ここまで長かったなあ。でもやっと辿り着けました! ここからが私のステージとなるでしょう!
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第65話
夏休みの訓練のない日。自室で本を読みながらふと呟く
「今日は満月か……」
警戒していた満月の日だ、月は様々な魔性に濃い影響を与える。ネクロがどうかはわからないが警戒していてそんはない筈だ
(私の嫌な予感は当たるからな)
大体何か起こると見て間違いない。外れて欲しいと願うがここ8年ほど私の嫌な予感は何一つ外れた事がない。もう一種の未来予知だと思う
(一夏達もIS学園に居てくれると良いんだが)
それならば護りやすいと思っていると、部屋の扉が数回ノックされてから開き
「龍也! IS学園の近くで祭りがあるんだが一緒に行かないか?」
その言葉に私は酷い頭痛を覚えながら、心の中でこう思った
(居るかどうかも判らん神とやら。お前はよほど私が嫌いなんだな)
居るとしたら神とやらは私が嫌いに違いない。もし居ないのなら私の運は相当悪いに違いない
「なんだ龍也。そのいもしない存在に恨みをもっていますって言う顔は?」
「気にするな一夏。折角の誘いは嬉しいが今回は見送らせてもらうよ、ツバキさんに呼ばれているのでね」
丁度良い言い訳にツバキさんの名前を出すと一夏は、そうかと頷いてから
「そっか、じゃあ仕方ないな。んじゃ、俺達だけで行って来る」
「ちなみに誰が来るんだ?」
これが箒達くらいまでならと思いながら尋ねると一夏は指折りしながら
「えーと箒達にシェンさんに弥生さんにクリスさんに簪さんにエリスさん。それとヴィクトリアさん」
代表候補生オールメンバー。くそっ! 高校生って言うのはこんなに遊び好きなのか!? そう思うと舌打ちが出た。
戦い続けの私では理解できない世界だった。これが普通と言うことか
「んじゃな。龍也」
私の苦労を知らずか、のほほんと笑って出て行く一夏の背中を見ながら
(如何してこうなるかね?)
祭りといえば夜、祭りの最中に襲ってくることも考えられ、帰り道に襲ってくることも考えられる。ネクロからすれば一夏達は取るに足らない存在だ。ネクロ化して手駒が増えただけではなく、ISも手に入る。一石二鳥だ
(なのは達を一夏達の警護に回すか)
祭り会場か、IS学園の近くでかはわからないが。仕掛けてくるのは間違いない、私は呼んでいた本を閉じ
(どう出てくるかだな)
今の所判っているネクロはアヌビス・ヴォドォン・ペガサスの3体と、ユウリからの情報で死霊使いと殺人凶のネクロの2体
死霊使いは恐らくネクロマンシーに適性のあるネクロ。ネクロが人を殺しネクロ化するのではなく、呪術で死体や魂をネクロ化する方法だ。こちらの方が失敗がなく安定しているが、使えるネクロはそうはいない。軽く見積もってAA+からSSまでのクラスと見ていいだろう。
そして殺人凶と聞いて、思い浮かぶネクロが1体居た。まだ私が六課に戻る前に良く戦った、最もネクロらしいネクロ。「ベルフェゴール」だ。そしてそのベルフェゴールが居るという事はこの世界に居るネクロは
「LV4 ベエルゼ。そしてベルフェゴール、ベリトか……」
この3体のネクロは、ベエルゼをリーダーとし、ベリトが参謀。ベルフェゴールが切り込み隊長として活躍していたネクロだ。
パンデモニウムが出たときには居なかったが、どうやら生き残っていたようだ
「どうやら今日は休んでいるところの話ではないか……」
そう呟き私は空を見上げた、雲1つ無い快晴だが。それが何かの予兆のように私には思えた
ヨツンヘイムに帰還指示が出て戻ると
「おや? ペガサスではないですか、どうも」
壁に背中を預けているペガサスを見つけ、帽子を脱ぎながら挨拶をすると
「ふん」
不機嫌そうに鼻を鳴らし私から目を逸らすペガサスを見ながら
(まだ彼には神の徒としての自覚が足りませんね)
1度死に。こうして蘇った私達は神に選ばれたというのに、なぜその事が理解できないでしょうか。
「良く戻った。ヴォドォン、ペガサス」
ホールの奥から赤黒い甲冑と青いマントを身に着けたネクロが現れる。私は慌ててその場に膝を着きながら
「ただいま戻りました。ベエルゼ様」
「相変わらずだな。ヴォドォン、さて態々呼び戻したのは他でもない。代表候補生に仕掛けて、守護者を引っ張り出してもらいたい、指揮はお前に任せる。必要なネクロが居るのなら言うが良い。用意する」
その言葉を聞きながらベエルゼ様に
「ペガサスは?」
「お前と一緒に出撃して貰うが、ペガサスは単独行動だ。指揮に従うようなタイプではないからな」
「良く判っているじゃないか。では俺はもう行く、ここは好かん」
そう言って出て行くペガサスを睨んでいると、ベエルゼ様が
「そう睨むな、あれはあれで使い道がある。それよりもさっきの話はどうだ?」
「勿論引き受けさせていただきます」
頭を下げながら言うとベエルゼ様は任せたぞと言いながら、私に作戦を説明し始めた。それを聞きながら私は
(やはりこの方は優秀だ)
二重三重の策を持って守護者を引きずり出し、仲間と引き離す。いくら守護者とは言え足手まといを10人近く抱えてまともな戦闘が出来るわけが無い。守護者の弱点を良く知っているベエルゼ様らしい戦法だ
「そして今回はLV1~3に加えて、こいつらの実戦テストを頼む」
指が鳴らされ現れたのはどんよりとした目をした。3人の女の姿、だが放つ気配は人間ではなくネクロの物だ。恐らく人ベースのネクロだ。だがその割には感情が無い様だが……
「お前の疑問は最もだ。あれはネクロコアをベースにしたISの適合者だ、人格等は消してある。駒として使え」
「なるほど、ではお預かり「いや、構わん。初期型だ、破棄しても構わん。もっと強力なネクロも準備が出来ているからな」
その言葉に頷きながら立ち上がり
「それでは月が昇り次第。仕掛けさせていただきます、吉報をお待ちください」
私はそう言ってベエルゼ様に預けられた3人を連れてホールを出るとペガサスで腕組して立っていて
「月が昇る頃に合流する。それまでは俺に構わないで貰おうか」
そういって歩き去ろうとするペガサスに
「待ちなさい、話を……もう行ってしまいましたか」
ペガサスは私の言葉を聞かずに行ってしまった。相変わらず協調性の無いネクロだ。とは言え能力は高いので文句は言えない、ネクロは応じて個人主義が多い。団体行動に適したネクロなんてそうは居ないのだから
(さてと使えそうな。LV3を見繕いに行きますか)
LV1と2は雑兵同然。守護者を引きずり出すにはLV3が必要だ。しかもただのLV3ではなく能力が高いほうが良い、私は判断しヨツンヘイムの奥へと足を進めた
「いや、楽しかったなー」
夏祭りを終えIS学園に向かいながらそう呟くと
「そうですわね、日本のお祭りは楽しいものですわ」
「ああ、私も初めて来たが、また来たいと思うぞ」
「……今度は部隊の皆も呼びたいね」
とセシリア達も満足してくれたようだし……
「あの賑やかな感じはいい物だ」
「確かにね。祭りがあれだけ賑やかなのは日本くらいよね」
鈴や箒達も楽しんでくれた様で良かったと思いながら。IS学園の敷地に入り、寮に向かっている途中で
「!? 一夏! 飛べ!!」
「え! うわっ!?」
ラウラの怒声に驚き飛び上がると同時に漆黒の刃が地面に突き刺さる。
「なっ!? なんだよ!? これは!!」
「叫んでいる暇があったらISを展開しなさい! 一夏! 敵よ!!!」
鈴達は既にISを展開している、それを見て慌てて白式を展開すると、周囲の闇が不気味にうごめき
「キキ!! ミツケタア! ミツケタ!!!」
「ケタケタ!! ダイヒョウミツケター!!!」
「人間コロス! カクゴしろ!!」
闇が形を作りそこからどんどん異形達が姿を見せる。それは臨海学校のときに出てきた異形だった
「くそっ! 何でこんな所に!?」
IS学園の敷地だぞ!? 如何してこんなに化け物が居るんだよ! 思わずそう叫ぶと
「一夏! 伏せなさい!!」
鈴の怒声に頭を伏せると同時に見えない衝撃がネクロを弾き飛ばす。
「一夏! こっちだ! センターとバックスに分かれる! セシリア、クリス、簪は後衛。私とヴィクトリア、一夏と箒そして弥生はセンター! 鈴とシャルロット、それにシェンとエリスは後衛の防御をしながら援護!」
ラウラはドイツでは部隊を預かるだけあって的確な指示を飛ばす。それに従い陣形を整列する
「突出するな! 教員が来るまで耐えるんだ!」
ラウラが指示を出しながら近づいてきた黒い影のような異形をワイヤーブレードで突き刺す、それに
「いっけえ!!」
シャルのアサルトライフルの弾が殺到し吹っ飛ばす。
「一夏! 前に出すぎるな。銀の福音の二の舞になるぞ!」
「判ってる!!」
組み付こうとしてくる異形を雪片で弾き飛ばしながら辺りを見回す
(鎧型が6体。影見たいのが14体。少し厳しいか?)
ISが12機。過剰戦力とも思えるが、何をされるか判らない以上これくらいで丁度いいのかもしれない
(早く来てくれよ。千冬姉)
IS学園の近くで襲われたのがせめてもの救いだ、直ぐに救援が来てくれる筈だ。俺がそう思って近寄ってくる異形に向けて荷電粒子砲を放った……
何この感じ? 私は突然感じた悪寒に思わず立ち止まった。簪ちゃんがもうじきIS学園に着くと言ってから15分経った、余りに遅いので何かあったのではと探しに来た私がある一箇所で立ち止まった
「変な感じがする」
思わず手を伸ばすと。手が吸い込まれるように消えていく、慌てて引き抜きながら
「な、なにこれ!?」
こんなのありえない。連絡しないと思ったのだが次の瞬間、そんな考えは消し飛んだ
(もしかしたら簪ちゃんが!?)
そう思った私はその空間の中に飛び込んだ。すると
キンッ!!! キンッ!!!
ダダダッ!!!
激しい金属音と銃撃の音がする。やはり私の考えは合っていた、私はミステリアス・レィディを展開し、その音のほうへと向かった
(な、なにこれ!?)
そこでは一夏君たちと黒い化け物が戦っていた。
「くっ!? 弾切れだ!」
「こっちもエネルギーが!」
シャルロットちゃんが銃を投げ捨てる。良く見ると一夏君たちのISはボロボロだ
「シネーッ!!!」
簪ちゃんに飛び掛ろうとする異形を見た私は、瞬時加速で回りこみ異形に回し蹴りを放ちながら
「これどういうこと!? 説明出来る人いる!?」
そう叫びながらラスティーネイルをコールし異形に叩きつける
「お姉ちゃん!」
「楯無、良い所に来てくれました!」
簪ちゃんは被弾していないが、エリスちゃんのISはボロボロだ。
「会長! 教員達は来てくれるんですか!?」
ヴィクトリアちゃんの問いかけに私は
「来ないわ! そもそもIS学園に戦闘中の連絡は通ってない! ここなんか訳判らないけど! 変な空間に閉じ込められてるみたい!!」
そう叫びながらアクアクリスタルを動かして、特に被弾が酷い弥生ちゃんとエリスちゃんを覆い隠しながら
「戦って逃げるしかないわ! 陣形組みなおして! 私が前に出るからエネルギーが残ってる子は私とセンター! 弾とエネルギーが残ってるなら援護して! 残りは被弾してるこの援護!」
直接指示を出し、戦況を見極める
(何とか行けるわね!)
敵は残り鎧を纏っているのが3体と影見たいのが5体。これなら何とかなる! 私はそう判断して
「残りの弾薬全部使って! 倒して逃げるわよ!!」
そう指示を出しながら、ガトリングの引き金を引いた。負傷してる子も居る、早く片付けないと……
キンッ……
乾いた音を立てて最後の薬莢が落ちる。それと同時にへたり込み
「はーはーなんとか助かったみたいね?」
こっちのISのエネルギーとSEは全部使い切ったが、何とか助かったと呟き。皆を見ると
「た、助かりました。会長」
「ほ、本当ですわ。何でこんなところに化け物が」
息も絶え絶えと言う感じのヴィクトリアちゃんとセシリアちゃんに
「ぜーぜー。な、なんだよ、こいつら」
「ま、全くです。もう2度と会うことは無いって思ってたんですけどね」
荒い呼吸を整えている弥生ちゃんとエリスちゃんを見て
(休ませないと駄目みたいね。とりあえず)
「ここを出ましょう。追っ手が「ふむ。逃げられては困りますね」
!? ここに居ないはずの第3者の声に驚き振り返ると
「う、嘘……」
思わず私はそう呟いた。そこには
「ふむ。絶望したという表情をしているようだな」
刺々しい鎧を身に纏った獣のような異形と
「がっははは!!! そりゃそうだ! 人間は貧弱だからな!!」
龍のような頭部をした巨大な龍人が私達を見下ろし笑い始める
「下品な。もっとスマートに喋れないのですか? 全く」
甲冑を纏った異形がやれやれと肩を竦めながら
「さて人間。良く抗ったと褒めましょう。しかしてそれもここまで、死んで頂きましょうか」
穏やかな口調だがその殺気は本物だ。だが今の私達では何も出来ない
(くっ!? 判断をミスった)
自身のミスを悔いているとき唐突に声が響き渡る
「殺すか……ふっ。なんとも三流くさい台詞だな」
その声の方向を見るとそこには何時も通りの余裕の笑みを浮かべた、龍也君がいた
「龍也君!? そんな事言ってないで逃げなさい!!」
私がそう叫ぶが、龍也君は笑ったままゆっくりと私達の横を通りながら、コートの中から何かを取り出し
「やれやれ、よりによって一夏達を狙って。空間干渉までして襲うとはな……まさかそこまでするとは思わなかったよ」
溜息を吐きながら龍也君は慣れた手つきで何かを銜えると
シュボっとライターの音がする。そして白い煙が上がる……まさかタバコ!? 龍也君みたいな優等生がタバコを吸うという行動を見て。驚きはしたがそのせいで逆に冷静になり始める自分がいる。なぜここに居るのか? 如何してこんなに冷静なのか? と言う疑問が次々沸いて来る
「ふーやれやれ偶には吸わんとやってられんよ。苛立つ事が多すぎてな」
くっくと笑いながら紫煙を吐き出した龍也君を見た異形が
「こいつ狂いやがったぜ? 俺達を見て「狂う? 失礼だな。たかだかLV3如きが言ってくれる」
LV3? 龍也君は何を言っているの? それに龍也君はどうしてあんなに落ち着いていられるの?
「貴様!? 何者だ!?」
「さぁ? 自分で考えてみたらどうだね!!!」
タバコを銜えたまま地面に突き立っていた。グロリアスヴィクトリーを掴み上げ走り出す
(そんなあれって1本で20キロくらいあるのに、それを片手で!?)
その事に驚いていると龍也君はそのまま1番近くの騎士の異形に切りかかった
「ぐっ!? 重い!? なんだ貴様は!?」
「なんだと聞かれて答える馬鹿がいるかね?」
いつもと同じ余裕綽々と言う感じで切り結ぶ龍也君は
「そこにいろ、下手に動くなよ!!」
そう叫ぶと力強く踏み込み異形を真一文字に引き裂き。そのまま地面を蹴り上げて落ちていたアサルトライフルを掴み上げ。片手でライフルの引き金を引きながら。間合いを取り居合いの構えを取ると
「シッ!!!」
鋭い気合の声と同時にグロリアスヴィクトリーを振りぬく
「っぎゃぁアアアアア!?!?」
悲鳴を上げて獣人が両断され消滅させられる。それを見た私達は
「え。如何してこんなにあっさりと倒せるの!?」
「信じられない……」
目の前の光景が信じられず目を見開いていると、一際巨大な異形が
「貴様が何者かは知らんが! 天下無双の我が力を受けろォ!」
その巨大な拳を龍也君目掛けて振り下ろす
「「龍也君!!!」」
簪ちゃんとエリスちゃんが悲鳴にも似た声でそう叫ぶ、龍也君の身長ほどの大きさの拳だ。あんなの食らえばひとたまりも無い
バシッ!!!
「う、うそでしょ……」
「あ、ありえねえ……」
思わずそんな言葉が出てしまう。龍也君は片手でそれを受け止め
「これで天下無双とは恐れ入る。私の仲間にはお前の倍は力が強い奴が居るぞ?」
「な、なにィ!? 「遅い!」 ぐはっ!?」
龍也君の鋭い前蹴りで異形の腹を蹴り上げ。そのままグロリアスヴィクトリーを構えて突き立てる
「貴様のコアはここだな、このまま抉り出させてもらう」
「ぐっ!? ぐあああ!? 貴様!? はっ!? お前! お前はアアアアア!? 「気付くのが遅い、たわけ」ぐおおおおおお!!!」
赤黒い球体が異形の胸から抉り出される、龍也君はそれを無造作に踏み砕き
「残るは貴様だけだな。ネクロ」
「ひっ!? お前、お前はアアアア!? なぜ!? なぜ貴様がここに居る!! 守護者ア!!!」
龍也君を見て恐怖の色を顔に浮かべたネクロがそう叫ぶ。守護者? 龍也君が? 訳が判らず首をかしげていると
「う。ううう……頭が痛い」
クリスちゃんの苦しそうな声に振り返ると、クリスちゃんが膝を着いて頭を抱えている、いやクリスちゃんだけではない
「うっうう……お姉ちゃん、頭痛い……」
「ぐうっ……私もです」
「ぐあ。痛い、痛い。頭が頭が割れる!!」
簪ちゃんとエリスちゃん、そして一夏君が頭を抱えて唸っている。
「くそっ! 聞いてない! 聞いていない!! ここに守護者が入るなんて聞いてないぞおお!!!」
黒い光の翼を羽ばたかせ逃げだす異形を冷たい視線で見つめた龍也君は、握っていたグロリアスヴィクトリーを投げ捨てると
「投影重層」
ぼそりとそう呟くと龍也君の手から黄金の光があふれ出した。その光が収まるとその手には
「写・無駄無しの弓(フェイルノート)・写・赤原猟犬(フルンディング)!」
突然現れた弓と剣に驚いていると、龍也君は弓に剣を番える。だがそれはおかしい弓に番えるのは矢だ、剣ではない筈だ
「我が骨子はねじれ狂う!」
剣が光を放ち弓矢へと変化する。龍也君はそれを弓に番え力強く得弦を引きながら
「赤原《せきげん》を行け、赤原猟犬《フルンディング》ッ!!!!」
ゴウッ!!!
とんでもない轟音を立てて矢が放たれる、それは空気を引き裂きながら逃げた異形へと追いすがり。背後から異形を刺し貫く
「壊れた幻想《ブロークンファンタズム》ッ!!!」
パチン
指を鳴らすと剣が爆発し異形を消し飛ばす。それは見たこともない非常識な現象だ
「た、龍也君。君は一体?」
思わずそう尋ねると龍也君はその呟きに答えず。弓を振るう
キン!!
乾いた音を立てて近くの木に突き刺さるナイフ。それは私を狙ったものだった
「出て来い」
「ふっ、バレているか」
少し離れたところから赤紫色の髪の男が姿を見せる。だがその目は縦に割れていて人間とは思えない
「答えてやりたいが、少し待ってろ。あとで説明してやる」
龍也君はそう言うと弓を投げ捨て男のほうに駆け出した……
「投影開始!」
走りながら武器を作り出す、作り上げるのは2本1対の中華剣
「写・干将・莫耶ッ!!」
一夏達が見ているとかは関係ない、どうせばれるんだし。全力でいく!
「ふっ。二刀流か、ならば俺も!」
ペガサスも2振りの西洋剣を作り出しながら、間合いを詰めてくる。
「はっ!!」
「甘いな!」
キンッ!! キンッ!!!
鋭い金属音が繰り返し響き渡る。同じ二刀流が何もかも違う、私は防御の剣だが、ペガサスの剣は攻めのそして
(やはり御神流か!?)
足運びや剣の振り方が御神流に酷似しているからまさかとは思っていたが。こうして剣を合わせて確信した、ペガサスの剣は御神流だと……そしてこの時点で判った
(平行世界のなのはの関係者か!?)
となると時間稼ぎが難しい。ユウリ達の持つ合流用のデバイスに魔力を通したが、まるで来る気配が無い。その事に舌打ちする
(このままで禄に戦えん!)
一夏達を護る人間が必要だ。上位レベルのネクロと戦っていれば、一夏達までは気が回らない
(早くしろ、たわけどもが!)
徐々に怒りを感じてくる、IS学園にネクロの気配を感じ直ぐにセンサーを発動させ。この場に来たのにまだ千冬達は来ない、遅いにもほどがある。そしてこの苛立ちが良くなかった。闇の中に紛れるネクロの気配を見落とした
「キキーッ!!!」
「「きゃあっ!!!」」
ネクロの声と簪とエリスの悲鳴に振り返ると、簪とエリスの影から飛び出したLV1が2人を掴んで、私達の方に飛んでくる
「簪ちゃん! エリスちゃん!!」
楯無の悲鳴に思わず立ち止まった瞬間
「ふっ!!!」
「ぐうっ!?」
ペガサスの回し蹴りが放たれる。干将・莫耶で咄嗟に受け止めるが、威力を殺しきれず一夏達の所まで蹴り飛ばされた。何とか体勢を立て直し着地すると
「動かないで貰いましょうか! 守護者!!!」
黒いカソックを身に纏ったネクロ。ヴォドォンが簪とエリスを拘束しながら、私にそう告げた
「動かないで貰いましょうか! 守護者!!!」
海で俺を撃墜した男がが、簪さんとエリスさんの動きを抑えながらそう叫ぶ。
(さっきから守護者。守護者って何のことだ? 龍也の事なのか?)
そんな事を考えている中、黒いカソックの男は
「ではまずはお久しぶりですね。守護者」
「ふん。私は貴様になど会いたく無かったよ。狂信者」
知り合いなのか? 龍也が忌々しいという口調でそう言うと
「ふっふふ。相変わらずとだけ言っておきましょう。さて……私の要求は1つです、守護者。この2人を解放して欲しければ……貴方の持つ至高の魔道書「天雷の書」を捨てて頂きましょうか? 安いものではないですか? 人2人の命と魔道書、考えるまでも無い話でしょう?」
魔道書? 一体何の話をしているんだ? 俺にはまるで理解できない。龍也達の話が……その事に混乱していると
(一夏君。エネルギーはどれくらい残ってる?)
楯無さんが小声で尋ねてくる。俺は白式のステータスを確認して
(瞬時加速2回分です)
ギリギリだが何とか2回分の瞬時加速のエネルギーがあるというと
(私とヴィクトリア、それにクリスが煙幕弾を放つ。その隙に頼む)
ラウラが小声でそう話しかけながら油断無く、カソックの男の様子を窺っている。だが
(あいつはどうすれば良い。あいつの剣は速いぞ)
海でも対峙した二刀流剣士を見ながらそう呟く。あいつの剣は速い上に防御をすり抜ける、仮にカソックの男から簪さんとエリス産を助け出せたとしても、あいつに斬られる。直感でそう感じそう言うと
(未展開のグロリアスヴィクトリーがある、それを射出する)
(それに合わせて私のミサイルビットを使います)
ミサイルの爆炎で目くらましをして、その一瞬で助ける。博打と言ってもいいだろう
(私が簪ちゃんを助けるから、一夏君はエリスちゃんを)
(はい)
俺達が救出について打ち合わせをしていると
「では守護者。お答えを」
龍也に向けてカソックの男がそう尋ねる。ここで嘘でも良いから渡すと言ってくれれば助ける……
「断る」
「「「「えっ!?」」」」
龍也はハッキリと断ると告げ。コートに手を入れながら
「貴様らが約束を護るとは思えない。どうせネクロ化させられるか、殺されるかして終わりだ。ならば……」
ガチャン!!!
「私が殺す」
黒光りする拳銃を簪さんとエリスさんに向けて、龍也はハッキリと告げた。その事が一瞬理解できず呆然とする
「ほう? この2人を見捨てると? 罪悪感は無いのですか?」
嘲るように言うカソックの男の言葉に龍也は
「無いな、私は私の正義を貫くだけだ。救えるなら救う、救えないのなら切り捨てる。2人と11人。考えるまでも無い、私は私の正義の為に2人を切り捨てる」
チキリ
檄鉄が起こされる。龍也がゆっくりと照準を合わせるが、どこか遠くに見える
「ま、待て! 龍也! お前何をしているのか判っているのか!!!!」
ラウラが一番先に我に帰りそう叫ぶと龍也は
「判っているさ。救えない2を切り捨て8を救う。それが私の正義だ。迷いも揺らぎも無い……目を閉じておけ。そっちの方が恐怖が少ないぞ」
龍也のその言葉に気付いてしまった。本気だと、本気で簪さんとエリスさんを撃つ気だと
「龍也君! 冗談きついよ……?」
「そうだ。拳銃をおろせ、他の方法があるはずだ」
「仲間を見捨てるのは間違いだ。早く銃をおろせ!!」
シェンさん達がそう言うが龍也は1度も振り返ることなく
「他に方法は無い。殺してやるのが私の情けだ、化け物にはなりたくないだろう? 誰だってそうだ。だから私はずっと殺してきた。殺して、殺して。気が遠くなるほど人を殺して、そしてその倍の人間を救った。今回は偶々簪とエリスだっただけ、切り捨てるのが知人の顔だった。ただそれだけだ」
どこまでも淡々と告げる龍也。一体何を言っているのか理解できない。龍也がずっと人を殺してきた? あの優しい龍也が? そんなの嘘だ……だが龍也は一切の動揺を見せず、2人に照準を合わせた
「やめて……やめてよ! 私の妹よ!! やめて! お願いだからやめて!!!」
楯無さんがそう叫ぶが、龍也は片手で十字を切りながら
「迷いし魂に救済があらん事を。そして魂が天の国に召される事を願う」
「「「止めろおおおおおッ!!!!」」」
俺達の叫びが響く中、龍也は引き金を引いた……
ターンッ!! ターンッ!!!
銃声が響き、放たれた銃弾がまっすぐに進み。簪さんとエリスさんの胸を打ち抜き、2人がゆっくりと倒れるのを見た箒達の
「「「きゃああああああッ!!!!!」」」
悲鳴が森の中を木霊していた……
第66話に続く
簪さんとエリスさん。死亡? ふふ……さあどうでしょうねぇ? 全ては次回で判りますよ?
次回を乞うご期待と言うことでよろしくお願いします