IS~現れたる神なる刃【凍結中】   作:混沌の魔法使い

96 / 134
どうも混沌の魔法使いです。今回は訓練回ですね。覚悟を決めた一夏達がどんな訓練をしているのかを見ている。箒とかの話と後半は兎のサイドの話をする予定です。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第95話

 

第95話

 

六課の訓練施設での訓練はIS学園のアリーナよりも、実践的な訓練が出来る。実体を持ったホログラムのおかげで市街戦や山中、海上といろんな状況を想定して訓練が出来るようになっている。その理由を考えると

 

(ネクロの奇襲の事を考えているのか)

 

ネクロがいかに神出鬼没なのかをよく理解しているからこその多彩な戦闘エリアの設定なのだろう

 

「箒。今回の戦闘データの統計が取れたけど見る?」

 

「クリス。いつもすまない、見せてくれ」

 

ここでの訓練は必ずだが、スバルやティアナ。そして龍也の妹だというヴィータ・シグナムと言う面子とのマンツーマンの訓練が決まりになっている。私の場合は剣を使うということでシグナムさんやディード。稀にアイギナさんやセッテと組み稽古をするのだが

 

(全然当たらない。流石に自信を無くすな)

 

剣道の大会で優勝し、剣術にも自信があったのだが……私の自身の源を全てへし折られた。私のは実戦には適していない、それがシグナム達の評価だった……それからは篠ノ之流に頼り切るのでなく、自身で考え新たな剣術をと考え実践の中で進化させることを考えたのだが

 

(そう簡単に行く物ではないな)

 

元々何代も何代も修練と研磨を積み重ねて完成した。篠ノ之流それをいきなり別物に変える事を1日やそこらで出来るわけが無い、修練を繰り返し。新しい物を見つけるしかないのだ

 

「今回だけど大分良かった様だ。攻め込める範囲が広がっている」

 

分析に特化しているクリスの言葉を聞きながら私は

 

「その代わり防御力が下がっているのだろう?」

 

「それは仕方ない。攻撃と防御の両立は難しいから」

 

篠ノ之流は元々防御と反撃の剣。それを攻撃に変える、口で言うのは簡単だが早々上手くは行かない。もともと身体に馴染んでいる動きがあるからだ

 

「そうきに病む事は無い。中々良い感じだったぞ、荒いがな」

 

シグナムさんがそう笑いながら私の肩を叩いてくれる。最近こんな風に褒められたことがなくて、少しだけ頬が緩むのを感じながら

 

「ありがとうございます」

 

手合わせしてくれていたシグナムさんにお礼を言う。私とは違う剣術で良い勉強になった。木刀同士で木刀を叩き切られるという衝撃的な光景をもあったが、間違いなく良い訓練だったと言える

 

「少ない時間でネクロと戦えるようにするには少々きつい訓練をしているが、身体は大丈夫か?」

 

「あ、はい。大丈夫です、最初は筋肉痛が酷かったですけどね」

 

身体を動かす。回復魔法で治すの繰り返しにより少ない時間で筋肉をつける、自分では実感はないが段々打ち合える時間が増えてきているので効果はあるのかもしれない

 

「焦るなと言うのは難しいかも知れんが、段階を踏んでいけ。そのうち兄上がネクロに慣れる訓練をしてくれるはずだ」

 

「ネクロに慣れる訓練ですか?どんな?」

 

ネクロへの恐怖心を克服しないことには戦うことは出来ない。だがネクロは本能的な恐怖を与えてくる、それを克服するにはどんな訓練があるのだろうか?

 

「それは私が言う事ではないな。まぁ一夏の訓練が終わるのを待っていろ。言っておくがただ待つんじゃないぞ?」

 

「はい。判っています」

 

剣道とは見ると言う意味もある。見て学ぶ、それも大事な事なのだ。シグナムさんは判っているなら良いといってヴィクトリアとの模擬戦を始める。それをクリスの隣で見ることにする

 

(しかしクリスは凄いな)

 

ラウラと同じく軍属と言うことで私達とは違うと判っているつもりだったが

 

カタカタッ!!!!!

 

キーボードを信じられないスピードで入力し、今模擬戦をしている「ヴィクトリア」「弥生」「シャルロット&セシリア」「一夏」の行動を全て記録するのと同時に模擬戦を終えた順にデータを纏めている。クリスの正確な分析のおかげで改善点が判り次の訓練で改善できる。技量が上達しているというのならそれはクリスのおかげだろう……そんな事を考えながら模擬戦を見学する。ヴィクトリアはシグナムさんと同じく西洋剣を使うので技や返しを覚えて目に見えて防御力が上がっている

 

「足運びが遅いッ!!!」

 

「っ!まだまだ!!!」

 

シグナムさんの攻撃を受けてよろめくが直ぐに体勢を立て直すヴィクトリア。これはやはり日本刀と西洋剣の違いか、日本刀はデリケートなので刀身で防ぐという発想が私にはない。だがヴィクトリアは元々西洋剣の扱いに慣れている、刀身で攻撃を止めることができる。これは私にはない発想だ

 

「ほら!行くよッ!!!」

 

「しゃあ!こいッ!」

 

弥生はヘッドギアと防具をつけて徹底的に白兵戦の技能を叩き込まれている。スバルかノーヴェが相手なのだが、スバルは拳打。ノーヴェは蹴り技のエキスパート。殴られて蹴られて技を覚えている。痛みを伴うからそれが嫌だから技量が上昇する。荒療治だが一番確実な方法だ

 

「くっ!連射速度が速すぎますわ」

 

「喋ってる暇があったら動いて!」

 

セシリアとシャルロットはスフィアと言う魔法から放たれる魔力弾の回避。射撃タイプは状況把握が大事と言うことで全方位射撃を回避するという訓練なのだが、ぱっと見拷問にしか見えない。しかしそれを言えば

 

「歯ぁ食いしばれッ!!!」

 

「ごぶうう!」

 

龍也さんと訓練をしている一夏だ。しかも訓練を見ているのは龍也さんだけではない。一夏がダウンする度に交代で訓練を受け持っているのは、逆立った金髪の青年「ルシルファー」さんだ

 

「脇が甘い、それと防具に頼るな!よけることを覚えろ!」

 

連続で振り下ろされる木刀を受ける訓練。これは攻撃に対する反応を上げる為だと言っていたが、正直よけることは殆ど出来ておらず、防具に当たり続けている

 

「は、はいつ!!!」

 

「よーし。いい気迫だ」

 

ルシルファーさんにも稽古をつけられている。龍也さんと比べると言うまでもなく、怖い。しかしその言動の割には面倒見が良くて、私にも剣を教えてくれてる。龍也さんが言っていた勘違いされやすいというのも判らなくはない。だけど前の龍也さんとの組み手を見て(内容は殺し合いに近かった)少しだけ苦手意識を抱いてしまったが、話してみると案外気さくでいい人だった

 

「はっ!はっ!」

 

息切れしながらも必死に抵抗する一夏。ヘッドギアと防具こそ身につけているが、それを考えてもボロボロだ。だがそれも無理はない

 

(ランニング10キロ、腕立て・腹筋200回。それから剣道・徒手空拳の組み手に木刀による稽古……どう考えてもオーバーワークだな)

 

魔法で回復させているとは言え流石に疲労の色が濃い。それでもなお一夏は立ち上がり

 

「おおお!!!「ガードはどうした!!!」げぶうっ!!」

 

突進してきたのをカウンターで蹴り上げられ、宙を舞った瞬間頭をつかまれ地面に叩きつけられる

 

「!」

 

見ているだけでも痛い。私と同じように見学している鈴とマドカも顔を背けている。訓練と言うのは判っているが、それでも正視しているのは正直きつい。だがラウラだけは

 

「一夏。何をしている……龍也の話をちゃんと聞いていないのか?」

 

苛々としているのか貧乏ゆすりをしている、龍也の訓練は説明を聞いて入ればクリアできる物だ。だが今の一夏はそこまで頭が回らないのだろう。疲労のせいで

 

「もういい、今日は終わりだ。次の訓練に入る、集まれ」

 

一夏を叩き伏せ回復させて座らせて私達を呼ぶ

 

「全員座れ。今日の訓練はこれで終わりだからな」

 

そう言われて首を傾げながら座る。座ってやる訓練。瞑想とかか?

 

「まず。最初に言っておく、この訓練は精神的に来る覚悟しておくように「龍也さん」なんだシェン?」

 

精神的に来ると聞いてシェンが挙手して尋ねる

 

「精神的ってどのレベルで?」

 

「100%気絶するレベルだ。まあ聞くよりみろだ、どうせ直ぐには起きれないだろうしな」

 

そう笑って龍也が私達の前に移動して。右手で顔を覆った瞬間、あたりの気温が下がったような気がした

 

(な、なんだこれは!?)

 

鳥肌が立つ。わけの判らない恐怖が襲ってくる。皆も同じように青い顔をしている、簪やエリスは既に冷や汗が額ににじんでいるのが見える

 

「ディランス……ディアボロ・ダス・エクストレーム・トラウリヒ・ドラッへッ(世界の中心で泣き続ける大悪魔龍)!!」

 

まるで爆発したような音が響き、思わず目を閉じる。そして目を開いた瞬間

 

(うあ……)

 

全身があわ立つ、逃げたいと言う考えしか頭に浮かばない。私達の目の前にいた龍也の姿は全く別物になっていた。黒い甲冑に蝙蝠の翼……そして顔の右上を隠すような仮面……その姿はまるでネクロの様だった……そこまで認識した所で私の意識は途絶えてしまったのだった……

 

 

 

 

 

ゾクッ!?

 

空調完備が出来ている研究室にいるのに突然背筋が冷えた。スコールさんとオータムさんも同じようで不思議そうな顔をしている。平気な顔をしているのはスカリエッティさんだけだ

 

「今変な感じがしなかったか?」

 

平気そうな顔をしていているスカリエッティさんにオータムさんが尋ねると

 

「龍也がディランスを使ったんだと思うよ。一夏君達にネクロに慣れさせる為にね」

 

話をしながら作業をしている。今改修しているのはゴールデン・ドーンとアラクネだ。元々戦闘になれているスコールさんとオータムさんのISから改修したほうが早いと言う結論になり、こうして作業をしているのだが

 

「ディランスって?」

 

聞き覚えの無い単語があり、尋ねるとスカリエッティさんは

 

「んー?ネクロ化だよ。ネクロ化。龍也はネクロ化できるんだ」

 

龍也君がネクロ化出来る!?そんな話は聞いていない。それ以前にネクロ化して大丈夫なの!?

 

「短時間なら制御できるよ。昔の魔導師は使えたみたいだよ。今は使える人間なんて殆どいないけどね。あ、ミス……言いにくいからオータム君でいいか。ガトリングを魔力弾かレーザーどっちに換えて欲しい?」

 

「いや。そんなことよりネクロ化して大丈夫なのか?暴走とかは?」

 

「だいじょーぶ。だいじょーぶ、問題ないよ。ネクロに慣れるにはネクロを見る。これしかないよ」

 

そう笑って作業を進めるスカリエッティさん。荒療治だが、確かにそれが確実なのかもしれない

 

「スコールさんは何か武器のリクエストは?」

 

とりあえず作業を再開しよう。ゴールデン・ドーンは第3世代で改修しやすい、それにゴールデン・ドーンは殆ど武装を搭載してないのでネクロと戦うのなら武器は必須だ

 

「そうね。腕部内臓のブレードとか欲しいわね。あと脚部にも」

 

「白兵戦が得意なの?」

 

武装を見る限り、ゴールデン・ドーンは炎扱う能力と尻尾による攻撃のミドルレンジ対応のISに見える。それなの格闘戦の武器を搭載してくれと言うことは、白兵戦が得意なのかと思い尋ねると

 

「ええ、得意よ。蹴り技とかね」

 

もしかして奪ってきたISと相性が良くなかったんじゃないかと思った。でもタスクの理念を聞いた限りだと危険なISだから強奪してきたのだから、相性は二の次なのかもしれない

 

「上をレーザーで下を魔力弾にしよう。んでブレードを2本」

 

「まて。私のアラクネを魔改造する気満々じゃねえか」

 

「ええ?そんなことないよ、バズーカを肩にくっつけて、腰にレールガンをつけるんだよ」

 

「魔改造じゃねえか!?原形とどめてねえぞ!?」

 

私もあれくらい改造すればいいのかな。ちらりとスコールさんを見ると

 

「普通でお願いするわ。あんまり個性が強いと使いこなせるようになるまで時間が掛かるから、腕部と脚部のブレード。それと手持ちの火器と剣が欲しいわね」

 

スコールの要望を聞きながら図面を起こす。いろいろ試しに設計したものがある、気に入った物があったら直ぐに作成できると思いながら剣と言う事で使いやすそうな物を1つ見せる

 

「こういうのはどう?」

 

龍也君が投影してくれた武器をイメージして作った剣を見せると

 

「うーん。ちょっと違うかな?ゴールデン・ドーンは遠距離武器を複数内蔵してるから、間合いを詰められても戦えるようにナックルガード付きの剣が欲しいのよ」

 

なるほど、牽制と自分のみを護るための武器ね。となると切れ味より防御力で考えたほうがいいかしら?

 

「さらにこのバックパックで腕が2倍に!」

 

「なんとじゃねえ!そんなもんどうやって動かせって言うんだ!?」

 

「んー気合?」

 

「てめえふざけてんのかああ!?」

 

あっちは大変そうだなあ……私とスコールさんはそう呟き。真面目にゴールデンドーンの改修と武装について考え始めたのだった

オータム。機動六課に不在していたツッコミのポジションを獲得することになるのだが……後に

 

「給料も住める事も文句はないけど、なんでツッコミが私1人なんだよ!?」

 

龍也ガ身元引受人でクラナガンの地に暮らすことになった、オータムは酒を飲む度にそう叫ぶようになったそうです……

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

「よう。起きたか、一夏が3番目と結構早かったな」

 

そう笑う龍也、俺はゆっくりと身体を起こし頭を振る。

 

(駄目だ。さっきの龍也の姿が頭に張り付いている)

 

黒い龍神とも悪魔とも言える龍也の姿。その強烈なインパクトに意識を失ったのだ、周りを見ると箒やセシリアも倒れている。どうやら倒れたのは俺だけではないようだ。

 

「一夏早かったな」

 

「予想外ですね」

 

おきていたのはラウラとクリスさん。平然としているように見えるが足がガクガクと揺れているのが見える、かという俺も足が震えている。それほどまでの恐怖だったのかと思いながら龍也に近づき

 

「さっきのは?」

 

「ネクロ化だ。禁呪「ディランス」一時的にネクロ化する魔法だ」

 

ネクロ化ってそんな事をしても大丈夫なのか?

 

「大丈夫じゃない。長時間のネクロ化はそのままネクロになる危険性もある。それにネクロ化により凶暴性も増すしな、守護者しか使えん技だが、ネクロに慣れるのはこれが1番早い」

 

腕組しながら説明してくれるルシルファー。しかしその説明を聞いて俺が思ったのは

 

(なんでそんなにリスクのある物を……)

 

幾らなんでもリスクが高すぎる。俺がそんな事を考えているとラウラが

 

「私達がネクロに早く慣れる用にだそうだ。あの状態の龍也はLV4に匹敵するらしくてな。強い者に慣れれば下位は平気になるそうだ」

 

それは確かに理屈は通ってるけど、そのためにそんなリスクを犯す事は

 

「ネクロと戦わせると言うのも考えたが、こっちの方がいいだろうと思ってな。実戦で死なれたり、精神疾患を負われても困る。現にそう言う事例は多いからな」

 

そう言って立ち上がった龍也は

 

「飲み物と食べる物を用意してくる。ケーキとかな、甘い物を食べれば少しは落ち着くだろうからな。箒とかが起きても部屋に帰らない様に言ってくれ」

 

その言葉に頷き俺は大きく溜息を吐いた。思いだすだけで手足が震える、それほどまでにインパクトがあった

 

(ネクロと戦えるようになるまでまだまだ時間が掛かりそうだな)

 

気絶していたら意味が無いだろう……俺はそう苦笑しながらストレッチを始めた。身体が萎縮していてガチガチだほぐしておこう……ストレッチをしているとゆっくりとだが、箒やマドかも目を覚まし始める。俺はその度に事情を説明し龍也が戻ってくるのを待つのだった……

 

 

 

 

その頃元の世界の束の隠れラボでは

 

「これでいいか……」

 

長い事時間が掛かってしまったが、なんとかクアッドファランクスを改造し移動できるようにし、火力も上昇させることが出来た

 

「アームドベースとの連動も出来ているな」

 

クアッドの火力を更に上昇させるために搭載した「アームドベース」これはハードポイントを増大させ搭載できる武装を増やす機構だ

 

「分離式にしたのは成功だったか」

 

こうしてハンガーに掛けているのを見るとフルスキンに見えるが、装甲の大半は分離式になっている。デッドウェイトになった武装を装甲ごとパージして機動力を確保する。しかも装甲は炸薬を仕込んでリアクティブアーマーにしてある、防御力も心配ない

 

「アズマちゃーん。完成おめでとー♪」

 

「束……」

 

後ろから抱きついてきた束は私の作り上げたパッケージを見て

 

「これでアズマちゃんの敵は倒せるの?」

 

邪気の無い顔で尋ねてくる束に

 

「ああ、これで私の敵を倒せるよ」

 

「そっか。前に負けた八神龍也は強いもんね。これくらいじゃ足りないよ、ネルちゃんに頼もうか?」

 

束は何も判ってない。私の敵は八神龍也じゃない……

 

「ネルヴィオから……最近連絡はあるのか?」

 

「んー謹慎中なんだって、ネクロにもそう言うのがあるんだね。束さんは驚きだよ~」

 

私はそうは思わない。もう束はネクロにとって利用価値がなくなった。そう考えるのが妥当なのではないだろうか?確かに束は天才だ。だが感情が幼すぎる、自分のことを過剰評価している。だからネクロに切り捨てられるなんて考えてないだろう

 

(今まで毎日連絡が会ったのに、今はそれが無い。それはもう必要ないと判断されたからではないのか?)

 

ネクロディアの設計図を取りに来たイナリが2週間前に来た、それ以来ネクロからの接触は無い。切り捨てられたと考えるべきだろう

 

「じゃあネルちゃんに連絡してくれるね~」

 

ニコニコと笑って私の研究所を出て行く束の背中を見ながら

 

「クロエ。判っただろう?」

 

「はい……」

 

クロエは最後まで束が自分で気付いてくれる事を願っていた。だけど束はきっと永遠に気付かない。自分が一番だと思っている以上

 

「これを」

 

USBメモリをクロエに手に握らせる。これを束が見てくれればきっと元の優しい束に戻るだろう。ネクロに出会う前の、私とクロエを助け出してくれた頃の束に

 

「……アズマはどうなるんですか?こんなISを用意して」

 

「賢いお前なら判っているんだろう?」

 

ネクロの考え方を考えれば、束を切り捨てるとしたら自分達から手を下すことは無い。人間を使う、そして人間に絶望した束をネクロ化する、そう考えていると考えて間違いない。私はしゃがみ込んでクロエを抱き締めて

 

「私はなんとしてもクロエと束をここから逃がす。後は任せるぞ、クロエ」

 

「……はい……」

 

目に涙を溜めてもクロエは泣きはしない。私はクロエの頭を撫でて

 

「あと少し時間があると思う。それまでは束の傍にいてやってくれ」

 

頷いて出て行くクロエ、私はゆっくりと立ち上がり。ハンガーに掛かっているブラッドバニーの装甲を撫でる

 

「きっと次にお前に乗るときが私達の最後だ。それまでよろしく頼む」

 

私の敵は束を悲しませる者達だ。だが私にネクロと戦うだけの力はない、だから自分の出来る最善を尽くす。束とクロエをここから逃がす、それだけが私の出来ることだ。そしてその為に命を使う、この戦いが終わればきっと私の命は尽きているだろう……

 

(だがそれでいい。どうせ死ぬはずだった私がここまでこれた、十分だ)

 

私はそう笑いながらブラッドバニーの装甲により掛かり目を閉じた。あと何回こうして眠ることが出来、目覚めることが出来るだろう?出来ることならばこの小さな平穏が長く続きますように……私はそう祈りながら眠りに落ちたのだった……

 

 

~おまけ~

 

「最近どうだ?夢を見るか?」

 

コーヒーを片手にそう尋ねてくる龍也。これは多分アレだろう。俺が最近見ると相談していた檻の夢のことだと判断した。

 

「いいや。最近見て……にがあ」

 

「砂糖とミルクを入れろ」

 

にやりと笑う龍也に頷きながらコーヒーに砂糖とミルクを加える。スプーンを入れて混ぜながら

 

(不思議とも見ないんだよなあ)

 

IS学園では毎日のように見ていた。檻の中で笑うオレの夢。何度も何度も俺に手を伸ばしてくる悪夢だ

 

「ふむ……多少なりとも魔力取得の効果がでてきたということか」

 

「やっぱりそうか?」

 

龍也に教わり徐々に使えるようになってきた魔力。そのおかげかもしれない

 

「それもあると思うが、気持ちの問題だな。余裕が少しながら出てきたと言う事だろう、だがあまり慢心するな。闇は直ぐに顔を出し、お前を飲み込もうとしてくるぞ?」

 

脅しではない。これは本当のことだ。力を望んだとき、誰かを憎んだとき。心が軋むような感じがして視界が歪むことがある。龍也いわくそれは暴走の予兆とのことらしいが

 

「何でそんなに詳しく……「1度デイランスでな?完全にネクロ化しかけたことがあるんだよ。経験者は語るだ」

 

それと同じくらい俺の暴走も危険ってことか……龍也も一歩間違えればネクロ化するという状況になったってことか……

 

「ちなみに対処法は?」

 

「平常心を保つことだ。良いな?」

 

即答されたが。それは何よりも難しいことだなと苦笑しながらも頷き

 

「判った」

 

砂糖とミルクの入ったコーヒーを啜り。俺はもう1度眉と顔を顰めて

 

「にげえ……」

 

「お子様が」

 

からかうように笑う龍也の視線から逃れるように、部屋の隅を見つめ。もう1度砂糖を加えてからコーヒーを啜るのだった……

 

 

第96話に続く

 

 




次回はISの改修完了の話とほのぼの話をしようと思います。予定ではクラナガンから帰還後一気に話を進める予定です。

それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。