IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです、今回は当然ながら前回の続きです。龍也さんの凶行と一夏達の反応がメインとなります
龍也さんの真意はなにか? を考えていただけると嬉しいです

それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



第66話

 

第66話

 

「「「きゃああああああッ!!!!!」」」

 

箒達の悲鳴が響く中でも龍也の声は意外なほど、はっきりと俺の耳に届いた。

 

「哀れな魂に永久の救済を……」

 

救済? 哀れ? 自分で殺しておいて何を言ってるんだ。

 

「龍也ァ!!!お前何やってるんだ!!!」

 

地面に倒れる簪さんとエリスさんを見て、俺の中で何かが切れた。龍也に詰め寄り襟をつかんで近くの木に龍也を叩き付ける。

 

「何とは何だ?」

 

理解出来ないと言う感じの龍也に俺は一気に頭に血が上り。

 

「何で殺した!!助けれたかもしれないだろ!!!なんで、なんで殺したんだ!!!」

 

目の前で人が死んだ。しかもそれを行ったのが龍也だった、優しいと思っていた。どんな時も俺達を助けてくれると思っていた。そんな龍也が人を撃った。しかも同級生を……怒りとか訳のわからない感情が俺の中を駆け巡る。

 

「それが私の正義だからだ、救えぬ者を救おうとする暇があるなら、確実に救える者だけを救う。それが私の正義だ」

 

その言葉に俺が拳を握り締めた振りかぶった瞬間。俺の視界は反転し地面に叩きつけられていた。

 

「世界の仕組みも何も知らぬ、ただの子供に殴られる云われは無い」

 

「あぐがぁ!!」

 

冷酷なまでの響きを持って俺を見下ろしそう言う龍也。俺は受身も取れず地面に叩きつけられたことで全身に痛みが走り、息も出来ないで居た。

 

「正義!?人を殺して、仲間を見捨てて何が正義だ!!お前の行った事はただの悪だ!」

 

声も無く涙を流している箒達の中で真っ先に正常な思考を取り戻したラウラが、憎悪を込めた目で龍也を見てそう叫ぶ。箒達も批難の視線を向けている。だが龍也は涼しい顔をしたまま

 

「正義さ、溢れ出た涙が流れた血よりも少ないのなら、それを正義と呼ばず。何を正義と呼ぶ?」

 

理解できない、俺には龍也が何を言っているのか判らない。それが正しいと信じきっている龍也の顔が酷く歪んで見える

同じ人間のはずなのに全く別の生き物のように思えてくる。

 

「くっ……このっ!!!」

 

目に涙をためた楯無さんが龍也に駆け寄り右手を振りかぶる。

 

「言ったはずだ、殴られる云われは無いと」

 

その平手を受け止めた龍也に楯無さんが龍也に詰め寄りながら。

 

「どうして!どうして私の妹とエリスちゃんを殺したのよ!!!他にもっと他の選択肢があったんじゃないの!!皆を救える!そんな道があったんじゃないの!!!」

 

楯無さんの涙ながらの言葉を聞いた龍也は楯無さんを突き飛ばし。どこまでも冷酷な能面のような表情をしながら俺達を見据えながら口を開いた……

 

 

 

「10を救うことなんか出来ないんだよ!判るか!必ず犠牲になる者がいる、その1を切り捨て9を救う!それを正義と呼ばずなんと言う!甘いんだよ!お前達は!救えぬものを救おうとして救えるはずの者を救えなくなるのなら、私は速やかに救えない者を切り捨てる!そして9を救う!」

 

その言葉には途方も無い激情と絶望が込められていた。俺はそれを聞きながら

 

(これがヴォドォンの作戦か)

 

八神龍也なら救えないと知れば見捨てる、そして孤立させることが目的だと言っていた。だからこの絶好の襲撃の機会にヴォドォンは、攻撃するのではなく八神龍也への不信感をあおることを選んだ

 

「はっははは!!流石だな!!私は知っているぞ!お前は正義のためだと1つの街を完全に破壊した!たった数人の人間を救うために、1000人を殺した殺人者だ!そんな者が正義を名乗るとか、何と滑稽だろうな!」

 

さらに挑発を重ね八神龍也を孤立させようとする、自分の思い通りに進んでいると思っているヴォドォンは気付いていないが

 

(なぜ、あそこまで涼しい顔ができる?)

 

小僧達の憎悪と殺意の視線を受けながらも涼しい顔をして、何かを待っているかのように思える。

 

「ふん、判っているさ。私は人殺しさ、正義だ、何だといって救えない者をずっと切り捨ててきた、今回はそれがたまたま知り合いだっただけさ……救えないなら切り捨てる、何故なら知り合いと仲間は違うからな」

 

そして八神龍也は更に小僧達の怒りを集めるような口調で言葉をつむぐ

 

(なんだ。何を考えている?)

 

この奇妙な不信感。俺の剣士としての感が何かを告げているが、その何かがわからない。それに仮に何を考えているか判ったとしても

 

(俺が対処する必要は無いか)

 

ベエルゼに指揮権を与えられているのは、ヴォドォンだ。それに俺には俺の目的がある、ここでヴォドォンの策略が成功しようが失敗しようがどうでも良い。極論を言えばヴォドオンがやられたとしても俺には何の関係もない。

 

「貴方は!あの子達は貴方に憧れていたのに!」

 

小娘が八神龍也に近寄りそう叫ぶ、八神龍也はやはりその目に何も映さないまま

 

「ふん、良いことを教えてやろう……憧れとは、理解から最も程遠い感情だ。救えぬ1を捨てて9を救う、ああ、そうさ……それが私の正義さ。間違っているといえるかね?」

 

ここでふと疑問が形になっていく。与えられた情報と今の八神龍也の違い……それが恐ろしいスピードで形を作っていく

 

(なぜここまで喋る?)

 

八神龍也は寡黙な男のはずだ、ではなぜ敢えて挑発するような言葉を続ける?

 

なぜ俺とヴォドォンを無視している?

 

そう、それはまるで何かを待っているかのように思える、だが夜天や雷光を待っている訳ではない筈だ

 

(あっちにはネルヴィオが回っている、それは八神龍也も気付いているはず、では何を待っている?)

 

魔力同士のぶつかり合いはここに居ても伝わって来ている、それに八神龍也が気づかないわけが無い

 

「確かに、そうかもしれない。……でも、そんなこと受け入れられるわけないじゃない!9を救うために1を捨てる?ええ正しいわよ!正しくて正しくてどこまでも正しいわ!でもね、それは見捨てるたった1を救えないって言っているような物よ!はっきり言ってあげるわ。あなたはただ……あきらめただけの弱虫よ!」

 

小娘が目に涙をためてそう叫ぶ。八神龍也はにやりと笑いながら肩を竦め

 

「ああ、そうとも言えるな。だがね? 捨てた代わりにお前達は今こうして生きている。 あの2人の犠牲の元に今お前達は生きている。私はお前達を救ったんだ、感謝こそして罵倒するのは間違いではないかね?」

 

おかしい、八神龍也はこんな人間ではない筈だ。何だ奴は何を考えている。

 

「くっ……私は貴方を許さない。絶対に!いつまでも貴方を恨む!」

 

「恨む?くくく……何と見当違いな事を、私にはお前にも一夏達にも恨まれる謂れはないさ」

 

この時八神龍也の顔付きが一瞬だけ変わったのを俺は見逃さなかった。

 

「私の妹を殺しておいてええ!!」

 

自身の首にと伸ばされた手を弾きながら八神龍也は

 

「このまま話していても時間の無駄だ。根本的な事でお前達は勘違いしているのだからな」

 

「勘違い!?簪ちゃんとエリスちゃんを殺しておいて、何を言うのよ!!」

 

「そう。そこがすべての間違いだ……私の正義は確かに救えぬ1を捨てて9を救うことだ。ここに間違いはない」

 

なんだ? 奴は何を言っている? 八神龍也は余裕の笑みを浮かべながら

 

「だけどな……簪もエリスも切り捨てる1なんかじゃないんだよ」

 

地面に転がる小娘を見て笑う、その笑みは全て自分の計算通りに話が進んだという事を示しているように見え

 

「はっ?貴方何を?」

 

「ま、まさか!?」

 

困惑する小娘と八神龍也が何を言っているのか理解したヴォドォン。俺は即座に片手にクラスソラスを構えた

 

「くっくっく……だからこういうことさ!!簪!エリス!いまだ!!」

 

倒れていた2人が一瞬でISを展開し、俺とヴォドォンに刃を向ける

 

「ちいッ!!!」

 

突き出された薙刀を上にと弾いたが、代わりに叩き込まれた荷電粒子砲に吹っ飛ばされる。

 

「ぐうっ!!」

 

ヴォドォンは下から切り上げられ、右腕に深い傷を負った。そして八神龍也の後ろにと離脱していく2人を見て

 

(嵌められたって事か)

 

さっきまでのやり取りも全て八神龍也の計算の上。俺はこの時初めて八神龍也の巧みな話術と卓越した演技によって欺かれていたことを知った。やはりこの男は

 

(全てを救う一手を講じていただけか!)

 

自身を悪としあえて挑発と罵倒をその身に受けながらも、俺達の間のあの2人を無事に助ける一手を打っていただけだったのだ……

 

 

 

 

 

 

「ぐっ! なんで簪ちゃんとエリスちゃんが倒れてるの」

 

ツバキが唇を噛み締めるのを見ながら

 

(なにか裏があるな)

 

ワタシ達は龍也達がいるところから少し離れたところで様子を窺っていた。無論ワタシもツバキも反対したが

 

【ネクロが八神を狙ってきた可能性がある。少し観察すべきだ】

 

最初から龍也を疑っている千冬がそういって動かないので、ワタシ達も待機することになったのだ。だがワタシ達が見ている前で簪とエリスは龍也の撃った銃弾に倒れた

 

「やっぱり裏切ったのか!」

 

千冬がやはり私の考え通りだと言いたげな表情をするのを見ながらワタシは

 

(一体何を考えている?)

 

龍也が何を考えているか判らず。しかしかといって詰め寄ることも出来ず。待機していてふと気付いた

 

(? エリスの手元の草が千切れている?)

 

無理やり引きちぎったように見える草が数本視界の隅に映る。何かおかしいと思い観察していて気付いた

 

「千冬、ツバキ。龍也が2人を殺したと判断するのは早いぞ」

 

倒れている簪とエリスを指差して

 

「胸が動いてる。まだ生きてる……いやむしろ最初から死んでなどいないということではないのか?」

 

魔法とやらで死んでいるように見せているだけと言う可能性があるというと

 

「そっか……その可能性があるわね」

 

まだ龍也が2人を殺したと判断するのは早い……それにワタシとしてもネクロを倒す切り札にしてワタシ達全員が生き残る為のカードを手放すという事はしたくない

 

(裏切ってくれるなよ。八神龍也……)

 

少ない時間だが共にいた。ワタシは八神龍也は信用に値する人間だと思っている。だからこそワタシは龍也を信じて今はまだ動かない。きっと何とかしてくれると思って……龍也の後ろ背を見つめた

 

 

少し時間は遡る。

 

私とエリスが化け物に捕まって、龍也君が私達に銃を向けたとき。怖くて怖くて仕方なかった、でも

 

(心配ない。お前達に弾は当たらない)

 

脳裏に突然龍也君の声が響いた、ISのプライベートチャンネルではなく。アニメとか漫画で見るようなテレパシーって奴に近いような気がした。隣のエリスも驚いたような顔をして龍也君を見ている

 

(もう一度言う心配するな。一芝居打つだけだ、合図をしたらISを展開して離脱しろ。良いな)

 

少しだけ頷くと龍也君は冷酷とも言える光をその目に宿して

 

「無いな、私は私の正義を貫くだけだ。救えるなら救う、救えないのなら切り捨てる。2人と11人。考えるまでも無い、私は私の正義の為に2人を切り捨てる」

 

チキリ

 

檄鉄が起こされる。龍也君がゆっくりと照準を合わせる。紛れもない死の気配を感じ身が竦むでも、それでも龍也君の言葉を信じたい怖いのを我慢して龍也君を見る

 

「ま、待て!龍也!お前何をしているのか判っているのか!!!!」

 

ラウラさんが龍也君にそう声を掛けるのが聞こえる。だがそれよりも私には

 

(最後に1つだけ言う、巻き込んですまない。そして私を信じろ、必ず無事にお前達を取り戻す)

 

「判っているさ。救えない2を切り捨て8を救う。それが私の正義だ。迷いも揺らぎも無い……目を閉じておけ。そっちの方が恐怖が少ないぞ」

 

(痛みは少ないはずだが、多少の衝撃は行く。目を閉じて歯を食いしばっておけ)

 

龍也君から語られる言葉と違う言葉が脳裏に響く。これが何か気になるが、今はそんなことを考えている場合ではない。言われたとおり目を閉じて歯を食いしばる

 

「迷いし魂に救済があらん事を。そして魂が天の国に召される事を願う」

 

十字を切りながら放たれた2発の銃弾は私とエリスの胸に当たった。その衝撃で化け物が手を離し、地面にと転がるが

 

(い、痛くない……)

 

紛れも無く銃弾は私とエリスの胸を捉えた、だが衝撃は無く、痛みもまるでない

 

(い、一体何が起きてるの?)

 

自分に何が起きているのかわからず混乱するが、龍也君に言われたとおり合図があるまで死んだ振りをする。その間に龍也君は一夏君やお姉ちゃん達に罵倒され、殺意と憎悪を込められた目で見られている。それに耐え切れず動こうとすると

 

(まだだ!まだ動くな、簪、エリス)

 

脳裏に響く声に制止される、少しだけ薄目を開けて隣を見ると、エリスも動こうとしていたのか少しだけ手元の草が千切れていた

 

(だよね……エリスも動きたいよね)

 

私とエリスは生きている、だがそれはお姉ちゃん達は知らない。私達を殺したと思っているお姉ちゃん達に罵倒されている龍也君は

 

「ふん、良いことを教えてやろう……憧れとは、理解から最も程遠い感情だ。救えぬ1を捨てて9を救う、ああ、そうさ……それが私の正義さ。間違っているといえるかね?」

 

敢えてお姉ちゃん達を挑発するような言葉を続ける、それに化け物たちは喜び、お姉ちゃん達は怒りを深めていく。それを見て私は

 

(注意を自分にひきつけてるの……あんなことを言ってまで……)

 

私達から自分にと注意を引き付けて、私とエリスが離脱できるチャンスを待っている。もしそのチャンスがあるとすれば、それは一瞬にも満たない刹那の時しかない。それを作り出すために敢えて憎まれ役になって居るのだと判る、そしてその時が来た。龍也君がお姉ちゃんの手を振り払いながら

 

「だけどな……簪もエリスも切り捨てる1なんかじゃないんだよ」

 

さっきまでの冷酷な笑みではなく。いつもと同じの余裕と優しさをにじませる笑みでそう告げる

 

「はっ?貴方何を?」

 

「ま、まさか!?」

 

何がなんだか判らないという表情をしている、お姉ちゃんとカソックの異形を見ながら龍也君は

 

「くっくっく……だからこういうことさ!!簪!エリス!いまだ!!」

 

その言葉を聞くと同時に残りのエネルギー全部を使って、弐式を起動させ、赤紫の髪をした男に切りかかる

 

「ちい!!」

 

舌打ちしながら私の攻撃を弾いた男の腹めがけ最後の荷電粒子砲を叩き込み、その反動で龍也君達の方に向かう。エリスは

 

「はっ!!!」

 

「ぐうう!?」

 

神速の抜刀術でカソックの男の腕を切りつけ、私と同じ様に離脱してくる

 

「か、簪ちゃん!?え、え?ど、どういうこと!?」

 

「え、エリス!?撃たれたのではないのか!?」

 

お姉ちゃんとラウラさんが私とエリスに近寄って来てそう尋ねてくる。箒さん達も

 

「撃たれた後がない!?」

 

「それに血痕も……え?え。ど、どういうこと!?」

 

私達が混乱している中、龍也君はにやりと笑いながら私とエリスに

 

「良い子だ。ちゃんと言われたとおり、お守りを持っていたな?」

 

そう言われてはっとなって手首のブレスレットを見る、鮮やかな宝石の色は失われている。もしかしてこれが? 私とエリスを護ってくれていた? お守りとは聞いていただけど、こんなの見たことも聞いたこともない

 

「貴様ぁ!?騙したな」

 

カソックの男がそう怒鳴ると龍也君は髪をかきあげながら、涼しい顔をして

 

「くく、簡単な話さ。何も判ってない子供を利用すれば簡単に騙せる、ああ、楯無の激昂は実によかった……そのおかげで時間が稼げた」

 

龍也君がそう言うと木々の間から

 

「エリスちゃん!皆大丈夫!?」

 

「大丈夫か!一夏」

 

「すまない、来るのが遅れた」

 

木々の間から織斑先生とツバキさん、そしてユウリさんが姿を見せる。それを見た龍也君は手首につけていた、ブレスレットを外しながら織斑先生達に

 

「ふん。この状況で遠くで観察とは恐れ入る。よほど私が信用できなかったのか?」

 

龍也君の攻めるような視線に織斑先生が目をそらす。代わりにツバキさんが

 

「その事は謝るわ。ごめんなさい」

 

「ふん。まぁ良いどちらにせよこれで子守は終わりだ。あとはお前達で守れ」

 

そう言いながら私達の前から離れながら、1人で赤紫の髪とカソックの男の元へと歩きながら

 

「これでやっと戦える……私本来の姿でな」

 

私達から離れていくその背中に私は思わず夢で何度も見る紅い荒野に佇む騎士の姿を見たような気がした……

 

 

 

(どうなってるんだ!?)

 

死んだと思っていた簪さんもエリスさんも生きていて、何がなんだか判らない、ごちゃごちゃと思考が乱れ何も考えられずにいる中

 

「これでやっと戦える……私本来の姿でな」

 

俺達の前からゆっくりと歩きさって行く、だが龍也はISを展開させず、生身のままだ

 

「龍也?お前何を?」

 

龍也の言ってる言葉が判らず、思わず俺は龍也に近寄ろうとしたが

 

(うっ……な、なんだ!?)

 

身体が動かない、まるでその場に縫い付けられたように、それに龍也の身体から湯気のように立ち込める何かが俺の足を止める。何がなんだか判らないが俺達と龍也では立ち位置が違うとでも言うのだろうか。俺は、いや俺達はその場から動けず、龍也の後姿を見ることしか出来なかった……

 

「1つ……私は私を友と信じてくれた者の信頼を裏切った」

 

ゆっくりと歩みだしながら龍也がそう呟く、それと同時に龍也が纏う空気が変質し始める。

 

「2つ……一瞬剣としての決意を鈍らせた」

 

空気が歪んで見えるほどの闘気に息が詰まる。俺達が知る龍也とはまるで違う、一言で言うのなら歴戦の戦士だけが纏うことの許される、必殺の気迫

 

「あ、あれは本当に龍也か?」

 

「空気が重いですわ」

 

箒とセシリアが耐え切れなくなって片膝をつく。俺だって足が震えて立っているのがやっとだ。空気が軋みそこだけ時が止まってるかの印象を受ける

 

「3つ……そのせいで一夏達を死なせかけた……私は自分の罪を数えたぞ。ペガサス、ヴォドォン……」

 

龍也がゆっくりと左手をぺガサスとヴォドォンに向けると

 

ゴウッ!!!!

 

凄まじい音を立てて龍也の背中から炎が噴出したかと思うと、それは穏やかな音を立てて炎の翼にと変化する

 

「な、何が起こってるのよ」

 

「あ……す、すげえ」

 

「う、ううううう。頭が痛い」

 

呆然とする者。その幻想的な光景に目を奪われる者。異常な雰囲気に呑まれ両膝をつく者

 

俺は声を発することも出来ず、目の前の光景に目を奪われた。炎の翼はゆっくりと龍也の姿を覆い隠した。そして次の瞬間夜が一瞬昼間になったかのような光が辺りを照らす。その余りのまぶしさに一瞬目を閉じ、再び開いたとき俺は目を見開きながら

 

「うっ……あ……う、嘘だろ?」

 

俺は思わずそう呟いた。目の前の光景が信じられなかったから……だがそれは紛れもない現実で……

 

「黄金の……騎士」

 

全身を覆う黄金の甲冑に身を包んだ龍也の後姿が見える。気のせいか身長も少し伸びているような気がする……そしてそのうち龍也の美しい銀髪が燃えるような緋色へとその色を変えていく……その姿は間違いなく臨海学校のときに見た黄金の騎士の姿で間違いなかった

 

「さぁ……お前達の罪を……数えろ!!!」

 

どこまでも力強さに満ちた声で2体のネクロを指差して龍也はそう叫んだ

 

「はっ!いまさら数え切れるか!!!」

 

ペガサスは走りながら甲冑を展開し龍也に突っ込む。ヴォドォンは

 

「神の徒たる私に罪などありません!」

 

『プロヴィデンス』

 

USBメモリのようなものを腰のベルトにセットし走り出す、その姿はあの時海で見た異形の姿へと瞬く間に変わっていく。ぺガサスとヴォドォンが同時に攻撃を繰り出した瞬間

 

「ぐうツ!!」

 

 

「くっ!?」

 

黄金の閃光が空を走り2人を弾き飛ばす、いつの間にか龍也の手には美しい装飾が施された黄金の剣が握られていた。

 

それは豪奢な装飾に美しい蒼の装飾が施されたその剣は武器には見えず、まるで王様や騎士だけが持つ杖のように思えた

 

(なんだよ……あれ)

 

考えるまでも無く、あれはISの武器ではない。美しさと獰猛なまでの存在感を併せ持つ、あれが人間が作り出したものとは思えない。龍也はその剣を軽く振るい正眼に構えながら

 

「たった2体のLV4で私を止めれる等と思わないことだ」

 

威厳と力強さを兼ねた龍也のその言葉を合図に、俺達の常識では図ることの出来ない戦いが幕を開けたのだった……

 

そしてこの戦いを切欠に、俺達の日常は終わりを迎え。

 

この瞬間まで想像もしなかった、非日常にと足を踏み入れることになる事を今の俺は知らなかった……

 

 

第67話に続く

 

 




今回は龍也さんの狂言と言うのか演技と言うのか。良く判りませんがそんなのをテーマにして見ました

全体的なイメージは「魔術師殺し 衛宮切嗣」と「壊れた正義の味方 エミヤ」になるようにしてみましたがどうでしたかね? もし似てると思って貰えたらいいのですが、次回は戦闘回です。暫く戦闘回は続く予定なので次回の更新もどうかよろしくお願いします
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