第75話
IS学園の近くに隠されたアリーナの観客席で私は思わずこう呟いた
「魔導師って魔法を使わなくても強いの?」
「強いに決まってるやろ?特に兄ちゃんは素手でもネクロ倒せるんやで?」
「というか龍也ってダイヤモンド握り潰せたよね?」
「うん。確かそうだよ。よくはやてちゃんが作る金属の監禁部屋破壊して逃げてるし」
魔法使いってなんだろう?杖で空を飛んだり、炎を出すとかを想像してたんだけどもしかすると魔法の後ろに(物理)がつくのかもしれない
「お前ら少しは状況を理解したらどうだ?」
呆れたように言うユウリ。その視線の先では
「世界最強。くだらん戯言に踊らされ自己を高めることを忘れたお前の剣など私には届かんよ」
「くっ!」
織斑先生と龍也さんが打ち合っている……いや完全に織斑先生が遊ばれている
「ほれ、これで7度目。私がその気なら貴様は当に死んでいるな?世界最強」
龍也さんの横薙ぎの一太刀が織斑先生の木刀を弾きそのまま喉元に向けられる
「黙れェッ!」
「届かん。理想も信念も無き刃が私を捉える事などない」
織斑先生の上段からの一撃を片手で弾き、そのままのど元に剣を突き立てる
「8回目。何度死ねば気が済むのかね?」
挑発を繰り返す龍也さんの顔には余裕の色が見えるし汗1つ無い。それに対している織斑先生は
「はーッ……はーっ」
肩で息をし木刀を杖代わりにして漸く断っているという感じだ。IS学園のアリーナで無くて良かったと本当に思う、こんなのはIS学園の生徒にも一夏君達にも見せられたものじゃない
(如何してこんな事になってしまったのでしょうね?)
きっかけは3時間前だったと思う……
IS学園の地下のラボでISの改修と武器の考案を纏めているときに織斑先生が突然やってきた。ここ数日禄にこのラボに来てなかったからどうしたんだろうと思っていると
「八神龍也頼みがある」
「ふむ?何かな?ここから出て行けというのは聞けんぞ?」
「一手手合わせを願いたい。頼めないだろうか?」
その言葉に私の隣で作業していたはやてさんとフェイトさんが
「死んだな。精神的にも肉体的にも」
「だね。ま、私達の知ったことじゃないけどさ」
黒い笑みで呟く2人。まさか龍也さんがそんなことするわけないと思ったが
「構わんよ?骨の5~6本は覚悟してもらうがな」
えっ?一瞬龍也さんの言葉が理解出来ず目が点になる私。いや私だけじゃないユウリも同じようになっている
「私とて善人じゃない。お前のいらぬ不信感のせいで、私は護るべき者に芝居とは言え銃を向ける羽目になった。少々腹に据えかねているのだよ」
龍也さんの目が鋭い眼光を放つ。代表として、そして現更識の党首として色々な修羅場を見てきた私でも思わず背筋が凍りつくような鋭い視線だった。
「それで構わない。IS学園のアリーナでやるわけにも行かないので、近くに隠しアリーナがある。そこで待っている」
そういって出て行った織斑先生を見ているとなのはさんが
「龍也ってさぁ、ああいう人が1番嫌いなんだよね」
「そうそう。教師だからとか言って、直ぐに手を上げる人間は教師の資格なしって言うてたしなあ」
「まぁどうなろうと私達の責任じゃないし。龍也なら腕の1本や2本くっつけれるし、心配ないでしょ」
心配しかないですけど!?腕の1本や2本くっつくってそんな簡単に言う事じゃないわよ!?
「んじゃちょっと千冬を地獄に叩き落してくる」
「廃人にしたらあかんで?兄ちゃんの暗示きついから」
「善処しよう」
「善処しようじゃないわよーッ!!!」
駄目だ。この人たちを放置してはいけない。私は謎の使命感に突き動かされユウリを連れて(1人では怖かったため、こんなときに限ってツバキさんがいなかったから)隠しアリーナに付いて来たのだ。ちなみに運転は龍也さんだった
「自分が最強だというくだらぬ自負。全くもって理解に苦しむ……宣言しよう。お前の攻撃はただの一撃も私には当たらないと」
向かい合う龍也さんと織斑先生の得物は木刀だ。本気でやれば骨の1つは2つは確かに折れるだろうが、生死に関わる事態にはならないと思う。龍也さんの挑発に遠目から見ても明らかに不機嫌になった織斑先生が、先手必勝と力強く踏み込み一瞬で間合いを詰め木刀を振るうが
「どこを狙ったのかね?」
「!?」
織斑先生がばっと飛びのく。私でも目の前で見れば反射的に間合いを離すだろう。何をされたのか判らず頭の中がぐちゃぐちゃになっているから
「魔法でも使ったのか?」
「馬鹿かね?子供相手にそんなものを使う分けなかろう?ただの体術だよ、ただのね。どれ今度は私が」
龍也さんが木刀を突き出すと同時に
「がはっ!?」
蹴り飛ばされたサッカーボールのように織斑先生の体が吹っ飛ぶ。龍也さんの位置は最初のまま
「え?ええ!?なに今の!?」
何が起こったのかさっぱりわからない。どうして織斑先生が吹っ飛んだのかが判らない
「突きだ。凄まじい踏み込みで間合いを詰めて……その勢いのまま突きをして元の位置に戻っただけだ」
「見えたの?」
「辛うじて……」
ユウリは酷く神妙な顔をしてアリーナの下を見つめている。一時も瞬きなど出来ないと言った真剣な表情で
「織斑千冬は勝てない。格が違いすぎる」
再び響くガツンっという鈍い音に私もそう思ったのだった……だけどはやてさん達は
「ん?ふーん……なるほどね」
「まあ龍也だからね。仕方ないよ」
「龍也さん人にあんまりお節介するなよって言っておいてこれだもんなぁ」
ぶつぶつと何かを呟いていたのだが、私は目の前の戦いに集中していてその呟きが耳に入る事はなかった……
ガンッ!!ガンッ!!
木刀が何度もぶつかり合う鈍い音が何度もアリーナの中に響き渡る。魔法もISも無し純粋な体術勝負だが、私は重りのコートも脱がず、木刀も右手一本で持ち千冬の猛攻を防ぎ続けていた
(軽いな、この剣は)
剣士の剣としては余りに軽すぎる。それは張りぼての栄光。作られた勝利のせいなのか、それともただ千冬が弱いだけなのか……そんなことを考えながら振り下ろされた木刀を弾き、そのまま左手で千冬の襟をつかんで投げ飛ばす
「うわっ!?くっ……このおっ!!!」
投げられて体勢を崩したものの片手をついて上手くリカバリーして突っ込んできた千冬にあわせて木刀を振り下ろす
「うぐううっ!?」
突っ込んで来た勢いが全部自身の肩に跳ね返ってきて顔を歪める千冬だが
(目は死んでいない、むしろ強くなっているか)
ヒンドゥー教では虎は傷ついてからが本物と言う言葉があるが。どうも千冬も似たようなものか……とは言え負けるほどの脅威は感じない
(さてとそろそろ。お遊びは終わりだな)
軽く指を鳴らして結界を発動させる。ここからの話はユウリや楯無に聞かせるわけには行かないからな
「さてと……行くかッ!」
木刀を逆手で構え一気に間合いを詰め切り上げる
「ぐっ!」
ガツーンッと鈍い音が響く中即座に持ち手を治し
「ふんっ!!!」
「がっ!!!」
肩に木刀を押し当てそのまま力で千冬を地面に叩きつける
「まだ「嫌もう終わっているな」
立ち上がろうとした千冬に蹴りを叩き込みそのまま吹っ飛ばす。アリーナの床で2回ほど跳ねて木刀にもたれ掛かるようにして、意地でも倒れないと言うのを言葉ではなく視線で告げる千冬
(そう千冬は身体の痛みでは倒れないだろう)
千冬と私は良く似ているだから身体の痛みなら幾らでも耐える。だから私がへし折るのは千冬の心だ、で無ければ千冬は何時までも道を踏み外したままなのだから……
私は今まで調べた白騎士事件の事。モンドグロッソの事を思い出しながらゆっくりと千冬に声を掛けた……
木刀を握り締めながら自身の体のダメージを確認する。あちこち激痛が走っているものの身体はまだ動く。
(いや手加減されているのか)
最初の突きの早さには全く対応できなかった。あのスピードで攻撃してくれば何もさせずに私を打ち倒す事も出来るのに、八神はそれをしない
(何か考えがあるのか……)
師と戦っているかのようにまったく先が読めない。ノーモーションの突っ込みに受け止めた手が痺れるほどの強烈な一撃。私はそのどれにも対応できていない
「お前は今まで何をして来た?全てが自分の力とでも思っていたのか?」
「なんのことだ?」
突然そう話しかけてきた八神は私の問いに答えず
「モンドグロッソ。その出場者にはある条件が本国から出されていた、それは織斑千冬に敗れる事。もし勝つ様ならば束はその国に対するハッキング攻撃をすると開催2日前に全世界の首相に脅しをかけていた」
「な、なに?」
「篠ノ之束にとってお前は特別な人間だった。自身はISを開発した天才として名声を得た。しかしお前は表には立てぬ活躍しかしていない。故に考える、自身にとって特別な人間を全世界に知らしめる方法。ISの最強の操縦者としての名声。モンドグロッソの存在はただお前の存在を世界に知らしめるだけの舞台装置だったということだ」
そんな馬鹿なと言いたいが束ならと判ってしまう自分がいる。学生時代を考えてもあいつは学校のPCを操作して私と同じクラスになるようにしていたからだ
「そして次にお前は束の傍にいてISの試作機の開発を手伝っていた。その地点で他の参加者とは認識も何もかも違っていた。故にお前は常に有利だった」
「だが私はモンドグロッソでは「苦戦した?演出だ。あの束と言う女は実に利己的で賢い人間だ。ISの強制介入により行動の制限。それでもなお勝てるというのならその人間は素晴らしい」うっぐ……」
自分が築き上げてきたものが崩れていくそんな感覚が私を襲う。それと同時に見ている楯無とユウリの事を考えてしまい、思わずそちらに視線を向けると
「心配ない、向こうには何も聞こえていないし別の物が見えている。私と打ち合うお前とかな」
「……魔法とやらか?」
私の問い掛けに八神は答えず言葉を続ける。態々聞くまでもない事だったか
「そして白騎士事件。世間一般では死傷者ゼロだが実際は違う。負傷者480名、死者138名。お前はこの事実を知っていたか?」
「!?そ、そんなはずは!?」
束は言っていたただの1人の死者もいなかったと……負傷者もいないと。それにその事件の後のニュースにもそんな情報は無かった
「隠蔽工作。束はISの技術を死傷者の出た国に与える事でその情報を隠蔽させた。各国にとって死傷者が出たのは痛いがそれ以上にISの情報は魅力だったと言うことだ」
嫌だ、これ以上聞きたくない。そう願うのに私の腕は動いてはくれない。今まで目を閉じていた、耳を塞いでいた、そして逃げていた現実が全て私に突きつけられる
「しかし残された遺族は堪ったものじゃない。何人が路頭に迷った?何人が裏世界に手を伸ばした?お前はそれを知っているか?そしてお前は自分の罪を数えたことがあるか?」
手の中から木刀が零れ落ちる。今まで信じていた者、見たくなかった現実を全て突きつけられてしまった。全てを見通しているかのような龍也の蒼銀の目が私を射抜く……
「お前は自身を強いと思っていた。ああ、確かにそうだ束の介入があったとは言え。勝ち残れたのはお前の実力であったのは認めよう。しかしお前は道を踏み間違えようとしている」
気がつけば八神は私の前に立っていた。逃げよう、離れようと思うが足は動いてはくれない
「お前のあり方は私に良く似ている。だがそれゆえに私は認めることが出来ない、お前は私の様にはなってはいけない。ネクロに襲われたとき、私を警戒して当然だ。護りたい家族がいるのならその反応は極めて正しい」
八神は諭すように坦坦と告げる。私も同じ反応していただろうからなと苦笑しながら
「だが今のままでは駄目だ、お前はきっと私と同じになる。狂い闇の道を彷徨う事になるだろう、そうなれば戻る事は出来はしない。だから……1度全てをリセットしろ。そうすればきっと判る。お前の進む道が……さぁお前の罪を数えろ……」
八神の手が私の目を覆う、それと同時に強烈な睡魔が私を襲う。立っていられず倒れかける私を八神は受け止めて
「おやすみ織斑千冬。次ぎ目覚めた時きっとお前は答えを手にしているだろう」
どこまでも落ちていくようなそんな感覚と共に私の意識は闇にと沈んでいった……
崩れ落ちる千冬の身体を支えながら指を鳴らして幻術を解除する。見ていたユウリと楯無には千冬がカウンターを喰らって崩れ落ちたように見えているだろう
「織斑先生!」
「問題ない。手加減してある」
観客席から叫ぶ楯無にそう返事を返す。それに与えたダメージの大半も既に治療済みだ。私は子供や女を痛めつけるような趣味は無いからな
「楯無。今そっちに行く」
千冬をどうやって運ぶか考え、とりあえず背負う事にしそのまま観客席のほうに向かって歩き出した
「あんまり怪我が無いですね」
「魔法である程度は治してある。後は本人しだいだ」
深い眠りの中で自分自身を見つめなおすのが終われば、直ぐにでも目覚めるが。それがいつかはわからない
「やりすぎ……ではないな。手加減していたんだろう?」
「それなりには本気だったよ。手を抜いて戦える相手ではないからね」
千冬の太刀は確かに最強と言うのに相応しいだけのものではあったが、それを振るうだけの心が無かった。敵は倒し屠るだけの邪の剣。それでは駄目だ、ネクロの闇に呑まれてしまう。だからこそ千冬の提案を受けたのだから。一通り手当てを終えたところで
「ではIS学園に戻るか。何時までもIS学園を空けているのは不味いからな。楯無とユウリなら運べるだろ?じゃあ任せるぞ」
来た道を引き返し車の方に向かっているとはやてが後をついてきて
「千冬はほっておけへんかった?」
「ふっ、お前にはお見通しか」
「当然♪兄ちゃんの考えてることは判るで」
にこにこと笑うはやてを見て、後ろからなのはとフェイトが来ていないのを確認してから。隣のはやてを抱きしめる
「兄ちゃん?」
突然の事に驚いた顔をするはやてに
「千冬は私だ。私が歩きえた可能性を持っていた」
千冬のようにはやてだけのことを想い。それ以外を二の次にし見たくない現実から目を逸らし逃げていた可能性が私にはあった。
私は弱いから……そんな未来を私に想像させるまでに私と千冬は良く似ていたのだ……
「ん。大丈夫……兄ちゃんはきっと大丈夫」
「そうだろうか……」
何時も私は弱気になる。いつか狂ってしまうんじゃないかと、取り返しのつかないことをしてしまうんじゃないかと……はやては私の頬に触れて
「大丈夫。兄ちゃんはそんなことには絶対にならん。私がいる、ヴィータがいる、シグナムがいる。そして皆がいる……絶対に大丈夫」
ゆっくりと私の頬を撫でるはやての小さい身体を抱きしめながら
「……そうだな。つまらないことで不安に思ってしまったな。すまない」
はやてが皆がいるから私はきっと私のままでいられる。そしてその為に戦う事ができる。狂わずに前を見て……抱きしめていたはやてから離れるとはやては私の手を握り
「行こう!兄ちゃん」
いつかのように私の手を握ってくれるはやての小さな手を感じながら。私は歩き出した……
まだ今は……この暖かい場所に居たっていいだろう。いつか全てが終わるその時までは……
はやてに手を引かれ歩いていく龍也を見つめる4つの視線
「いいの?フェイトちゃん。邪魔しなくて」
「しないよ。偶に龍也だって弱気になるよ」
魔王の直感でユウリと楯無をおいて様子を見に来たなのはとフェイトは通路に背中を預けて
「やっぱり。龍也さんが弱気になるのははやてちゃんの前だけか」
悔しいと想う反面。それが当然だと想う自分達の複雑な心境に眉を顰めたが、それは兄と妹の関係だから。そしてもっとも近い傍にいる家族だからと言う理由で納得し、龍也とはやて達のほうとは逆。アリーナに戻り千冬を運ぶのを手伝いに行ったのだった……
龍也達が隠しアリーナからIS学園に戻っている頃。一夏はIS学園の近くの海岸を歩いていた
あの一件から、俺は龍也と距離を置くようになった。箒やセシリアと違い。俺は何をすればいいのか?何が出来るのか?が判らず。かといって龍也と話をする事を考えると、感情的になり顔を合わせれば何を言うか自分でも判らないからこうして距離を取る事しか出来ない。あの時撃たれた簪さんとエリスさんが未だに龍也と一緒にいれるのか?俺には判らない。それに龍也の事もネクロのことも何も判らない……
「っともうこんな時間か」
あても無く歩いていたせいで気がつかなかったが。太陽は傾き辺りを緋色に染め上げている。その事で門限が近い事には気付いたが
俺は学園に戻ろうと思わなかった。千冬姉の説教が待ってるだろうし、もしかすると魔王モードになった千冬姉に襲われるかもしれないけど、それでもまだ戻りたくなかった……そんなことを考えながら海岸沿いに歩いていたその時に俺は思わぬ人物と出会うことになる
「悩んでいる、いや違うな。迷っているな織斑一夏」
「!?」
背後から聞こえた声それはあの時いた奴、臨海学校で初めて戦ったあいつ。ペガサスと言うネクロの声に違いなかった。思わず身構えると
「身構えるな。別にとって喰うわけじゃない」
「どうだか……お前だってネクロってやつなんだろ」
ネクロは人間の魂を糧にすると言っていた。だからただ会話師に来たと言うわけではない筈だ。
「……守護者がどう説明したか知らんがまぁあってるだろうな」
白式をいつでも展開できるようにしながら俺は少しずつ後退する。戦うのは無理だ逃げるしか出来ない、だがどうやって逃げると必死に考えているとペガサスは腕を組みながら俺に問いかけてきた
「守護者があの時言った言葉は正しいぞ」
その言葉に思わず目が点になる。あの言葉……それはあの固有結界と言う奴の中での言葉であり、簪さんとエリスさんが撃たれたときの事だと理解すると俺は
「なっ!犠牲を出すことが正しいわけないだろ!」
「全てを護るなどいう奴は驕ってるだけだ。人が護れるのはその腕の届く範囲でしかない」
怒鳴る俺に対してペガサスは冷静に言葉を返してくる。段々腹が立ってきた、龍也の言う事も判るだけどそれが正しいなんて俺には思えないからだ
「だったら俺は……「そして織斑一夏、お前は誰かを守れるほど強くない」
俺が口を開いた瞬間。俺の視界からペガサスが消えて首に手刀が添えられていた
「っ!?」
ネクロの力を考えれば、このまま俺の首を切り飛ばすことだって出来る。なのにペガサスは
「自身を守れない者が誰かを守る?笑わせるなよ」
淡々と言葉を紡ぎながらゆっくりと手刀がおろされるが、俺は動けなかった……死にかけて怖かったというのもあるが、理解してしまったのだ、ペガサスの言う通りだと……そして龍也の言うことは正しいと……それでも俺は
「……めない」
「んっ?」
「それでも俺は!認めるわけにはいかないんだ!」
そうだ。龍也の言う通りだったとしても、ペガサスの言う事が正しかったとしても俺は俺だ!俺でしかないんだ!この気持ちを偽る事なんて出来はしない
「……やはりこの世界での英雄はお前なんだな」
俺の叫びを聞いたペガサスが呟いたみたいだが風で聞こえない。ペガサスは俺を見ながら
「……俺の剣術をお前に教えてやる」
「な!?」
その発言の意味が理解出来ず俺が困惑しているとペガサスは
「俺の目的はあるネクロを消滅させること……そのためにお前と守護者、両方を利用させてもらう。それに守護者の訓練をつけられるのも今は嫌なのだろう?」
ネクロがネクロを狙う……?龍也から聞いた話とは少し違うみたいだけど……
「どう言う事だよ……」
俺の心境を全て見透かしているかの様な口調のペガサスに若干の警戒をしながら、言葉の意味を尋ねるとペガサスは
「なに、お前は"本来この時間は守護者と鍛錬をしている"ハズだからな。ここにいると言う事はあの一件からだと推測できる」
……ん?今凄く重要なことを言わなかったか?少し考えてこれはとんでもない事だと気付き
「なんで知ってるんだよ!?」
それはIS学園にいなければ知る由もない話だ。なんでペガサスが知っているそのことに動揺しながら訪ねると
「くくっ……まぁ知りたかったらそっちにいる黒武士とやらに聞くといいさ。そっちにいる更識という奴かツバキとやらに聞け」
黒武士?誰のことだ?龍也ではないよな?そう言うと背を向けて歩き去ろうとするペガサスの背中に……一瞬だけどその背中にあの時の龍也の姿が被った
「もし俺の剣術を教わりたいなら、明日の早朝にここまで来るといい。もし守護者に気づかれたのなら俺が交渉したいと言っていたと伝えてここにつれてくればいい。騙し討ちはしない」
「……信用できるかよ」
人の姿をしていてもその中身はあの化け物と同じだ。龍也が信用するわけが無いと言うと
「するさ。守護者に■■の剣士の誇りにかけて、と俺が言ったといえばな……」
一瞬だけ振り返ってそう次げた。ペガサスはそのまま今度こそ立ち去っていった……1人残された俺は
「ったく俺にどうしろって言うんだよ」
そして俺はこの答えをどうするか悩むことになるのだった……
第76話に続く
次回は訓練回となります。龍也の思惑、ペガサスの目的、迷い続ける一夏、様々な思惑が交差していく感じの話にしたいと思っています。77か78話でタスクの襲撃をやろうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします