IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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第53話

どうも混沌の魔法使いです。今回は前回の後書き通り楯無さんとユウリさんの話と束さんサイドの話にするつもりです。

それでは今回もどうか宜しくお願いします

 

第53話

 

 

放課後に私はフレイア達のログハウスの地下に来ていた

 

「どう。気分は?」

 

「……まぁ。悪くはないな」

 

ベッドに腰掛けているユウリは退屈そうに大きく伸びをしているのを見て

 

「暇なの?」

 

「暇じゃないように見えるか?」

 

ジト目で尋ねてくるユウリを良く見る。ベッドに腰掛け明らかに暇そうな表情をしている

 

「見えないわね……」

 

「ならそれが答えだな」

 

ふんと鼻を鳴らすユウリにツバキさんに言われた事を尋ねて見る

 

「更識家か天乃宮家の支援を受けるの?」

 

そう尋ねるとユウリは

 

「今の所はそのどちらの支援を受ける気は無い。ワタシの道はワタシが決める」

 

しっかりとした口調のユウリに

 

「じゃあ前に話した。私の依頼を受けるって話は?」

 

「……保留中だ」

 

少し考えた素振りを見せてから返事を返すユウリに

 

「ふーん。じゃあ今度依頼してもいい?」

 

「……考えておこう」

 

返事はあいまいにはされたが。断れたわけじゃないか

 

「じゃあ。また来るわ」

 

「……」

 

返事を返してくれないユウリを見ながら部屋を出て鍵を掛けなおすと

 

「……また明日」

 

「……え……」

 

扉越しにまた明日と声を掛けて来たユウリに一瞬呆けたが

 

「ええ。また明日」

 

2度目の返事は無かったが。それで充分だった……私は少しだけ早足で寮に戻っていった……

 

 

 

 

窓の外を歩くお嬢様を見ながら

 

「随分とお嬢様はあのユウリとか言う奴にお熱みたいだな」

 

毎日毎日。地下のユウリに会いに来ているお嬢様の背中を見ながらそう呟くと

 

「まぁ。話を聞けば無理ないとは思うけど……」

 

「信用は出来ない」

 

フレイアもアイアスも複雑そうな顔をしている。それを見ながらあたしは

 

「でもまぁ。ツバキさんも知ってるし、あたし達がどうこう言う問題じゃないだろ?」

 

昨晩ツバキさんが来て。更識家か天乃宮家が責任を持つと決定をした、ならばその下のあたし達がどうこう言う問題じゃない

 

「だから両家の指示を黙って待つと言うのか? シェルニカ?」

 

「おう。あたしは待つぞ? それは両家に仕える人間ってもんだろ? 上の命令には従う、その指示は疑わない。そういうもんさ」

 

長い事戦場を渡り歩き傭兵家業をしていた。あたしにはそれについて迷う理由は無い

 

「そもそもだな? シェルニカ・オウレンって名前をくれた更識家と、普通の人間らしい事を教えてくれた天乃宮家の為に命を使うと決めた。あたしにゃユウリがどうだのこうだのなんて関係ねえよ」

 

元は名前の無い孤児だったあたしに名をくれて。殺しや破壊工作以外の事を教えてくれた天乃宮家には感謝してもしきれない

 

「大体な。言いたい事があるなら顔を見て言うと良いだろ? あたしは両家の決定には逆らわない、ユウリがあたし達と同じ様に更識家や天乃宮家の人間になるって言うなら受け入れる。敵になるって言うなら戦う。それだけさ」

 

良い意味で悪い意味でもあたしは生粋の傭兵だ。元からある程度護衛任務等をしていた、フレイアやアイアスとは違う

 

「ボクは……シェルニカみたいに割り切れない」

 

「私もだ」

 

そう言うフレイヤとアイアスにあたしは

 

「ならいざと言うときは……お前らが裁けば良い。何時もと同じだろ? フレイアなら剣士らしく斬れば良い。 アイアスなら狙い撃てば良い。 あーだこーだ考えるのは止めようや」

 

考えすぎてしまうフレイアとアイアスと、戦場の中で裏切りや策謀の中で生きていた。あたしとフレイアとアイアスがチームを組んでいるのは、きっとこう言うのが理由だと思っている

 

「ふっ。あいかわず変な所でドライだなお前は」

 

「ドライと言うよりかは単純なだけさ。どーせあたしは考えるのは苦手だからな。直感で動いてるだけだよ」

 

「突撃馬鹿」

 

「うっせ」

 

くっくと笑いながら。ソファーから立ち上がり

 

「夕飯なんにする?」

 

エプロンを着けながら尋ねると

 

「和食だ」

 

「マーボー」

 

そう即答する2人の声にあたしは

 

「和食だな。OK」

 

良い魚の開きがあるし、昨日から漬けていた漬物も良い具合だ。後は味噌汁と簡単な煮物を用意すれば良いか……

 

「ボクのマーボーは?」

 

「黙ってろ。味覚音痴」

 

「酷い」

 

よよよと嘆くアイアスを無視して夕食の準備を始めた

 

「マーボー!? 作ってくれたの!?」

 

「食いたいんなら作ってやるさ。だけど……そんなには辛くしてないからな」

 

どうせマーボーを食うって言うと判っていたから、ちゃんと豆腐を買い足していた。

 

「じゃあ食おうぜ」

 

「ああ」

 

「いっただきまーす♪」

 

細かい事は考えない。物事は大きな流れで出来ていると考えれば良い……だから難しい事は考えないでなる様になると思うほうが楽だ。

 

それにあたしにはユウリが出す答えはある程度判っている。やつとあたしの経歴は似てる、だからこそ判る信じれる者にしか従わない人種だ

 

(だからあいつが従うのは両家じゃないだろうな)

 

きっとユウリは更識家にも天乃宮家にも従う事は無いだろう……そんな確信にも似た思いがあたしの胸の中にあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里離れた山の中にある。篠ノ之束研究室では

 

「ねーアズマちゃん。調子どーお?」

 

部屋に入るなりそう尋ねてくる束に

 

「大分楽だ。痛みももう無いしな」

 

八神龍也にへし折られた肋骨の痛みはもう無い。束が施してくれた治療のおかげで予定より早く完治した

 

「しっかし酷いよねー? 女の子にこんな怪我をさせるなんてさ? 何が神の王だよ。神だって言うなら怪我をさせないで無力化くらい出来なかったのかよ」

 

不機嫌そうな束の声を聞きながら。私はへし折られた肋骨を撫でながら

 

(いや。やつはきっとその気なら無力化出来たに違いない)

 

圧倒的までの戦力差を感じた。数で勝っているネクロ達が警戒する理由を言葉どおりこの身で味わったから判る……八神龍也が私に怪我をさせたのは、警告の意味もあったのだろう

 

(次敵として立ち塞がれば次は無いだろうな)

 

あの男はきっと2度も敵にかける慈悲は持ち合わせていないだろう……

 

「ん~どったの? アズマちゃん? 何か考え事かにゃ~」

 

私の顔を覗き込んでくる束に

 

「ブラッドバニーの事を考えていた」

 

「あ、あ~アズマちゃんのIS? ん~流石の束さんでもDレベルのダメージは簡単には直せないかなー?」

 

まぁあれだけの攻撃を受けたのだから当然か……

 

「どれくらいで直る?」

 

「ん~クロエちゃんとアズマちゃんが手伝ってくれたら……2・3日かな?」

 

にこにこ笑う束に頷き

 

「判ったすぐにISハンガーに行くから。修理を始めててくれないか?」

 

「おっけ~じゃあ待ってるよーん!」

 

嬉しそうに笑って走って行く束を見ながら。自分用のPCを起動し

 

(準備が必要だ……いざと言うときに束が逃げる事が出来るだけの時間を稼げるだけの準備が)

 

今回の事で判った。今のままのISでは八神龍也にもネクロにも勝てない……もしネクロが束を切り捨てた時の為の備えは必要だ

 

(廃棄するつもりだったが……使えそうだな)

 

ラファールの最強パッケージ。クアッドファランクス、重力制御と射撃の反動制御で動けない欠点を持つ欠陥品のパッケージだが。

 

(この火力は役に立つし。改造すれば移動できない欠点は充分克服できる)

 

私になら出来ると言う確信がある。だが今やるべき事は

 

「ブラッドバニーの修復だな」

 

ただのパッケージではなくオートクチュールにする必要がある。その為にはブラッドバニーの修復が最優先だ

 

(私は束の為の道を作る……この道が間違いだとしても。私はその道を貫くぞ……八神龍也)

 

束は賢い。時が来ればきっと変われる、だから今は時間が必要だ……そしてその為の時間を作るのが私の生きる意味なのだから……

 

 

 

 

 

 

その日私は久しぶりに更識家に来ていた

 

「椿様。櫛奈様が奥でお待ちです」

 

「ありがと」

 

そう返事を返し。櫛奈の待つ部屋に向かう

 

「ひさしぶりね。椿」

 

「やっほ。元気そうね」

 

更識櫛奈。先代の更識家の妻で当然簪ちゃんと楯無の母親で、私の幼馴染だ。

 

(しっかし相変わらず楯無に良く似てるわよね)

 

いつも思うが、楯無と櫛奈は良く似ている。親子だからと言えばそれまでだが、本当に良く似ている

 

「で? 今日は何のよう?」

 

「んーちょっと所かかなり込み入った話になるから。人払いして欲しいんだけど?」

 

この話は聞かれるわけには行かないので櫛奈に人払いを頼むが

 

「もうしてあるわよ。私と椿の話となると、他の人間に聞かせれる話じゃないからね」

 

そう笑う櫛奈に私は

 

「それなら安心。あのね、前に話したでしょ? エリスちゃんのこと」

 

エリスちゃんが楯無にスカウトされた時にエリスちゃんの生い立ちと過去は櫛奈に話してある。だから私がそう言うと

 

「前に言ってたユウリとセリナって子の話? 大分探してるけどまだ見つかってないわよ?」

 

「それがね。今IS学園にユウリがいるの、今の所はフレイア達に監視して貰ってるけどね」

 

「監視? なんでよ。折角見つかったエリスちゃんの姉なんでしょ? そんな犯罪者にするような……「それがユウリは黒武士として活動していたのよ」……そうなると事情は変わるわね」

 

黒武士。少しでも裏世界に関わる人間ならこの名前を知らない者はいない。漆黒のISを身に纏い違法研究所の襲撃や、報酬しだいでは要人の暗殺を引き受けるヒットマン……それがユウリの裏世界での通り名だ

 

「でもまあ良かったじゃない。エリスちゃんが覚えていないとは言え姉妹の再会……「ユウリは違法の研究の後遺症で人造の男性操縦者になってるのよ」

 

姉妹の再会と言い掛けた櫛奈の言葉を遮って言うと

 

「人造の男性操縦者か……にわかには信じがたいけど……嘘じゃないのよね?」

 

「こんな嘘は言わないわよ。これ一応検査データと写真ね」

 

学園から持ってきていたデータを渡す。櫛奈はそれにすぐ目を通しながら

 

「来たのは更識の支援が目的?」

 

「そ、更識家と天乃宮家の両家が後ろにいれば、おいそれと手は出せないでしょ?」

 

更識家の家は優秀なSPや暗部部隊の派遣元として、天乃宮家は優秀なIS研究者と指導者としてそれぞれ有名だ。どの国も少なからず更識家と天乃宮家は関係している、下手に両家が保護してる人間にちょっかいをかければどんな手痛いしっぺ貸しがあるかなんて言うまでもない

 

「……まぁ。判らないでもないわ……でもね「楯無は大分ユウリを気に掛けてると言うか。惚れてるみたいなのよ」……刀奈はユウリが元女って知ってるの?」

 

「知らないわよ? 100%男って思ってるわね」

 

大体今のユウリを見て元女と思う者は存在しないだろう。少々小柄ながら鍛え上げられた肉体と鋭い視線はどこからどう見ても男の物だ

 

「まぁぱっと見は間違いなく男よね」

 

写真を見ながら暫く唸っていた櫛奈だったが……

 

「まぁ刀奈が気に掛けているって言うなら考えなくもないわよ? けどさ……黒武士と刀奈の接点が見えないんだけど?」

 

自分の娘とユウリの関係性が見えないと言う。櫛奈に

 

「前に何度か街とかでばったり出くわしてるみたいよ? 黒い悪魔に襲われた時も助けられたらしくて」

 

楯無から聞いた何時・そして何回あったのか? という話をすると櫛奈は

 

「……娘と親って似るのね。私もあの人と会ったのは戦場だったわね」

 

今でこそ、華道や琴の先生として活動している櫛奈だが……昔は私と同じ様に違法研究所を破壊して回ったりしていた、だから櫛奈の馴れ始めも戦場だったそうだ

 

「でもね。楯無って絶対自分の気持ちに気付いてないわ」

 

「え? どういうこと?」

 

不思議そうな顔をする櫛奈に私は

 

「いやね。何かほっておけないとは感じてるみたいなんだけど。何でほっておけないと思うのか? とかが全然判ってないみたいなのよ」

 

間違いなくあれは自分の気持ちを理解していないと断定出来ると言うと

 

「我が娘ながら……呆れ果てて何も言えないわね」

 

ふうっと深い溜息を吐く櫛奈は添付していた写真を見ながら

 

「ちょっと背丈は低いけど……身体つきは良いわね。生粋の剣士って感じね」

 

写真から自分の娘が目をつけた相手の分析を始める櫛奈

 

「まぁ黒武士って通り名が付く位の戦闘力は持ってるし、筋肉の付き方も剣を振る上では理想的な感じよね」

 

剣の使い手ならではの観点だ。私は写真を見ている櫛奈に

 

「それで櫛奈にはお願いがあるのよ」

 

「何を? この子を支援する話とは別件?」

 

そうそうと頷きながら私は

 

「ちょっとねー楯無の危機感を煽って欲しいかなって」

 

「どういうこと?」

 

首を傾げる櫛奈に私は

 

「楯無って絶対切っ掛け無いと自分が恋してるって気付かないと思うのよ。だからもしユウリがIS学園を去るって言うなら、更識家か天乃宮家のどちらかで保護するって言ってくれれば良いわ」

 

「ああ。想い人が居なくなると知れば多少は心境が変わると」

 

「そう言うこと。もし楯無が気付かなくても暫くしたら。IS学園に戻せば良いしね。じゃあそういう流れで宜しく」

 

もう話すことは話したしそろそろIS学園に戻って研究を進めたいし。そろそろ帰るとしよう

 

「ん。了解、じゃあ今日の夜にも連絡してみるわ。それと今度は仕事の話じゃなくてゆっくり出来る時にね」

 

そう笑う櫛奈と別れ。私はIS学園にと戻っていった……

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

「え、えーと……今なんて言ったのお母さん?」

 

珍しくお母さんから連絡があり。少しだけ嬉々とした気持ちで携帯を取ったのだが……お母さんの言った言葉が理解できず尋ね返すと

 

「だから今IS学園で保護されてる。ユウリ・クロガネがもしIS学園を去るって言うなら。更識家か天乃宮家で保護するって話」

 

「なんでお母さんがユウリを知ってるの?」

 

なんで本家に居るお母さんがユウリを知っているのかが気になり尋ねると

 

「更識家はIS学園の経営にもかかわってるの忘れた? 一応そういう報告は回って来てるのよ?」

 

そ、そうだったんだ……多分ツバキさんとかフレイア経由でお母さんに伝わったのか……

 

「という訳だから。刀奈がユウリにIS学園に居てほしいと思うのなら。自分で残るように説得するなり話し合うなり好きにしなさい。一週間後には迎えにいくからね。じゃあお休み」

 

「ちょっ!? お母さん!? 切れちゃった……」

 

言うだけ言って通話を切る。しかもその後は着信拒否……相変わらずの一方通行具合に腹が立つが……

 

「えーと……え? 説得しないとユウリ本家に行っちゃうって事?」

 

折角会えたのに本家に行かれたら今度は何時会えるかわからなくなってしまう

 

「説得って言っても……何すれば良いのよ」

 

そもそもユウリがIS学園に残る事を承諾してくれるかどうかも怪しいし。私の話を聞いてくれるかどうかも怪しい……暫く頭を抱え思い出したのは

 

「依頼! そう依頼だわ!」

 

ユウリは私の依頼なら優先的に聞いてくれると言っていた。ならそれで何か頼んでIS学園に留まってもらえば良い

 

「うんうん。それで行きましょう」

 

良い考えが浮かんだ浮かんだと笑っていて気付いた

 

(あれ? なんで私。ユウリがIS学園から居なくなるって聞いてあんなに焦ったの?)

 

ふとそれが気にはなったが……

 

「なんでだろ?」

 

すこし思い返してみるが判らない。暫くベッドの上で考えて見たが……

 

「まいっか。寝よ」

 

とりあえず今日は寝て、明日の朝か放課後にも話しに行けばいいかと思い、私はベッドに潜り込んだ……だがここで考える事を放棄した事で楯無はとんでもない自爆をすることになるのだが、それはまた別の話である

 

 

第54話に続く

 

 

 




次回は一夏サイドやユウリ・楯無サイドの話をするつもりです。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします

あと私の個人的な好みとして。楯無会長は恋愛初心者が良いと思っていますのでこういう形にして見ましたのであしからず
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