IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。大分続いてきた戦闘の話ですが次回で終了になるかなっと思います
シリアス回はまだ少し続きますけどね。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします




第69話

 

 

第69話

 

ネルヴィオを名乗るネクロとISを展開しているネクロと戦っているとき

 

(!兄ちゃんの魔力が途絶えた!?)

 

兄ちゃんの魔力の反応が消えた。いやそれだけじゃない、箒とかの気配も全部だ

 

(兄ちゃんがおるから全滅っていうのは考えられん)

 

つまり兄ちゃんは今

 

(固有結界を使ってるんか!?)

 

あの固有結界は駄目だ。1人で使ってはいけないと何度もお願いしたのにだが逆に言えば

 

(使わないと行かん状態ってことか!?)

 

それが判った以上私はこんなところで持久戦に付き合い理由はない

 

「フェイトちゃん!なのはちゃん!2トップ!私のフォローに回れ!」

 

バックアップから前に出ると

 

「バックアップのお前が出てきてどうするの?」

 

一切装飾のない剣を肩に担いで笑うネルヴィオに

 

「あんたは勘違いしとるわ。私はどの距離も得意分野や……だけど指揮官が前には出れんやろ?でも……兄ちゃんが危ないのならソンなん言うとれんのや。とっとと墜ちてもらうで!!!」

 

リミッターを解除し騎士甲冑を変化させる

 

「フォールダウンモード起動。地獄に叩き落したる!!!」

 

「はっ!やってみなよ!!」

 

ネルヴィオの剣と私のゼロアームズがぶつかり合う。即座にバックし

 

「シャープネスクレイモア!!」

 

腕を振ると同時に4つの魔力刃が弧を描いてネルヴィオに殺到する

 

「やるう!でも私には効かないよ!!」

 

魔力を開放するだけでその魔力刃を弾き飛ばすネルヴィオに

 

「ドアホッ!!!そんだけで終わるかぁ!!!」

 

即座にバインドを発動させてネルヴィオを引っ張りよせ

 

「ぶっとべっ!!」

 

ゼロ距離からの炎を纏った砲撃で吹っ飛ばす。吹っ飛んでいくネルヴィオを見て

 

「ネル!?「よそ見しとる場合か!カラミティサンダーッ!!」

 

高密度の電撃弾を放ち追撃に出ようとするが脳裏に映像が浮かび上がる。突撃しかけて軌道を強引に修正して上に逃れる

 

ゴウッ!!!

 

私がいたところを薙ぎ払う特大の砲撃。あのまま突進してたら直撃で貰ってたな。

 

「殺す!ネルの邪魔をするのは全部殺す!!!」

 

殺気と魔力で空間を歪めているネルヴィオを見据え

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんはネクロとIS展開に回って。私はあいつを叩き潰す」

 

なにかわからんけど。あいつ嫌いや……私はそう言うとネルヴィオの方に向かって行った。早く片付けて合流しんと固有結界のデメリットが出てくる前に!私の頭の中はそれで一杯だった。兄ちゃんの固有結界とか言う「千の剣の墓標」は1対多に特化した能力だ。だけどその分デメリットも桁違いに激しい。下手をすれば命に関わるほどの……

 

(こんなところで時間をかけるわけにはいかへん!速攻で片付ける!)

 

 

 

 

 

 

私達はツバキ殿が持っているカメラから送られてくる映像が信じられなかった

 

「なぁ?フレイア。あたしは夢を見てんのか?」

 

目をこすりながら尋ねてくるシェルニカに

 

「残念ながら現実だ。認めろ」

 

「だよな?さっき頬つねったけど超いてえ」

 

無限の剣だらけの荒野。そこを縦横無尽に駆け回る八神龍也の姿。それは私たちにとってはある意味見慣れたとも言える姿。敵を倒すことだけに意識を向けた闘争本能の塊とも言える姿

 

「あれが八神龍也。はっきり言って桁が違うな」

 

私は暗部として活動してきたし戦場にも出たことがある。だが正直言って桁が違う、例えISが1部隊あったとしても勝機はないだろう

 

「あ?アイアス?どうした?」

 

シェルニカの声ではっとなりアイアスを見ると呆然とした顔でモニターを凝視していた。簪お嬢様とエリス様が撃たれた時はこれでもかって怒り狂っていたが。今は心ここにあらずという感じでモニターを見ていた

 

「ボクは判る。八神龍也の理想は正しいってでも間違っているって」

 

ぼそりと呟くアイアス。八神龍也の話は私達も聞いていた。兵士や傭兵だった私には良く判る、内心の葛藤や絶望が……その絶望に押しつぶされそうになりながらも前に進んでいる。

 

「先入観を捨てるべきだったと思う。彼はきっと誰よりも悲しんで涙して、傷ついてそれでも前に進んできた。自分の理想を追いかけてきた。理解できるよ……ボクは」

 

その呟きにシェルニカは頭をガリガリとかきながら

 

「まぁ。あたしも判らんでもない。龍也はどっちかと言うとあたし達側の人間だからな」

 

自分の命を捨てて理想を追う。命を捨てて主に仕える。方向性は違うがあり方は良く似ていると思う。シェルニカとフレイアの話を聞きながらモニターに視線を戻して

 

(ん?気のせいか?額から血が流れているような?)

 

さっきから傷を負っても直ぐに塞がっていた。だから多分見間違いだろうと思い、ふと腕時計を見た……今あの固有結界とやらで戦い始めてから丁度20分経ったところだった

 

 

 

 

 

(ちっ!数が多すぎる!)

 

倒しても倒してもきりがない。それに

 

「どうした!息切れか!」

 

「誰がッ!!!」

 

ペガサスが思った以上に厄介だ。御神流は何度も手合わせしているし対応も知っているつもりだったが

 

(かなりの腕だな)

 

士郎さんや恭也よりも遥かに錬度が高い。一対一ならまだしもこの乱戦では余りに不利だ。

 

「ひゃーはははっ!!貰った!!!」

 

「ちいっ!!」

 

舌打ちしながら地面に刺さっている剣を蹴り上げ。ペガサスの攻撃を回避しながらその剣の柄を掴み半回転しながらの一撃で鎌を弾き。そのまま間合いを取ろうとするが

 

「させませんよ!!」

 

ヴォドォンの手の中の銃とダガーが一体化した奇妙な武器から放たれる魔力弾で殆ど間合いを取れず。またペガサスに間合いを詰められる。高速移動……いや神速だ。両手の光の剣は腰元にある……私は即座に両手に名もない西洋剣を握り踏み込みながら

 

(いけるか!?)

 

ペガサスと全く同じ構えで力強く踏み込み。互いの間合いに入ると同時に

 

「「螺旋ッ!!!」」

 

互いに裂帛の気合を込めた螺旋を放つ

 

1合目 互いに互いの横薙ぎが弾かれる

 

2合目 1合目と同じく。いや若干私のほうが早く弾かれる

 

3合目 完全に押し込まれるが辛うじて直撃を回避

 

(やはり付け焼刃では駄目か!?)

 

私は御神流の剣士ではない。はやてを護るために剣術の基礎は士郎さんに教わった、しかし私には才がなかった。御神流の技はどれも私には取得することは出来なかった。基礎は覚えているし、何度も見ているので真似事は出来る。だが御神流の剣士と打ち合えるほどの錬度はない。体勢を崩したところに袈裟からの一撃が放たれる。

 

「ぐうっ!?」

 

固有結界内では騎士甲冑の展開が出来ない。直撃を喰らいながらも後ろに飛び着地しようとした瞬間

 

「「キキッ!!」」

 

影から飛び出してきたLV1が2体。私の足を掴んでくる

 

「ちいっ!!!」

 

舌打ちしながら魔力を開放しネクロを弾き飛ばす。拘束は数秒も持たなかったが

 

「LV1も役に立つものだな!!!」

 

ペガサスが再度間合いを詰めるには十分すぎる時間だった。廃墟の壁に突き立っている。折れる事無い不滅の聖剣《デュランダル》を抜き放ち突っ込んできたペガサスの突撃を受け止める

 

「ふっ!そんな剣で俺の剣を止めれると思っているのか?」

 

ペガサスの剣は小回りの効く二刀。それに対して私の剣は幅広の西洋剣。何時までもペガサスの攻撃を防ぐのは不可能だ、だが防ぐのが目的でこれを抜いたんじゃない

 

「ああ、元より防ぐつもりなんかないからな」

 

「!?ちっ!」

 

私が何を言おうとしているのか理解したペガサスが間合いを離そうとするが

 

「遅い!壊れた幻想《ブロークンファンタズム》!!」

 

デュランダルを爆破し互いに大きく弾き飛ばされる。私の目的は間合いを取る事、千の剣の墓標内では私のダメージは全て先送りになる。本来ならやろうとも思わないが今回はこれで良い

 

(結構数が多いな)

 

ベルフェゴールは自身を媒介に転移ゲートを作り出せるネクロだ。奴の作り出したゲートからどんどんLV1・2が姿を見せている

あの調子で召喚され続けるといつかはリミットが来てしまう。ならば!地面に突き立つ武器の中でも取り分け印象の強い赤い槍を抜き放つ。その槍の名は刺し穿つ死棘の槍《ゲイボルグ》。因果逆転の魔槍。ケルトの英雄クーフーリンが所持した最強クラスの槍それを片手で抜き放ち魔力を通す。手の中でゲイボルグが震えるのを感じながら

 

「突き穿つ……死翔の槍《ゲイボルグ》ッ!!!!!」

 

一気に跳躍しゲイボルグの真名を解放しながら地面目掛けて全力で投げつける。それと同時にゲイボルグは無数の棘に分裂し現れ始めてたLV1・2に加え大半のネクロ達を貫きながら一直線にベルフェゴールに向かっていく

 

「ぐがぁ!?てめえ……よくも!!!」

 

胸に突き立ったゲイボルグの棘に注意が割かれたベルフェゴールめがけ

 

「いっけえッ!!!!」

 

地面に突き立っていた黄色の魔槍。必滅の黄薔薇《ゲイ・ボウ》を投げつける。魔力で強化しているので投擲自体が既に一撃必殺の域までになっているが、そこはLV4身体をねじり直撃を回避する。だがゲイ・ボウはベルフェゴールの転移のゲートとなる中心の目を打ち抜いた。追撃にと名もない名槍を2本投擲しベルフェゴールに命中すると同時に爆破する

 

「ぎがっ!?」

 

奇声を発して吹っ飛んでいくベルフェゴールを見て

 

(これでしばらくは大丈夫なはずだ)

 

ゲイ・ボウは修復不可の傷を与える。無論私は本来の担い手ではないのでそこまで効力は高くないが。これでしばらくは、そう戦闘が終わるまではゲートは開けないはず。ペガサスもほぼゼロ距離のデュランダルの爆発でダメージが大きいのか動きが鈍い。私はそれを確認すると同時にヴォドォン目掛けて駆け出した

 

 

 

 

すごい……私はそれしか考えられなかった。アニメや小説の中でしか見たことのない現象が次々と目の前で繰り広げられる

光の刃を放つ剣に天を裂くような炎の剣。そして宙で分裂し降り注ぐ紅い槍……

どれもISや科学で解明できるものではない。さっきの龍也君の記憶の衝撃も強かった。誰よりも尊い願いを抱いて、届かない理想と現実に涙してきた。どこまでも優しい人だから見捨ててしまった自分が許せなくて、ずっと闇を彷徨っていた……私はとても悲しくなった。だけど……そうは思わない人も居たのが余計に哀しかった

 

「「……」」

 

明らかに恐怖の色を目に映している一夏君達から視線を外し前を見る。力強く地面を蹴りながらヴォドォンと名乗ったネクロに突っ込んでいく

 

「はっ!1人で勝てると思っているのですか!」

 

「ふん。たかがLV4で私を止めれると思うな!」

 

互いに剣とダガーを振るう。ただの打ち合いなのに轟音が何度も何度も響き渡る

 

「シッ!!!」

 

龍也君が剣を手放し一瞬構えを取ったと思った瞬間

 

「打ち砕くッ!」

 

手が分裂したように見えるほどの高速ラッシュがヴォドォンを捉え打ち上げる

 

「ごがっ!!!」

 

「せえいっ!!!」

 

アッパーがヴォドォンのボデイを打ち抜くと同時に蒼く輝く龍が飛び出し、ヴォドォンを飲み込み。地面にヴォドォンを叩きつける。その勢いが余りに強かったのかヴォドォンの身体が地面に跳ねて高く打ち上げられたところで

 

「羅刹断撃拳ッ!!!」

 

蒼い光を纏った龍也君の強烈な飛び蹴りが叩き込まれ廃墟のビルに背中から突っ込むヴォドオン

 

(決まった……?)

 

あれだけの攻撃を連続で受けたんだ。もう決まっているんじゃ?私がそんな事を考えていると。ヴォドオンの突っ込んだビルから

光弾が放たれシェンさんに向かう

 

「!?」

 

シェンさんは自分が狙われると思って居なかったのか硬直する。ツバキさんがとっさに動こうとするが

 

「死ぬつもりか?余計な手間を取らせるな」

 

「え?あ……ごめんなさい」

 

龍也君が回りこんで光弾を切り払い。ツバキさんにそう言いながら

 

「ちっ。浅かったか?手ごたえはあったんだが……」

 

放たれる光弾を弾きながら。私を見て

 

「簪、もっと下がれ射程に入ってるぞ。出来るだけ打ち落とすが自分でも身を護ることを考えろ」

 

「え?あ……うん」

 

言われたとおり数歩下がると龍也君が前を向いたまま

 

「投影開始」

 

さっきから何度も言ってる呪文のような言葉を呟くと。空中に4つの巨大な岩で出来た斧剣が現れ地響きを立てて私たちの前に落ちる

 

「危ないと思ったら隠れろ。そう簡単にこれは砕けん」

 

そう言うと同時に駆け出す龍也君を見ていると。箒さんと織斑先生が

 

「本当か?疑わしいが?」

 

「だな。何もかも隠している奴のいうことなど……」

 

完全に疑ってかかっている。さっきの龍也君の記憶を見て、そしてその上で護られているのに何故信じることが出来ないのか

 

「……」

 

口にはしないが疑っているのが見え見えの一夏君に

 

「龍也さんがいなければ私達はこんな恐ろしい目に合わなかったのでは?」

 

龍也君のせいでこうなった良い始めるセシリアさん。全てが龍也君のせいだと全員が思い始めるのも時間の問題と言うとき

 

「はっ!無能もここまで来ると笑えるな。あいつが護ってくれなければワタシたちはとっくに死んでいるという事すら理解できんのか。おい簪。エリス、楯無隠れるぞ。あいつらは死にたいらしい。あいつらと違ってな」

 

ユウリさんの見たところでは

 

「ふむ。岩?いや鉄か?なんにしろ頑丈そうだな」

 

「……結構良い感じかも」

 

「皆隠れないの?」

 

「とっととこっちに来なさいよ。一夏」

 

ヴィクトリアさん達は既に斧剣の後ろに隠れ、武器同士の隙間から龍也君の戦いを観察していた。

 

(疑ってる人だけじゃなかった)

 

私と同じように龍也君を信じようとしている人がいる。それが凄く嬉しかった

 

「お姉ちゃん。肩貸すよ」

 

「ええ。楯無。私と簪の肩にてを置いてください」

 

「う、うん」

 

お姉ちゃんに手を貸して私とエリスも1番近くの斧剣の後ろに隠れ。龍也君の戦いに視線を戻した

 

「あれだけ叩き込んでも駄目か。随分と固いな」

 

龍也君が剣を構えながらそう呟くと

 

「当然です。神の徒たる私に攻撃が通るとお思いですか?」

 

あの余裕と言う態度。何か判らないが何かあるのかもしれない。私がそんな事を考えていると

 

「そうか。では確かめてみるか」

 

「はっ?なに……ぐうっ!?これは!?」

 

ヴォドォンの身体を背後から剣が突き刺し。そのまま龍也君のほうに押して来る、龍也君は無造作に剣を突き出し

 

「壊れた幻想《ブロークンファンタズム》」

 

ゼロ距離で全ての剣を爆発させた。龍也君もヴォドォンも弾き飛ばされる

 

「ぐっ!?ぐうう!?正気ですか!?」

 

ヴォドォンは刺し貫かれた腹を押さえながらそう叫ぶと

 

「正気も正気だよ。お前と私どっちが先に根を上げるかの根競べと行こうじゃないか!!」

 

龍也君はやはり無傷で、再び剣を構え駆け出すとヴォドォンは後退し間合いを取ろうとするが

 

「ぐがあっ!?」

 

「今度は4本。貴様に耐えれるか?壊れた幻想《ブロークンファンタズム》」

 

廃墟が一斉に震えるほどの大爆発がしたと思った瞬間

 

「ぐっがあっ!!!」

 

私が隠れている斧剣に高速でぶつかる音と苦悶の声が響く。ゆっくりと落ちて行く背中は言うまでもなく龍也君の背中だ

 

「ぐっ……死ぬ気ですか!?守護者!?」

 

「はっ。言っただろ?この世界では私は死ねないんだよ!!死ぬのは貴様だけだ!!」

 

再度突進する龍也君目掛けヴォドォンが銃を構えトリガーを引く。そこから放たれたのは前に一夏君を瀕死に追い込んだ黒い光だった。だが龍也君はそれを回避する素振りも見せず変わりに紅い槍を抜き放ち、それを自身の身体の前に突き出し黒い光に突っ込んだ。いや黒い光は紅い槍に触れると同時に消えて行った。私は知る由もなかったが龍也君が手にした槍は「破魔の紅薔薇《ゲイジャルグ》」と言う魔槍で魔力に対して強い抵抗力を持つ槍らしい

 

「なにっ!?なぜ腐敗の教義が!?「敵に教える馬鹿はない。失せろ!!」

 

紅い槍でヴォドォンの心臓の辺りをえぐりそのまま投げ飛ばす。いくら化け物とは言え作りは人間と同じはず心臓を抉られてはもう死んだはずだ。だが龍也君は念には念を入れてか地面に突き立った槍を構え大きく振りかぶった瞬間

 

「!?」

 

「ほう。良い感をしているな!」

 

そのまま後ろ目掛けて槍を振るった。槍の穂先と切りあっているのは光り輝く2刀、さっき剣の爆発に巻き込まれたペガサスが戦線に復帰し龍也君に襲い掛かったのだ

 

「だが槍で俺の剣を止めれるか!」

 

「止めて見せよう。ついでに貴様の首も貰ってやろう」

 

「はっ!やれるものならやってみろ!!!」

 

龍也君とペガサスが間合いを取る。ペガサスは右手の剣を逆手に構え体制を低くし。龍也君は両手で槍を持ち穂先を下に向け……うん?

 

(今血が見えたような?)

 

一瞬龍也君の額から血が流れているように見えたが。目をこすると血は出てなかった。私はこの時は見間違いだったのかと思ったのだが、後に知る事になる。あの傷の位置はお姉ちゃんの傷の位置と同じであり。タオルで止血されていたはずの傷が消えている事に。そしてこの固有結界の本当の力を知ったとき、私は人生が変わる決断をすることになるのだが今の私はそれを知らなかった

 

 

 

 

「シッ!!」

 

「なめるな!!」

 

龍也とペガサスが各々の得物で何度も何度も打ち合う光景を見てワタシは

 

(少しは勝機はあると思っていたが。思い上がりだったか)

 

コアトレースを使えば勝てると思っていたが、コアトレースを使ったところでおそらくは相打ちが限度だろう。しかもワタシの特攻が決まればと条件はかなり悪い

 

「貴様は剣士だと聞いていたがな!」

 

真紅の槍と光の2刀が何度も何度も互いを弾く中。ペガサスがそう叫ぶ

 

「剣を使うのが多いというだけだッ!!!」

 

廃墟の壁を蹴り加速しながら突き出された槍をペガサスが回避する。その腕には飛刀が握られていて即座に投擲されるが

 

「甘い!」

 

即座に持ち手を変え半回転させ飛刀を全て弾くとそのまま前に跳ぶ様に移動し一気に間合いを詰める

 

(?持ち手が短い?)

 

龍也は極端に槍を短く持っていることに気付いた。槍は間合いを離して戦う為の武器だ持ち手を短くしては意味がないのでは?

 

「シッ!!!!」

 

強烈な気迫と共に放たれた一撃は一息で8連続で放たれた。ワタシの目には槍の切っ先が分裂したかのように見えた

 

「そんな子供騙しが!」

 

だがペガサスにはその全てが見えているのか的確に迎撃していくが

 

「子供騙しだと思うか!」

 

「ちっ!?」

 

打ち合いの途中で持ち手を長くし。半回転からの薙ぎを放つ急にリズムを変えられたのにペガサスはそれに対応し身体を捻りながら回避しそのままバックステップで間合いを離そうとするが

 

「させると思うか!」

 

「思わんな!!」

 

龍也の追走からは逃れられないと判断したのかペガサスが足を止めて2刀を構える。そこから始まったのはISを展開していても見えない超高速戦闘だった。剣と槍の打ち合いが閃光にしか見えずぶつかり合う音が響くたびに、廃墟が崩れ地面が抉れる

 

「はっ!!!」

 

「なめるな!!!」

 

だが武器だけの戦いではなく互いに互いの隙を窺い、蹴りや正拳を繰り出しあっている。はっきり言ってワタシでも半分ほどしか何が起きているのか見えはしない。それほどまでの高速戦闘だった。当然ながら一夏達は見えるわけもない……金属同士の甲高い衝突音の中ペガサスが

 

「何故貴様は何も掴まない?」

 

「何のことだ」

 

互いに互いの命を奪おうとしているのに話を始める。龍也とペガサス、その間もかすればそれだけで絶命しかねない一撃が放たれあっている

 

「地位。名誉。金……そして女。貴様は全てを手に出来るだけの地位と名誉を既に手に出来ると言うのに。何故何も掴まない?」

 

「はっ。そんな下らん事を聞かれるとは思わなかった!!」

 

いつの間にか槍から剣に持ち替えていた龍也の高速の上下の切りおろしを弾くペガサス。龍也は間合いを詰めながら

 

「価値がないのさ。私の存在理由は家族を仲間を護る事だけだ。地位?名誉?金?はっ!くだらん!私にとってそんな物は何の価値もないものだ!!!」

 

龍也がそう叫びながらペガサスの胴に蹴りを叩き込み弾き飛ばしながら

 

「いまさら血に濡れたこの腕で何を掴める!何を抱きしめる事ができる!何も救えず護ることも出来なかった私が何故いまさら幸せになどなれる!ただの1人……」

 

龍也が一瞬顔を歪めた。後悔と悲しみに満たされた顔のまま

 

「愛していると言ってくれた女すらこの手で殺した私に幸せなど不要のものだ!!!」

 

「ぐがあっ!!!」

 

振りかぶった龍也の拳がペガサスの顔面を捉え殴り飛ばす。だがそれ以上に龍也の言葉はワタシ達に衝撃を与えた

 

《愛していると言ってくれた女を殺した。いや違う。きっとネクロによってネクロ化する前に龍也が殺したのだろう。だがそれゆえ

に龍也の心に深い傷を残したのだろう。箒や一夏達が龍也を睨む。真意を知るのではなくただ自分たちが理解できない力を振るう龍也を恐れ睨んでいるのだ。ワタシからすれば愚かとしか言いようのない行為だ。龍也は吹っ飛んだペガサスを睨み一瞬で間合いを詰め剣を振るおうとした瞬間

 

「!?……ちいっ!!!」

 

龍也の動きが一瞬鈍る。その間にペガサスは間合いを離すが龍也はその場から動く気配がない

 

(なんだ?どうした?)

 

傷を無効化する世界で戦っているのだから、ダメージと言うのはない筈だが……龍也は数回首を振るとまた剣を両手に構えペガサスに向かって突進していく。だが明らかにその動きは鈍くなっている

 

「どうした?疲れたか?」

 

「さぁなっ!!!」

 

(やはり鈍い……どうしたんだ)

 

やはりさっきと比べると明らかに動きが鈍くなっている。だが見た感じダメージはないはず?では龍也に何が起こっているというんだ?わけがわからず混乱していると

 

「うっぐう!?」

 

さっき龍也の記憶を見たときと同じ頭痛がワタシを襲う。いやワタシだけではない楯無もエリス達も同様だ。そしてワタシ達はまた龍也の記憶を、そして龍也を最も理解し共にいた女性の存在を

 

《なぁ……そんな顔してて疲れないか?》

 

隻腕だった時の龍也が頬をかきながら尋ねると

 

《問題ありません……お気になさらず》

 

美しい銀髪に蒼い目の女性。表情と言うものは何も浮かべておらず人形のような印象を受ける

 

《気にするなと言われてもな。そんな能面見たいな顔をしてたら嫌でも気になるぞ?》

 

《気にしないで下さい。私は統制人格……貴方の手となり足となる者。それ以外に私に価値は無いのです》

 

龍也はゆっくりと立ち上がり女性の頭に拳を振り下ろす。当然力なんて何も入ってなかったのかぽこんと言う乾いた音が響いただけだった

 

《良いか?今までの王がどうだったが知らないが、私がお前の主になった以上そんな事は認めない。普通に笑って過ごせ、それに何時までも統制人格と名乗っているのがいけないんだ。待ってろ今名前を考える》

 

龍也の隣の腰掛け。じーと見ている女性。大人のはずなのに何処か子供っぽい印象を受ける

 

《そうだ。空の上から見守る者、天界の青き風。セレスというのはどうだ?》

 

《空の上から見守る者。天界の青き風……セレス。ありがとうございます……その名……大切にします》

 

胸の上で手を組んで嬉しそうに笑う女性。いやセレス。彼女が微笑むと世界が変わっていく……

 

《うう……ああああ……》

 

廃墟の中で全身から血を流し涙を流す龍也に

 

《王よ。行きましょう……》

 

《ぐうう……また私は何も護れなかった……何も救えなかった》

 

血が出るほど拳を握り締めて嘆く龍也を優しく抱きしめ

 

《行きましょう。死ななければ次があります》

 

龍也はセレスに抱きかかえるように消えて行った。それからもセレスは何度も何度も龍也を支えた。護れなかったと涙する龍也の涙を拭い。死に瀕した龍也を救った。だがそれが何年も続くうちに龍也は変わり始めていた。セレスが人らしくなっていくのに対して龍也は人形のようになっていた。それでもなおセレスは龍也を支え続けた……そして場面が変わった瞬間ワタシは思わず息を呑んだ

 

(これは……流石のワタシでもきつい)

 

裏世界を知るワタシでも目の前の光景はきつかった。ボロボロの動力室の様な場所の壁に背中を預ける龍也。だが左腕は肩から切り落とされとどめなく血が流れ続けている。いやそれだけじゃない、両足に1本ずつ、右肩に2本、そして腹に4本。巨大な槍が突き刺さっていた。もう絶命するのも時間の問題だと言うのは直ぐ判った

 

《セレス。お前は脱出しろ……そしてはやてと契約しろ。もう私に付き合わなくていい……今までありがとう、さぁ行くんだ》

 

何の光も映してない空虚な目でセレスではなく別の方向を見つめながら言う龍也。視力を失っていると一目で判る

 

《お断りします、天空の青き風は何時如何なる時も貴方と共に・・》

 

セレスはそう言うと龍也の隣に座り腕を掴む。龍也は驚いた表情を見せてから

 

《馬鹿だな……お前は……でもありがとう。1人は嫌だから……嬉しいよ。寂しいのは……嫌だからなぁ……もうあんな寂しい思いをしたくないからな……》

 

龍也はそう笑うと身体から全ての力が抜けたように目を閉じた……セレスはその目に涙を浮かべながら事切れた龍也を抱きしめ

 

《貴方を独りだけで逝かせはしません。私も……貴方と共に……》

 

そして龍也とセレスは炎に呑まれ消えて行った……

 

《オリジンの融合騎には1つだけ特殊な力があります。それは己の命と魔力をマスターに渡すこと》

 

唐突に場所が変わった。龍也の前に佇むセレスは優しく微笑みながら龍也の頬に触れて

 

《そんな顔をなさらないでください。私が望んだ事です》

 

にっこりと微笑むセレスは私から離れながら

 

《私は王に出会えて良かった。磨耗した私にとって貴方と過ごした時間が何よりも素晴らしく大切な時間でした、だから私は貴方の為に命を捨てることが出来た。貴方に生きていて欲しかったから、貴方に笑っていて欲しかったから》

 

長い時の中でセレスは龍也を愛し始めていたのかもしれない。だから龍也のために命を捨てることが出来た……

 

《私は幸せでした。貴方の傍に居れて、もう充分です……私は幸せに生きる事が出来ました。思い残す事はありません》

 

消えて行くセレスに龍也が慌てて手を伸ばそうとするが、セレスは手でそれを制し

 

《王よ。我が愛しい人よ……貴方が掴む腕は私の腕ではありません。貴方が掴むべき腕は他にあります。だから生きてください……貴方には幸せに生きる権利がある。生きて生きて……そして再びこうして話すことが出来る時には……また色んな話を聞かせてください》

 

セレスは最後にそう微笑み。消えて行った……

 

「はっ!?」

 

気がついたらワタシはまた紅い大地に立っていた。2回目の記憶の度は短いものだったがそれでも深くワタシの胸に残った……

誰よりも龍也を理解し愛した女「セレス」その愛は自身の命を引き換えにしたとしても龍也を生かしたいと願った何よりも尊い愛の形だった。龍也はその愛に報いることが出来なかった事を悔いているのだ、だから殺したといった。だけど真実は全く異なっていた……ワタシは龍也の背中を見て

 

(なんて哀しい道を選んだんだ。お前は……)

 

きっともっと優しくて暖かい道もあっただろう。だが龍也が選んだのは茨の道……

 

誰からも理解されない。孤独な正義……それが八神龍也が選んだ道だったのだとワタシは悟ったのだった……

 

 

第70話に続く

 

 




次回の前半で戦闘は終了。その後は色々とイベントをやろうと思っています。ここからは殆ど原作を無視していきますのでどうなるか楽しみにしていただけると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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