IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

44 / 134
どうも混沌の魔法使いです。今回は紅椿と夜風。そしてシルバリオゴスペルと暗躍するネクロとシリアスムードで行きたいと思います。
それでは今回もどうか宜しくお願いします


第44話

第44話

 

(なんとまぁ、典型的な力に溺れるタイプだな)

 

高速で空を舞う真紅の機体を見ながら、夜風の調整を進める。見たところ剣と言う形を取っているが、その本質は重火器に近いものと見ていいだろう。

 

「やれる! この紅椿なら!!」

 

自信満々にそう言い放ち空裂と言う刀を振るう。箒君、どうみてもその威力を楽しんでいるようにしか見えない。これがもし六課所属の魔導師や騎士ならば、龍也に拳骨と説教。さらにはデバイスの没収くらいされてもおかしく無いだろう。

 

(過剰な力はより騒乱を巻き起こすと知らんのかね? あの束とか言う女は)

 

確かに天才といえるだけの頭脳の持ち主である事は認めよう、このISコアと言うのは原理こそ違えど、デバイス、それもアームドデバイスに極めて近い特性を持っている。

それを独自で編み出したその科学力には素直に賞賛に値すると思うが、いかんせん人格が歪みきっている。そのような人間とは到底仲良く出来ないだろう

 

「馬鹿が」

 

「おや? 龍也も同意見かね?」

 

吐き捨てるように呟く龍也にそう尋ねると龍也は面白く無いと言う表情で

 

「あれだけ剣に拘っているのだから、自制心くらいあると期待していたんだが、点で期待はずれだな」

 

「子供だからねえ」

 

そう笑い夜風・ライトニング・桃花の調整を終え。空を見上げているとふと気付いた。織斑千冬が射抜くような視線で紅椿と束を見ていることに、流石は最強といわれるだけはあるかと思っていたらふと念話で

 

(ジェイル。アズマを捕捉しているか?)

 

紅椿の試運転が始まると同時に姿を消した、アズマを名乗る女性……どうにも私達の事を知っている素振りからネクロに関係があるのでは? と思った人物

 

(ん。その筈だが……ば、馬鹿な、センサーの反応が無い!?)

 

気配からして純粋な人間で無いと気付いた私と龍也はアズマにセンサーをつけていたのだが、その反応が無い

 

(なるほど、どうやらあいつらはある程度、私達の事情を知っていると言うわけか)

 

(そのようだね、油断したよ)

 

龍也の推測ではネクロ側についているこの世界の人間が居るとの事だが、どうやらあの2人は限りなく黒に近いと見ていいだろう

 

「どうだい? 束さんの渾身の力作の「紅椿」とお前の「夜風」だっけ? 性能比べして見る?」

 

挑戦的な顔でそう尋ねてくる束に私は

 

「必要ない」

 

「あ、やる前に負けを認めるのかな? やっぱ束さんは天才~」

 

嬉しそうに笑う束に

 

「比べる価値も無い、操縦者に力が何たるかを忘れさせるような不様な機体と夜風は全く違う、勝ち負け以前の問題だ」

 

箒君とはやて君では、覚悟が違う、信念が違う、性能は見たところ互角か少し夜風が劣るかどうかだが、操縦者の錬度の差が出る。比べるまでも無い

 

「言ってくれるね」

 

怒りに顔を歪める束を無視して、

 

「はやて君。夜風のテストを頼むよ」

 

「うん」

 

夜風を展開するはやて君

 

「どうかね?」

 

「んーデザインが微妙」

 

「酷いッ!? 気に掛けるのそこ!?」

 

性能は間違いなく一級品のはずなのだが、見た目を気にするとは予想外だ

 

「まぁ良い感じそうやけどな」

 

足回りと背部装甲はレーゲンをモチーフにし胴体及び椀部装甲はラファールを参考にした。カラーリングは黒を基調に銀のワンポイントを入れた。

 

「じゃあ武装テストね。ターゲット出すから宜しく」

 

ガジェットを4機射出する

 

「プログラムは単純だけど、攻撃してくるからね」

 

「オーライ」

 

飛び立つ夜風をモニターしながら

 

(さて、見て頂こうか。自称天才の愚か者さん)

 

鋭い眼光で夜風を睨む束を見ながら私は夜風のデータを取り始めた

 

 

 

(んー鈍いな)

 

デバイスと比べるとどうも反応が鈍い。まぁこの程度は誤差の範囲やけど煩わしい

 

「ピピッ!!」

 

センサーアイを光らせるガジェットの横をすり抜ける。攻撃態勢に入るガジェット4機を見て

 

「遅いで」

 

コールしたビームライフル「ナハト」の照準を合わせ、6連射する

 

「「「!?」」」

 

センサーアイを失いおろおろするガジェット目掛け瞬時加速に入ると同時に、両手足の装甲からビームエッジを作り出す

 

「黄泉舞い……」

 

ガジェットの武装と推進装置だけを通り抜けざまに破壊する。推進力を失い地に落ちるガジェットと今の私の機動を見て驚くIS学園の生徒を見ながら

 

「つまらへん。反応鈍すぎ、もうちょい数出して」

 

反応テストにしても鈍すぎ話にならん

 

「じゃあ次14機ね」

 

「オーライ」

 

今度は14機浮かび上がるガジェットを見据え

 

「ほい!」

 

両手の指の間の呼び出した投擲用ダガーを回転しながら放つ

 

「んでもって」

 

明後日の方向に飛んでいるダガーの進路に重なる様に更に6本投擲する

 

「チェック……」

 

ダガーとダガーがぶつかり進路を変える。ガジェットの背後に殺到する刃を見ながら

 

「メイトッ!」

 

手を閉じると同時にダガーが背後からガジェットを刺し貫くが

 

「あちゃーミスったな」

 

14機の内撃墜は6機、思いの他IS型と言うのは反応が鈍いようだ

 

「じゃーしゃーないな」

 

音を立てて射出される4機のビット

 

「ビット!?」

 

驚くセシリアだが、マルチタスクが基本の魔導師にとってはそんなに珍しい武器ではない

 

「逃がさへんで……いけっ!!」

 

ビット4機の同時操作に加え両手に実弾銃「ノワール」を呼び出し、同時多角射撃でガジェットを打ち落とす

 

「んーまぁこんなもんかな?」

 

そう呟いているとスカリエッティさんが念話で

 

(悪いが、ここで機体トラブルの振りして墜落してくれるか? まだ調整中という事にしたいんだ)

 

(了解、その代わり兄ちゃんに抱きとめるように言ってな?)

 

(言われなくともだ。 判ってる)

 

念話に割り込んだ兄ちゃんに笑みを零し

 

「ッとと」

 

幻術で足と腰回りのブースターから火花を出す

 

「むっ!? 流石に調整不足だったか!?」

 

慌てる演技をするスカリエッティさんが頷いたタイミングで夜風を解除する

 

「「「きゃあああッ!!!」」」

 

悲鳴を上げる生徒。まぁ空中で突然IS解除になったら、悲鳴ものだ……地面に向かって堕ちていく途中で箒がこっちにくるのが見えるが。そんな必要は無い、何故ならば……

 

地面に叩きつけれる前に横抱きで私を抱きとめてくれる人が居るのだから

 

「大丈夫か?」

 

「おおきに♪」

 

よっと兄ちゃんの腕の中から下りて、待機状態の夜風を振りかぶり

 

「欠陥品やないかいっ!!!」

 

「ごふっ!!!」

 

全力で投げつけた。演出としてはこんなものだろう

 

「大丈夫?」

 

「しかしはやて、悲鳴とか上げなかったわね? なんで?」

 

駆け寄って尋ねてくるシャルロットと鈴に

 

「だって兄ちゃんおるんやし、心配することなんてなんも無いもん。兄ちゃんが絶対助けてくれるって判ってるから♪」

 

凄い信頼関係と呟くシャルロットと鈴を見ていると

 

「け、ケガは?」

 

「大丈夫です、でも少し休ませてもらいますね」

 

山田先生に許可を取り、私は少し離れたところで休み始めた……

 

 

 

 

いやー痛いね。全力で投げられた夜風の待機形態を再度PCにセットし、調整し直している振りをしていると

 

「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生ッ!!」

 

切羽詰った山田と言う女性の声がする、それを聞いた私は

 

(どうやら、動いたようだね。ネクロが)

 

ネクロもしくはネクロと協力関係にある、何者かが動いたと判断した私は

 

(警戒と索敵の魔法を展開しておくか)

 

キーボードを叩き魔法を展開したところで

 

「スカリエッティとやら、その3機のISは使用できるのか?」

 

そう尋ねられ私は顎の下に手を置き

 

「不可能だ、現在調整の第2段階だ、碌に動かぬ機体を使用させるわけにはいかない。それに夜風はさっきの有様なんでね、そんな機体を実戦に出す事は科学者として認められない」

 

本当は使用できるが、使わせない。何か裏があると見て間違いない状況ではやて君達をこの旅館から遠ざけるのは得策とはいえない。

 

「ばーか」

 

ただ、あの間抜け面してるウサミミ女は物凄く腹が立つが、我慢する

 

「判ったならば。織斑、オルコット、デュノア、ボーディヴィッヒ、凰、龍也、更識、ファウスト……それと篠ノ之も来い、呼ばれなかった専用機持ちは教員の指示に従い。いつでも出撃できるように準備! その他の生徒はISの装備を撤収後、旅館の自室で待機!」

 

てきぱきと指示を出す織斑千冬。その指示の早さは中々のものだ。評価に値する

 

「では解散! これ以降許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する! 良いな!!」

 

その一喝に身を竦め走っていく生徒を見ていると

 

「申し訳ないですが、一時貴方を拘束することになりますが宜しいですか?」

 

「ふむ、何があったかは知らんが、構わんよ。私はなんにもやましい事はして無いしね」

 

恐らくはISの暴走、確か軍事用のISのテストがあったはず、それに関連している可能性があると言うことだろう。両脇に立つ教員2人に連れられ私は旅館にへと向かった

 

 

 

 

「2時間前。ハワイ沖で試験稼動にあった軍用IS「銀の福音」が制御下を離れ暴走している」

 

行き成りの説明にほうけていると俺と箒を除いたメンバーは厳しい顔付きで説明を聞いていた

 

「その後、衛星による解析の結果。福音はここから2キロ先の空域を通過することが判明した。よって我々がこの事態に当たる事になった。 教員は学園の訓練機と機動性に劣る、神武・死線の紅・グロリアス・ヴィクトリーそして調整中のヤタガラスは教員の指示に従い、海域の封鎖に回る。そして高町・ハラオウン・はやてはこの場で教員と共にデータの分析に回ってもらう。そしてその他の専用機持ちは銀の福音の鹵獲に回ってもらう」

 

はっ? 俺達が暴走したISを止めるって事か?

 

「それでは作戦会議を始める。 意見がある者は挙手を」

 

その言葉に真っ先に手を上げたのはクリスさんだった

 

「目標ISのスペックデータ及び武装データの開示、更に暴走時に幾つか武装を使用したはずです、その武装による被害を教えてください

 

「判った、ただしこれらのデータは最重要軍事機密だ。決して口外はするな。もし情報が漏洩した場合、諸君らには査問委員会による裁判と監視が付けられる」

 

「了解しました」

 

クリスさんが頷いたところでモニターに情報が開示される

 

「基地の被害は研究所の周囲含む2ブロックが半壊ですか、龍也さんはどう見ますか?」

 

「ミサイル、もしくは着弾と同時にエネルギーを炸裂させるタイプの射撃兵装と推測されるが、どう思う簪は?」

 

「被害映像に火薬等の爆発痕が無いから、ミサイルじゃないと思う」

 

武装に関する分析を始める龍也とクリスさん。そしてシャルル達は

 

「攻撃・機動に特化したタイプね、スペック上では甲龍よりを上回っているから、エネルギー切れは期待できないわね」

 

「それに龍也達の解析によると相当火力が高そう。丁度本国から防御用のパッケージが来てるけど。連続しての防御は難しそうだね」

 

「格闘戦のデータは無いのですか? もしくは威力偵察は?」

 

ラウラの問いかけに千冬姉は

 

「可能だろうが、もしその偵察でこの海域から離れられたら不味い、一度のアプローチで確実に仕留める必要がある」

 

「となると、可能なのは。一撃必殺の破壊力を持つISに限られますね」

 

俺と龍也を見る山田先生

 

「織斑君の零落白夜。もしくは八神君の木花咲耶を使うしかないですね」

 

え?

 

「となると、どうやって一夏と龍也をそこまで運ぶか、だね」

 

「エネルギーを全て攻撃に回すとなると全てのエネルギーを温存させなければ成らない。それに目標に追いつける速度を出せて、補足できるセンサーを搭載できる機体となると、パッケージつきのISしか無いだろう?」

 

俺をおいてドンドン話が進む、ことに焦り俺は

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! お、俺が行くのか!?」

 

「お前か龍也になる。お前がいやならまだ傷が完治していない、龍也に頼む事になるな」

 

前の黒い悪魔の一件での傷は完全に完治していないと龍也は言っていた、あまりに激しい運動をすると傷が開くとも。ならば……

 

「やります! 俺がやって見せます」

 

前は龍也に救われた、ならば今度は俺の番だ

 

「よし、では具体的な作戦に入る。現在の専用機でもっともスピードが出るのは?」

 

「私のブルーティアーズが最高速度です。更に本国から強襲用のパッケージが送られてきていますし、超高感度センサーも搭載しています」

 

セシリアが作戦に立候補したところで、束さんが乱入してきて紅椿のスペックならパッケージなど必要ないと熱弁を振るい、30分で準備を終え出撃できると千冬姉に語って聞かせ

 

「判ったでは、織斑・篠ノ之の両名と念のためにフォローとして更識・龍也の計4名で作戦に当たってもらう」

 

「えーちーちゃんといっくんだけで充分だよ~」

 

不満そうに言う束さんを無視した千冬姉に龍也が

 

「恐縮ながら、その作戦には賛同できません」

 

「ほう、なぜだ?」

 

千冬姉に睨まれた龍也はモニターの隅を指差し

 

「ここを拡大してください」

 

言われたとおり山田先生がそこを拡大すると

 

「なっ!?」

 

トーナメント時に乱入してきた黒い悪魔の姿がはっきりと映し出されていた

 

「もしも奴らが居た場合、4名では離脱すら困難、最低でも逃亡用の支援の役割をしてくれるIS、エネルギーを使い切った白式を運べるだけパワーのある甲龍・加速力に長けるブルーティアーズ。離脱までの殿を勤める者。これは私が引き受けるとして。更に最短ルートでの逃亡をサポートしてくれる人物。この場合判断力・及び戦況判断に長けた、クリス・ファウストを追加して最低でも7名の人員が必要となります」

 

堂々と言い切った龍也に束さんが

 

「でもさー、ここに映っているのが銀の福音と行動してるとは限らないでしょ? 他のメンバーの準備中に海域を突破されたら意味無いじゃん。だから君の発案は全却下だよね! ちーちゃん?」

 

「確かに束の言い分は判る、だが龍也の言い分も判る、だが全員が準備している時間は無い、凰のみを支援としてつかせる。増設のプロペラントタンクを2基搭載して、作戦に参加しろ」

 

龍也の言い分を却下した千冬姉、龍也は何も言わなかったが、明らかに反抗的な色を目に宿し

 

「判りました、では私は簪と海岸で待機してます、一夏と箒それに鈴の準備が終るまで衛星によるデータを元に逃走経路を考えたいので、クリスを連れて行っても宜しいですか?」

 

「却下だ、ファウストはここで解析に回ってもらう」

 

またも自身の意見を却下された龍也はそうですかと呟き。千冬姉から背を向けて作戦室を出て行った

 

 

 

 

紅椿の背に載る白式を見ながら、私は鈴と簪に

 

「良いか、もし黒い悪魔が出た場合、私が殿を勤める。私のことは無視して自分達だけの帰還を考えろいいな?」

 

「あんたはどうすんのよ、その場合」

 

鈴のその問いかけに

 

「心配無用だ、インフィニティアならエネルギーも加速力も充分だ、お前達の脱出するまでの時間を稼いだら離脱する」

 

「大丈夫なの?」

 

心配そうな簪に

 

「問題ない。良いな? 覚えておけ」

 

私だけならどうやっても逃げられる、問題は一夏達をどう逃がすかだ。安全に離脱して貰うためには私が囮になればいい

 

『では、始め!!』

 

織斑先生の作戦開始の合図を聞いて、真っ先に飛び出す紅椿、その後に甲龍、弐式、私と続く。作戦では認識範囲外で待機しろと念を押されたので、最悪のケースになるまで動く気は無い。

 

(私の思い過ごしならいいんだがね)

 

だが私の感は良く当たる、特に嫌な予感は特によく当たる。それは今回も例外とは言えなかった。一夏と箒は銀の福音の機動に翻弄され、苦戦こそしていた物の良い連携を組み追い詰めていた居た。これなら何の心配も無いと思った瞬間それは起きた。福音が全砲門を開き全方位に向けての一斉射撃を放つ。箒はそれを回避し福音の懐に飛び込む。そしてそこで一夏の攻撃が当たれば戦況終了と言う場面で、一夏は下の方向に向かって瞬時加速を行った

 

「何やってるのよ。一夏は!?」

 

「ちっ! 密漁船だ!!」

 

海面に浮かぶ船。ちいっ!!愚図どもが! 自分らの仕事くらいちゃんとしろ!

 

「馬鹿者! 犯罪者などかばって! そんなやつらは!!」

 

「箒!!」

 

箒の言葉を遮って叫ぶ一夏、そしてその直後周囲に張り巡らせていたセンサーに反応が2つ、両者ともLV4クラス

 

(くそっ!! やはりか!!!)

 

私の予想では銀の福音の撃破、もしくは作戦の失敗時に仕掛けてくると踏んでいたが。正しくその通りの展開だ

 

「鈴、簪! 一夏達と合流する! その後は言ってた通りにしろ!!」

 

2人の返事を待たず、警告する本部の連中の指示も無視して。私は福音が居る空域にへと飛び込んだ

 

 

 

 

 

 

「箒! そんな……そんな寂しい事は言うな! 言うなよ……力を手に入れた途端周りが見えなくなるなんて……どうしたんだよ、箒。らしくない、全然らしく無いぜ」

 

もう作戦は失敗だ、後方に待機している鈴たちと合流して撤退するしかない。だがこれだけは言わなければならない、らしくないと

 

「わ、私、は……」

 

箒が顔を手で覆い隠した瞬間、虚空から

 

「ははははっ!! 滑稽! 実に滑稽! 力を手に入れ周りを見えなくなるとはなんと不様な事か!」

 

「趣味が悪いぞ、ヴォドゥン」

 

カソックの男と剣を構える男が、何も無い空中に浮かびニヤニヤと俺と箒を見ていた。そして攻撃態勢に入っていた福音は空中で片膝立ちとなり。カソックの男の後ろに回る

 

「な、なんだよ! お前らはッ!!」

 

ISも無しに空中に浮かぶなんてあり得ない、俺が雪片を構えながら叫ぶと

 

「私ですか? 私は貴方達が黒い悪魔と呼ぶ者ですよ、そのような無粋な呼び名は大変に不快です。我らの名はネクロ。覚えておきなさい、憐れな人間」

 

「余計な事をベラベラと喋るな」

 

は? 黒い悪魔? 冗談だろ? 俺がそう考えているのに気付いたカソックの男が

 

「では証拠を」

 

パチンと指を鳴らすと虚空から次々と黒い悪魔が姿を見せ、翼を羽ばたかせる

 

「そしてこれもまた証拠です」

 

カソックの男が被っていた帽子を脱ぐ、それと同時に顔がしっかりと見え、思わず後退した、男の瞳孔は縦に割れ人間の物ではなかった

 

「ほ、箒、に、逃げろ!」

 

「え」

 

駄目だ、箒だけでも逃がさなければ、もう直ぐ龍也達が来る。だがそれが間に合うとは思えない。震える手で雪片を構える。ぶるぶると剣先が震えるみっともないくらいに震える身体。でも視線だけは決して逸らさず抵抗の意思を示す。

 

「で、でも一夏は……」

 

「良いから! とっとと逃げろ!! 馬鹿やろう!! 死にたいのか!!!」

 

箒を突き飛ばし両手で剣を構えながら

 

「逃げてくれ、少しくらいなら時間を稼げる。 龍也が来るまで粘れれば俺も助かる。だから行け、箒」

 

にやにやと笑うカソックの男と鋭い眼光を向ける赤紫の髪を持った男を威嚇しながら、再度逃げるように言う

 

「……す、直ぐに戻る!!」

 

背中を向けて後方に向かっていく箒に一安心し

 

「こっから先は通さねえ」

 

ブルブルと震える切っ先を向けると

 

「興味が沸いたぞ、小僧。少しばかり遊んでやろう」

 

肩を半分まで隠すアンダーウェアを身に着け。両腕にガントレットそして、漆黒のサッシュで武装していた男はニヤリと笑い

 

「ペガサス・ダウンフィルド。 小僧貴様の名は?」

 

「織斑一夏!!」

 

その気迫に飲まれないように叫ぶと

 

「そうか、では1分くらいは粘って見せろよ」

 

ペガサスの身体を炎が覆い隠し次の瞬間には、漆黒のフルスキンに見えるISを身に纏ったペガサスが腰の鞘から片刃の西洋剣を抜き放ち切りかかってくる

 

(止めれる!)

 

確かに早いが止めれない事は無い。雪片で受け止めようとした瞬間

 

「え?」

 

「戯けめ」

 

剣が雪片をすり抜け白式の装甲を切り落とす

 

「な、!?」

 

「ほら、ドンドン行くぞ!」

 

嵐の様な連撃を防ごうとするが大半は俺のガードをすり抜け白式の装甲を引き裂き。偶に防げれたと思った一撃は

 

「がっ!?」

 

受けたそこからとんでもない衝撃が走り、身体の中から破壊されるような激痛が走る

 

「つまらん。興醒めにも程がある」

 

「まぁ、たかが人間、それが限界でしょう?」

 

もう俺に興味など無いと言いたげなペガサスに

 

「黙れよ、俺は、俺は……仲間を護るんだよ!!!」

 

俺がそう言って振るえる手で剣を構えると

 

「護る? 貴様が言っても軽い戯言にしか聞こえんよ」

 

「んだと!! がっ! ぐあっ!?」

 

剣の柄による打撃と振るわれる拳を避ける事も出来ず無防備に喰らい続ける

 

「吼える事しか出来ず! 俺に何の手傷も負わせる事が出来ない貴様が何を護れる! どうせ何も護れず!!」

 

「がっ!!」

 

鳩尾に突き刺さった膝蹴りに視界が歪む

 

「涙するだけだ! ならば貴様はここで死ね!!」

 

俺を両断しようと振るわれる剣を

 

「うっせえ!!!」

 

「!!!」

 

渾身の力でそれを弾く、するとペガサスが初めてその顔色を変えた、まるで信じられない物でも見たかのように

 

「貴様何をした?」

 

「ああ……何もしてねえよ」

 

ただ渾身の力を込めてあいつの剣を弾いただけだ

 

「そうか、まぁ良い、どうせこれで終わりだ!!」

 

心臓目掛け放たれる突き。避けるのも防御も間に合わない

 

(箒はちゃんと逃げれたよな? それとごめん……千冬姉、俺もう死ぬみたいだ)

 

自分でも驚くくらいあっさりと死を受け入れ、目を閉じた瞬間

 

「諦めるのが早いぞ!」

 

その声と共に鋭い金属音が響く、目を開くと龍也がペガサスの一撃を防ぎ俺を護るように立ち塞がっていた。

 

「一夏!! 逃げるわよ!!」

 

「こっち!!」

 

鈴と簪さんが来て、鈴が俺を掴み後退していく、

 

「お、おい! 龍也はどうするんだよ!!」

 

あの化け物相手に1人で残すなんて

 

「うっさい!! あいつの命令よ!! 一夏を回収してとっとと逃げろって!!」

 

悔しそうに唇を噛み締める鈴、鈴だって納得しての撤退では無いんだ

 

「ごめん」

 

「いいから掴まってなさい、簪も! 瞬時加速するわよ」

 

「うん!!」

 

俺は鈴と簪さんに連れられ、この空域から離脱していった……

 

「よし! 箒に追いついた、後はそのままセシリアとシャルロットと合流して旅館に戻るわよ」

 

そう言う鈴、俺は今胴を甲龍のごついでて掴まれ、まるで海で溺れたのを救助されるかの形で運ばれていた。だがそれのせいで見てしまった。空中を駆けて来るカソックの男と福音の姿に、男は俺と目が合った瞬間にやりと笑い、腰に何かの機械をセットしそれにメモリのようなの物を差し込んだ。そして次の瞬間男の姿は異形にへと姿を変えていた

 

(やばい! やばい! やばい!!)

 

脳の中に警報が鳴り響く、とにかくやばい、俺は鈴の腕から強引に抜け出し。そのまま瞬時加速に入った、全てがスローモーションの世界で俺は見た。こっちに向かってくるセシリアとシャル、ラウラ。必死な表所で喋る箒。驚きに顔をゆがめる鈴、そして

 

【プロヴィデンス マキシマムドライブッ!!】

 

機械合成音と共に何かのエネルギーが収束していく、異形の手の中の銃。そして何もかもが腐る嫌な臭い。その銃口の先は箒、俺は瞬時加速のまま箒を抱きしめ身体を反転させる。その瞬間、全ての時間が元に戻った……背中で何かが爆発したような激痛に

 

「がっ!!」

 

そしてそこから身体がバラバラになるような痛み、魂が軋むようなそんな感覚。何が起こったのか理解していない箒と目が合う、涙に濡れた頬と赤い目……

 

(何泣いてるんだよ。らしくねえな……あ、リボンが焼けちまってるな。ふーん……髪を下ろしたのも悪くねえなあ)

 

「一夏ッ! 一夏ッ! 一夏ぁッ!!!!」

 

「う……あ」

 

世界が揺れる、もう駄目だ、意識が途切れる……でも護れた、箒だけは。セシリアとシャルルが必死に手を伸ばしてくるのが見えるが、もう俺にその手を掴むだけの力は無く。

 

「一夏!?」

 

向かってくるシャルルに目掛け、最後の力で箒を突き飛ばし、俺は頭から海面に叩き付けられた。海面越しに見える異形と福音の姿を見ながら、俺の意識は闇にと沈んだ……

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

海岸で龍也君が残っているであろう空域を見つめながら、さっきまでの騒動を思い返していた。旅館の近くで黒い悪魔、いやネクロに追いつかれ背後から撃ち抜かれた織斑君を回収したが、信じられない現象が織斑君を襲っていた

 

「な、なんだこれは!?」

 

背中・両腕・そして顔が腐り始めていたのだ。どす黒い煙を上げて広がっていく傷、そして

 

「がああああああッ!!!!」

 

喉も裂けんばかりに絶叫し、暴れる織斑君。暴れるごとに血が噴出し傷が広がる。それを織斑先生を中心に無理やり押さえ込み、鎮痛剤と麻酔薬で眠らせたのがつい30分前。そして魂さえも抜け落ちた表情の篠ノ之さんと、掴めなかった手を柱に打ち付けるデュノアさんとオルコットさん。そして織斑君が横たわったストレッチャーに縋りつき泣き崩れる、凰さん……皆が取り乱している中

 

「作戦は失敗だ、次の作戦が決まるまで会議室で待機していろ」

 

そう言って部屋を出て行く織斑先生、ここであえて冷たく突き放されたことで冷静になった……だが暗い雰囲気は消えることなく解散となり。私は海岸で龍也君が戻ってくるのを待っていた。

 

「簪」

 

「エリス……」

 

缶コーヒーを持って来てくれたエリスと一緒に近くの流木の腰掛け

 

「失敗の上に織斑君は重傷。専用機持ちの大半は茫然自失、福音はネクロと共に姿を消して。全部から回りだったね」

 

もし龍也君の意見を聞いていたらまた違った結果があったのかもしれない。でもそれはもう後の祭りだ……これからどうなるかが重要だ。そんな事を考え空を見上げると

 

「やれ……やれ、流石に骨が折れたな」

 

被弾し装甲も皹だらけのインフィ二ティアがふらふらと飛んでくる、それをみて携帯で即座に教員に帰還したと伝える。龍也君は砂浜に着地すると同時に装甲は粒子となり消え

 

「すまん……あ……とは任せた」

 

ゆっくりと倒れこんでくる龍也君をエリスと共に受け止めようとするが、支えきれない。多分あれだISの最終防衛機能、それで意識を失ったに違いない

 

「無理に動かすな!」

 

その声と共に龍也君を支える腕、白衣が血に汚れるのも気にせず受け止めたのは、スカリエッティさんだった。ゆっくり龍也君を寝かせ手際よく手当てをする、それは本職の医者と大差ない

 

「これでも医師免許と教員免許を持ってるんだ、手当てなんて朝飯前さ。よいしょ」

 

包帯で止血した龍也君を担いだスカリエッティさんの元に先生方が来て

 

「彼の手当ては私たちが」

 

「断る。龍也とは10年来の付き合いだ、それに龍也の血液型は特殊でね、普通の人間じゃ輸血すら出来ないよ。ちゃんと用意して来てる。だから貴方達にできるのは手当て出来る場所を提供してくれれば良い」

 

そう言って歩くスカリエッティさんに

 

「しかし」

 

「黙れ。龍也を見れるのは私だけだ」

 

「そうね、確かに前に見たときにそれは実感したわ」

 

ツバキさんだ、前にそういえば手当てするのも苦戦したって言ってたっけ

 

「龍也君が寝れる部屋を用意して、ここは彼に任せましょう」

 

「どうも、話が分かる人がいて助かりましたよ」

 

そう笑うスカリエッティさんを先導して歩くツバキさんを見ていると。ツバキさんが振り返り

 

「自室待機よ、いくら心配でも命令は護って頂戴」

 

「「は、はい」」

 

笑っているが目が笑っていないツバキさんに震えながら頷き、走って自室にへと戻った……

 

 

 

 

 

「ずいぶんとやられたな?」

 

「黙れ」

 

目を開くなりそう笑うジェイルに

 

「予想も無い攻撃をされた、あれを見たのは久しぶりだ」

 

身体を起こす。治癒で痛みは無い直ぐにでも動ける。投影した剣を爆破し、その隙にペガサスの胴を一閃したまでは良かったのだが

 

(鋭い一撃だった)

 

フラッシュムーブ……いやおそらくは違う、何らかの体術だろう。それで二閃めを回避し反撃に放たれた袈裟斬りの一撃をかろうじて回避したが肩から脇にかけて斬られたが、その瞬間投影した剣を上空から降らし、切っ先がペガサスの肩に刺さったタイミングで爆破し。その勢いで離脱してきたが。ISに外見を似せたデバイスではやはり全力は出せなかったようだ

 

「何を見たんだ?」

 

黙り込んでいる私にそう尋ねてくるジェイルに

 

「ふー思わず我が目を疑ったよ」

 

幻術で自分のコピーを作り布団に寝かせ、代わりに自分に掛けていた幻術を解除しリミッターであるブレスレットを外す

 

「リミッターが無くても苦戦は必須だった」

 

「だから何を見たんだ?」

 

そう尋ねてくるジェイルに私は

 

「ペガサスとか言うネクロの剣は……」

 

そこまで言って黙り込んだ、確証が無いし余計なことか。

 

「どうした?」

 

「気にするな、思い過ごしだ。はやて達は」

 

姿の見えないはやて達のことを尋ねると

 

「作戦室に篭りきりにされてるよ、可哀想にねえ、本来は自分達が立案を聞く側なのに」

 

はやて達は恐らく怪しいという事で監視下に置かれたのだろう、ジェイルも同じくそれにこの部屋には監視カメラもある、まぁ幻術で誤魔化しているのでばれる事は無いが

 

「そう言うな、所で一夏は」

 

私がそう尋ねるとジェイルは気まずそうに

 

「ヴォドゥンの腐敗の教義を喰らっている……」

 

「侵食度は?」

 

腐敗の教義、ヴォドゥンが持つ特殊能力。ヴォドゥンと闘い、自身もまた死に掛けになりながらも、陸戦魔導師達が必死に持ち帰った。破壊されたデバイスと証言によって判明した。余りに凶悪な能力、触れた物をすべて腐敗させる力……無機物だろうが有機物だろうが関係なく腐敗させる。そして傷は徐々に広がり最終的には全身が腐敗し骨すら残さず死に至る。

 

「75%、後1、2時間で死ぬ」

 

ヴォドゥンの腐敗の教義から逃れる手ははっきり言ってないに等しい……腕とかだけなら切り落とせば助かるが、70%とならほぼ死に至る

 

「一夏の生命力に賭けるか」

 

「何をする気だ」

 

呼び止めるジェイル。研究者として医者として私がやろうとしていることに気付き止めたのだろう。

 

「白式にデバイスコアを埋め込んで、私の魔力で一夏の生命力を活性化させる」

 

「下手をすれば拒絶反応で死ぬぞ」

 

一夏にはリンカーコアは無い、成功する確率の方が低い……だが

 

「何もしなくても死ぬんだ、なら一割でも一夏が助かる方法に賭けて見よう」

 

分の悪いかけにも程があるがなと肩を竦めて、窓の外を見る

 

「あの馬鹿どもが!」

 

飛び去るISの気配がする。数は……5機……いや待て。それを追うISの気配が4つ。誰だ? 意識を集中させて気配を探る

 

(簪とエリス……それにヴィクトリアとクリス)

 

シェンと弥生は恐らく誘わなかったのだろう。いや、シェンと弥生は誘えなかったというべきだな。 あの2人は中々頭が固い命令違反をすると知れば直ぐに先生に報告すると判断したのだろうが……ネクロしかもLV4相手にISが9機居た所で勝率は2割あれば良い所。直ぐに追いつかなければ……

 

「ジェイル、私も直ぐに出る」

 

「了解、上手く誤魔化しておくよ」

 

まずは一夏の蘇生と箒達の後を追う、やる事が多すぎだ。だが……

 

「護って見せるさ」

 

手の届く全ては救ってみせる。それが私の生きる意味だ

 

 

第45話に続く

 

 




次回は色々と独自の話が多くなりますがどうか宜しくお願いします。そしてここで初めて魔導師としての龍也さんも登場です、それに色々伏線を張っておこうと思っていますのでどうかお楽しみに
なお第46話以降はしばらくはタスク視点の話で以降と思いますのでどうか宜しくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。