第85話
おかしい、スコールとオータムをつれてIS学園に戻った私は妙な違和感を感じていた。いやそれは戦闘中にも感じていた……
(はやて達はどうした?)
おかしい……ここまで来てはやて達が来ないというのは明らかにおかしい。最悪の予想が頭をよぎったと同時に
「龍也君!?戻ったの!?」
「ツバキさん。なにか……いや、聞くまでも無いですね。楯無とユウリ、それにスコールとオータムをよろしくお願いします」
私を待っていたであろう。ツバキさんにそう声を掛けてアリーナに走る。アリーナのほうから結界の感じがする……そこではやて達が戦っているのは明白だ
(余力が無い……いや違うか)
私が来ても念話が無いという事は、念話に意識を向けている余裕がないと言うこと
(やはり同時攻撃だったか)
私の性格はネクロ達の方が良く把握しているといえる。救える可能性があるのなら救いに行くと判っているのだ。だからこそアヌビスとイナリは私の足止めをしてきた。そう考えるとこっちが本命と考えるのが普通だろう、しかしはやて達が念話を出来ないほど余裕が無いというのが気になる。
(こういう時の予感は絶対当たるからいやだな)
こういう時の嫌な予感が外れた験しがない、だからこそ今回も当たるだろう。
「ったく!神様と言うのはよほど私が嫌いなんだろうな!!!」
毎回毎回いつもこうだ。きっと神様と言うのが存在するのなら私の事がさぞ嫌いなのだろうと叫び私はアリーナのほうへ走っていった。
やっかいなやつらやな!私は心の中でそう舌打ちした、兄ちゃんが出撃してから15分、仮にネクロが来てもIS学園に被害が出ないようにとアリーナで待機していた。仮にネクロが襲って来るとしたら一夏や箒達を狙うと考えてだ。そしてその予想は当たった
「ふーん。みーつけた♪」
「鬱陶しいですね。死ねばいいのにベール」
「ああ”そっちが死ねヴィスティーラ!うざいし、目障りだし!なんであたしが集団行動しないといけないわけ!?」
「……やかましい。少し黙っていろ」
「……皆そう思ってる」
「早々にターゲットを殺して帰る。ついでにつれて帰れるなら連れて帰ればいいだろう。貴様たちを殺してな」
アリーナに直接転移してきた5体のネクロは、目深に被ったフードで顔は見れないが人型であることは判った
(LV4ネクロだね)
(そうやろな。完全な人型やし)
人型になるのはLV4か人間ベースのネクロだけ、だが人間ベースのネクロの割には、人間の気配がない……となると完全なLV4と言うことだろう。しかし私達を見ずに互いに口論しているLV4。ネクロにも自我はあるが、相当これは酷いのではないだろうか?だがあの感じでは連携をとるという事はなさそうだ。
「はやてさん。私達はどうすれば」
そう尋ねてくるセシリアに、私は笑いかけながら
「心配あらへんよ。LV4ネクロは強いけど3人居ればいろいろ出来るからな」
回復・フォローとチーム編成して動ける。それに3人いれば一夏達を護りながら時間を稼ぐことも出来る。だけど
「念の為にISだけ展開しておいて、ネクロの攻撃だから直ぐ絶対防御が発動すると思うけど……無いよりかはましだから」
なのはちゃんの言葉に頷きISを展開する一夏たち。今回こうして一箇所に集めたのはネクロの目的を探るためでもあったし、一箇所に集まってもらえば護りやすいという理由でもある。その証拠に
(簪たちは見ても居らん)
ローブ越しに鋭い眼光を向けているのは、箒・鈴・セシリア・シャルロット・ラウラの5人だけ、簪やエリス、弥生には目もくれていない。となると兄ちゃんの推測は当たってるのかも知れんな
「フェイトちゃん、なのはちゃん来るで、周囲警戒して囲まれんように注意や!」
5人同時に動き始めるネクロ。だがその軌道はバラバラで連携とかを考えている動きではない。だが
(動きが読めん!?)
互いに互いを邪魔して連携などとろうとしていない、だがそのせいで攻撃が不規則になって防ぎにくい。防戦する場合で1番厄介な相手だ
(これはあかん!?護りきれんかも知れん)
そう判断したのはなのはちゃんとフェイトちゃんも同じだったようで
「各自で自分のみを護ることを考えて!」
「背中合わせで集まって互いに互いの死角を補って防御!間違っても攻撃しようなんて思わないで!」
そう判断して、それぞれ散会しようとするなのはちゃんとフェイトちゃんだったが
「え!?足が動かない!?」
「くっ!?こっちは腕!?」
なのはちゃんとフェイトちゃんが驚いたように叫ぶ、そんな2人に手を向けているネクロのローブの下を見て私は驚いた
(IS、しかもレーゲンやと!?)
カラーリングは違うが、形状は紛れも無くラウラのISのレーゲンだった。この位置からではラウラ達が見えないのが、僅かながらの救いだった。
「甘いんじゃないの!魔導師さん!」
そう叫んだネクロは、鋭い踏み込みでなのはちゃんの懐に飛び込んで
「ほっ!」
「ごっふっ!?ちゅ、中国「そーだよ!とりあえず1人死んだぁ!!!」
なのはちゃんを攻撃したネクロは、危ういほど感情の起伏が激しく。鋭い肘うちを叩き込まれ硬直しているなのはちゃんの頭を掴んで地面に叩きつけた
「なのは!?「よそ見してる暇があるのか?」くっ!?」
フェイトちゃんに切りかかったネクロは、両手にブレードを作り出して嵐のような連激を叩き込んでいる。腕の拘束は解除されたようだが、その剣筋は鋭い。そして私は
「ふーん。私には2人掛かりなん?」
私の前には2人のネクロが居た。その後ろのネクロは戦闘に参加する気が無いのかぼんやりとしているように見える
「ええ。夜天の女神は強敵と聞いてますからね」
「……不本意だが共闘するのが正しい選択だろう」
そういったネクロが腕を突き出すと同時に横に飛ぶ。近くで見て判った
(AICの魔力板か!?)
一瞬だが見えた、魔力で出来た糸の存在を……あれでなのはちゃんとフェイトちゃんの動きを制限したのだろう。それに
「おいきなさいな」
ローブの中から飛び出してきたレーザーを身体をねじって回避する。威力・スピードは桁違いだが間違いない
(ブルーティアーズのレーザーや)
なのはちゃんと対峙しているネクロは中国拳法と見えない打撃。
フェイトちゃんと対峙しているのは高速機動に長けた2刀流の剣士
そして私と戦っているのは相手を拘束する能力と高速のレーザーを武器にしているネクロ
(あかんな。兄ちゃんの予想通り過ぎるやろ)
あのローブの下は恐らく……出来る事なら箒達が出会う前に片付けたかったが駄目だ。思っていたよりも強い、連携をする気が無いのに互いに互いの妨害が連携になっている。セオリーの無い攻撃。こういうのが1番厄介や……
(お願いやからはよ帰ってきて!兄ちゃん)
これは不味い。ただのネクロならまだいい、だが今回は話が違う。箒達が居る上に向こうの方が数が多い、念話で助けを求める間もなく私は2体のネクロの攻撃を弾く事に意識を集中させたのだった
はやてさん達と戦っているネクロを見ていると何かを感じる。自分がしなくてはいけないことがあるような、こんな所で見ていていいものなのかと言う感覚がしてどんどん気持ちが焦ってくる。俺にしかできないことがあるようなそんな気がする。だがそれと同時に耳元から声がする。『オレを出せ』『オレを戦わせろ』
(ぐっ、こ、この声は……)
激しい頭痛がする。この声はあのときのオレだ、全てを壊そうとしたオレの声だ。思わず頭を抱えて蹲ると
「い、一夏!?あ……あんたどうしたのよ!?」
鈴の声が遠くに聞こえる。駄目だ意識を保て……またあんな状態になるわけには行かない。必死で歯を食いしばり意識を保とうと努力する
「一夏!?え、なんで!?白式の装甲が黒く……」
シャルの声に驚き、腕の装甲を見ると闇が光りを浸食するかのように黒がじわじわと白式を浸食していた
「一夏!我を保て!飲まれるな!」
箒が怒鳴っているのだろうが声が遠い。それに眠くて眠くて仕方ない。このまま目を閉じてしまいたい
「一夏さん!すいません!」
セシリアがそう言った気がした、次の瞬間左頬を力強く張られて意識が一気に覚醒する
「いってえええ」
「すいません……一夏……さん?」
セシリアの疑問系の声に驚いていると
「うっまたなの」
「離れていたほうがいいかもしれませんね」
簪さんや弥生さんが俺から少し距離を取るのが見える。それになんか顔の右半分が妙に重い……まさかと思い顔に触れると固い何かの感触
「鈴……俺の右の顔半分はどうなってる」
鏡が無いので尋ねる事しか出来ない。絶句しているセシリアではなく鈴に尋ねると、鈴は酷く悩んだ素振りを見せたが俺に答えた
「仮面が出来てるわ。前の暴走のときと同じね、それに白式の右半分も黒くなっている」
その言葉に恐る恐る右腕を上げると確かに白式は黒く染まり始めていた。それを認識すると同時に
「がっ!?ぐうう!!うああああああッ!!!」
「「「「!?!?」」」」
箒達の声にならない悲鳴を聴いたと思った瞬間。バキバキ!!!と音を立てて仮面が構築されていく。それに伴いどんどん俺を呼ぶ声が強くなる
(ま。不味い)
もう駄目だ。これ以上オレを抑えられない、俺が必死に頭を振って自我を保とうとしているとさっきまで黙り込んでいたネクロが俺を見つめて
「見つけたアアアア!!!」
そう叫ぶとはやてさん達の間を抜けて俺に抜き手を突き出してくる。
「悪いがそうそう自分らの思い通りいくと思わないことだ」
「うあっ!?」
黒い旋風が駆け抜けたと思った瞬間俺に近づいていたネクロは明後日の方向に投げ飛ばされ
「お前もお前だ一夏。己をしっかり持て」
龍也がそう言うと頭を叩かれる。すると耳鳴りのように聞こえていたオレの声は消え。仮面も砕け散った
「さ、サンキュー龍也」
「礼はまだ早い。多分また出てくるだろうからな」
エッ?龍也の言葉に首をかしげていると、はやてさん達と戦っていたネクロはいつの間にか戦闘態勢を解除して俺達を見下ろしていた
「あーあ、時間かけすぎちゃった。守護者が来たらそうそうに仕事を終えて離脱だっけ?」
「そうですわね。遊んでいたわけではありませんが。相手が悪かったですね」
「……仕事を済ませて離脱。不満はあるが仕方あるまい」
何か口々に話し合って居ると思った瞬間5体のネクロの姿が掻き消え
「「「「きゃああっ!!」」」」
箒達の悲鳴に振り返ると装甲が陥没し、完全に崩壊したISに埋もれるように倒れこんでいる箒達の姿がそしてネクロ達はもといた場所に戻っていた。一体何が怒ったのか判らない
「ちっ。早すぎたか2打ちがやっとだったか」
龍也の呟きが聞こえたと思った瞬間。5体の内2体のネクロのローブが引き裂かれる
「ちっ。邪魔されたか。貴様さえいなければ心臓を抉り出せたものを」
「血見たかったのに良くも邪魔してくれたわね!?あ。あーでもいっかそっちの方が楽しいから」
片方のネクロは悔しそうに。そしてもう片方のネクロは狂ったように笑いながらローブに手をかけて
「どうせなら身体だけじゃなくて……心も壊したほうが楽しいよね!!」
そう叫んだネクロは纏っていたローブを脱ぎ払った……そこにいたのは
「う、嘘だろ?」
「そんなまさか……」
「どうして……」
皆が口々に信じられないという言葉を口にする。目の前で見ているのに如何しても信じられない。
「う、嘘……よ。あたしが……なんで……」
鈴は信じられないと大きく目を見開きその場にへたり込んだ。ネクロはそんな鈴を見てケタケタ笑いながら
「はーい。こんにちわ、別の世界のあたし。あたしの名前はベール。LV4ベール……あんたを素体に作られたネクロよ。凰・鈴音」
黒い甲龍を身に纏った邪悪で、でも純粋な子供のような笑みを浮かべた。成人した鈴と言う印象を受けるネクロが俺達を見下ろしていたのだった
やはりか。私にとって最悪の予想が当たってしまっていた。茫然自失という感じで上空を見つめている箒達の前でネクロ達は次々ローブを脱ぎ捨てて
「ヴィスティーラですわ。以後お見知りおきを。殺すまでの僅かな時間ですけどね」
「ラーベル・レーゲンだ」
「……ルーシエ。皆死ねばいいのに」
「桜鬼。名乗る意味はないがな、どうせ貴様らは全員死ぬ。私達が存在し続けるために」
名乗った全員がセシリア・ラウラ・シャルロット・箒の面影を持ったネクロだった。すこし成長していて成人しているという風貌だったが、箒達だと確信できるほどに顔立ちが似ていた
「まぁ?そういうわけ。いずれちゃんと殺しに来るからさあ?今度はもう少しは強くなってなさいよ。今のままだと殺してもつまらないしいい?」
けらけらと笑うベールは一夏を指差して
「あたしの目的はあんただけよ、イチカ。そこにいるあたしも、こいつらも全部殺してあたしはあんたを迎えに行く。だからそれまで死んだら駄目だからね」
ベールがそう告げた瞬間、無言で何処かを見つめていたルーシエが動き出し
「死ねベール!」
「ごぶっ」
後ろから魔力刃で貫かれたベールは、その口から血を吐き出したまま
「あんたが死ねルーシエ!!」
お返しと言いたげに、強烈なフックでルーシエの顔を打ち抜いた。ボキン!と骨が折れた音がしたが……ルーシエは平気そうな顔をして
「イチカイチカイチカ。僕のイチカはどこ?あれじゃない、もっと憎んで、僕を痛めつけて、僕も君を傷つけるから」
空ろな目でぶつぶつ呟き始めた。鈴とシャルロットはなんとも言えない表情で互いを見つめていたが次の瞬間、2人同時に気絶した。自分と同じ顔をしたネクロが友人を攻撃した。その事に耐え切れなくなって気絶したのだろう
「まぁいい。ISのかけらは貰った。これで完全な複製が出来る」
桜鬼の手には紅椿の装甲が。同じようにルーシエ達もそれぞれのISのパーツを持っていた
「逃がすと思っているのか?」
4人の最高位の魔導師がいる、幾らLV4が5体いたところで逃げれるわけが無い
「逃げれるさ。私達ならな」
桜鬼はそう言うと、黒いオーラに包まれ。ヴィスティーラとレーゲンを連れて闇に溶けるように消えた
(馬鹿な!?結界を通り抜けただと!?)
4重の結界を何の苦も無く潜り抜けた。桜鬼の気配があっという間に遠ざかっていく
「よ!空間圧縮開始。いっけェ!!」
ベールのその叫びと同時に、空間そのものを破壊し兼ねない勢いで衝撃砲が放たれ。結界を力づくで破壊した。とんでもない戦法だ
「まぁ?ざっとこんなもんよ?じゃ~ね~」
「……かえる」
ベールとルーシエは、風穴を開けられた結界から外に飛び出し転移で姿を消した
(やられた。こんなの能力持ちとは思ってなかった)
LV4の能力とIS能力の平行使用による能力の強化。一筋縄でいかないわけだ
「はー追い払えただけで、よしとするしかないか」
死傷者がいない。それだけでよしとすべきだが、この襲撃は正直言うと負けだったな。私達の
「「「「「……」」」」」
ネクロ達は自分達の目的のISのかけらを手に入れノーダメージで離脱。それに対してこっちはと言うと、完全に茫然自失のまま座り込んでいる箒達に動揺の色を隠せない簪達。ほんの数分の邂逅だったがそれで十分なほど箒達の心を傷つけていた
(はやての精神操作で忘れさせるか?)
10代にはきつい出来事だったはずだ。1回記憶を操作するというのも考えたが
(いや、やめておこう)
10代と言うのならスバル達も同じだだからそこまでする必要は無いだろう。むしろネクロの戦法をマジかで見て、自分たちが戦おうとしている存在を言うのを実感してくれたと考えれば。少々高い授業料と思えば御の字だ
(それにどうせ越えねばならぬ壁だ。自分達で決断させたほうが良い)
ネクロ達が襲ってくる以上また対峙する機会は何度もあるはずだ。そして怪我を負わずネクロのことを見れた、ならばその記憶を忘れさせるのは良くないだろう。今回の事で箒も簪達もネクロと戦うということはこういうことだと理解できたはずだから。放心状態の一夏達を見ていると千冬たちがアリーナに入ってくるのが見える。私はその場に座りこみこれからのことに頭を悩ませるのだった……
第86話に続く
この展開が原作勢が乗り越えるべき壁として考えた物です。いかがでしたでしょうか?千冬が出た時点でもしやと思っていた人も居るかもしれませんが少しでもおっと思ってもらえたら幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします