言う顔をする楯無に
「まっ、良いがね。今の自分の立場は理解してるつもりだからな」
「そう言ってくれると気が楽だわ」
そう笑う楯無に先導され私はIS学園の地下へと連れて行かれた
「悪いな、八神こんなところに呼び出して」
「いいえ。構いませんよ。警戒されて当然ですからね私は」
そこは多数の機械に囲まれた研究室のようなフロアだった
「話が終われば戻ってくれて構わないわ」
ツバキさんか。これで部屋には織斑先生・ツバキさん。フレイア・シェルニカ・アイアスと戦闘力の高い面々が居る、まぁ普通の人間相手なら充分な戦力だろう
「では聞こう、お前のISは何だ? 他のISの武装のコピー、それに在り得ない筈の単一技能の重複。一体誰が作った?」
「話は答えますよ?でもね……非礼が過ぎるんじゃないですかね?ここまで犯罪者同然に連れて来られ、こうして囲まれるのも良いでしょう。しかしね? 姿を隠して監視するような、人間の前で話すことは無いですよ。そこにいる2人も顔を見せるのが礼儀ってもんじゃないですか?」
闇の中から感じる2つの気配、どちらも常人の者ではない、戦闘経験者もしくは人を殺めた事のある人間だ
「それは……」
「いざ、私が逃げ出した時の備えと言うのなら無意味だ、私はここに居る全員を倒して逃げる事が出来る自信がある。偉そうですが……あまり私を怒らせないで欲しい。なのはとフェイトに課題を出して遠ざけ、私1人にすると言う根回しにも腹を立てず、私は貴方達に従った。だがこれ以上の非礼は流石に度が過ぎるのでは?」
事実私にはそれだけの力がある。仮に魔力変換素質の雷を使えばショック死させることも出来れば。炎で火達磨にすることも出来る。僅かばかり殺気を放ちながらいうと
「失礼した、八神龍也君。非礼を詫びよう」
「私も謝罪をさせていただくよ、八神君」
闇の中から姿を見せたのは
「轡木さんでしたね? 確か……事務員といいつつその実IS学園の最高責任者。貴方が居られる事は判っていました。貴方は?」
「オクト・V・アマノミヤ……エリスの父でドイツ軍中佐だ」
エリスの……なるほど道理でエリスの動きが軍属の物な訳だ
「さて、私からも非礼は詫びさせてもらう、そして改めて教えてくれ。お前のISは何だ?」
「私専用IS インフィニティア。世代は判りませんが、現存するISでは止めれないでしょうね。だってインフィニティアは戦ったISの武装・単一技能をコピーする。単一技能を持つISですから」
まぁ本当は私の右目の効果なのだが、それは言わないで置こう
「だがそれだけの性能、何らかのデメリットがあると思うのだけど?」
「あれは私にしか動かせず、他の人間が触れば脳の回路を焼ききられ廃人と化すでしょう。そう言うISなんです」
「では何故? 君は動かせるんだ? 君とて条件は一緒だろう?」
オクトさんに言われた私は
「前の私の戦闘記録は見ていただけましたね?臓器は外しつつも腹を貫通するだけの傷、さらに4分の2の血液を失い。動けれるレベルの怪我ではなかった筈です」
「ええ、確かに医学的に見れば君は腹を貫かれた時点でもう動けない筈ですから」
轡木さんにそういわれた私は
「ええ、そうでしょうね。でもね……人として欠陥を持った人間ならそんなのは些細な問題だ」
「欠陥?」
「私は死が怖くない、痛みや自らの死に対する認識が無いんですよ。だから私は自分がどうなろうと動く事が出来る。そういう壊れた人間だからインフィニティアを動かせる。それでは説明が足りないですかな?」
顔を強張らせる織斑先生達は
「そんな危険なISの使用許可は出せない。コアを凍結する」
「ははは、思っても無い事は言っては駄目ですよ?あの化け物と戦うのにインフィニティアは絶対必要、その高出力の正体を分析し他のISに流用したいのでしょう?言っておきます、止めた方が良い貴重なISコアが2度と使い物になら無くなりますよ?」
インフィニティアの出力の正体は魔力とデバイスコア。そう言う面で言えば姿こそISだが、インフィニティアはデバイスなのだ。根本的に技術が違う流用など出来る訳が無い
「それほどの危険な技術と言うことかしら?」
「いえ、全く概念の違う技術だから流用できないと言ってるんですよ?」
「どう違うのかしら?」
