IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はオリジナルの人物や組織を出すつもりです。ネクロの行動パターンとかを考えると、原作で出ている部隊では足りないなと思っていまして、それで新しい部隊とキャラを少しだけ出すつもりです。ここで一夏とかを話をさせる予定です。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第92話

 

 

第92話

 

龍也さんの運転する車はどんどん郊外に向かっていく。かなりの人数が乗れる超大型の車だった、なんでも新入隊員を迎えに行くときの車らしい。多分これで龍也さんが迎えに来た新入隊員と言う人は相当驚いたんだろうなあと思いながら窓の外を見ていると。車はどんどん山の中に入っていく街外れってネクロとかが多くて危ないんじゃ……

 

「龍也どこまで行くんだ?」

 

山の中と言うことで不安に思ったのか一夏君がそう尋ねると

 

「んー?訓練所。街中じゃあんまり意味のない部隊だからな」

 

街中じゃあんまり意味のない部隊?どういう事?私が首を傾げていると龍也さんは前を向いたまま

 

「そう不思議そうな顔をしなくても良いだろう?簪」

 

前を向いているのに突然名指しされ驚いているとラウラさんが

 

「魔法か?」

 

「馬鹿を言え馬鹿を。この程度で魔法を使うか、ただ気配とかそう言うので判るんだよ」

 

それは魔法よりも凄いのでは……これが経験を積んだ魔法使いと言うものなのだろうか?

 

「それで私達が見学する部隊と言うのはどんな部隊なんだ?こんな山奥にある部隊とはなんだ?」

 

ラウラさんの問い掛けに龍也さんは笑いながら

 

「特殊部隊でな。追走班だ、チェイサーと呼称されている」

 

追走?ネクロを追いかける班って事?私が首を傾げていると龍也さんが

 

「まぁ口で言うよりも見たほうが早い。もう着くぞ」

 

そう言われて窓の外を見て私は驚いた。窓の外に広がっていたのは

 

「街がまた……それに遺跡とかまで……」

 

箒さんがそう呟く、窓の外の広がっていたのは今私達が来た街並みと遺跡が入り混じったような不思議な場所だった

 

「龍也さん。ここは一体何をする場所でチェイサーとは何の部隊なのですか?」

 

「チェイサーは特殊部隊でな。街中や山中に現れたネクロの追走を主な任務にした部隊で最近発足したばかりの部隊だ。お前達と同年代が多い、まぁ聞くよりも見てみろ。そして話をしてみろ、いろいろな理由をもってネクロと戦うことを選んだ者達の声をな」

 

そう笑う龍也さんだが私はとても笑えるような状況ではなかった。一夏君達にしてもそうだ、ネクロの脅威を知って戦うのが怖いと私は思ってしまった。だがここには私と同年代でしかもネクロと戦うと決めた人達がいる……その人達と話すことで何か変わるかもしれない、何かを決断できるかもしれない……多分これは私だけじゃなく一夏君達も同じなはず……ここでの話し合いはきっと有意義な者になる……私はそんな事を考えながら近づいてくる施設の入り口を見つめるのだった。

 

施設に向かう車中で憂い顔をしている者がいた。一夏だ、暴走するかもしれないということへの恐怖心のせいで、思わず胸を押さえた一夏は

 

(俺は……ここで何か変ることが出来るのか?)

 

自分で自分じゃなくなるような言いようの無い不安。また暴走するんじゃないかと言う恐怖……不安と恐怖をその目に宿した一夏。そんな一夏を不安そうに見つめる者がいた、鈴と箒だ。幼馴染の2人は気づいていた、最近一夏が無理をして笑っていることに……

だが自分たちでは何も出来ないというもどかしさ……箒と鈴は窓から見える施設を見つめながら、ここで一夏が何か答えを得れる事を願っていたのだった……

 

 

 

 

 

あたしは訓練着に着替えながら大きく溜息を吐いた。あたしの名前はアイビス・ダグラス3等陸士。新規発足された部隊「チェイサーズ」に所属している。訓練着に着替え終えロッカーに張ってある紙を見る、そこには

 

『○月某日 八神大将 訓練視察。機動六課への配属の可能性あり。各員気を引き締めること』

 

教官から配られた紙を見てあたしはもう1度溜息を吐いた

 

(八神大将の視察かぁ……緊張するよなあ……)

 

管理局で最強と言われ、そしてパンデモニウム事変を終結させた。最強の魔導師。それが八神大将だ……そんな雲の上の人が訓練の視察に来るそしてもしかするとエリート部隊の機動六課への配属が決まるかもしれない。これで緊張するなと言うほうがおかしい

 

「ううーでも頑張るしかないかぁ」

 

あたしが選ばれるとは思ってないが、もしかするとと言う可能性もある。やる前から諦めるのはあたしらしくない。両手を打ち合わせ気合を入れていると

 

「ふん。お前なんかが参加しても無意味だといってやったのに参加する気か?アイビス」

 

青い髪を翻しながらあたしにそう言う吊り目の同期。スレイ・プレスティだ。座学・実技共にNO.1で同期の中で機動六課への入隊が確実だと噂されている

 

「あたしだってちゃんと試験に合格してるんだ。嫌味を言うのはやめてよね」

 

「ふん。ギリギリの落ちこぼれが参加するだけ無意味だ。恥をかく前に辞退すればいい物をお前なんかが八神大将の目に止まる訳が無い、機動六課に配属になるのは私だ」

 

そう言ってロッカーを出て行くスレイ。入隊当時からずっとこんな感じだ、あたしは何もしてないのにどうしてこうも目の敵にするかなぁ。知らないうちになにかしてしまったかなと思うが心当たりは当然無い

 

「あーもう!どうしてああ嫌味っぽいかな!!!」

 

この部隊に所属してからずっとああいう風に嫌味を言ってくるスレイに苛立ちを覚えた物のいつものことと割り切り

 

「今日は駄目。張り合おうとしないで自分のベストを尽くそう」

 

今日のコースは遺跡コースだ、最高難易度のこのコースであたし達の技量を見てもらう。他の事を考えれるほどこのコースは甘くない。もう1度手を打ち鳴らして愛用のフィンガーグローブを嵌めて

 

「しゃっ!行くぞ!」

 

自分のベストを尽くす、それだけを考えてあたしはロッカールームを後にしたのだった

 

「では本日の訓練は実戦形式で山岳コースでレース形式だ。アイビス・スレイ・クロウ・シャーリーは前に出ろ」

 

教官の言葉に頷き前に出る。山岳コースしかも実戦とレース形式かぁ……これはかなり難しいよなぁ……山岳コースはまず道が無い、自身の感と操縦のテクニックが試される。けどまぁ量産型のトライチェイサーなら……

 

「なお今回は正式採用のトライチェイサーを使ってもらう。出力等は量産型とは比べ物にならない、各次運転には最大限の注意を払うこと。今より5分後反応弾を挙げる、それがスタートの合図だ。各員所定のスタート位置に散会し配置されているトライチェイサーの元で待て。なお今回は八神大将が視察に来ているが、緊張せずいつも通りの力を発揮してくれることを願う。では散会!」

 

その合図で渡されていた地図を見ながらスタート地点に向かう

 

(えーとB-3……ん?B-3って……)

 

嫌な予感を感じつつB-3地区に向かって絶句した

 

「崖の上だー!?」

 

崖の上のギリギリのコース。難易度最大のエリアだ……なんであたしがこんな難関コースを

 

「皆は楽そうだなあ……」

 

高いスタート地点だから見える。スレイは森林エリア、木々が生い茂っていて走りにくいエリアだ。クロウは直線エリアだけど途中で瓦礫があり真っ直ぐは進めないコース、確か途中でこっちの方に近づいてくるコースのはず。シャーリーは湖畔エリア、ぬかるみとかでスリップしやすいエリアだ。

 

「これは気合を入れていかないとね」

 

崖の上のコースは少しでもミスれば転落する危険性がある。しかもマシンは正式採用のトライチェイサー、いつもの量産機のつもりでは痛い目を見る。大きく深呼吸してからトライチェイサーに跨る。量産機の黒いボデイと違って白銀のカラーリングが眩しい、エンジンを噴かせながらスタートの合図を待つ。この狭いコースでエンジンを噴かす、クラッシュするかもしれないからここは低速でスタートするのが普通だが

 

(もしネクロを追い掛けるとしたらそんな事をやっている時間はない)

 

実戦形式つまりネクロを追いかけていくというのが前提なんだ。なら最初から全開だ、エンジンを噴かし続けていると反応弾が上がる。それと同時にブレーキを離し

 

「いっけえ!!!」

 

しっかり握り締めているのに暴れだすハンドルととんでもない加速力。吹っ飛んでいく景色の中あたしの集中力は今まで最高にまで研ぎ澄まされていたのだった

 

 

 

 

「あははは!随分と思い切りの良いルーキーがいるな」

 

楽しそうに笑う八神対象の隣で正直少し焦っていた。アイビスがまさかあんな行動に出るとは思ってなかったからだ、確かに思い切りは良いが。まさかあんな山岳コースでいきなりエンジン全開にするなんて思っても無かった

 

「ところで八神大将」

 

「なんだ?えーと……カイ?」

 

首を傾げる八神対象に敬礼しながら。

 

「カイ・キタムラです。新規ルーキーの教導官担当です」

 

ちなみに私の方が1回り所か2回り位年上なのだが、ここは上官なので敬語で通そうと思いながら

 

「後ろの方達は一体?」

 

管理局の人間ではない、それ所か魔導師でもない。全くの一般人を何故連れてきたのかと思いながら尋ねる。その子供達は窓を興味深そうに見つめレース状況を見ている

 

「今いる世界でネクロに狙われている民間人だ。戦うか逃げるか選ばせるために連れてきた。アイビスを筆頭に同年代が多いからな」

 

魔法を使えない民間人がネクロに狙われるのは相当な理由があるはずだ。狙われる以上自分の身を護るだけの力を持つか、逃げるしかない。

 

「戦うといったら?」

 

「鍛える。死なないように生き残れるようにな、逃げると言うのなら逃げれるように手伝う。本人達の意思が重要だ」

 

やはり八神大将は若いが大将の地位になっているだけはある。周りを見る目がある

 

「しかしスレイ・プレスティか。随分と安定して走りをしているな」

 

森林コースを遅すぎず早すぎずのペースで走り続けている。このペースならあと数分で湖畔コースのシャーリーと合流し戦闘になるだろう

 

「良い感じだな。だが私はアイビスの方が面白いと思うな。カイ」

 

「アイビス・ダグラス3等陸尉がですか?「敬語じゃなくて良い。落ち着かない」……こほん、では失礼して。アイビスのどこが面白いと思う?」

 

そう尋ね返すと八神大将はにこやかに笑いながら

 

「思い切りの良さと判断能力は買いだ。ああいう人材が欲しいね」

 

落ちこぼれと言われていたアイビスが高評価だ。アイビスは決して落ちこぼれではない、判断や運転技術はずば抜けているが考え方が違うのだ。訓練で評価を得たいんじゃない、常に実戦を想定しているだからこうして差が出る

 

『な、なんでこのコースで追い上げて』

 

『スリップストリームだよ。後続がいるのに加速してくれてありがとね!』

 

クロウの加速で生まれた気流に乗り一気に追い抜いていく。アイビスの最も秀でている点それは空気の流れや魔力の流れを読むのに長けている。そしてそこにアイビス特有の動物的感が合わさると

 

『貰ったーッ!!!』

 

『うわあ!?』

 

一瞬ハンドルに搭載された魔力刃を抜き放ちクロウの前輪を破壊する。オートブレーキで停車するクロウのトライチェイサーの横をエンジン全開で駆け抜けていく。山岳コースを物ともしない動物的なステアリング

 

(やはりアイビスとスレイの一騎打ちになったか)

 

座学・実技NO.1のスレイがアイビスに辛く当たるのは自分を脅かすと知っているからだ。スレイは誰よりもアイビスの才能を理解している。だからこそ発破をかけていたのだ

 

(さぁ行け!アイビス、スレイ!ここまでの訓練の成果を俺と八神大将に見せてくれ)

 

そしてシルバーとレッドの2台のトライチェイサーが最後のコース。遺跡をそのまま使用しているエリアに同時に飛び込んできたのだった……

 

 

 

 

やはり来たか……私は崖の上のコースを全開で走っているアイビスを見てそう思った。アイビスならきっと追いついてくると思ったいた。だが

 

(崖の上のコースとは運がないな、アイビス)

 

崖の上のコースと森林のコース。崖の上のコースはゴールが近づくにしろ道が細くなっていく何時までのあのスピードでは走れない。合流地点でアクセルを全開にしたところでもう私には追いつけない。そう思っていたら

 

「いっけええええッ!!!!!」

 

「なにいっ!?」

 

崖の上から私のいるコース目掛けて跳んできた。私の後方に着地する。クラッシュの音がしないから恐らくサスペンションを上手く使い態勢を立て直したのだろう。すぐにエンジンを噴かせ追いかけてくる音がする

 

(とんでもない無茶をするな!)

 

私も加速しながら崖の上を見る。高さは約10Mと言った所だ、幾ら正式採用機とは言えよくもまああんな無茶を

 

「あぶな……し、死ぬかと思った」

 

風に乗って聞こえてきたアイビスの呟きに。馬鹿かと一瞬思ったが

 

(いや、ネクロを追いかけていると言うことを想定すれば今の行動は正しい)

 

私たちはネクロの追跡を主にした部隊として活動するんだ。そうなれば自身の身の安全は二の次、ネクロを追いかけることを考えなければならないのだから。躊躇いもなくジャンプが出来たアイビスに感心する反面追いつかれて堪るかと言う気持ちがこみ上げてくる。

 

(どうせ勝つならアイビスを倒してゴールする!)

 

ハンドルを切り強引に反転させ、トライチェイサーのフロントカウルに内蔵された射撃口から魔力弾を放つ

 

「うわっとと!攻撃はずるくない!?」

 

それを減速と加速を組み合わせて回避するアイビスに

 

「実戦形式と言っただろう!悔しかったら追いついて見せろ!」

 

カートリッジを使い爆発加速でアイビスを引き離しに掛かる。風を引き裂いて発生した乱気流に少しハンドルを取られかけるが、それを体重を掛けることで制御し更に加速する。これで私の方が早い……ここまで考えた所で自分の失策に気付いた。後ろを見ると

 

「へっへースレイ忘れた?あたしは空気の流れを見るのは得意なんだよ!」

 

私が加速したことで発生したスリップストリームを利用して追いついてくるアイビス。いやそれ所かエンジンを噴かせて私を抜き去るタイミングを計っている

 

(くっ!引き離せない)

 

距離があったからカートリッジを使ったのにその距離を物ともせず私の後ろに入ってきた。その判断の早さに驚く反面私は笑っていた。アイビスの勝負強さにだが何時までも加速状態ではいられない。この先は直角カーブだこのままのスピードだとクラッシュする。そう判断して失速した瞬間

 

「貰い!!」

 

アイビスが一気に加速して私を追い抜いていく。

 

「馬鹿か!?その先は直角カーブだぞ!?そのスピードで曲がれると思っているのか!?」

 

思わずそう叫ぶあのスピードなら間違いなく曲がることなんて不可能だ。クラッシュするに決まっている、だがアイビスは更に加速してコーナーに向かっていく、クラッシュすると思った瞬間

 

「行ける!」

 

前輪を跳ね上げてウィリーに入ったアイビスは強引に車体を曲げて直角カーブを減速なしで曲がりきった

 

(信じられない。少し間違えれば大クラッシュだぞ)

 

加速による異常トルクで前輪を跳ね上げる。そうすれば曲がりきれるが下手をすればクラッシュして終わりだ。私にはそんな思い切りの良い事は出来ない。だが負けるわけには行かない

 

「なら私はこうだ!!!」

 

アイビスと同じように加速し曲がるのではなく、跳ぶこのスピードなら崖を跳び越せる、風を引き裂く音が心地良い。一気にスピードを乗せて崖の端に向かう

 

「行けッ!!!!」

 

加速がついたまま崖を飛び越える。追い風が私の背中を押してギリギリだと思ったが余裕で飛び越えることが出来た。着地もサスペンションを有効に使って楽に着地できた、あとはアイビスを追いかけるだけだ。

 

「やっぱ追いついてきたね!やっぱりスレイはそうじゃないと!」

 

「その余裕が命取りになるぞ!アイビス!」

 

更にエンジンを噴かす残りは500Mの直進。ここが最後の勝負になる、狭い通路を2人で並んで走る、少しずつだが私がアイビスを追い抜き始める

 

(やはり山岳コースで燃料を使い切ったな)

 

アイビスの事だから最初から最後まで全開だったのだろう。ガス欠で減速し始めるアイビスのマシンを追い抜いた時

 

「最後の大勝負!スレイ全力勝負だ!」

 

突然そう叫んだアイビスが追い上げてくる。どうやらわざと減速して最後の勝負に出てきたようだが

 

「私に追いつけると思っているのか!」

 

「追いつくよ!挑戦者の方があたしらしいからね!」

 

抜きつ抜かれるの接戦をしているとアイビスが急に減速して左右に機体を振り始める

 

(何をする気だ?)

 

そんな事をすれば機体が空気抵抗で更に減速するのは目に見えているのに、何をする気かと思ってみていると

 

「マニューバAX。いっけーッ!!!!」

 

右にハンドルを切ったと思った瞬間急加速で私を追いかけてくる。マニューバAX。減速と加速を組み合わせ更にカートリッジを使い限界加速で相手を追い抜く特殊マニューバだがこの狭いコースで出来るわけが

 

「行ける!」

 

急ハンドルで私の後ろを取ったアイビスは即座に反転し、私と壁の間をすり抜ける様に追い抜いていった

 

(なにを……した)

 

一瞬何をされたか判らなかった。だがアイビスは私を追い抜いてどんどん加速していく。追いつこうとするがもう追いつけないと悟ってしまった。残り200M弱、追いつくには余りに距離が足らなかった……私が諦めると同時にアイビスがゴールテープを切ったのだった……

 

「最後の最後で何をした?」

 

同期に囲まれ話をしているアイビスにそう尋ねるとアイビスはうーんと唸りながら

 

「マニューバAX?」

 

「違う、あれは全くの別物だ」

 

減速をせずに加速加速で一瞬の隙を見抜く追い抜いていった。私では出来ないアイビスならではの走りだ

 

「えーそんなの言われても判らないよ。あたしはただ追いつきたい、追い抜きたいって思っただけで」

 

それだけしか考えてなかったのか……八神大将にアピールしようとかを考えず私の背中だけを見ていたということか

 

「今回は負けたが次ぎは勝つ」

 

「いやいや。勝つとかまけるじゃないと思うんだけど」

 

手を振り苦笑しているアイビスを見ていると

 

「ご苦労様。訓練見せてもらったよ」

 

ばふうっ何人かが噴出す音が聞こえた。長い銀髪と黒いコート八神大将だ。慌てて敬礼しようとすると

 

「ああ、そのままで良い。アイビス・ダグラス、スレイ・プレスティ。明日より機動六課への出向を命じる。遅れずに機動六課に来ること」

 

は?私とアイビスが機動六課に出向……

 

「復唱は?」

 

呆然としている私とアイビスにそう告げる八神大将に慌てて敬礼し

 

「スレイ・プレスティ3等陸佐了解いたしました!」

 

「あ、アイビス・ダグラス3等陸佐了解いたしました!」

 

うむっと頷いた八神大将はさっそくだがと言って

 

「最初の任務だ。今六課にはネクロに狙われている別世界の民間人を保護している。その民間人を会話してきて欲しい」

 

 

「会話……ですか?「そうだ。会話だ、ネクロと戦う意味やそう言うことを話してくれれば良い。歳も近いから話しやすいと思う、

スバルとティアナも待っているから4人でよろしく頼むよ」

 

そう笑って出て行く八神大将の背中を見ながら私は隣で呆けいているアイビスの脇に肘打ちを叩き込み

 

「何をしているアイビス、早く着替えて移動するぞ!」

 

「……うっ了解……」

 

脇を抑えて呻くアイビスを無視して私は慌てて着替え始めた。ルーキーの出世頭の2人を待たせてはいけない、私はそれだけを考え着替え終え。スバルさん達が待つブリーフィングルームへと駆け足で向かったのだった……

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームと言う所に案内された俺達はスバルさん達を待っていた。見学を終えた俺達に龍也が

 

『スバルやティアナを呼んである。それにアイビスとスレイも来るはずだ、同年代と腹を割って話をしてみろ。そして決めろ自分達が何をしたいのかをな』

 

話し合う。それで俺達の悩みが解決するのだろうか?箒や簪さん達も神妙な顔をしている。そんな事を考えているとガチャリと音を立てて部屋の扉が開く。スバルさん達かと思いきや

 

「ふう……待たせてない。一安心だな」

 

見学の時にいた青い髪の鋭い目付きの女性が来て椅子に腰掛ける。確かスレイさんそれから少しして

 

「スレイ歩くの早い~結構疲れてるんだけど私」

 

アイビスさんがふーと溜息を吐きながら椅子に座る。何か話しかけないと思うのだが何を聞けば良いかわからず困惑していると

 

「お待たせ!少し遅れちゃったね!」

 

「スバルが寄り道するからよ」

 

スバルさんとティアナさんが入ってくる。知り合いと言うことで少しだけ安心した

 

「スレイ・プレスティさんとアイビス・ダグラスさんね?ティアナ・ランスターよ。よろしくね、こっちはスバル」

 

「スバル・ナカジマだよ。よろしくね」

 

アイビスさんとスレイさんに自己紹介したスバルさん達は俺達を見て

 

「今龍也さん達が出向いている世界でネクロに狙われている人達よ。一夏から自己紹介してくれる?」

 

ティアナさんに促され俺から自己紹介をしていく

 

「織斑一夏です、こっちは妹のマドカ」

 

「マドカだ。よろしく頼む」

 

「篠ノ之箒だ。箒で構わない」

 

「凰鈴音。鈴って呼んでくれればいいわ」

 

「セシリア・オルコットですわ」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「シャルロット・デュノアだよ」

 

「更識……簪です。よろしくお願いします」

 

「ヴィクトリア・スミスだ」

 

「薄野弥生。弥生でいーぜ」

 

「クリス・ファウスト。あとであのバイクの性能を教えてくれないか?」

 

「呂 神麗(ルゥ・シェンリー)。シェンって呼んでくれると嬉しいかな?」

 

「エリス・V・アマノミヤです。エリスでいいですよ」

 

口々に自己紹介するのだがアイビスさんは首をかしげて

 

「駄目だ。あたし1回じゃ覚えられない。人数が多すぎる」

 

一気に言われて1回で覚えるのは相当難しいだろう。人数も多いし目を白黒させているアイビスさんにスレイさんが

 

「失礼だぞアイビス。自己紹介してもらったんだちゃんと覚えろ」

 

とそんなやり取りをしているスレイさんとアイビスさんを見ていると、簪さんが手を挙げて

 

「1つどうしても聞きたいんです。ネクロと戦うのは怖くないんですか?」

 

普段あんまり自分の意見を出さない簪さんが1番最初に口を開いたということに驚きながら返事を待つと、ティアナさんが

 

「怖いわ。怖いに決まっているでしょう?ネクロと戦う、何時自分がネクロになるかもしれない。仲間だった人と戦うかもしれない。それは何よりも怖いわ」

 

淡々とした口調で言うティアナさん、ずっと戦ってきているティアナさんでもそう思うのか……

 

「じゃあなんで戦えるんですか?」

 

「後悔したくないからかな……手を伸ばせば届いたかもしれない。そんな後悔をするなら行動して後悔したほうが良いと思わない?簪」

 

スバルさんが即答する。後悔したくない……それはきっと俺でもそう思うだろう、手を伸ばせば届くのなら傷ついたってこの手を伸ばしたいと思う

 

「あたしはあれですね。もう泣いてる人は見たくないんですよ。あたしの住んでいた街はネクロの攻撃で崩壊。生き残りはあたし含めて30人弱。八神大将達が頑張ってくれたけど進行が早過ぎた……防衛線も禄に張れず攻撃を受けてしまったの」

 

アイビスさんが首から提げたペンダントを握り締めながら言う。もしかするとあのペンダントは家族の形見なのかもしれない

 

「あたしはその時家にいなかったから無事だったけど、家族や友達は皆死んじゃった……そんな中で泣いてる子供とかを見てもう涙は見たくないなあって思ったからあたしは管理局に入隊した。出来ることなんて少ないと思うけど少しでも誰かの涙を拭えるなら……あたしはそうしたい」

 

16歳なのに俺なんかより数段考え方がしっかりしている。俺達は戦うのが怖いで逃げたいと思っていたのに

 

「私はそう言う経験は無い。だが私はずっと1つの信念を持って生きてきた」

 

スレイさんの眼光が俺達を射抜く信じられない威圧感を感じているとスレイさんは笑いながら

 

「悔いの無い選択をすることだ。こうして管理局に入ったのも、力を求めたのも。全部その為だ、悔いを残すような真似はしたくない。私は常に自分で選び自分の意思で道を決め進んできた。運命なんか関係ない、私は私の意志で今ここにいる」

 

静かな呟きだったのにそれは妙に大きく聞こえた。俺達と同じ歳でもまったく異なる人生を歩んできた。その経験差があるから言える言葉かもしれない

 

「ティアナは?」

 

鈴がそう尋ねる。ティアナさんは少し考える素振りを見せてから

 

「追いつきたい人がいるからね。私はずっとその背中を追いかけてきた、私に贈ってくれた言葉を大事に大事に抱えて。そして今もまだその背中を追い掛けてる。何時か追いつける……そう信じて」

 

誰の背中とは言わなかったけどここまで聞けば判る。龍也以外にありえないと……

 

「ネクロに襲われるかもしれないと思うと怖いし、俺は暴走するかもしれない。俺はそれが恐ろしい」

 

ぼそりと言ってしまった俺の言葉にスバルさんがからからと笑いながら

 

「そんなの言えば私も怖いし、多分ノーヴェとかも怖いんじゃない?」

 

軽い口調のスバルさんにティアナさんが真剣な顔をして

 

「言うの?」

 

「言うよ。別に私気にしてないし、どうせバレるんだしね?それにほら私は龍也さんに認めてもらったからさ。ほかの人間に何を言われようと何にも気にならないよ」

 

そう笑ったスバルさんは俺達を見据えて

 

「戦闘機人。身体の中に機械を埋め込まれた人なざる人……私やノーヴェは戦闘機人なんだよ。特にノーヴェたちはネクロによって戦闘機人にされた。一夏が暴走するかもしれないって言うのなら私やノーヴェの方がその可能性高くない?」

 

軽い口調で言われて一瞬理解できなかった。身体の中に機械?……スバルさんが?

 

「う、嘘じゃないんだよね?」

 

「うん。嘘じゃないよ?こういうことも出来るかな」

 

トンっとスバルさんが机を叩くとそこだけが丸い穴を開けた。綺麗な円だ

 

「何をしたんだ?」

 

俺達が目を丸くしている中スバルさんはジュースの蓋を開けて

 

「原子配列?えーと駄目だ。詳しくは忘れたけどそれを崩して切断する?駄目だ思い出せない」

 

「自分の身体でしょうが。いい加減覚えなさい」

 

「いや、どうでも良いし。極光使ったほうが強いし」

 

そんな話をしているスバルさんとティアナさんに驚く、こういう話はもっと神妙な物になるのではないのだろうか?

 

「だからさ?不安に思うのも怖いって思うのも判るけどさ、逃げてても仕方ないんだよ結局。立ち向かうのか?受け入れるのか?それとも逃げるのか?それは一夏達の感じ方だし誰も否定もしない。逃げたいのなら逃げれば良い、立ち向かいたいのなら立ち向かえば良い。大事なのは自分が何をしたいかだと思うよ?」

 

そう笑うスバルさん。自分が何をしたいと願うのか?それが一番大事と笑うスバルさん。ラウラが真剣な顔をして

 

「自分の身体が嫌いじゃないのか?」

 

ラウラはドイツの人造人間とも言える。その事で随分悩んだと俺に打ち明けてくれた。だから自分と同じスバルさんにどうしてもそう尋ねたかったようだ

 

「全然?いや最初は色々悩んだよ?でもさ、私は私って言ってくれた人がいたし。受け入れてくれる仲間も出来た。それにこの力で皆を助けることが出来る良い事だらけじゃない?だから私は悔いの無い選択をして後悔の無い人生を生きる!それだけだよ」

 

その言葉は不思議と心に響いた。誰も口を開かない、いや開けないのだ。同年代でも余りに考え方が違う。自分達が以下に甘えていたのかと言うことを思い知らされた気分だ

 

「ん?話が終わったようだな。良いタイミングだったかな?」

 

龍也が部屋に入ってきてそう笑って

 

「さてとそろそろ帰ろうか?話も終わったようだしな。スバル達はどうする?車に乗ってくか?」

 

「いえ、バイクで来てるので心配しないでください。ほら行くわよスバル」

 

「りょーかい♪じゃあね一夏。また後で話しでもする?それとアイビス、スレイ明日六課で待ってるから」

 

そう言って出て行く2人を見送り。俺達は龍也の運転する車で龍也の家へと戻った。車中は無言で誰も口を開かない、だけど自分達が何をしたいのか、どうしたいのか?それを考えているのは誰もが判っていた。龍也に与えられた部屋で天井を見つめ手を伸ばして虚空を掴む

 

(俺がやりたいのは……俺がしたいのは)

 

そんなのは決まっている。後悔も悔いも残したくない、俺は全力で生きたと思えるような人生を歩みたい。それがきっと答えなんだ……

 

 

 

一夏達が各々考えている頃。楯無とユウリは街外れの小高い丘の上にいた。クラナガンの外れの小高い丘の上、街を見下ろすことが出来る場所だ。ユウリと楯無は当然知るわけもないが、セレスの墓がある場所だ。とは言えここから更に上らないといけないので気付かないだろう……

 

「綺麗な所ねえ」

 

私は思わずそう呟いた。大きな木の周りには色とりどりの花が咲き乱れとても美しいと思えた。うっすらと見える星空もまた美しい

 

(龍也さんとはやてさんが良く来る理由が判るかも知れないわね)

 

なぜかは判らないけれどこの場所はとても心が安らぐ。木に背中を預けて目を閉じればすぐに眠りに落ちてしまえるのでは?と思うほどのここら辺の空気は落ち着いていて心を休ませてくれた

 

「良い場所だな」

 

ユウリがそう呟いて私の隣に腰掛け空を見上げて

 

「頃合かも知れんな……」

 

「え?」

 

ユウリの呟きの意味が判らず顔を見るとユウリは真剣な顔をして

 

「ワタシが何を抱えているか。聞いてくれるか?」

 

「……教えてくれるの?」

 

「ああ、そろそろ話したいと思っていた。ワタシとセリナ。そしてエリス……ワタシ達の関係をな……」

 

そしてユウリは語り始めた。ユウリ・セリナ・エリスを繋ぐ過去を……それは私が想像していた物よりも遥かに重く暗い話だった……

 

第93話に続く

 

 




次回はユウリと楯無さんの話にしようと思っています。シリアス多めで行きたいと思っています、ユウリさんの過去を聞いた楯無さんの反応がどうなるかを楽しみにしていてください。あと今回は長いのでおまけなしです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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