IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はスコールと龍也さんの密会? の話になります。
こういう話は初めてなので上手くできるかわからないですが、どうかよろしくお願いします


第63話

 

 

第63話

 

指定された店は、ぱっと見飲食店には見えないつくりをしていた。知る人ぞ知る名店と言うやつか、それともやばい話をしていてもばれないというのを考えたのかは判らないが、中々にいい選択かもしれない。そんな事を考えながら店内に入ると、客は1人しかいなかった、ふわりとした金髪に洒落た紅いドレスに宝石の付いたペンダントを身に着けた。どこか怪しげな雰囲気を放つ女性だった

 

「お待ちしておりましたわ。神王陛下様」

 

にこりと笑いながらそう言う女性に思わず眉を顰める。神王の名は継いだが、実際私はそこまで偉くないし。神の名を名乗ることもおこがましい若輩者だ。その名は正直言って好きではない

 

「その名は余り好きじゃない」

 

「それは失礼しました。では八神龍也さんとお呼びすれば?」

 

慇懃とも取れる態度を取る女性の前に座りながら

 

「まずは自分が名乗るのが礼儀ではないのかね?」

 

「それは失礼いたしました。スコール。スコール・ミューゼルです。八神さん「龍也で構わん。私もスコールと呼ぶ。それと敬語は止めろ。私はそんなに偉い人間じゃない」

 

そう言うとスコールは驚いた表情をする

 

「なんだ? なぜそんなに不思議そうな顔をする」

 

そう尋ねるとスコールは失礼しましたと言ってから

 

「ネクロから話を聞く限りは、貴方は冷酷な審判者だと聞いていたので」

 

「意外だったとでも言うのか? 私は自分で言うのもなんだが。甘い人間だと思うぞ」

 

そんな事を言いながら、壁際に控えていたウェイターに赤ワインと軽くつまみを注文する。余り酒は呑まないが偶にはいいだろう

 

指を鳴らす、キンと言う乾いた音が響き。私達の周りに空気が変化する

 

「何をしたのかしら?」

 

「認識妨害をな。聞かれたら不味い話だ、犠牲者は増やしたくないのでね」

 

ネクロの話を少しでも聞けば狙われる可能性がある、ならばその前に手を打つのが妥当だろう

 

「意外と優しいのね?」

 

「意外とは何だ、意外とはそんなに悪人に見えるかね?」

 

いいえと笑うスコール。表面上は互いに笑い合っているが、その本質は私もスコールも少しでも自分が有利な立場に立とうと考えている。交渉の場合相手に弱みを握られるとそこから崩れる。あくまでも対等の立場を貫かなければならない

 

「お待たせしました。ご注文の赤ワインとチーズの盛り合わせです」

 

おかれたボトルをあけて自分の分とスコールの分に注ぎ。軽く打ち合わせる、さて向こうがどんなカードを切ってくるか楽しみだ

 

 

 

威圧感がとんでもないわね。私は八神龍也に注がれた赤ワインを少しだけ口に含みながらそんな事を考えていた。こうして向き合っているだけでもとんでもないプレッシャーを感じる。ネクロが最強だ何だのいう理由がわかった気がする。そして今黙り込んでいるのは、私がどんなカードを切るのか待っているからだろう。

 

「これを見てもらえるかしら?」

 

最初に切ることにしたカードは各世代のISのコピーが取られているという事。私はよく判らないがネクロと戦ってきているという。八神龍也には十分な効果を持つだけの札になるはず、コピーしたものを渡すと

 

「ふむ……確かに有力な情報だな。なぜネクロがISをコピーしているのかが大体見当が付く、良い情報だ感謝しよう」

 

見ただけで何をしようとしているのかわかる? やはりそれは長年戦って来たからこそ判る。物なのかもしれない

 

「そして次にこれ、私はなんだか判らないけど、貴方には判るんじゃないかしら?」

 

それはオータムが持ってきてくれた映像ファイルだった、ノイズは酷いが確かに何者かの姿と第8部隊の戦闘データだ

 

「隊長! もうこれ以上抑えきれません!」

 

「そう……ありがとう」

 

もうこれでしか聞けない。名も知らぬ友人の声と第8部隊の隊員が死んでいく声が私の胸を締め付ける。私は確かに彼女の友人だった。出来る事なら救いたかった、でも救えなかったという後悔が胸の中に押し寄せる

 

ザンッ!!!

 

鋭い斬撃音と同時に何者かの姿が映りこんだ瞬間

 

「!? 馬鹿な……どういうことだ」

 

「人目で気付くなんてさすがね、私は何十回と見返してやっと気付いたわ。この襲撃者が何者なのかをね?」

 

逆光だし、映像は不鮮明だ。それにノイズのせいでよく見えない。それだけの悪条件の中でもしっかりと襲撃者のシルエットを写していた。襲撃者は女だった、しかもISを展開している。これは5回目の再生で気付いた。最初はネクロがISをまねているのだと思っていたが実際は違っていた

 

「この肩のライン。それに全体的なシルエット……色こそ違えど、このISは」

 

「暮桜……織斑千冬のISだな?」

 

そう呟く八神龍也に頷く。最初は信じられなかったが間違いない、この襲撃者のISは暮桜だ

 

「ネクロは私達を斬るのかしら?」

 

「……チャキ」

 

友人の呟きに返事を返さず襲撃者は刀を構える。それは淡い光を放っていた、間違いなくワンオフアビリティーの零落白夜だ

 

「それとも殺してネクロにするって所かしらね? 第2・3部隊と同じく」

 

その問いかけに襲撃者は答えない、友人は肩を竦めながら

 

「残念だけどさ。私は化け物になるのもごめんだし、今のファントムタスクにも忠誠なんて誓えない、タスクのあの人の理想のない組織になんて興味ないの」

 

そう笑いながら机の中に埋め込まれた。ガラスのケースに護られた何かのボタンを見せ付けるように笑い

 

「死にたくないのなら逃げれば? 偽り「死ねッ!!!」遅いわよ」

 

がシャンッ!!! 拳を振り下ろすと同時に画面が切り替わる。このロムは爆破された第8部隊のアジトの地下室から発見された。

最後まで映像を記録し、私の手の中に渡るように計算されていた仕掛けだった。画面が暗転すると上の階が揺れ映像は途絶えた

 

「これがネクロがISのデータを奪った理由だと思うのだけど、どうかしら?」

 

私がそう尋ねると八神龍也は難しい顔をしながら、ぶつぶつと何かを呟いている。少しだけ聞こえてきた単語は

 

(平行世界? それに別の存在? ほんとに魔法って何でもありね)

 

私達では図り知ることの出来ない世界を見ている八神龍也は、自分の中で考えが纏まったのか。話を変えてきた

 

「しかし、これだけの物を入手しようとしたらネクロに狙われるだろう? 良く手に出来たな?」

 

「友人が命と引き換えに残してくれたものよ、何が何でも手にして見せるわ」

 

オータムはLV1の監視を潜り抜け何とか、このロムを回収してくれた。第8部隊は何時どこの組織に見つかってもおかしくないように、無数の隠し通路をアジトに用意していた、だから逃げれたと言えるだろう

 

「そうか……」

 

私の話を聞いた。八神龍也は机に置かれていた空のガラスを私の隣に置き、ワインを注ぎ

 

「魂の救済があらんことを……」

 

名も知らぬ私の友人のために祈ってくれた。なんだかんだ言って実は凄く良い人なのかもしれない。私も十字を切ってワインを煽る。素面では話せないが、酔いすぎても困る。気分を変えるための一杯だ

 

「それでこれだけの情報を私に渡したんだ、お前は何を望む?」

 

穏やかとも取れる光を宿した、蒼銀の瞳が私を見つめる。下手な遠まわしはいらないと告げているような目に見て、私は決めた。単刀直入に言おうと。この男は優しい、その優しさに付け込むよう出来が退けるが。生き残るためにはその優しさを利用しなければならない。私は八神龍也の顔を見て

 

「助けて欲しい仲間がいるんです。その子を助けてください。私とパートナーは悪と呼ばれることもしました、殺人もしました……でも私は、私達はあの子に死んで欲しくない」

 

深く頭を下げて頼む、いや懇願する……悪と呼ばれるだけはした、殺人も犯した。だがそれはかつてのタスクの理念に従っての事だ。世界にとっての悪となり警戒させること、ネクロによって処罰された前のリーダーは高貴な理想を持っていた。人間にとっての悪を行い、世界にとって正義をなす。この世界に純粋な正義などない、この世は限りなくグレーだ。だから私は言える、私は悪と呼ばれるだけの行為はした、だが間違ってはいなかったと。だから自分の行いに悔いはない、いつか裁かれるとしても甘んじてその罪を受けよう。だけどマドカは違うまだ引き返せるところにいる。本人は嫌がるかもしれない、でも私は彼女には日の下を歩いていて欲しいと思う。ユウリと同じように

 

「……自分達の死は受け入れた、だがそのマドカという少女を助けて欲しいと言うのか?」

 

八神龍也の小さな呟きに私は

 

「ええ……私ともう1人、オータムは既に覚悟を決めているわ。だけどあの子は違う、ネクロに影響を受けているだけ。だからまだ助かる、だからお願いマドカを助けてあげて」

 

こんな都合の良い話があるわけがない。散々悪と呼ばれるだけの事をしていまさら助けろ? そんな話を聞く馬鹿はいないだろう

 

「自身の罪を認め、そしてその上でお前の仲間を助けろと? そんな都合のいい話があると思うか?」

 

そう問いかけてくる、八神龍也の顔を見ずに頭を下げたまま

 

「私は自分の信じた道に迷いはないわ。世界にとって必要な悪を成すと言う信念に迷いはない、だけどあの子は違う。利用されているだけ、だからあの子だけは光の元に戻るべきなの」

 

繰り返しマドカを助けて欲しいと頼み込むと

 

「……その願い、確かに聞き届けた。判った必ずマドカという少女は助けよう」

 

少し黙り込んでからそう言う八神龍也の顔を思わず見る。先ほどと同じような笑みを浮かべたまま

 

「だがしかして、お前達も失うには惜しい人材だと思うよ。悪であると認め罪を受け入れる覚悟、賞賛に値する。だから誇れ、自身が悪であることにそして迷うな、お前の信じた願いは正しい」

 

否定するわけでもなく、受け入れるわけでもなく。八神龍也は認めた、私達のあり方を……

 

「そのマドカと言うのはどんな少女だ? 顔が判らなければ救いようがない」

 

そう言われてもマドカの写真なんてない、だけど

 

「ユウリが知っているわ。詳しくはユウリに聞いて」

 

タスクの離反者にして現在IS学園にいるユウリの名を上げると

 

「判った。ではな……また会おう」

 

八神龍也はそう言うと、机の上に数枚の紙幣を置いて立ち上がり。私の横を通り抜けながら

 

「誇り高き悪の華。そのあり方夢忘れん事だ……」

 

私の肩を叩いて去っていくその背中に

 

「貴方は正義の味方なのに悪を認めるの?」

 

どうしても気になってしまった事を尋ねると八神龍也は

 

「ふん。私は正義など名乗った事はないよ。私は護る者だ、正義の味方は全てを救うだろう、だが守護者は護れる者しか救わない。ならばそれは正義と呼べるかね?」

 

それは独善的とも言えるあり方。正義とは程遠いあり方だろう、言うならば私達に近いあり方とも言える

 

「だが、それでも全てを救おうと思う、全てを救いたいと願う。そんな矛盾した願いを持つ者がいる、そんな壊れた人間が悪だなんだと言う事ができるか? 答えは否。だからこそ私はお前達のあり方を是と認めるさ」

 

そう笑うと八神龍也は今度こそ背を向けて歩き去っていった……

 

 

 

 

私はIS学園に戻ると、すぐに地下の研究所に向かった。もちろん幻術は掛けないで本来の姿のままでだ、地下にはツバキとユウリに加えて千冬の姿もあった、呼び出す手間が省けたので丁度いいと思いながら。教員用のIS、特に千冬用の打鉄の調整をしてる3人に

 

「少しいいかね?」

 

近くの椅子に座ってからそう声を掛けると、驚いた表情をして3人が振り返り。私を見て目を見開いている

 

「なんだ。そのまるで化け物を見たような目は。失礼とは思わないかね?」

 

鼻を鳴らしながら言うとツバキが

 

「あ、あ。そうだったわね、君はそっちの姿が本当の姿なのよね?」

 

1番先に我に帰ったツバキがそう尋ねてくる

 

「そう言うことだな、さて。忙しいところ申し訳ないが少しばかり私の話を聞いてくれるかね」

 

私がそう言うとユウリが眉を顰めながら

 

「ネクロ関係か?」

 

「ま、そんな所だな。聞きたくないのなら聞かなくてもいいが、そのせいで何かあったと言われても責任は取れんぞ」

 

私がそう言うとツバキは「とんでもない」と言いながら携帯端末を私の前において。自身の手には手帳を手にして

 

「そんなわけないわ、それに話す気になってくれたって事よね? 早速だけど魔法について「それはまだだ。今はネクロだけだ」

 

研究者肌だけに未知には興味があるということか、まぁそれ自体は悪い事ではないが。今はそんな話をしに来たのではないのでそう言うと明らかに気落ちした素振りを見せてから。

 

「それで話って何かしら?」

 

粘っても話をしてくれないと思ったのか、話を切り替えるツバキに

 

「ネクロが近いうちに仕掛けてくるかも知れん、IS学園の防衛を固める事を進める」

 

私がそう言うと3人とも一瞬何を言われているのか判らないという表情をしてから

 

「どういうことだ!!! 説明しろ!!」

 

机を叩きながら怒鳴る千冬に私は肩を竦めながら

 

「私が知るわけないだろう? そんなのはネクロに聞け」

 

あいつらが何を考えているかなんて私が知るわけもない。ネクロの行動指針はその世界にいる上位ネクロが決める、その固体によって考え方が違うので私が判るわけがない

 

「まさかお前がいるのが襲ってくる原因ではないだろうな?」

 

疑わしいという視線を向けてくる千冬。まぁそう思うのは無理もないか

 

「私が居ようが居なかろうが関係ないな。このデータからして判る」

 

スコールから貰い受けたデータとなのは達が集めたデータを纏めた。書類を机の上におくと

 

「これは?」

 

書類を見ながらこの書類が何か尋ねてくる。千冬に

 

「行方不明のIS操縦者のリストに各国のIS研究所に残されたハッキングの形跡を纏めたものだ。案外顔見知りがいるかも知れんぞ?」

 

私がそう言うと千冬とツバキは慌ててリストを覗き込む。しばらくしてから

 

「とりあえず私の知り合いは大丈夫みたい」

 

「私もですね」

 

ほっとした表情をするツバキと千冬とは対照的にユウリはさめた態度で

 

「ネクロの目的は何だ。なぜ操縦者とISのデータを盗んだ?」

 

納得できないという表情のユウリ。確かにネクロを知るユウリには理解できないだろう。態々ISなんか使わなくてもネクロは強いから。だからこそ気になるのだろう

 

「考えられるのは操縦者のネクロ化……臨海学校のときのシルバリオゴスペルと同じような状況になると思ってくれればいい」

 

臨海学校での異形と化したシルバリオ・ゴスペルを思い出したのか顔を引き攣らせる。ツバキと千冬に

 

「一応対処法は教えておこう。ネクロは個体差はあるが基本的には無限再生能力を持っている。映像で見ただろ?」

 

ゴスペルが2回3回と回復していたはずだというと、思い出したように頷く千冬とツバキ。やはり実物を見てるだけあって理解が早くて助かる

 

「だがそれはコアがあってこそのものだ」

 

血の様に赤い球体のコアの映像を見せると、千冬がそのコアを指差しながら

 

「これが心臓というわけか?」

 

「そうなる。このコアには魔力が溜め込まれていて、ダメージを受けると自動的にその魔力を開放する。それによってネクロは不死とも言える回復能力を持つ。だがコアを砕かれれば消滅するしかない、対峙したのならコアを狙え」

 

私がそう言うとツバキは手を上げてからコアの映像を指差して

 

「このコアって言うのはどこにあるの? やっぱり心臓の位置なのかしら?」

 

「特定は出来ていない。コアの場所は固体によって異なるのでここだ。という場所はないが修復が早い箇所に近い傾向がある」

 

コアから近ければ近いほど回復が早い、牽制のダメージでどこにコアがあるかの大まかな予想をつける。これは新規の管理局局員が全員やらされる訓練だ。高位の魔導師は身体ごと消滅させるが、普通の魔導師にはできない。だからコアの場所を予測できるようにするのが基礎の訓練に組み込まれている

 

「ISで何とかなるものなのか?」

 

「下級なら何とかなるかもしれんが、上位となると今のISでは太刀打ち出来んな……まぁその場合は逃げろ。それと襲撃されるのは誰か判らんからな。これを持っておけ」

 

小さな楕円形の機会をコートから三つ取り出し投げ渡す

 

「これは? 見たことない金属だけど?」

 

触りながら尋ねてくるツバキに

 

「合流用のセンサーだ。私が親機を持っているから……いや、説明するより見たほうが早いか」

 

親機に魔力を通すと、ユウリ達の持つ子機の中心が光り、その光の中に矢印のようなものが浮かび上がる

 

「す、凄い!? これって何?」

 

「ネクロは何時どこに現れるかわからん、1人で戦うのは無謀と言える。その時に近くの仲間に自分の場所を知らせるものだ」

 

念話という手もあるが、それだとネクロに感づかれる。だから魔力を殆ど使わない物としてジェイルが製作した物だ。六課メンバーは殆ど使う事はないが、一応持っている

 

「私も一応警戒はするが、誰が狙われるか判らん。連絡をしたら早く合流してくれ、私の予想だが……狙われるのは一夏達の代表候補生の可能性が高い」

 

まだ未熟で世界の闇も知らない子供。ネクロにとっては格好の獲物といえる、私は椅子から立ち上がると幻術を発動させて16歳前後の姿に化ける。もう今はこれ以上話す事はないしな

 

「では邪魔したな」

 

ネクロの事も私の事もまだそこまで詳しく話すつもりはない。これ以上ここに居て話したくない事を繰り返し聞かれるのもうっとうしいので、難しい顔をしてるツバキ達に背を向けて研究室を後にした……研究室を出て寮に向かいながらふと夜空を見上げる

 

「もう少しで満月か……何かありそうな気がするな」

 

月と言うのは様々な魔性に関わる。満月でネクロが活性化するなんて聞いた事はないが、可能性がないというわけではない。

 

学生生活で緩んだ気を引き締めたほうが良いなと思いながら、ゆっくりと寮に向かって歩いて行った……

 

 

 

「ハーデス。気分はどうだ」

 

「悪くない。しかしこの魔力の薄さは俺には馴染まん」

 

ぶつぶつと文句を言うハーデスに

 

「仕方あるまい、そう言う世界もあるということだ」

 

ネクロにとって魔力とは生きるために必要なものだ、上位LVとなれば魔力は必ずしも必要と言うわけではないが、それでも魔力が多いほうが調子がいい。

 

「ベエルゼ。1つ聞きたい」

 

「何をだ? ヨツンヘイムのことか?」

 

本来は殲滅用の兵器である、パンデモニウムを防衛用に改造した事についてかと尋ねると

 

「違う、俺が聞きたいのは。なぜ死に掛けているネクロを6体も回収した? そいつらを回復させるのに使う魔力がもったいないとは思わないのか?」

 

なるほど、そっちの事か。確かに私は消滅しかけていたネクロを数体回収し、魔力を与えて回復させている。確かに理解できない行動かもしれない

 

「ふふふ、あのネクロには利用価値がある。お前には理解出来ないだろうがな」

 

殲滅特化のハーデスには私が何を考えているのか判らないのだろう。だがちゃんと意図があっての再生だ

 

「まぁそうだな。それよりもベエルゼ、俺を戦わせろ。何時までもここにいるのは気が滅入る」

 

「あと少し辛抱しろ。近いうちに仕掛ける、それまでは魔力を蓄えていろ」

 

詰まらなそうに鼻を鳴らすハーデスから背を向けて、王座に戻る。

 

(抑えておくのも限界か)

 

ハーデスにしろ、アヌビスにしろ、ベルフェにしろ。その本質は殺戮者だ。私やベリトのように策略を好むネクロではない

 

そろそろ暴れさせないと不味い。ゆっくりとヨツンヘイムの通路を歩きながら窓を見上げる

 

「もうじき満月か……そろそろ仕掛けるべきだな」

 

満月と言うのはネクロにとっては都合のいい条件を示している。空気中の魔素の濃度があがり行動しやすくなる

 

(誰を出すか考えておくべきだな)

 

守護者を完全に倒すつもりはない、あくまで様子見が目的だ。そのついでで代表候補生というのを2人ほど捕まえれればいい

 

「私が知る貴様と今の貴様……どれほどの差があるのか見極めさせてもらうぞ」

 

 

亡者達の足音はもうすぐ近くまで迫り始めていた……

 

第64話に続き

 

 




次回はISの戦闘回をやろうと思っています。龍也さんとネクロの戦闘回は65か66話を予定しています。
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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