「カバラ……セフィロトの樹……錬金術。インフィニティアを作った科学者はそういった物の研究者でしてね。科学と魔術は違う物とし自らの研究結果の集大成としてインフィニティアを造った。そして今の時代に魔術を信じる者など居ない。そう言う面で概念が違うと言ってるんです」
「……私も少し昔調べた事があったけど。断念したわね。なるほど判り易い説明どうも」
そう笑うツバキさんはこほんと咳払いし
「じゃあ次の質問。あの化け物は明らかに君を狙っていたわ。何か心当たりは?」
「さぁ? 皆目見当がつきませんね」
これは本当の事だ。あいつらがこのタイミングで仕掛けてきた意味が判らない。手駒も少なく、上位ネクロも居ない状態で私に仕掛けてきた意味が判らない
「なるほどそれでは仕方ないな、やつらの目的が判らないのなら仕方ない」
ちっ、思いのほか鋭いもう少しぼやかすべきだった。言葉の中から違和感を感じとられた。最強の名は伊達ではないか
「ええ、すいませんね。今はお力になれません。今はね」
「いや構わんさ。今はなんだろう? 今は?」
騙しあい・腹の探り合い。適度に情報を与えるのも必要な事だ
「では最後に八神君。貴方は私達の敵ですか?」
「違う、私は貴方達の味方だ。そして目的がありここに居る、しかし誓いましょう。私はここの学園の生徒を傷つける気も無ければ裏切る気も無い。しかし今は話せません」
「誓うとは何にですか?」
「私の誇りと魂に」
静まり返る部屋の中でオクトさんが笑い出した
「誇りと魂にか、それは充分に信じるに値するな。なんせお前の目は子供の物じゃない。ならば私はお前の言葉と目を信じよう」
「オクトが信じるのなら私も。そして待つわ貴方が話してくれるのを」
「ご理解感謝します。そしてこちらからも1つお願いが」
「なんですかね?八神君」
「インフィニティア。これは各国に見せるには余りに過ぎたISです。しかし不本意ながら私は各国のスカウトの前でインフィニティアを使ってしまった。となると各国のスカウトがうるさいでしょう。それを何とかしていただきたい」
「ふーむ。良いでしょう、暫くは八神君に掛かるスカウトはIS審議会を通して止めていただく様に伝えましょう。本人が怪我をしていると言う理由でね」
これで何とか暫くは今まで通りに動けるだろう
「それでは寮に戻っていただいて結構です。えーと楯無君、おくって……」
「いえ、私が行きます」
「ツバキさんがですか?しかし貴女にはまだ仕事が」
「直ぐに戻りますので。こっちよ龍也君」
ツバキさんに案内されエレベータに戻る
「エリスちゃんに聞いたけど。頬を叩いて叱ったんですって?」
むうう……なんと言えば
「ああ、良いのよ怒ってるわけじゃないわ。エリスちゃんが最近良く話をしてくれるの、悩みとかね?前までのエリスちゃんはどこか私とオクトに遠慮があって悩みなんか言ってくれなかった。でも最近はそう言う話もしてくれて……君がエリスちゃんを変えてくれたのかなって思うの
」
「そんな大層な事はしてないですけどね?」
「ううん、エリスちゃんにとって叱られたのは嬉しかったのよ、私達は接し方を間違えてたのかもね。時に怒る事も大事なのね」
そう笑うツバキさんは
「だから私はエリスちゃんが君を信じる限り、私も信じる……だけど君がエリスちゃんを裏切れば……私は貴方を一生許さない」
「肝に銘じておきます。では失礼を」
閉まって行くエレベーターを見ながら
「夜天の守護者」
「え?」
「ヒントですよ。私の正体に近付く為のね?ではおやすみなさい」
地下に戻っていくエレベーターから背を向け
「さて。辿り着けるかな?ツバキさんは」
偽造履歴が破られたのは知ってる、だがそれはあくまで表面上の物、更に奥くがありそこに私達の本当の情報が記されている
「時間はあまり残されてないような気がするからな」
今回の襲撃がもし、威力偵察だとしたら?近いうち本隊が出てくるはずだ。その時に供え準備をする必要がある
「私はまだ負けられんのさ」
ネクロにもこの世界の事情にも負けるつもりは無い、なぜなら私は全てを護ると決めたのだから
第36話に続く
ちょっと早足だったかな?と思うんですけど正直これが限界でした、要修行ですね。次回はエリスさんの復帰と簪さんあたりの話をしようと思います
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします