それでは今回の更新もどうか宜しくお願いします
第52話
ワタシが目覚めてから2日経った。今だ部屋から出る許可はもらえないが、取りあえずは自由と言える……
(しかし……時間が経って冷静になればなるほど、腑に落ちん)
折れた筈の右足に肋骨は何故か再生している。若干のうずきと痛みはあるが、それだけだ……それに
(全身打撲にはなったと思っていたんだが……な)
多少の身体の軋みと貧血による。目眩こそあれ健康体だ……しかしそんな事はあり得ない
(ワタシの作った……疑似プロテクション発生装置は使いきりで、しかも効果はそんなに高い物ではない。あれだけの高性能爆薬の直撃の衝撃を完全に殺すことなど出来ない……それなのに。ワタシは五体満足でしかも骨折も打撲も無い。こんなことはあり得ない……)
考えれば考えるほど判らない。治っているから良いと言う問題ではない……
(考えられるのは、八神龍也に治癒を施された可能性だ)
ネクロから聞いた話によれば。八神龍也は死者蘇生や時間移動と言った奇跡も可能とするらしい、ならばワタシを治癒するなどわけない筈だが……
(それならば。ワタシは楯無達に回収された? 八神龍也がワタシを治したのならば、ワタシは八神龍也の元にいる筈
(判らん……何とかして奴に接触できればいいんだがな)
スコールから託された。USBメモリの暗号は八神龍也なら判ると言っていた。
(抜け出すわけにはいかんしな)
常に部屋の外に監視役がいるのは判っている。無理に抜け出すのも無理。アマノミカゲはダメージレベルDで起動させる訳にはいかない
(次に楯無が来たら、交渉するしかないか)
ワタシはどうにもならない状況に溜め息を吐いて。もう1度ベッドに腰掛けた
ユウリが溜め息を吐き。ベッドに寝転んだ頃、IS学園地下の研究室で
「あの~ツバキさん? 少しお時間宜しいですか?」
楯無が私の機嫌を伺うように尋ねてくる。
「何? 丁度一区切りついた所よ?」
ヒエンパックと汎用バックパックスペリオンシリーズの調整を丁度終えたところだ。データを保存しながら振り返ると
「あ、ああ! そうだったんですね! 良かったです。購買でケーキ買って来たんですけど……どうです?」
なんか怪しいわねー。何かまた勝手な行動でもしたのかしら? 楯無は私の視線に気付いたのかきょときょととしながら
「はい! これ好きなチョコケーキです!」
大きな声で私の前にチョコケーキを置いて。反対側に座る楯無
「ありがと、疲れたときには甘いものよね」
楯無が持って来たチョコケーキと紅茶で。3時の休憩としながら
「で? また何かやっちゃったの? 簪ちゃんと喧嘩したとか? 龍也君と模擬戦して負けたとか?」
考えられる事を言うが。楯無は
「あーいや? 別にそういう事じゃなくてですね? そのー実はですね」
もごもごと言いにくそうにしている。楯無に
「怒らないから言って見なさいよ」
別に子供のやる事で怒るほど気は短くない
「えーと……実は……そのー」
「怒らないから言って見なさいって」
おどおどしている楯無にそう言いながら、紅茶を飲んだところで
「あのですね! ファントムタスクの黒武士を保護したんですけど……」
楯無がにへらと笑いながら言った言葉に
「ばふっ!? げほっ!?げほっ!? なななな、何でそんな大事な事を言わないの!! 何時! 何時保護したの!!!」
「お、怒らないって言ったじゃないですか!? 「それとこれとは話が違うわよ!!」 いひゃい!? いひゃいですー!!!」
楯無の頬を掴んで引っ張る。あら? 思ったより良く伸びるわね? 涙目の楯無の頬から手を離し
「で? 何時、どこで保護したの? 学園の外に出るような任務はなかった筈だけど?」
楯無がIS学園から離れるような任務は無かった筈、ではどこで保護したのか気になり尋ねると
「えーと2日前の……ちょっ!? 握り拳作るの止めて下さい!」
2日前と聞いて咄嗟に握り拳を作ってしまった。 でもこんな大事な事を黙っていた、楯無には拳骨の一つくらい落しても良いと思う
「2日前の放課後。学園の近くの砂浜に打ち上げられていたんです」
「打ち上げられてた? 怪我とかはしてたの?」
黒武士と言えば、裏世界ではそれなりに名の通った暗殺者だ。そんな彼をタスクが手放すとは思えないんだけど……
「えーと。全身に細かい切り傷と打撲。あとは骨折した形跡があるのに、折れていない右足と肋骨って言う不可思議な現象がありました」
折れた形跡があるのに折れてない? どういうことよ?
「黒武士と話は出来る?」
とりあえず話を聞かないと何も判らない。話が出来るなら話がしたいと思い尋ねると
「えーと、ユウリ・クロガネって言うんですけど? 黒武士の名前って」
「何で知ってるのよ?」
私がそう尋ねると楯無は
「え、えーとですね!? そのですね!? えーとえーと……なんて言えば良いんでしょうか!?」
あたふたしてる楯無にまさかと思いながら
「惚れた? え!? 嘘! 本当なの!?」
冗談のつもりで尋ねたのに楯無は真っ赤になってしまった
「ま、まぁ……その……そんな所ですね。え、えーと! フレイア達のログハウスにいるんで! 自分で行ってください! それでは!!!」
「ああ! 待ちなさい楯無!! 話は……」
呼び止めようとしたが楯無は走り出して。すぐに見えなくなってしまった……私は溜め息を吐きながら、PCのキーボードを押してあるファイルを呼び出す
(ユウリ……エリスちゃんと双子とも言える、クローンの名前)
ある違法研究所で進められていた。第一世代のISで最も適正の高かったドイツ人のクローンプロジェクト。そのタイプ00ファースト ユウリ タイプ00セカンド エリス タイプ00サード セリナ 私が現役時代に保護しようとして出来なかった2人のうち1人。
(もしも、ユウリがあのユウリなら……私は向き合わないといけない)
ずっと心に残り続けていた。後悔と無念……そして償わなければならない罪。
(行かないと)
研究用のPCにロックをかけて、私は学園の外れのログハウスにと出掛けて行った……
「そう言えば……龍也さん。2日前に何か気になることがあるって言ってましたけど……なんだったんですか?」
放課後の訓練の準備をしていると。なのはが思い出した様に尋ねてくる。
「ああ、前のISの暴走事件の時に色々と情報を教えてくれた。人間の気配が2日前から学園内にあるんだ」
あの時私に接触して来た。エリスと瓜二つの顔をした少年の気配が先日から学園内にある
「それってネクロを裏切ったって事?」
「その可能性が高いんだが……話を聞かないとどうにもならん」
気配があるのは、学園の外れのログハウスの中から。そこには3人の暗部の人間がいるから潜入と言うのも難しい。
「でも兄ちゃんが行かないって事はあれか? 意識が無いとか?」
話を聞いていたはやてがそう尋ねてくる。私は首を傾げながら
「それが良く判らないんだな。これが……気配がどうも安定しないんだ」
「? どういうことや? 兄ちゃんは一度覚えた気配はまちがえんやろ?」
不思議そうな顔をしているはやて達に
「うーん。何か変な気配と混ざってててな? 掴みきれないんだよ」
私がそう言うとフェイトが
「変な気配って?」
不思議そうな顔をしながら尋ねて来る。私は頭を掻きながら
「ネクロと魔導師に……時空の狭間だな。あれは」
「ネクロと魔導師は判るけど。時空の狭間って何ですか?」
訳が判らないと言う表情のなのはに
「私が並行世界に転移したりする時に発生する物だ。時空間を移動すると残滓としてそういうのが残る」
納得と言う表情をするはやて達は
「じゃあネクロ化してるんか?」
「いや。していないな……徐々にだがネクロとかの魔力は霧散している」
ただ少しだけ接触されて。魔力の残滓が残っていると言う感じなんだが……
「おかしんじゃないですか? 魔力が残っててネクロ化させてないって」
「そうなんだよ。それが気になってな」
ネクロが接触して。ネクロ化させない……それがどうしても気になる……
「まぁ考えてても仕方ない。時間を見て会いに行って見る」
ネクロ化の予兆は無いし。会って話をするのが良いだろう
「さてと。話は終わりだ、今日も一夏達の訓練を見に行くとしよう」
もう一夏達がアリーナで待ってる時間だ。私達は作った訓練用のプログラムを持って、アリーナに向かって行った
「……ツバキ・V・アマノミヤ……ふっ。まさかお前に会う事になるとは……思っても見なかったぞ」
部屋の入り口で硬直している、ツバキ・V・アマノミヤにそう言うと
「……や、やっぱり……君はあの時の……」
青い顔をしてるツバキに
「あの場合はああするしかなかった。お前の選択は正しかった」
研究成果を奪われるくらいならと、研究所の自爆装置が起動した中で、別々の場所で実験されていた。ワタシとセリナを保護することは限りなく不可能に近い。
「どうやって助かったの……? セリナはどうなったの?」
「ファントムタスクのスコールと名乗る女にな。保護された……セリナは……死んだ」
スコールは保護出来なかったと言っていた……つまりは死んだという事だ
「ご、ごめんなさい……私は……「謝るな。そんなことをしても何も変わらない。それにそんな話をしに来たんじゃないだろう? さっさと本題を言え」
過去は過去だ。どうにもならん……何時までもそんな話をして時間を潰すつもりはない
「……強いのね……君は」
「まぁ。言いたい事もあるが……裏世界とは言え自由を手に出来た。そういう面ではそれなりには感謝してる」
ファントムタスクでの生活のおかげで、ISの整備の技術や暗殺に長けた技能も身に付けることが出来た。恨む事でもない
「あの……言いにくいかもしれないんだけど……データでは貴女はエリスちゃんの双子の姉の筈じゃ?」
言われれるとは思っていた……ワタシは深く椅子に腰掛け。少し考えてから口を開いた
「あの研究所では……人造の男性操縦者の実験を行っていた。 だが起動出来たとしてもそれは僅かに数分……これでは駄目だと判断した。あの屑どもは……女性体のクローンに男性のクローンの遺伝子データとナノマシンの大量投与によって……性別を変えると言う実験をしていた……ここまで言えば判るだろう?」
女性より男性のほうが身体能力に優れる。だが男ではISを起動できない、ならばと女性に男性の遺伝子データを組み込み。ナノマシンで身体を作り変える事で男性のIS操縦者を作る事を目標にしていたらしい。
「そんな事まで……人を何だと思ってるの!?」
「ふん。知らんな? モルモット程度の認識だろ? まぁ全員殺したがな」
タスクに保護されてから2年後。ワタシは別の研究所で同じ事をしていたあの屑どもを皆殺しにした。あいつらだけは許せなかった……スコールには研究データを回収しろといわれていたが。ワタシと同じ様な存在をこれ以上増やすわけには行かない……ワタシはその研究データを全て破壊した
「だがどの道。完成はしなかっただろうな……ワタシの様に実験に成功した例は無い。あいつらが持っていた研究データを見て驚いたよ。ワタシは奇跡と言えるバランスで生きていたんだからな」
どうも他にも同じ実験を受けたクローンが居たらしいが、全員死亡とあった……だからこそ
「だからこそあの外道どもはワタシで何年も何年も実験をしたんだ……身体を引き裂き。遺伝子データと血液データ……更には骨髄まで抜き取って。ワタシと同じ存在を大量に生産するつもりだったらしい……自分らを神だの何だの言っていたよ」
「本当に……ごめんなさい……」
「謝られてもどうにもならん……まぁ最初こそ身体の作りに困惑したが。今では馴れた物だ」
今更元の身体に戻っても困るし。この身体はそれなりに気に入っている
「さて……ワタシの話は終わりだ。これからワタシはどうなる?」
「あ。ええっと……その前に聞いてもいいかしら? ファントムタスクはどうしたの?」
「抜けてきた。ワタシはどの道協力者と言う形だったからな。まぁ脱退試験とかでネクロと戦わせられて死に掛けたがな」
ワタシがそう言うとツバキは
「! タスクはやっぱりネクロと協力体制にあるの!?」
ある程度こちらでも予測していたのか。ネクロとタスクの関係を尋ねてくるツバキに
「あれは協力と言うものじゃないな……利用されてると言う感じだな。上層部はそれに気付いていないがな」
どうせ奴らはその内切り捨てられて。殺されると思うがなと笑うと
「そうなの……ネクロの計画って知ってる?」
「知らん。あいつらはスコールとしか話してなかったからな。殆ど力になれることは無い……」
ワタシはあくまで下っ端だ。あいつらの計画までは知らない
「そう……ありがとう。タスクとネクロが一時的にでも協力体制にあると言うだけでもいい情報だわ」
そう笑うツバキに
「ところでワタシはこれからどうなる?」
「え、えーと。そうね……3人目の男性操縦者としてIS学園に入学になるかな?」
まぁ予想とおりだな……だが
「戸籍も何も無い人間をどうするつもりだ?」
クローンのワタシに戸籍も何も無い。そんな人間をどうやって入学させるつもりだ? と尋ねると
「更識家か天乃宮家がバックに付くと思うけど……どうかしら? 天乃宮家に来るなら、すぐに手続きするけど……「断る。ワタシがどうするかはワタシで決める」
憎んでいる訳じゃないが、どうにも納得行かない部分がある……だから天乃宮の人間になる気は無いと言うと
「そう……じゃあ。どうするか決めたら教えて? じゃあね。おやすみ」
部屋を出て行こうとするツバキに
「1つ聞きたい……エリスはワタシの事を覚えているか?」
長年気掛かりだった事を尋ねると
「……いいえ。エリスちゃんは研究所の事と自分の姉妹の事は覚えてないわ。知ってるのは自分がクローンと言うだけよ」
「そうか。それは良かった……あの研究所の事など覚えて無くてよかった」
あいつはもう。エリス・V・アマノミヤで良い。あんなことは忘れていいんだ……
「ユウリ……「もう寝る……じゃあな」
何か言おうとした。ツバキの言葉を遮りワタシは布団に潜り込んだ……暫くワタシを見ているツバキの気配を感じていたが、暫くするとその気配は無くなった……しかしそれから僅か5分ほどでまた何者かの気配を感じ。布団から顔を出すと
「起こしてしまったかね?」
「……八神龍也……」
何時の間にかワタシの部屋の椅子に腰掛け。微笑んでいる八神龍也の姿があった……
「眠ると言うのならまた出直すが?」
「いや、構わん……色々と考えたい事も合ったしな」
布団から身を起こす少年に
「すまないね……少年」
「……何だその呼び名は?」
不機嫌そうな少年に私は
「名前知らないしな。 少年としか言いようが無いだろう?」
「……そうだな。ユウリだ。ユウリ・クロガネだ」
「よろしく。ユウリ」
「ああ。よろしく」
ユウリの身体を見て。気付いた……
(やはり魔力の残滓がある……何者かが治癒を施したと言うことか)
僅かに残る魔力の残滓……かなり強力な治癒魔法だったからか。まだ身体から魔力が抜けきってないのだろう
「なにか?」
「いや。なんでもない……所で……ユウリはファントムタスクでは無かったのかね?」
そう尋ねるとユウリは肩を竦め
「協力者だっただけだ、色々と考えて抜ける事にしたんだよ。死に掛けたがな?」
「ふっふふ。だろうな? だが男の決断と言うのは何時だって命懸けだろ?」
「違いない」
くっくと笑ったユウリは懐から
「タスクのスコールと言う女から預かった。お前なら暗号が解けるらしいが?」
差し出されたUSBメモリを見ながら
「暗号の解読には挑戦しなかったのか?」
「やってみたんだが。意味が判らなかった……剣十字に白と黒の羽根が重なってる絵が表示されるだけでな」
その言葉に私は
「なるほど……私が解けると言うのはそういうことか……」
1人納得していると。ユウリが
「どういう事だ?」
「剣十字はベルカの証。そして私は古のベルカの王族の血統だ……その暗号は私の事を示していると思う」
私がそう言うとユウリは肩を竦め
「判らん筈だ……」
と苦笑しているユウリに
「このメモリは預かる。私のPCで確認させてもらう」
「ああ……そうしてくれ、まだワタシはここから出ることは出来ないしな」
黒いメモリをコートに仕舞ってから
「これからどうするんだ?」
「さぁな……暫く考えさせてもらうさ。のんびりと休養しながらな」
くっくと笑うユウリの頭に手をおき。身体に残っている魔力を吸収する
「むっ? 何をした?」
「何気にするな。簡単な治癒だ……楽になったろ?」
手を閉じたり開いたりしてるユウリに
「じゃあな。今度はこんな暗い所じゃなくて。陽の下で会おう」
私はユウリの返事を聞く前に転移で自室にと戻り
「さて……このメモリに一体何が?」
ノートPCにメモリをセットして中を読み込む
「さてと……考えられるのは……」
思いついたキーワード……夜天の守護者と入力すると
「当たり……さて何が……」
メモリの中のデータに目を通し……目を見開いた……そのメモリの中に記されていた。ネクロの計画は信じられないものだった……
「なるほど……どうやら時間はさほど残されていないようだな」
ノートPCの画面に映し出されていたのは、ジオガディスの居城であり、聖王のゆりかごのより攻撃特化の改造を施された。空中魔城パンデモニウムの同型機の姿だった……
第53話に続く
次回はユウリと楯無の話にしようと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします