それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第97話
千冬姉のおかゆで臨死体験した俺達は、アサルトに逃げていた簪さん達を回収し龍也の家に戻った。なお戻るまで色々あった
「裏切り者!シェーン!待ちなさいよ」
「ちょっ!それ逆恨み!私関係ないよ!」
鈴がシェンさんに飛び掛り、髪をむしゃくしゃにし
「ヴィクトリアさん。これは織斑先生の作った御粥の残りなんです。食べませんか?」
「それはどう考えても劇物だ!?」
千冬姉の作ったおかゆを手にmヴィクトリアさんを追いかけるセシリア
「クリス。教官の料理は最強だった。一口で三途の川に逝けたぞ」
「戻って来れて良かった」
生還できたことを喜んでいるラウラとその肩を叩くクリスさん。
まぁ色々あったが、なんとか龍也の家に帰って来る事ができた。途中で三途の川送りにならなかった面々にアイスを奢って貰った。同じストロベリーやバニラでも、味が大分違って面白かった
「しかし織斑先生が料理がへたくそなんて以外ね」
「完璧な人間などいないということだろう」
途中で合流した楯無さんとユウリが笑いながら言うが、あれは笑いながら言える様な代物ではない
「料理は面白い。またやりたいと思う」
マドカが料理に目覚めたのはいいことだな、今度はちゃんとした料理を教えようと思い。玄関に向かっていると
「ドラきち!GO-ッ!」
「キューッ!」
もうこの家に来てから毎日見ると言っても過言ではない。庭を駆け回るドラゴンと幼女の図。なんかこう……見ていると癒される光景なんだよな。小動物が持つ不思議パワーなのかもしれない、そんなくだらない事を考えながら家の中に入ろうとすると
「シェーン!ヴィクー!クリース!簪ー!エリース!あそーぼー!!!」
家に入ろうとした俺達を見つけた、ちびっ子ーズがシェンさん達を呼ぶ。どうもかなり懐かれている様だ、呼ばれた面子は少し考えてから。ちょっと遊んであげてくるねと言って、ちびっ子ーズとドラきちの方に向かって行った。ボールやフリスビーで遊んでいるドラきちとちびっ子達を見ながら俺達は家の中にと入っていったのだった
「ふーん。それは災難やったなあ」
風呂の後の夕食で今日あったことを愚痴で言っていると、それを聞いたはやてさんがそう笑いながらワインを飲んでいた。
「いや、本当に死ぬかと思ったんだよ。はやて」
「あっはは!家にもそう言うのは居るでなぁ?しゃあないって」
楽しそうに笑うはやてさん。だけどここにはいつもいるはずの龍也の姿が無い、それが気になった俺は
「龍也は?」
俺の問い掛けに答えてくれたのは、ヴィヴィオだった。龍也が引き取って育てている子供とは聞いていた。天真爛漫と言う感じのヴィヴィオは夕食のオムライスを幸せそうに頬張りながら
「ん~?パーパはお仕事。TVに出るんだって!」
TV?あ、龍也は有名人だから出てもおかしくはないのか?俺がそんな事を考えているとはやてさんが
「そろそろ時間やけど。見たい?」
俺達ではなくチビッ子にそう声を掛ける、ちびっ子達はスプーンを振りながら
「「「みるー!」」」
にぱーと笑いながら言った。やっぱり龍也が好きなんだろうなあと思いながら、オムライスを頬張ろうとすると
「あーん」
無表情なのに期待しているという顔で俺を見るマドカ。本当に器用なやつだと思う、だが
(また三途の川送りなのか)
視線が物理的な威力を持っていれば、俺は蜂の巣になっている。だがこれだけ期待の色を目にしているマドカを蔑ろにすることもできず、俺はマドカの口にオムライスを運ぶのだった。物凄く幸せそうに租借しているマドカと、背筋が冷える眼光。全く相反する圧力に怯えていると
「パパだー」
「お兄様です」
ほのぼのとしらヴィヴィオとリィンの声に振り返ると、TVに龍也が映っていたのだが……
(す、すげえ……)
白のスーツに赤と金のマントを肩から下げた龍也の姿は、王様としか言いようの無い威圧感……そして同性であれ見惚れるような美しさがあり、俺は思わず手にしていたスプーンを落とすのだった……
カチャーンっという音がする。一夏君がスプーンを落とした音だ、私はTVに映っている龍也さんの姿に完全に目を奪われた
(はわ……綺麗)
格好良いとも思うんだけど、それ以上に綺麗だと思った……思わず絶句してしまった。だけどそれは私だけではなく
「「「……ポ」」」
エリスやヴィクトリアさん達が頬を赤らめている。だけど私の顔も熱いのが判る、映像越しでこれなら近くで見ている人達はもっと赤面しているだろう。
『八神龍也大将。今回はどうもありがとうございます』
『招待ありがとう。今回は楽しませてもらうとするよ』
そう笑って歩き出す龍也さん。龍也さんが歩く度に人が道を開けていく……
(モーゼの海割り?)
人がさっと道を開けていく。もしかするとあの場にいる人達は完全に龍也さんの雰囲気に呑まれているのかもしれない。
「はいはい!見惚れてないでご飯たべい」
はやてさんが手を叩きながら言う。どうも龍也さんの姿に完全に目を奪われて、食事が止まっていたようだ。食事を再開しているとマドカさんが不思議そうに首をかしげて
「龍也は黒い服ばかりに着ていたが、何で白い服を着ているのだ?」
それは確かに気になっていた。いつも龍也さんは黒い服を着ている、だからいつもと印象が違うのも目を奪われた理由だと思う
「んー?そりゃあれや。黒は負のイメージがどうしてもするからなぁ。だから白い服とマントなんよ」
そう笑うはやてさん。確かに黒よりも白の方が明るいイメージがある、そう思って納得していると
「こほん、それだけではありません。はやて様」
壁際に控えていたアイギナさんが失礼しますと声を掛けてから
「白と金と赤。あれは王の父君。初代神王の衣装なのです、マントは意匠や染め抜きまで完璧に再現しております」
「ほーそうやったんか?」
「はい。私とクレアで作成しました。あのマントはそれ自体に魔力が込められており、防具としても優秀なのです」
そうなんだ、だから王様って感じがするんだ……と納得しながらオムライスを頬張っていると
「お兄様はかっこいいです♪」
「パパはかっこいい」
「……に、兄さんは凄くかっこいいです」
きゃっきゃっと楽しそうに言う、リィンちゃん達。龍也さんに相当懐いているのだと改めて思う……そんな事を考えながらTVをちらりと見ると
(楽しくなさそうだな……)
話し掛けてくる人達に相槌を打っているのが見えるが、どうも楽しくなさそうだ。あの姿は更識家のパーティーの時に良く見る、お姉ちゃんの姿に似ていると思った。私もよくお姉ちゃんと一緒に参加していたから判るのだが、龍也さんは退屈していると思った。
龍也さんの地位と役職を考えればこういうパーティーに呼ばれるのも納得なんだけど、お姉ちゃんが行きたくないなあといっていたのをどうしても思い出してしまったのだった。
「お姉ちゃんもやっぱりああいうパーティーは嫌いなの?」
部屋に帰って寝る準備をしながら尋ねると、お姉ちゃんはブラシを机の上において
「あんまり楽しい物じゃないわね。見え透いたおべっかとか聞いてるのってあんまり好きじゃないのよね」
「それは当然だと思いますね。私も同じ立場なら嫌だと思います」
エリスが頷きながら言うと、お姉ちゃんはでもと言ってから
「人の上に立つ人は自分が嫌な事でもしないといけない時があるのよ」
偉い人って言う程良い物じゃないのかも知れない。私とエリスも人事ではなく、もし代表になればそう言う機会も増えるだろうと思っていると
「まぁ今すぐにってわけじゃないから、それに明日も龍也さんの訓練があるんでしょう?早く寝ておいたほうがいいわよ?私もISの調整があるし」
そう言って布団にもぐりこむお姉ちゃん。それを見たエリスがぼそりと
「逃げましたね」
「逃げた?」
エリスの言葉の意味が判らず尋ね返すとエリスは、ええと言ってから
「最近ユウリと仲がいいみたいなので。その事を聞こうと思ったのに残念です」
「……あんまりお姉ちゃんを苛めないでね」
お姉ちゃんは意外と脆い所があるのでそう声を掛けてから、自分の布団に潜り込んだのだった……
「ふああ……よく寝たぁ」
ぐぐーっと背伸びをしながら長い通路を歩く。最初はこんなの慣れないと思ったんだけど、意外と適応力は高かったようでもう普通に馴染んでいた。それは私の適応力だけじゃなくて
(リィンちゃんとかのおかげかな?)
遊んで、遊んでとじゃれ付いてくる。リィンちゃんとかに案内されて家の中を歩いている内に慣れたのかもしれない。そんな事を考えながら
(鈴は相変わらず夜更かしだね)
私が寝た時はまだ鈴は部屋にいなかった。多分だけど一夏君とかと話をしていたんだろうなあと思いながら歩いていると
「ん?おはよう。シェン、早いな」
同じように背伸びをしながら歩いていた龍也さんにばったり会う。ここに来てから滅多に会うと言うことは無かったので、不意打ちも良い所だ
(背高いんだね)
IS学園にいたときは幻術で歳を調整していたと聞いていた。こうして本来の歳の龍也さんを見ると随分と背が高い。完全に見上げる形になってしまうなあと思いながら
「昨日の服はもう着ないんですか?」
冗談のつもりでそう尋ねると龍也さんは難しい顔をしてから
「あれは特別な時しか着ないんだよ。式典とかな、日常的に着るものじゃない」
アイギナさんが言うには、確かあの服は王様としての服。確かに普通に着る物じゃないね、と納得した所で気づく
「龍也さんコートは?」
何かいつもと違うと思ったら、IS学園でもここでも着ていた黒いコートを着てないのだ。それが気になり尋ねると龍也さんは
「明日は隊長陣の訓練の日だからな。それに向けて身体を慣らすためにな、あれは重さが300キロあるから。脱いだときの軽くなる感じに慣れておかないと後が大変なんだ。向こうは偶に殺す気で来るからな、ご褒美が欲しくて」
……あははと笑っているが、笑って流せる単語は無かったと思う。300キロのコート・殺す気・ご褒美。どれも突っ込み所しかないような気がする。しかし私が1番気になっていたのは
(ご褒美ってなに?)
あの魔王なはやてさん達へのご褒美?私が首を傾げていると龍也さんは笑いながら
「なにただの休日の独占権だよ。買い物とかに付き合うという約束なんだよ。ちなみに私はまだ不敗だ」
それはあれじゃないだろうか?絶対に手に入れることのできない物を餌に、やる気を出させているような物ではないのだろうか?ずるいと思う反面。自分のみを護るためと考えれば妥当な手段なのかもしれない
「そう言うわけだ。それと今日の訓練は無しだからな」
「訓練無いんですか?」
今までずっと訓練があったのに何でだろうと思いながら尋ねると、龍也さんは頭を掻きながら
「ジェイルがな、ヴィータ達をからかって演習場が大破したんだ」
……大破?あの演習場が?私が絶句していると龍也さんはからから笑いながら
「よくあるんだよ。ほら、皆強いから」
強いで済ませて良い問題じゃないと思いはしたが、あえて口にはしなかった。郷に入っては郷に従えと言うしね
「と言うわけだ。今日は観光に連れて行ってやろう。10時にリビングに集合な?」
「いきなり言う事じゃないと思います」
いきなりの観光・しかも時間まで指定。そう言うのはもっと早く行って欲しい
「今シェンに言った。じゃ、後は任せた。箒とかに声を掛けておいてくれ」
言うだけ言ってさって行く龍也さん。途中で「キュー♪」「お兄様ですー♪」と聞こえてくる楽しそうな声を聞きながら腕時計を見る
【6時30分】
時間的な余裕はある。だけど朝食。身支度と考えると結構ギリギリだ。それに朝弱い面子も多い
「とりあえず。楯無先輩と箒さんを起こしに行かないと!」
キリッとしていて頼れる2人を起こすことを最優先に考えよう、私はそう判断して2人の部屋へと走ったのだった
シェンが必死に起こして回っている頃。龍也とちびっ子達は
「おにーさまー行きますよー」
「良いぞー」
「えーい」
「ん。上手になったなー」
庭でキャッチボールをして遊んでいたりする。なおちびっ子の投げるボールはその性格を現しているのか、かなり独特だった
リィン 超山なり、1回跳ねて龍也の所に届く
アギト かなり早い、胸元にストレート返球
ユナ 半分も届かず落ちる。
アザレア 以外や以外ストレート返球 稀に明後日の方向に消える
リヒト 変化球 フォークしたり、カーブする
そしてヴィヴィオはと言うと
「てえーい」
真っ直ぐ投げているのに、なぜか頭の後ろからと言う器用すぎる投球をしていた。そして最後のドラきちは
「キュー!」
ボールを加えて真上に投げ、半回転して尻尾で打ち出すという器用な事をしていたりする。なおドラきちはこの尻尾にミットを嵌めてキャッチャーを出来たりする。器用なドラゴンである……
シェンが必死で鈴を起こしているのは対照的に、庭ではとてものんびりとした光景が広がっていたのだった……
シェンさんに観光に行くらしいから起きてと叩き起こされ、朝食を食べた後で出掛ける準備をするために部屋に戻っていると
「観光に連れてってくれるなら昨日の内に声を……ふああああ」
鈴が欠伸をしながら言う。昨日は俺や鈴それに箒達は臨死体験のせいで、調べることの出来なかったISのスペックの分析で夜遅くまで起きていたので皆欠伸をしている
「だらしない」
マドカだけはいつもの無表情。千冬姉とこんな所まで似ているとは正直驚きだ
「観光かぁ。どんな所があるのかしらね?」
「さぁな。しかし態々龍也が案内してくれるんだ。見る価値があるのか、それとも遊べる所なのか?そのどちらかだろうな」
並んで歩きながらそんな話をしている。ユウリと楯無さん。最近すこしギクシャクしているかな?と思っていたのに、今は凄く仲が良さそうだ、俺達が知らない所で何かあったのかな?と思いつつ、少し羨ましいと思った。彼女が欲しいというわけじゃないが、それでも仲良さげな2人の姿を見ていると羨ましいと思ってしまう。なんせ普段は
(殴られ、切りかかられ、射撃の的にされ……常に死に掛けてるもんなぁ)
俺は龍也みたいにやんちゃだから仕方ない。と言う態度で受け入れることが出来ない、贅沢は言わないが、もう少し優しくしてもらいたいと思っても罰は当たらないだろう。
「一夏。観光だって♪楽しみだね」
そう笑ってシャルが俺の腕を抱え込む。腕に当たる柔らかい感触に思わず赤面する。だが直ぐに背筋に強烈な寒気を感じる
「「ゴキッ!メキ!ボキボキッ!!」」
鈴とマドカが手の骨を鳴らして俺を睨んでいる。だがこれは男としては当然といえる反応なんだ、俺は龍也みたいに抱き疲れても平然としていられるような精神力は無いんだ。そこは理解してくれないだろうか
「「ギロッ!」」
鈴とマドカのように手を出してくる気配は無いが、殺気を込めた目で俺を睨んでくる。箒とラウラ……2人とも刀剣の扱いに長けているので少しでも気を損ねるとマジで殺される。冷や汗を流しながらふと思う
(セシリアが何もしてこない?)
普段なら鈴か箒達の法に入っているのに、どうしたんだと思っていると
「実に楽しみですわね!一夏さん」
(そうきたかぁ!?)
シャルに対抗したのか左腕を抱き抱えるセシリア。そしてその行動で
「「「一夏ぁ!!!」」」
噴火寸前だった箒達が一気に噴火した。そして水平に廊下を吹っ飛びながら
(もう少しだけで良いんです。俺に平穏をください)
観光する前に既にボロボロになった俺は、薄れ行く意識の中でそう思ったのだった……
第98話に続く
次回は観光の話をしたいと思います。後半でネクロのサイドの話を出来たらなあと思います。話数とかを考えているとどこまで日常をやっていいのか悩んでしまうんですよね、もう少しペース配分を考えるべきでした。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします