第83話
騒がしい食事を終えた後。龍也が前回の俺の暴走のことについて話があると言うのでアリーナのブリーフィングルームに呼び出された。簪さん達は魔法の講習。弥生さん達は夏休みの課題。食べて直ぐ訓練はきついだろうという心遣いだった。箒達は気になることもあるといって俺についてきた。ちなみにマドカは千冬姉に連れられて転入手続きをしている。本当なら千冬姉も交えてネクロの話をする予定だったのだが。まずはマドカのことを第一に考えると言っていた。なおマドカは最後まで手錠を外す事には抵抗していた。そんな1悶着あったもののブリーフィングルームに来た俺はそこで龍也に信じられないことを告げられた。その言葉はあまりに衝撃的だった
「一夏。このままお前がISを……白式を使うのは止めたほうがいい。戻って来れなくなる」
その言葉の意味が判らず呆然としていると箒が
「戻って来れなくなるというのは?」
「前の暴走状態のときのままになる。闘争本能だけ……言い方は悪いが今の状況でISを使えばネクロ化に近い状況になる。それが私の出した結論だ」
どうしてそんなことになったのか判らず呆然としてしまう。やっと俺の進むべき道が判ったとたんにこれなのかと
「どうしても俺が白式を使ったらだめなのか!?」
「……どうしてもと言うことではない。だが条件がある、かなり厳しい条件がな」
真剣な顔をしてる龍也。だが条件付でも使えるのならと思い
「その条件は?」
「可能性の話だが、暴走を抑えるために魔力コントロールを覚えろ」
魔力コントロール?俺と一緒に話を聞いていた箒や鈴が呆けた顔をする中龍也は
「暴走のせいかはわからんが、僅かに。そう本当に僅かに、出力は簪やエリスの4分の1以下ほどだが一夏にも魔力があることが判った」
傷心なのにそこまで言うかと一瞬肩を落とすなか、ラウラが
「一夏が魔力コントロールを覚えればあのときのような姿にはならないと?」
「判らん。可能性の問題だ、魔力を使うことであの状態になりやすくなるかも知れんし、抑えれる様になるかもしれん」
そう言う龍也にシャルが少しだけ怒った表情で
「それは流石にいい加減じゃないのかな?前例がない「前例はある。半ネクロの少女は自分の意思でネクロの力を押さえ込み、人として暮らしていた。名はリーエ。私が預かって育てていた子供だ」
龍也がコートから1枚の写真を取り出して机の上におく。そこには10歳前後と思われる少女と龍也の姿が写されていた。鮮やかなまでの紅い髪と蒼い瞳。だがその左目はペガサスのように縦に割れていた。龍也の隣でコートの裾を掴みながらも前を向いてカメラを見つめていた
「ずいぶんと可愛らしい子ね」
「良く懐かれているようですね」
写真でもわかる。このリーエと言う少女がとても龍也に懐いていると。龍也は写真をコートにしまいながら
「こんな子供でもネクロの力を抑えて生活していた。リーエより年上なのに不安だというのか?お前は」
「出来るに決まってだろ!「では早速始めようか、お前は簪とエリスより魔法力が弱すぎる。まずは」
淡々とし説明を始める龍也を見て俺は
(あれ?俺地雷踏み抜いた?)
判っていたはずなのに、俺は龍也の常套手段である挑発にまんまと乗ってしまったわけで……
「馬鹿だな。一夏、骨は拾ってやるぞ」
「大変だと思うけど頑張りなさい。帰りにジュースを買っておいてあげるわ」
「一夏さん。頑張ってくださいね、一夏さんがどんな魔法を使えるようになるのか楽しみにしていますわ」
「頑張ってね一夏。僕も僕で頑張るよ。マルチタスクの練習を」
口々にそう言って去っていく箒達。残ったのはラウラだけだった。ラウラは興味心で瞳を輝かせて俺の隣に座り
「魔法の訓練と言うのをじかで見てみたい」
キラキラと瞳を輝かせるラウラと一緒に俺は魔法の講習を受け始めた。
~3時間後~
「しっかりしろ。一夏」
「らうらア。頭痛い」
「情けない奴だ」
龍也による魔法講習は頭の中に強制的に魔法の知識を叩き込むというもので頭を鷲づかみにされ、そこから無理やり情報を流し込まれるというとんでもない荒業だった
「龍也。皆こういう風にやるのか?」
俺を支えているラウラがそう尋ねると龍也はにっこりと笑い
「前回のささやかなお返しだ。何も知らなかった子供には相応しいだろう?」
……うん。2度と軽はずみな言動はしないようにしよう。龍也は怒らせたらいけない人間だ。俺の心の中の怒らせてはいけない人間ランキングに龍也の名前が深く刻まれたのだった。ラウラもそう思ったのか小声で
(一夏。今回は自業自得と諦めろ。代わりに後で私がカフェラテとケーキを奢ってやろう)
ラウラのその優しい言葉が俺の心に染み渡ったのだが、カフェテラスで
「一夏から離れろ。眼帯女」
「その言葉宣戦布告と受け取る」
互いにナイフを構えるマドカとラウラを止めるのに疲れ果て。心も身体もボロボロになったのだった
ボロボロの一夏を見ている一団の姿があった。手にしていたカフェオレを置いて
「一夏君って妹いたんだね」
シェンがそう言う。私はカップに砂糖を入れながら
「そのようだな。まぁ性格が凄いがな」
鈴と箒を相手にしても普通に戦闘できるその能力。そして今の目の前で繰り広げられているナイフでの近接戦闘を見る限り。世界最強の姉にしてこの妹ありと思えるだけの能力だ
「しかし性格まで似ていると流石に驚きますね
「……うん。ちょっと怖いかな?」
エリスと簪が午前中の魔法の訓練の後の楽しみにしているケーキを食べながらそう呟く。姉妹だから容姿が似るのは判るのだがブラコン・ヤンデレまでにな
くていいのに、それがあの戦いを見ている私達の考えだった
「それにしても最近色々あるな」
はぁっと溜息を吐く弥生。その一言には色々な思いが込められている、私たちもそう思っているのだから間違いない
「短い間に色々あったので余計にそう思うんだと思う」
たかだか数週間の間に魔法・ネクロ・魔導師、さまざまなことがあった。
「事実は小説より奇なり。とは言うが流石に驚かされる」
とはいえそれにもう適応してしまった私たちもどうかと思うがなと苦笑しながら言うと皆も同じように苦笑していた。さてとと紅茶のカップを机の上におき
「さてとそろそろ時間だな」
はやて達に言われていた訓練時間が近づいてきているのでそう言うと
「相変わらず時間が正確だね。ヴィクトリア」
呆れたようにいうシェン。私はシェン達を見ながら持論である
「当然だ。時間に遅れるというのは非礼になる。そう言うのはしっかりしておくべきだ」
はやてやなのは、フェイトによる対ネクロ用の戦闘訓練。別になのは達はそんなことをしなくてもいいのに私達が襲われたときの事を考えて訓練をつけてくれると言っている。それに遅れるのは人としてどうかと思う。それに未知の戦闘技能と言うのを学べる機会なんて普通はあるものじゃない。その貴重な機会を失うわけには行かないと思いながら言うと
「確かにそうだね。じゃあそろそろ行こうかな」
自分達が飲んでいたカフェオレとかを片付けながら立ち上がるシェン達を見ながら私は少し早めにアリーナに向けて歩き出した。はやて達の訓練はとても為になるし適確だ。少しでも多く訓練や戦闘技術について聞きたいからだ。今日はどんな話を聞けるのだろうか?私はそんなことを考えながらアリーナへと歩き出したのだった
都内某所
そろそろ潮時かしらね。得れる限りの情報は手にした、ネクロ達もそろそろ私とオータムの考えていることに気づいたことだろう
「スコール。アラクネとゴールデンドーンのエネルギーの補充は終わった。火器も搭載できる分だけ詰んだ」
オータムの報告を聞きながらデータを吸い出した後。使っていたPCのデータを完全に消去してから、銃弾を撃ち込み完全に破壊する
「ありがとう。オータム、これ持っておいて」
私とオータムがそれぞれ同じ内容を保存したUSBメモリを持って逃亡する。仮に補足されたとしても、どちらかが戦えば時間が稼げる。そうすればどちらかは逃げ切れるという算段だが。上手く行くかどうかは怪しいところだ
「スコール。上手く行くと思うか?」
不安そうなオータム。そういえばずっとオータムは私についてきてくれていた。こういう時楽観的なことを言うと余計に不安に思う、だから私は
「間違いなく。どちらかは死ぬわ」
ユウリの残したISコーティングの技術のおかげで接触するだけで感染と言うことはない。だけど武器までは手が回らなかった。ブレード2本にAMFの加工を施すのがやっとで、後の武器は普通の銃器だけだ。正直普通の銃器でネクロと戦うのは難しい。だかた搭載できるだけの武器を搭載した。使い捨てが出来るように
「だけどこの近くにはネクロと戦っていた八神龍也達が居る。上手く時間を稼げれば逃げ切れる可能性もあるわ」
私とオータムが2人揃って生き残るにはネクロに追い詰められる前に救援が来てくれることが絶対条件になっている。
「やっぱり私が先に出て囮に」
「駄目よオータム。どっちが助かっても文句なしって約束したでしょ?」
オータムの言葉を遮ってそう言う。マドカがIS学園に回収された頃からネクロは私達の前に現れなくなった。もう切られたと考えていいだろう
「へえ?良い勘してるのね!褒めてあげようかしら!」
「「!!」」
突然聞こえた女の声にISを展開して飛びのく。私の身体を覆うは尻尾を持つ黄金のIS「ゴールデン・ドーン」オータムは8本の足を持つ蜘蛛のようなIS「アラクネ」だが私とオータムのISは通常の物ではなかった。僅かでも生存率を上げるため、ゴールデン・ドーンもアラクネも装甲の1部をオミットしてその代わりにブースターや装甲に装備するリアクティブアーマーを搭載した
「お久しぶりね。イナリ」
「ええ。でもまぁもう会うことは無いだろうケドねッ!!」
スーツが一瞬で消え。黒を基調にした着物と9つの尻尾が現れる。それを見たオータムが
「それがお前の本当に姿って事か」
「そうよ?人間の振りは疲れたわぁ」
くすくす笑うイナリの背後で尻尾が動いているのが見える。イナリは尻尾の毛を1つ抜いてそれを剣に変えながら
「裏切り者は処分よね?心配しなくても良いわ。殺した後はネクロにしてあげるから」
そう笑うイナリを見ながら私は
「ごめんよ。私とオータムはネクロになんかならないわよ!」
そう叫んでフローリングの中に仕込んでおいた爆弾を起爆させ、その爆風を利用して私とオータムはマンションからぬけだした
「けほっ!ごほっ!あーもう!どうして人間はこういうことするかなぁ!服が汚れちゃったじゃない!!!」
腕を振るい炎と煙を振り払ったイナリは服こそ汚れていたがまったくの無傷。それ所か自分の服を汚されたことに怒り
「あーもういい!ネクロ化なんてしてやらない!殺してやる!」
そう叫ぶとスコール達が抜け出した窓から飛び出し2人の後を追いかけ始めた
「人がいない……結界って言うやつか!?」
「そう見たいねえ」
爆弾の起爆は私のゴールデン・ドーンのプロミネンスコートの熱線バリアで防いだが、その分エネルギーを浪費してしまった。だがあの爆発なら誰か気づくと思っていたが、イナリは既に結界でここら辺を封鎖していたようだ
「どうする!?気づいて「ううん。気付いて貰えるわ」
オータムに言い聞かせるように呟く。結界と言うのは魔力で構成されているらしい。そんな物を街中で使えばここに居ると言っているような物だと言うと
「助かる可能性が上がるって事か!」
「そうだけど。まずは……応戦しないとね」
「見たい……だな」
私とスコールの視線の先では無数の黒い影のようなネクロと
「敗走者が!目障りだ消えろ!」
狼のような顔をしたブレストプレートを身に纏ったネクロが両手に三日月状の剣「シャムシール」を構えて私とオータムを見据える。更にそれだけではなく
「随分となめた真似をしてくれるわね?いいわ。希望通りネクロにはしてやらない。その代わり惨たらしい殺し方をしてあげるわ!」
和服に煤をつけたイナリが私達の背後を取る。完全に退路を立たれてしまった……思わず私は
「これは少し不味いかもね」
LV1・2くらいだったらなんとかなると踏んでいた。だが実際はLV3と4が出てきた。つまりそれだけ私とオータムがネクロの核心に迫る情報を手にしているということの証明だ。なんとしてものこの場を切り抜けて八神龍也にこのUSBメモリを届けないと
「オータム。行くわよ」
「ああ」
負けはしない。生きるという執念がある、そこはネクロには無い感情だろう。私はそんなことを考えながらAMFのブレードを構えたのだった
一夏への訓練と言うなのささやか仕返しを終えて、ISの改修作業に戻っていると
「!」
広域サーチをかけていたサーチャーがネクロの気配を感じ取った。しかもその場所は街の中心。と言うことはスコール達か!情報をさぐるといっていたが、恐らく反逆しているということがバレたのだろう
「兄ちゃん。どうする?」
「言われるまでも無い」
見捨てるという選択肢は無い。助けれるのなら助ける、そして今ならまだ間に合う
「出る。スコールは失うに惜しい人材だ」
戦闘もできて諜報戦も出来る。そして覚悟がある、自身の正義を貫くために悪を為しても良いという覚悟が
「私1人で出る。IS学園の防衛を頼む……だが臨機応変に対応してくれればいい。いつもと同じようにな」
前みたいにIS学園の内部に直接ネクロが転移してくるという可能性がある以上。単独出撃しかない。だがはやて達はルーキーではない、自分で戦局を判断できるだけの経験をつんでいる。だから臨機応変に対応しろと指示を出してべヒーモスで街に出ようとしていると
「龍也!」
「龍也さん!」
楯無とユウリに呼び止められる。だがここで止まれば二人は自分たちも連れて行けと言うと思いべヒーモスを発進させると、2人は自身の目の前を通るべヒーモスに飛び乗るという暴挙に出てきた
ドンッ!!!
「ぬう!?お前らは馬鹿か!!!」
一瞬クラッシュしかけたのを立て直しそう怒鳴る。楯無はサイドカーに、ユウリはタンデムシートの上で
「落ちる!落ちるうううう!」
「馬鹿かお前は!!!」
サイドカーに飛び乗り失敗している、楯無の襟首を掴んで引き上げる
「し、死ぬかと思った」
ぜーぜーと方で息をしている楯無を見てべヒーモスのエンジンを緩めようとすると
「そんなことをしている間にスコール達は死ぬ。心配するな、ワタシと楯無のISの回収は完了している」
準備完了と言うことか、はぁっと溜息を吐き
「もう良い好きにしろ、物好きどもが」
改修が終わったとしても試験飛行もしていない。そんな状態で戦闘に出るなんて無謀としか言いようが無い。だがユウリにとってスコールは自分をタスクから抜け出す手助けをしてくれた恩人だ。そんな人物の危機を見過ごせないと言うのは判る。だが
「お前は何でついて来るんだ?」
「んーノリ?」
「サイドカーを切り離すか」
「冗談!冗談ですから!!!」
慌てて叫ぶ楯無を見て冗談は無しだぞと視線で告げると
「ユウリだけ行かせるのも不安だったし、それに私のISなら水のヴェールで負傷者を包み込んで護れるでしょ?だから来たの」
真剣な顔で言う楯無。確かにその通りだが……はぁ
「振り落とされるなよ。一気に結界の中に突入するからな」
もう何を言っても駄目だと判った。楯無もユウリも裏の社会を知る人間だ。覚悟は済んでいるだろう、仮に済んでいなかったとしてもここに乗った以上
「冥界への直行便だ。後悔するなよ!!!」
べヒーモスのエンジンをふかし一気にトップスピードまで加速する。
「やっぱりか!」
街の一角に結界に張られている。魔力障壁をべヒーモスの前に展開しその加速を生かして突入し無理やり結界を破壊する
「「「キギャアアアアアッ!!!!」」」
結界の中で待ち伏せしていたISとネクロの融合態が襲い掛かってくる
「ワタシと楯無がいく!お前はスコール達を頼む」
言うが早くISを展開して空に舞い上がるユウリと楯無はそのまま前も現れたシルバリオ・ゴスペルに酷似したISとの戦闘を開始した。
「無理はするなよ!」
そう声を掛けて私はそのままネクロの中に突っ込んでいった。今回は殲滅ではない、救出戦だ。短期決戦そして早期離脱その2つを目的とする電撃戦。時間はかけられない。私は魔力障壁を展開したままネクロを弾き飛ばしながら街の中心に向かって走り出した
「くうっ……化け物どもが」
オータムがそう舌打ちしコールしていたアサルトマシンガンを投げ捨てる。その銃身は断ち切られている。アヌビスのシャムシールで両断されたのだ
「オータム!」
ゴールデン・ドーンに内蔵していた火器をオータムに投げ渡し、そのまま反転し
「行きなさい!」
両手をイナリとアヌビスにむけ。火の粉を集め、それを凝縮した火球「ソリッドフレア」を放つが
「甘いな」
「炎よっ!」
アヌビスはその手にしていたシャムシールでソリッドフレアを両断し
イナリは札を投げつけ、それが発火しソリッドフレアを相殺する
(くっ不味い)
ゴールデン・ドーンは第三世代型。そしてその特殊能力のソリッドフレアもプロミネンスコートも多大にエネルギーを消費する。さっきからソリッドフレアを連発で放っている。もうエネルギー切れが近い
(オータムに離脱してもらいましょう。私は……もう本当は死人だから)
10年前私は1度死んで身体の中に機械を埋め込むことで延命していた。変な話だが生身の部分も残っているアンドロイドと言う奴が1番近い表現だと思う。だけどオータムは違う、だからこそオータムだけは逃がしたいと思った。そう考えオータムのほうに視線を向けた瞬間気づいた。その影から這い出すように姿を見せたネクロの姿に
「オータム!」
「えっ!?」
咄嗟にオータムを突き飛ばすが。代わりにネクロの一撃を喰らい弾き飛ばされ
「ふふん。良いざまよね!!」
「くっ!!」
弾き飛ばされた私目掛けてイナリがその手にした剣を振るってくる。咄嗟に身体をねじって直撃を回避したが
「あぐうっ!?」
「スコール!!!」
完全に回避することが出来ず右腕が切り飛ばされる。だがそれでも良かったと思う。右腕は金属の腕のほうだ、痛みはあるがパニックになる程度ではない。そのうちに離脱を
「ばーか!私達の敵には戦闘機人って言うのが居るのよ!あんたが半分機会って言うのはお見通しなのよ!!!」
イナリが投げはなった札が蛇になりゴールデン・ドーンの脚部装甲にまきつき。装甲ごと私の足をへし折る
「うっぐうう」
両足同時に折られた。片方だけなら機械だから平気だったのに……それに今の攻撃でISのエネルギーも底がついた。立ち上がることが出来ず地面に倒れこんでいると
「ふふふ。これでおしまい」
笑いながらイナリが近づいてきてその手の刀を振りかぶるのが見える。エネルギーも残ってない。足は動かない
(ここまでかしらね)
でもただでは死なない。自爆してオータムの逃げる隙を作るために自爆しようとした瞬間
ブゥゥウウウン!!
突然響いたバイクのエクゾースト音。そして次の瞬間
「諦めるには早いんじゃないか?スコール・ミューゼル!」
「なぁ!守護……ぐううっ!!!」
勢い良く前輪を跳ね上げイナリを弾き飛ばし、着地と同時にバイクを反転させて私達とイナリ・アヌビスの間に割り込む
「遅かったかね?」
「ぎりぎりセーフ。ありがと」
右腕と両足はお釈迦になったけど、命があるだけ御の字だろう、八神龍也はバイクから降りて
「オータムだったか、こっちにこい!」
「え。ああ!判った!」
瞬時加速で私の前に来たオータムに
「お前が乗って離脱しろ。べヒーモスはサポートしろ」
『YESマイマスター』
バイクが返事を返したことに驚くが、魔法の世界の技術なんだろう理解し、八神龍也……龍也で良いか。龍也に抱きかかえられるようにサイドカーに乗せられる。オータムはISを解除してバイクに乗り込み心配そうに見ている
「問題ない、行け。LV3と4なら十分相手に出来る。だからここは私に任せろ」
黄金の甲冑を展開しイナリとアヌビスを対峙する龍也を残して。オータムは街の外へ向かってバイクを走らせたのだった。高速で走るバイクのサイドカーの中で
(なんとか……なったみたいね)
精神的疲労と肉体的疲労で私はサイドカーの中で目を閉じて、眠りに落ちたのだった
街の中心から聞こえてくる稲妻の轟音。恐らく龍也が戦闘を始めたのだろう
「向こうは始めたみたいね」
楯無が指を鳴らすたびにシルバリオ・ゴスペルに似たシルエットのネクロの翼が爆発する。そして機動力が落ちたそのネクロを
「はあっ!!!」
AMFの加工を施した長曽禰虎徹で的確に無効化していく。そんな中プライベートチャンネルで
(エネルギーはどれくらい残っている?)
楯無のIS「ミステリアス・レィディ」は改修によってナノマシンの出力が上がり「クリア・パッション」の連射性が上昇したが、その分エネルギー消費が激しくなっている。今までと同じ感じで使うと直ぐにガス欠になる。それが心配で尋ねると
(残り半分と少しって所かしらね。まとめて倒せるようになったのは良いけど消費が激しいわね)
対ネクロ用と言うことで改造したがまだ改善点はあるようだな、そんなことを考えているとハイパーセンサーに反応がある。そっちの方向を見ると
「くっ。このじゃじゃ馬が!もっとスピードを落とせねえのか!」
『NO.これ以上スピードを落とすと魔力障壁と突進による攻撃でネクロを蹴散らすことが出来ません。今しばらく我慢を』
「くそったれ!ISを部分展開しててもいてえぞ!どんなスピードだ!!!」
オータムがサイドカーにスコールを乗せて激走していた。さっきワタシ達がここに来たときより数段はやい、運転しているオータムはかなりしんどいだろう。だが
「目的は達成しているな離脱するぞ!」
「OK。ユウリ」
スコールとオータムは回収した。あとはワタシ達だ、龍也が破壊した結界のほころびに向かおうとした瞬間
「オチテ。アクセルクローク」
背筋が凍るような殺気と機械的な声。それと同時に放たれる3つの光の矢
「任せて!」
楯無がそれを水でそれを受け止め勢いを殺す。スピードが低下した矢をそれぞれ打ち落とすと同時に上空からピュアホワイトのISを身にまとった女が現れる
「私……!?」
いつかは現れると思っていた。ワタシ達の前に
「ユウリ……ムカエにきたよ」
「セリナアアアア!!!」
ワタシが護れなかった。救いたかったその相手が目の前に現われた……ネクロとして倒すべき敵として。それを認識した瞬間ワタシは瞬時加速でセリナへと斬りかかって行った
「ユウリ!?撤退……ああ!もう良い!私も手伝うわよ!」
そう叫んでついて来る楯無の声さえ届かない。ワタシの胸を支配していたのはセリナを救うために殺す。ただそれだけだった……
第84話に続く
次回も戦闘回です。龍也さんVSアヌビス&イナリ ユウリ&楯無VSセリナ。どんな戦いになるかを楽しみにしていてください
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします