尚今回は「IS」「バカテス」「お姫様」「EXS」「番外編2つ」の計6個の更新です。時間があれば他のもみていただけると嬉しいです
第39話
「はやて君……いい加減、私を簀巻きにして引きずるの止めてもらえ……「黙れ」はい、すいません」
六課に所属する魔導師達は額から大粒の汗を流しながら集まり。嵐の過ぎ去るのを待っていた
「部隊長が切れてますね」
「ええ、チンク姉様の報告が原因でしょう」
普段は犬猿の仲のティアナとセッテでさえ協力体制にある、六課での暗黙のルール。ブチ切れ状態の八神はやてに逆らうな……言動と考え方こそあれだが、その戦闘能力は、はやては龍也の次に強い。しかもあの状態では魔法を放つ事に何の躊躇いもないだろう。だって……
「ろ、労災出るんですか……これ?」
「さ、さあな……出ると良いなあ……」
不機嫌だという理由だけでラグナロクを喰らい壁にめり込んでいる、ヴァイスとグリフィスがボロボロの状態で労災について話しているからだ
「はよ、私のIS作れ」
「いやね? 君の希望通りにはもう少し時間が」
無言で放たれた閃光が六課の壁を打ち抜く
「次は……頭や」
「すぐ作ります!」
「んじゃ、ラボ行くで」
「痛たたた!! 通路の壁が頭に!? あが!? 階段の段差がああ!?」
鈍い音と悲鳴と共に薄れていく魔王の瘴気。それが消えた所で固まっていた六課メンバーはゆっくりと立ち上がり。身体をほぐしながら
「えーと、レジアス中将に修理費まだ経費で下りるか聞かないと」
「そうだな。何だかんだに半壊してるもんな。演習場」
六課の魔導師は皆たくましい、だって大半が魔王で怒れば魔法をぶっ放する連中ばかりなのだから……
「うーし、手分けして片付けなー、エリオとかは壁に埋まってるヴァイスとグリフィス救助してくれ。私たちはとりあえず半壊した通路と演習場を片付けるぞー」
ヴィータの号令と共に散っていく六課メンバー。これが彼女等の日常である……
「なぁ。なのは、今日凄い怖い夢見たよ」
「どんな夢ですか?」
「半壊した六課と高笑いするはやて」
「……私も見たよ」
部屋を沈黙が包み込む……
「はやてって人の夢操作できたっけ?」
「……どうだったかな? 闇と風を応用すればどうとか言ってた様な……」
はやてはなにがあったのか知らんが12属性の複合、しかもそれらを組み合わせる事で色んなバリエーションを持った魔法を独自に作り出している。もしかすると夢に関するのも使えるのかも
「まぁ……はやてははやてで忙しいし、来ないだろ?」
そう言いながら靴を履く
「紐切れた」
「私も……」
「新品なのに……」
……まぁ何かの偶然だろ。そう笑い予備の靴を取り出しそれを履いて部屋を出る
「「「ニャー!ニャー!!!」」」
「く、黒猫…」
どこから迷い込んだのか黒いネコが3匹鳴いてる
「「「……不吉すぎる」」」
私達の声が重なった。どう考えても不吉な出来事の予兆にしか思えない。私達は脳裏を過ぎる今朝の夢を思い出しながら、教室へ向かった
「おはようございます。今日は……また転入生の紹介を……したいと思います」
ルルーと涙を流す山田先生だ、また寮の部屋の割り振りで悩まされるのだろう。頑張ってくださいと言いたいが。廊下から黒い瘴気が見える
「……大魔王。襲来?」
「言うな。まだ現実として認められない」
誰にだって認めたくない現実がある。まだ少し時間が欲しい
「でははいって……あれ?」
山田先生が扉を開けるがそこに居る筈の人物がおらず首を傾げるのが見える。とそこまで認識したところで
「うーん。ラブーッ!!!」
「ふぐう!? 肋骨が!」
メキメキと軋む肋骨と聞きおぼえのある声。痛みに耐えながら視線だけで後ろを見ると案の定。はやての姿がそこにある
「ぐあっ!? 私をへし折る気か! お前は」
「とりあえず肋骨の1~2本は折る気や」
「離れろーッ!!!」
「嫌や♪」
声は可愛らしいが腕に込められる力はそんなものじゃない、骨を折ろうとする明確な悪意を感じる。激痛に耐えながらはやてを引き離そうとするが魔力で強化してるのか、引き離すのは難しい
「え?え?知り合い?」
「凄く親しそうだけど」
これが親しそうに見えるやつらは全員眼科に行けええ!!!
「んー好きー大好き」
「マジで折れる! 骨が軋んでる!!!」
尋常じゃない力だ。こういう時頼りになるのは
「はやてちゃん! 離れる!」
「折るのは駄目だよ! 流石に!」
なのはとフェイトが止めに入ろうとした瞬間。はやては私を締め上げるのを止め。流れるような足捌きで懐から2本のナイフを取り出し
「あんたらがおって。なんで義手が壊れた? なんで怪我しとる?」
周囲が凍りついたように静まり返る。はやての本気の殺気に当てられて硬直しているのだ
「死ぬか?」
「やーめーとーけ」
はやての頭に手を置きそのまま撫でる
「幼馴染だろ? 簡単に殺すとか言うな」
「……でも」
「でも、何もない。ほらナイフしまう」
「うん」
どこにしまってるのか判らないが、はやての手に今ナイフはない。それに安心していると
「んー」
「何してる?」
目を閉じ爪先立ちのはやてにそう尋ねると
「再会のチューを」
頭痛が……最初からエンジン全開にも程がある
「お前に倫理観はないのか?」
「倫理観? なにそれ? おいしいんか?」
頭痛が更に酷くなった
「はぁ。頭痛が」
「それはきっと恋」
「絶対に違う」
このやりとりも懐かしい物だ。だがはやての思惑に乗る気はない
「とっとと自己紹介しろ」
「チューしたらする」
「お前はアホか!?」
話が丸で噛み合っていない……それに周りの女生徒と一夏の視線が痛い。その理由は判ってるんだがな
「チュー!」
「いい加減にしろよ」
はやての額を抑えるがはやては無理にでも言いたげに力を込めて近付いてくる。グググ……押して押し返されての攻防を繰り返す。
「あの、そういうのは自室で……」
「黙れ。死ね、殺すぞ」
目に光なし、殺気MAX、ナイフ装備のはやてに睨まれた山田先生は
「は、はい!!すいませんでした!」
殺し屋の目で睨むはやてに1秒で山田先生は降参した
「愛の証を~」
周りにひそひそ話も辛いし。これ以上はやての暴走を進めさせると何をしでかすか判らん
「いい加減にしろよ!! はやて!! 私とお前は兄妹だろうがーッ!!!!」
部屋を揺るがすほどの叫びにクラスの面々がびくりと身を竦めた。ついでになのはとフェイトは至近距離でその叫びを聞いてふらふらしてるがどうでも良い。変な誤解が広がる前にそれを断つのが重要だ
「ちぇー、ネタバレ早いなー。つまらへん」
ぶつくさ言いながら教卓に向かうはやてを見ながら。椅子に座り
(はぁ……さらば平和な学園生活よ)
平穏と幸福が全力で走り去る音を聞きながら。私は大きくため息を吐いた……窓から見た空は憎いほどに青かった……
あれが? 龍也の妹? 俺は教卓の前に立つ女生徒を見て首をかしげた。龍也と違い茶色の髪に人の良い笑みを浮かべているが。さっきの行動を見ると相当凶悪な性格の様だが
「八神はやてです。名前から判るとおり兄ちゃんの妹です。好きな者は兄ちゃんと嫌いなのは兄ちゃんを奪おうとするもの、あと兄ちゃんに色目使う女は皆死ね、って思ってます」
……すっげえ。目が本気だ。本気でそう思ってる目だ
「特技は投げナイフ、10本までなら物陰に隠れてる人間にも当てれるで」
危険人物だ。しかも一級品の……
「というわけでよろしゅう。あとなのはちゃんとフェイトちゃんは1回死ね」
凄い、全然動きが見えなかった気が付いたらはやてさんはなのはとフェイとの後ろにいた
「「なんで!?」」
そう叫ぶなのはとフェイトの首根っこを掴んだはやてさんは
「HAHAHA、ちょっと気分悪いんで保健室行って来ますね」
「や、やめ! ひきずらないで!! 暗いところは嫌だ!!」
「た、助けて!!! 誰か!!」
だが、誰も目を合わせない。勿論龍也でさえ目を逸らしている
「ナイフは不味いから……とりあえず骨は5~10本は覚悟してな?」
「「こ、殺されるーッ!!!」
その絶叫と共になのは達の姿は消え、代わりに鈍い音と悲鳴が……
「では授業を……」
山田先生も見捨てるという選択を取った。それは教師としては間違いだが人間としては正解だ。 なんでかって?
「速い!? 逃げ切れない!?」
「なんで、バーサーカーモードなのーッ!?」
あの絶叫と走る音を聞けば誰だって命は惜しいさ。
~休憩時間~
「「裏切り者……今日の訓練で地獄を見せてやる」」
机に突っ伏し8割がた魂が出てるのにもかかわらず、憎悪の目で俺を見るなのはとフェイト。今日の訓練逃げようかな?
「逃げたら追いかけて殺す」
うん、逃げ道ないね、死なない程度に手加減して貰えると良いんだけど
「うーん、ラブー」
「はぁ頭痛が」
幸せそうなはやてさんに抱きつかれ頭を抱える龍也、その顔は疲労一色だ
「えーと、はやてさん?」
「んーはやてで良いで」
龍也の背中に顔を埋め幸せそうなはやてに
「えーと、ずっとこんな感じ?」
「そうや。兄ちゃんがおれば私ほかになんもいらんし、こうしてれば幸せやし」
箒達が沈黙し龍也を見ると。龍也は
「はやては世間の常識と倫理に喧嘩を売ってるだけだ、何そのうち兄離れするさ。……望み薄だがな……」
その諦観と絶望が入り混じった声に俺達は何も言えなかった
「ふう、良いんだ、笑え。笑えよ」
目に光のない顔で笑えと言う龍也
「すまん。とてもではないが笑えん」
ラウラがそう言った、とても笑える状況ではない。俺も似たような境遇だし
「そういや兄ちゃん。簪いうのとエリスいうのは誰や?」
「?簪とエリスがどうした?」
「いや。チンクさんがきっと惚れてる言うてたからいっぺん地獄に送ろうと」
目に光がない本気で臨死体験させる気だ
「やめんか。ていうか惚れるとかどういう意味だ?」
「兄ちゃんが永遠に知らんで良い言葉や」
「そうか。なら聞かないで良いな」
それで良いのか!? 龍也は!?
「よいしょっと」
「何故私の耳をふさぐ?」
「ちょっとだけやから」
はやてに耳を塞がれた龍也は不思議そうな顔をしながらも本を取り出し読み始めた。
「ふっふー、私の計画の逆・光源氏は大成功や。ありとあらゆる面で完璧、多少天然も良いスパイスやろ? ちなみに私が小学校1年の時から計画がスタートしました」
なにやってんの!? この人!?
「まぁ自分好みに仕立てるのも大事やと思うんやけど。どう思う? 私とよう似とるあんたなら判らんか? シャルロット」
にいと不安感を煽る笑みを浮かべるはやてにシャルロットは
「判ります!! その考え実に素晴らしいです!!」
共感してる!? シャルロットがはやての考え方に共感してる!?
「今からでも間に合うかしら?」
「間に合うやろ? えーと」
「凰 鈴音、 鈴で良いわ。あたしもはやてって呼ぶし。で? その逆光源氏はどうすれば良いのかしら?」
鈴までもが!?
「参考までに聞いておこうか」
「ええ、あくまで参考としてですけど」
「知識は多いほうが良い」
皆まで!? なにこのカリスマ性!? やっぱ龍也の妹だけあるわこのカリスマ性! 龍也とは全然方向性違うけど! あと
「私は何時まで耳塞がれてるんだ?」
のんびりとした口調の龍也が腹立つ! っていうか
「本人の前でそういう話を……「ちょっと寝とれ」はぐっ!?」
神速の地獄突きを喰らい俺の意識は闇に沈んだ……
「ちょっ!? いきなり地獄突きって!? 大丈夫一夏君?」
心配そうなシェンさんの声が聞こえたのが唯一の俺の救いだった……
授業を終え。食堂に集まり下らない世間話をしていた、今日もアリーナが使用禁止なので致し方ない。
「はやても専用機あるの?」
「あるけど、調整中。まだ手元にはないんや、今度の臨海学校の時に持ってきてくれるらしいけどな」
はやては言動こそあれだが意外と社交性があり。友人を作るのが上手い、それが魔王の因子を持つタイプならすぐにだ。つまりはやては鈴とシャルロットと凄く仲良くなっていた
「俺、すっげえ怖い。はやてと千冬姉があったらと思うと」
「まぁ間違いなく魔王化が進むな。かなりの速さで」
「ですよねー。だってもう鈴とシャルロットの目に光ないからな」
凄い勢いで鈴とシャルロットの魔王化が進行しているが、それは一夏の問題で私には関係ない
「まぁ、箒とかが魔王化しないように気をつけとけ」
「なにをどう気をつけろと?」
うん。具体的には何にも言えんな。まぁ十中八九箒達も魔王化すると見て良いだろう。魔王化は伝染するし
「龍也さーん。頭痛いんです、頭撫でてください」
「タンコブが……」
魔王強襲のダメージが抜け切ってないのか涙目のなのはとフェイトに
「いたいのいたいのとんでけー」
弱めの治癒魔法を施しながらそういう、アギトとか雷華達によくやっている。子供は元気な方が良いが怪我をするのは可哀想だし
「変なところでお前子供っぽいな」
まぁこれは癖の様なものだからそういわれると恥ずかしいが今更治らん
「あ、龍也君」
「どうも、失礼しますよ」
簪とエリスも暇なのか食堂に来ていたが、間が悪すぎる……恐らくチンクから2人の特徴を聞いていたはやてはシャルロットと鈴との話を止めさっと立ち上がり
「どうも、はじめまして。八神はやてです、今日転入してきました。よろしゅうな」
笑っているが笑っていない。はやてはこの2人を決して認めはしないだろう、はやては容姿や助けられたという理由だけで自分の他に、私に近寄る女性が嫌いだ、だからこうして威圧をかけている。少しだけ目に魔力を込めているので暗示でもかけるつもりだろう
「どうも。エリス・V・アマノミヤです。 はやてとお呼びしても?」
「え、えと……さ、更識簪です」
しかし2人は臆せず名前を名乗った。それにはやては一瞬驚きの表情を見せたがすぐに笑みを浮かべ
「簪とエリスやね。私もそうやって呼ぶではやてって呼んでくれたら良いで」
「ええ、では宜しくお願いしますね」
「えと、はやて……さん」
エリスは真っ向からはやてを見つめ、簪は少し気後れした素振りを見せながらもぺこりと会釈した。
「ん、よろしゅう」
人の良い笑みを浮かべながらもどこか引っ掛かるという表情をしていたが
「やっほー、お菓子持ってきたよ~」
「私もだ」
「……ビクリ」
シェンとヴィクトリアがお菓子を持ってきて座談会に加わる。クリスだけは私達同様またはやての違和感に気付いたようで、少しビクビクしながらラウラの横に腰掛、私たちを横目で見ていた。どうもこのままなし崩し的にはやてとエリスとかの会話は消え。皆共通の話題になりそうだ。それを感じ取ったはやては魔力を霧散させ椅子に座った。感情的に見えがちだがはやては仮にも部隊を持つ隊長格。引き際はちゃんと見極めている
「シェン。よくお菓子食べる気になるね。あのシュークリーム食べて」
「今日でお菓子は最後。後は地獄のダイエットをするだけ。今日だけは思いっきり食べる」
覚悟を決めた表情のシェン達を見て私は
(少しはしゃぎすぎたか)
100%太るシュークリームは少しやりすぎたかと後悔しながら紅茶を飲んだ。
「で? 暗示掛けたのか?」
「んー掛けるつもりやったんやけど。レジストされた」
夕食後、はやても何食わぬ顔で私たちの部屋に私物を持ち込み。寝る用意を整えていた。あえてそのことには突っ込まず話を切り出すと、はやては不思議そうな顔でそう言った
「レジストされた? ありえんだろ? あの2人には魔法の素質はないぞ?」
「うん。そうやけど……弾かれたんや……魔力の練りこみが甘かったせいやと思うで」
魔力対抗のない人間を甘く見ていたということか
「まぁそうなるか、明日も早いし寝よう、この囲いの中に入るなよ?」
「チッ」
「舌打ちするな、はやて。明日からはIS学園で暮らすんだ。ちゃんと学生らしい振る舞いをすること」
「具体的には? 投げナイフとか関節技はOK?」
「ちょっとお前正座」
「はい……」
どうもはやてには少しIS学園で生活する上の注意をしておかないと不味いようだ。六課と同じ感覚でいられると不味い
(しかし。なぜエリスと簪がレジスト出来たんだ?)
魔素が薄い世界=0ではない……
(考えすぎか? 仮に魔導師の素質があったら気付くはずだしな)
私は自分の考えすぎだなと思い、そのことを思考の隅に追いやった。しかしそれが間違いであるという事に気付くのはそう遠い先の話ではない……
夢を見る……
赤い大地と無数の剣の突き立った世界を……
(またこの夢……)
ヤタガラスが暴走してから3日に1度はこの夢を見る。一体これが何を意味するのかわからない
(そして夢はいつもここで終わる)
黄金の甲冑の青年が振り返り、一際強い風が吹きつけるその瞬間に私の意識は夢から覚めるのだが。
(しかし、この剣や槍は一体なんでしょう?)
意識が消えるまでの僅かな時間、あたりに突き立った剣や槍を見る、どれも美しい装飾を施され美しい輝きを放っている。その中に1本だけあるひび割れ、錆びた剣がやけに目に止まる、周りの美しい剣や槍と違い無骨で何の輝きもないこの剣に私は目を奪われ。その剣の柄に手を掛けたところで私の意識はこの赤い大地から消えた……
(この夢は……何なんでしょうか?)
目覚めても決して頭から離れる事のない夢、私はそれが意味する事を考えながら再度眠りに落ちて行った
しかし彼女は知らない。自分が唯一友人と思える女生徒もまたこの夢を見ていることを……
ゆっくりと運命の歯車は回る……
唯1つの運命に導かれ……
そして時と共に新しい運命の幕を開くだろう……
第40話に続く
今回はインターバルの話だったので少し短めです。次回は臨海学校に向けての話とサイド暗躍するネクロサイドの話をして行こうと思います、それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします